アリピプラゾールとパロキセチンを併用している方にクラリスロマイシンは安全に使用出来ますか?



アリピプラゾールとパロキセチンを併用している方にクラリスロマイシンは安全に使用出来ますか?

☑️はじめに

アリピプラゾールとパロキセチンを併用している患者さん。

今回、市中肺炎とのことでクラリスロマイシン 7日分が処方されました。アリピプラゾールの添付文書では併用注意です。

クラリスロマイシンは安全に併用出来るのでしょうか?

わたしたちと一緒に見て行きましょう。

プロローグ

📝クラリスロマイシン 7日分
🧔肺炎になってしまって。お薬手帳ですか?

📖アリピプラゾール、パロキセチン✨

👩‍⚕️💭アリピプラゾールは3A4と2D6で代謝されるけど、パロキセチンの影響で2D6はPM様になってる。3A4の相互作用が非常に強く出る可能性があるわ。

👨‍⚕️どうする?

👩‍⚕️💭
①👩‍⚕️アジスロマイシンへの変更を提案します。
②👩‍⚕️レボフロキサシンへの変更を提案します。
③👩‍⚕️アモキシシリンへの変更を提案します。

出典: twitter.com

☑️クラリスロマイシンはCYP3A4を用量依存的に阻害する

クラリスロマイシンのCYP3A4の相互作用はMBIかつ用量依存性があると考えられます。

詳しくは関連記事をご覧下さい。

インチュニブはクラリスと安全に併用出来るでしょうか?PISCSで予測しました。

承認用量が海外より少ない日本であれば、通常であれば注意して使用できるレベルと思うのですが、今回は特別なケースと考えます。

次の症例報告をご覧ください。

☑️併用によりCYP2D6の代謝能が低い患者が横紋筋融解症を起こした

アリピプラゾール18mg/day服用中のCYP2D6*10/CYP2D6*10の方の国内症例。

クラリスロマイシンを2週間投与した所、アリピプラゾールの血中濃度が上昇し、横紋筋融解症を起こした症例が報告されています。

アリピプラゾールはCYP2D6とCYP3A4と複数の経路で代謝されます。

2D6の活性がもともと低いところに、3A4の活性を阻害する薬剤の併用があり、血中濃度が上昇、横紋筋融解症を来たしたと思われます。

Rhabdomyolysis After the Administration of Clarithromycin in a Japanese Schizophrenic Patient Receiving Aripiprazole: A Possible Impact of CYP2D6 Genotype

出典: www.jstage.jst.go.jp

☑️論文要旨の翻訳と原文

DeepLによる翻訳文を掲載します。

患者は67歳の男性でした。

患者が統合失調症の診断を受けた後、様々な抗精神病薬が処方されたが、症状は改善されなかった。しかし、18mg /日のアリピプラゾール(APZ)が非常に有効であることが判明し、患者は外来で治療を継続することができた。

発熱および咳のためにクラリスロマイシンを処方してから2週間後に、彼は睡眠時無呼吸症候群および運動緩慢および唾液分泌の低下のために精神科病棟に再入院した。

生化学的分析により、上昇した血清クレアチンホスホキナーゼ(26060U / I)およびクレアチニン(2.2mg / dL)が明らかになった。入院時には、APZおよびその代謝産物の血中濃度が高かった。したがって、APZは中止されたが、濃度は8日目まで上昇したままであった。持続的な腎機能障害を治療するために血液透析を4日目に開始した。

患者のCYP2D6遺伝子型は、CYP2D6 * 10 / CYP2D6 * 10であった。上昇したAPZレベルは、CYP2D6 * 10 / CYP2D6 * 10遺伝子型のより低い固有のCYP2D6酵素活性と組み合わされた、CYP3A4に対するクラリスロマイシンの阻害作用から生じた可能性がある。

出典:

Abstract
The patient was a 67-year-old man. After the patient received a diagnosis of schizophrenia, various antipsychotics were prescribed but did not improve symptoms. However, 18 mg/day aripiprazole (APZ) was found to be highly effective and enabled the patient to continue treatment on an outpatient basis. Two weeks after prescribing clarithromycin for fever and cough, he was readmitted to our psychiatric ward because of anuresis and deterioration of bradykinesia and salivation. Biochemical analysis revealed elevated serum creatine phosphokinase (26060 U/I) and creatinine (2.2 mg/dL). On admission, the patient had a high blood concentration of APZ and its metabolite(s). APZ was therefore discontinued, but the concentration remained elevated until day 8. Hemodialysis was started on day 4 to treat persistent renal dysfunction. The patient’s CYP2D6 genotype was CYP2D6*10/CYP2D6*10. The elevated APZ levels may have resulted from the inhibitory action of clarithromycin on CYP3A4 combined with the lower inherent CYP2D6 enzymatic activity of the CYP2D6*10/CYP2D6*10 genotype.

出典: www.jstage.jst.go.jp

☑️遺伝子変異を阻害剤の併用と読み替える

「これからの薬物相互作用マネジメント」には次のように書かれています。

「薬物動態には個人差が大きく、特に代謝酵素に遺伝子変異をもつ人の薬物相互作用はよく考える必要があります。(中略)CYP2D6など遺伝子変異の多いCYPの代謝寄与の大きい薬物では、CYP3A4の阻害薬との相互作用の個人差にも注意が必要なケースがあるということです。」

出典:

CYP2D6*10/CYP2D6*10の遺伝子変異は日本人の14%に存在し、EMの活性の1/5程度の活性しかありません。

翻って今回の症例は、元々の遺伝子型は不明ですが、強いCYP2D6阻害薬であるパロキセチンを服用しています。

パロキセチンの阻害率IR-CYP2D6は20mgで0.99、10mgで0.89と報告されています。

つまり、パロキセチンの服用によりCYP2D6の活性はCYP2D6*10/CYP2D6*10からPM(欠損)程度まで低下します。

☑併用でアリピプラゾールの治療域を逸脱する可能性がある

治療域について

アリピプラゾールの治療域濃度は150~500ng/mLです。
一方、laboratory alert lebelは1,000ng/mLとされます。

AGNP Consensus Guidelines for Therapeutic Drug Monitoring in Psychiatry: Update 2011, Pharmacopsychiatry, 44: 195-235, 2011

出典: agnp.de

IFでは中毒域のデータなしとしています。

代謝経路について

アリピプラゾールはCYP3A4/CYP2D6で主代謝物デヒドロアリピプラゾール(OPC-14857)に代謝されます。

これは未変化体と同程度の薬理活性を有しています。定状状態で未変化体AUCに対するOPC-14857のAUCの割合は27%でした。

OPC-14857はCYP3A4で代謝され、尿中に排泄されます。

エビリファイ錠 添付文書/インタビューフォーム

出典: www.info.pmda.go.jp

CYP3A4/CYP2D6の代謝経路が並列のみではないため、AUC変化率の理論的予測は大変難しくなることが予測されます。

阻害剤の使用とAUCの変化

参考にIFに記載されている阻害薬併用時のAUC変化を引用します。

・パロキセチン20mgとアリピプラゾール3mgの併用でCmax39%、AUC140%増加。

・イトラコナゾール100mgとアリピプラゾール3mgの併用でCmax19%、AUC48%増加。

・ケトコナゾール200mgとアリピプラゾール15mgの併用でCmax37%、AUC63%増加。

アリピプラゾールの用量にも依りますが、阻害剤の併用により、治療域を逸脱する可能性がありそうです。

☑️まとめ

アリピプラゾールはCYP3A4、CYP2D6の2種類の薬物代謝酵素で並列かつ直列に代謝されます。

パロキセチンが併用されるケースもあると思いますが、パロキセチンは強いCYP2D6の阻害剤で、ほぼ欠損に近く失活しています。

この場合、CYP3A4の強い阻害薬であるクラリスロマイシンの併用には一層の注意が必要と思われます。

冒頭の症例でも、CYP3A4の相互作用のないマクロライド等への変更が好ましいのではないでしょうか。

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最終更新日2021年4月14日

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