PISCSで臨床報告のない相互作用を定量的に評価。簡単な式で必要なパラメーターはAUCの他は2つだけ。


ISCSで臨床報告のない相互作用を定量的に評価。簡単な式で必要なパラメーターはAUCの他は2つだけ。

はじめに

未知の組み合わせの薬物相互作用も、PISCS理論で定量的に評価できる

添付文書に併用注意の相互作用は沢山書かれています。でも、一体どれくらい注意したら良いのか、困る事はありませんか?

そこで紹介したいのが、PISCS理論です。薬剤固有のパラメーターを利用して、臨床報告のない組み合わせの相互作用も定量的に評価する理論です。

東大病院薬剤部の大野先生が発案された理論で、成書も出版されています。厚労省の相互作用の評価にも採用されています。

相互作用を表記する用語を概観した後、PISCS理論を紹介しようと思います。

薬物相互作用を表記する用語

基質薬、阻害薬って何?

酵素で代謝される薬のことを基質薬、酵素を邪魔する薬のことを阻害薬と呼びます。

基質薬の肝臓(及び小腸)の酵素での代謝を、阻害薬が邪魔することで、相互作用が起こります。

基質薬の体内濃度が高くなることで、副作用が起こりやすくなります。

相互作用は、酵素のサブタイプごとに決まる

CYP(シップ)分子種で表される酵素ごとに、相互作用が規定されます。

AUCって何?

併用で薬の効果がどれくらい高くなるかは、一般にAUCと言うパラメーターを指標にされることが多いです。

AUC(Area Under the blood concentration-time Curve)は、日本語にすれば、血中濃度-時間 曲線下面積です。血中濃度の推移を時間で積分して求めた数値(面積)です。

そのため、AUCは、最高血中濃度(Cmax)と半減期(t1/2)の双方の要素を含む、総合的な指標になります。一般的にAUCが大きいことは薬をたくさん利用できることを意味し、具体的には高い効果が得られる、あるいは副作用が強く出るといったことを意味します。

PISCS理論について

AUC、CR、IRの3つのパラメーターで予測

PISCSは、臨床報告のない組み合わせでもAUCの変化を予測する理論です。

阻害薬の併用による経口投与時の基質薬のAUCの変化率は次の式で表されます。

阻害薬の併用時のAUC/AUC=1/(1-CRxIR)

CR、IRって何?

CRは、Conribution Ratioの略です。CYP分子種の基質薬のクリアランスへの寄与率を表します。

IRは、Inhibition Ratioの略です。阻害薬の阻害率を表します。

予測出来るのは、肝臓(及び小腸)での代謝阻害で起こる相互作用

ただし、この式が適用できるのは、基質薬の未変化体としての尿中排泄の寄与が大きくない場合、すなわち肝臓(または小腸)での代謝がメインである薬に限られることに注意して下さい。

PISCS理論の実例

「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用」掲載のデータで計算

実例をいくつか挙げます。CRとIRは、「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015」から数値を得ました。

CYP2D6が関与する相互作用

・メトプロロール(CR:0.8)をパロキセチン(IR:0.9)と併用した場合、メトプロロールのAUCは3.6倍。

・デキストロメトルファン(CR:0.9)をパロキセチン(IR:0.9)と併用した場合、デキストロメトルファンのAUCは5.3倍。

CYP3A4が関与する相互作用

・カルバマゼピン(CR:0.8)とグレープフルーツジュース(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍。

・カルバマゼピン(CR:0.8)とクラリスロマイシン(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍。

・カルバマゼピン(CR:0.8)とエリスロマイシン(IR:0.7)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.3倍。

まとめ

このようにPISCS理論を利用する事で、未知の相互作用によるAUCの理論値を求める事が出来ます。

ここで得たAUCの増加率は、未知の組み合わせによる相互作用を経た場合も安全な血中濃度域に留まるかの、有力な判断材料になると考えます。

実測値を文献で調べる事が一番ですが、新薬等の理由で情報が少ない場合には、非常に有効な手法と考えます。

これからの薬剤師は、身につけたい理論です。大野先生の書籍を手に入れて、精読することをお勧めします。

推薦図書

「これからの薬物相互作用マネジメント―臨床を変えるPISCSの基本と実践」

PISCSの運用方法が書かれています。薬局に一冊備えておきたい本です。

「医療現場のための薬物相互作用リテラシー」

薬物相互作用の基礎、ピットフォール、定量的にマネジメントする手法について解説されています。

薬物相互作用を勉強したい方にお勧めです。

特にPISCSの理論的背景については類書に無い内容ですので、更に詳しく学びたい方は、ぜひ本書を手に取って下さい。

薬物相互作用のマネジメントは、薬剤師の職能そのものと思いますので、ぜひPISCSを技の1つに加えましょう。

定量的な予測が加われれば、あなたの疑義照会や処方提案も受け入れられやすくなると思います。

参考文献

「これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践」大野能之 じほう

「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015」

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