メトホルミン長期内服はビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血をきたす

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メトホルミン長期内服はビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血をきたす

☑️はじめに

メトホルミンを長期に服用していると、ビタミンB12欠乏症が30%程度に起きるとされます。

メトホルミン服用患者にメコバラミンが処方されているのを見て不思議に思った方もあるかもしれません。

巨赤芽球貧血を起こす場合も9%程度あるようです。

メトホルミン服用中に起きるビタミンB12欠乏症と巨赤芽球貧血について見て行きましょう。

さくら先輩、メトホルミンでビタミンB12欠乏が起きるなんて初耳です。

乳酸アシドーシスほど知られていないね。ゆきさん、しっかり学んでおこう!

プロローグ

👩‍⚕️内科を転院した患者さんに、メコバラミンが開始されたのを見たことがあります。

👩‍⚕️いま思えば、メトホルミン長期服用によるビタミンB12欠乏症だったのかも知れませんね。

👩‍⚕️今度、過去の採血結果を見せてもらう機会があれば、MCVやLDHを確認してみます。

出典: twitter.com

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☑️疫学

メトホルミン内服によるビタミンB12欠乏に関しては、5~30 %の範囲でみられるとの報告があります。

メトホルミン内服開始からビタミン B12が減少するまで期間は報告によって様々です。

服用開始から16週間後に有意に減少という比較的早期より発症する報告もみられますが、一般的には 5~10年後の経過を経て発症するとされています。

Metformin and vitamin B12 deficiency.
Arch Intern Med 162: 484-485

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️機序

メトホルミンによるビタミンB12吸収障害の機序として、腸運動の変動、腸内細菌の過剰繁殖の促進、回腸におけるビタミン B12ー内因子複合体のカルシウム依存的吸収の阻害作用などが報告されています。

Metformin and vitamin B12 deficiency.
Arch Intern Med 162: 484-485

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️リスク因子

メトホルミン内服によるビタミンB12欠乏のリスク因子として、投与期間が3 年以上、または投与量が1000 mg/ 日増加する毎にリスクが高くなると報告されています。

投与期間が長い場合や投与量が多い場合、とくに注意する必要があると考えられます。

Association of vitamin B12 deficiency and metformin use in patients with type 2 diabetes

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️メトホルミン服用中の巨赤芽球貧血は11.8年の追跡で9%

ビタミンB12欠乏状態においては、巨赤芽球性貧血が発症する可能性があります。

メトホルミン内服により巨赤芽球性貧血を来したとする報告は多くありません。

Filioussi らは平均11.8 年間ビグアナイドを投与した2型糖尿病患者600人の分析で、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血を来した患者が 54人(9 %)みられたと報告しています。

Should we screen diabetic patients using biguanides for megaloblastic anaemia?
Aust Fam Physician 32: 383-384

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️症例報告

メトホルミン服用中に巨赤芽球貧血を起こした国内の報告がありましたので紹介します。

要約:
症例は78歳男性。
X-18年に糖尿病と診断され経口血糖降下薬開始。

X‐4年10月よりメトホルミン750mgより開始したところ、X年6月頃よりHb 11.5 g/dL、MCV109 fLと大球性貧血を認めた。

同年11月、ビタミンB12 50pg/mL未満と低値を示し、メトホルミン投与によるビタミンB12欠乏に基づく巨赤芽球性貧血と診断し、メトホルミン中止およびメコバラミン投与により速やかに改善した。

メトホルミンによるビタミン B12欠乏の原因として、回腸におけるビタミンB12‐内因子複合体のカルシウム依存的吸収の阻害作用などが報告されている。

昨今ビグアナイド薬は、2型糖尿病治療において多用されているが、投与開始後遅発性にかつ徐々に進行する大球性貧血をきたす例もあることより、特に高用量を投与する場合は長期にわたり血液像を観察する必要があると考える。

メトホルミン内服中にビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血をきたした2型糖尿病の1例

出典: www.jstage.jst.go.jp

☑️巨赤芽球性貧血について補足

大球性貧血で、ビタミンV12欠乏による骨髄造血不全が原因になる病態です。
どのような特徴を持つのか、貧血診断のフローチャートに沿って再確認しておきましょう。

臨床検査値使いこなし完全ガイド じほう 2019年

出典:

☑️網状赤血球数による貧血病態の分類

貧血は原因別に大きく、①失血、②赤血球破壊亢進(溶血)、③赤血球産生低下(造血不全)の3つの病態に分類されます。

網状赤血球数を用いると、病態が失血・溶血によるものか、あるいは造血不全によるものか鑑別することができます。

網状赤血球数は、骨髄での赤血球産生能を評価するマーカーです。

赤血球の成熟過程に異常がある造血不全では、網状赤血球の産生が十分に行えません。

したがって、網状赤血球数増加がなければ、貧血の原因として赤血球産生低下を考えることができます。

網状赤血球数の絶対数<10×10^4/μLがカットオフになります。

☑️小球性、正球性、大球性貧血の鑑別

赤血球産生低下が病態であれば、平均血球容積(MCV)で小球性(<80fL)、正球性(80~100fL)、大球性(>100fL)に分類して鑑別を行います。

大球性貧血はMCV>100fLがカットオフとなります。

要因としてはアルコール多飲、ビタミンB12/葉酸欠乏症の頻度が高いですが、メトホルミンなど薬剤性でも生じることがあります。

☑️ビタミンB12欠乏症による巨赤芽球貧血について

ビタミンB12欠乏症では骨髄でのDNA合成が阻害され、巨赤芽球が産生されますが、骨髄内でアポトーシス(無効造血)を起こし、巨赤芽球貧血となります。

ビタミンB12欠乏症は、巨赤芽球貧血の他、末梢神経障害や認知機能・気分障害など精神症状を引き起こすことがあります。

血中ビタミンB12値低値(<200pg/mL)をもって診断します。無効造血を反映してLDH(基準値:130~235)の高値を認める他、末梢血で過分葉好中球を認めます。

神経症状を伴う場合はビタミンB12静注ないし筋注での加療を開始します。網状赤血球数は1週間で増加しますが、貧血の改善まで約2ヵ月を要します。

赤血球産生に伴い、細胞内へのKシフトが起きると低K血症を来すことがあり、Kのフォローアップも同時に行う必要があります。

☑️まとめ

メトホルミンを1000mg、10年程度服用するとビタミンV12欠乏症を起こし、巨赤芽球貧血を起こす場合があります。

メトホルミン内服によるビタミンB12欠乏では、MCVは徐々に上昇する一方でHbは正常範囲内で経過することがあり、気付かれない症例もあると予測されます。

メトホルミン内服中の患者に対しては定期的な血液像のチェックが必要と考えられます。

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最終更新日2021年10月20日

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