パキシル®️とメジコン®️の併用はセロトニン症候群のリスクになりますか?

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パキシル®️とメジコン®️の併用はセロトニン症候群のリスクになりますか?

☑️はじめに

先日、このような投稿をSNSで行い、反響を頂きました。

ありふれた薬同士の併用、本当にそんなにリスクがあるのでしょうか?

📝内科メジコン
👴ばあさんが咳でな。ほい、お薬手帳
📖心療内科パキシル✨
👧💭💀きゃあ、セロトニン症候群のリスクあるわ

☎️え、パキシル飲んでます?アスベリンでお願いします

👴何かあった?
👧解決しました

👩👍メジコンはMAO阻害薬だけでなくSSRIも避けた方が良いね

出典: twitter.com

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☑️発端は「総合診療」の記事

今回の記事の発端になったのは、雑誌「総合診療」の特集記事です。

倉原優先生がパキシルとメジコンの併用を例に、MAO阻害薬だけでなくSSRIとの併用にも注意が必要と書かれていました。

薬剤師の視点から、このリスクについて考察したいと思います。

総合診療2020年10月号 特集 ポリファーマシーを回避する! エビデンスに基づく非薬物療法のススメ

出典:

☑️セロトニン症候群とは 初期症状等

セロトニン症候群とは、中枢神経系のセロトニン作動活性が亢進する事によって生じる、生命を脅かす可能性のある病態と定義されます。

通常薬剤の使用に関連して生じます。SSRIを始めとする抗うつ剤が主な原因薬物です。症状としては、①精神状態の変化②高体温③自律神経および神経筋の活動亢進が特徴です。

MSDマニュアル セロトニン症候群

出典: www.msdmanuals.com

☑️メジコン®️と抗うつ剤でセロトニン症候群を起こす場合がある

今回の症例で取り上げたように、メジコンⓇ(デキストロメトルファン)と抗うつ剤の併用で、セロトニン症候群を起こすケースもあるようです

重篤副作用疾患別対応マニュアル
セロトニン症候群
平成22年3月 厚生労働省

「頻度は少ないが、ペチジン、ペンタゾシン、トラマドールなどの鎮痛薬や鎮咳剤であるデキストロメトルファンなどと抗うつ薬の併用時にセロトニン症候群が発現することもある 15)。」

15)西嶋康一:セロトニン症候群.臨床麻酔 24: 695-700 (2000)

出典: www.pmda.go.jp

☑️メジコン®️(デキストロメトルファン)の添付文書

併用禁忌について

メジコン®添付文書ではMAO阻害薬を禁忌としています。

メジコン®は中枢のセロトニン濃度を上昇させると添付文書に記載されています。

メジコン®をMAO阻害薬と併用するとセロトニン代謝が阻害されるため、中枢のセロトニン濃度が更に高くなることが懸念されます。

併用注意について

また、併用注意として①CYP2D6阻害薬(キニジン、パロキセチン等)、②SSRI(パロキセチン等)が記載されています。

代謝阻害について

併用注意①の理由として、メジコン®の代謝が阻害されるためとされます。

厚生労働省の「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」を参照すると、メジコン®は「相互作用を受けやすい基質」に分類され、またパキシル®(パロキセチン)は「強い阻害剤」に分類されます。

従って、併用によりメジコン®️のAUCは5倍以上に上昇すると予想されます。

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」

出典: www.pmda.go.jp

また大野らの提唱するPISCSを参照すると、デキストロメトルファンのCYP2D6寄与率CR0.9、パロキセチンのCYP2D6阻害率IR0.9です。

併用によりデキストロメトルファンAUC4~7倍になると予想されます。

薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015

出典: medical-tribune.co.jp

SSRIによりCYP2D6阻害強度が異なる

パロキセチン(パキシル®️)以外のSSRIはどうでしょう?

セルトラリン(ジェイゾロフト®️)はCYP2D6阻害作用は中程度でAUC2~5倍、またフルボキサシン(ルボックス®️、デプロメール®️)は軽度とされます。

もしかすると、リスクは一様ではないかも知れません。

SSRI(パロキセチン等)によるセロトニン作用増強について

併用注意②の理由として、セロトニン作用を増強する可能性があるとの記載があります。

2016年の改定から追記された、比較的新しい注意喚起で、まだ周知されていないかも知れません。

☑️どの程度のAUC上昇がリスクになるか

どの程度のAUC上昇でセロトニン症候群のリスクになるのでしょうか。

メジコン®の代謝阻害に起因するものではありませんが、過量投与によりセロトニン症候群を惹起した症例報告があります。

参考までに紹介します。論文ではデキストロメトルファン(メジコン®)180mg/日を数日服用で、セロトニン症候群を起こしたとされます。これは常用量の4倍です。

ただし、この症例ではメジコン®の他に向精神薬のリスペリドン、アミトリプチン、レボメプロマジンを服用しています。

セロトニン濃度に関する相乗作用の可能性を考慮する必要があるかも知れません。

Serotonin syndrome caused by an overdose of dextromethorphan, Medicon] PMID: 20055201

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️まとめ

以上の事柄を纏めると、パキシル®️とメジコン®️の併用は次のように要約されます。

①CYP2D6阻害作用によりメジコン®️AUCが5倍以上に上昇

②メジコン®️による中枢セロトニン濃度上昇、パキシル®️によるセロトニン再取り込み阻害作用でセロトニン作動活性亢進。

従って両剤の併用は、①②の相乗作用によりセロトニン症候群のリスクになると考えます。

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最終更新日2020年11月11日

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