非結合型バルプロ酸の経口クリアランス及びAUCは蛋白結合率が低下しても変動しない

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非結合型バルプロ酸の経口クリアランス及びAUCは蛋白結合率が低下しても変動しない

☑️はじめに

バルプロ酸はアルブミンへの蛋白結合率が高く、殆どが細胞外液中に存在します。

病態や他の薬物による蛋白結合置換で非結合型分率が上昇した場合、作用が増強されることはあるのでしょうか?

結論から言うと、作用強度は変わりません。

薬物の特徴づけから、薬効を発揮する非結合型バルプロ酸のAUCは変動しないことが予想されるからです。

詳しく説明しましょう。

さくら先輩、臨床薬物動態学の考え方に慣れてきました

ゆきさん、頼もしいね。今日も一緒に見て行こう!

プロローグ

📖デパケン®️添付文書
“全身クリアランスは主に肝固有クリアランスと血漿中蛋白非結合率の影響を受ける”
📖デパケン添付文書
“蛋白結合率が低下した場合、総血漿中濃度は低下するが、非結合型濃度は低下しない”

👧ずいぶん詳しく書いてありますね

👩内容の理由を説明しよう。まずは薬物の特徴づけだけど…

出典: twitter.com

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☑️インタビューフォームの情報を確認する

〇バイオアベイラビリティ(BA)
バルプロ酸のバイオアベイラビリティは剤形の違いによらず約100%である。

〇クリアランス(CL)
バルプロ酸の吸収率を 100%と仮定したとき、全身クリアランスは外国人健康成人 (16~60 歳)で 6~8mL/h/kgである。
すなわち6~8mL/min(60kg)

バルプロ酸の全身クリアランスは主に肝固有クリアランスと血漿中非結合率の影響を受ける。

〇分布容積(Vd)
バルプロ酸の分布容積は 0.1~0.4L/kg であり、ほぼ細胞外液に相当する。

〇血漿蛋白結合率(1-fuB)
バルプロ酸の血漿蛋白結合率(fuP=fuB)は 90%超であり、総血清中濃度がおよそ100μg/mL以上では結合が飽和する。

〇消化管吸収率(Fa)
バルプロ酸の吸収率は90~100%

〇代謝
バルプロ酸の大半は肝臓で代謝され、ヒトでは主に、グルクロン酸抱合、b-酸化、ω、 ω1 及び ω2-酸化を受ける。

デパケン®錠100mg/200mg インタビューフォーム

出典: www.info.pmda.go.jp

☑️個々の薬物のPKパラメータの特徴づけを⾏う

PKパラメーターの特徴づけは以下のようになります。

Ae<0.3 肝代謝型
EH<0.3 消失能依存型
Vd=Vp 分布容積は小
fuB<0.2 蛋白結合依存型
B/P=0.64(IF外より)
F=1.0

薬物の体内動態パラメータ値と特徴づけ 病態変化に伴う⾎中⾮結合形濃度の予測への応⽤

出典: www.maruzen-publishing.co.jp

☑️各PKパラメータの変動要因を明確にする(Table1111~2332)

変動要因を明確にします。Table1111の薬物に該当します。

PKパラメータの変動要因とそれらの病態の変化に伴う動き Table1111

出典: www.maruzen-publishing.co.jp

☑️非結合型バルプロ酸のクリアランスは蛋白結合率の影響を受けない

全身クリアランスは以下のようになります。
CLtot=fuB・CLintH
CLtotf=CLintH

経口クリアランスは以下のようになります。
CLpo=fuB・CLintH/Fa
CLpof=CLintH/Fa

TDMで総濃度が測定されている場合は、測定値のみから判断することは避けるべき薬物です。

非結合型バルプロ酸の経口クリアランスは、蛋白結合率が変動しても変わりません。

クリアランスが変わらないと言うことはAUCも変わらないと言うことです。これを別の面から見てみましょう。

☑️非結合型バルプロ酸の分布容積は蛋白結合率の影響を受ける

分布容積は以下のようになります。
Vd=Vp
Vdf=Vp/fuB

非結合分率の変動は総濃度に基づく分布容積には影響しません。しかし非結合型濃度に基づく分布容積には影響を与えます。

非結合分率が上昇した場合、非結合型バルプロ酸の血中濃度はどうなるでしょう。分布容積Vdfが小さくなります。そのためCmaxは上昇、T1/2は短縮されます。この影響は相互に打ち消しあい、結果的にAUCは変動しません。

T1/2=0.693(Vp/fuB)/CLintH

臨床薬物動態学(改訂第5版): 臨床薬理学・薬物療法の基礎として

出典:

☑️まとめ

病態や他の薬物による蛋白結合置換で非結合分率が上昇しても、バルプロ酸の作用強度は変わらないことを見て来ました。

薬効を発揮する遊離型バルプロ酸のAUCが変動しないからです。

総バルプロ酸の経口クリアランスは増大します。そのため総バルプロ酸のAUC、ひいては血中濃度の低下が予想されます。しかし、総濃度だけで判断しないことが重要です。

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最終更新日2021年9月7日

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