メルカゾール®を用いたバセドウ病の標準的なマネジメントについて

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メルカゾール®を用いたバセドウ病の標準的なマネジメントについて

☑️はじめに

バセドウ病は日常に遭遇する事の多い疾患です。

甲状腺機能亢進症の約86%を占め、人口の1.85%の頻度で見られます。

しかしながら抗甲状腺薬のマネジメントは一様でなく、日常診療を見ているだけでは標準が分かりにくい印象を持っています。

そこで、開始用量の決め方や服薬期間の他、副作用の頻度や併用する薬剤など、バセドウ病の治療についてまとめました。

さくら先輩、2019年にガイドラインが改訂されているんですね。

そのとおり。知識をアップデートしておこうね。

プロローグ

🆕メルカゾール15mg/日
 インデラル30mg/日
 ヨウ化カリウム50mg/日
👩バセドウ病と言われて…動悸がひどいです。

‍👨‍⚕️💭メルカゾールはこの量でいいのかな?ヨウ化カリウムは何?

👩‍🎓バセドウ病治療GL2019より適切な量です。

ヨウ化カリウムはFT4正常化までの期間を有意に短縮し、FT4≧5ng/dLの重症例で併用されます。

出典: twitter.com

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☑️バセドウ病の診断について

まずバセドウ病の診断について簡単に触れておきます。

診療所見は薬局でも確認しやすい項目ですので、カウンターで確認できると思います。

検査所見の方は、薬局では検査確認できない場合の方が多いと思われますので、病院ではこのような検査をしているのだ、と言う知識をまずは得て下さい。

☑️日本甲状腺学会の甲状腺疾患診断ガイドライン

ガイドラインには、次のように記載されています。

・診療所見

①頻脈・体重減少・手指振戦・発汗増加等甲状腺中毒所見

②びまん性甲状腺肥大

③眼球突出または特有の眼症状

‍・検査所見

①FT4(基準値1.0~1.7ng/dL)、FT3(基準値2.1~4.1pg/mL)高値

②TSH低値(0.1μU/mL以下)

③抗TSH受容体抗体(TRAb : 基準値<2.0U/L)陽性、または甲状腺刺激抗体(TSAb)陽性

④放射性ヨード(またはテクネチウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性

出典:

診療所見のひとつ以上に加えて、検査所見の4項目を全て満たす場合にバセドウ病と確定診断されます。

☑️メルカゾール®の開始用量について

抗甲状腺薬メルカゾール®の投与量は、日常診療ではバラエティに富んでいるように見えます。

標準的な考えはどのようになっているのか確認しておきましょう。

バセドウ病診療に関する最新の知見

出典: www.yamaguchi-endocrine.org

旧ガイドライン

‍2019年のガイドライン改定まで、メルカゾール®の初期用量はFT4値で決定されていました。

・FT4≧7ng/dLでは30mg/日より開始。

・FT4≦5ng/dLでは15mg/日より開始。

・FT4 5-7ng/dLでは15mg/日でよいが症状が重度であれば30mg/日を考慮。

‍FT4<7ng/dL群では15mg/日と30mg/日でFT4の改善速度は同等なので、可能であれば15mg/日が好ましい。

メルカゾールの副作用には用量依存性がある。

出典:

新ガイドライン

新ガイドラインではFT4値によらずメルカゾールの投与量は一定で、重症例ではヨウ化カリウムを併用することを推奨しています。

軽症および中等症(FT4<5ng/dL )、重症(FT4≧5ng/dL )に関わらず、メルカゾール®の初期投与量は15mgまでとする。

その上で重症例には無機ヨウ素( ヨウ化カリウム50mg)の併用を推奨する。

出典:

今回は重症例に該当すると思われます。

☑️無顆粒球症について

抗甲状腺薬による無顆粒球症(好中球<500/μL)の発生頻度は0.1-0.5%です。

また軽症の無顆粒球症はバセドウ病自体でもあり得ます。

無顆粒球症はメルカゾール®投与開始後90日以内での発症が多いため、原則2ヵ月は14日毎に受診し、白血球分画を含めた血液像の確認をします。

好中球<1000/μLでメルカゾール®の投与を中止します。

ホスピタリストのための内科診療フローチャート

出典:

☑️抗甲状腺薬の服薬期間について


メルカゾール®はどのくらいの期間服用するのでしょうか。

4-12週でFT4は正常化します。数週~数か月でTSHも上昇。69.3%が6か月以内、73.8%が12か月以内に上昇します。

メルカゾール®はTSH値が下がらないように徐々に減量しながら12-18ヵ月継続し、投与終了とします。

一般的には最小量(メルカゾール®錠5mgを隔日投与)で半年、甲状腺機能が安定していれば休止を考慮します。

最新の知見ではTRAbで予後の予測をすることは難しいとされます。

臨床研究の結果から、12ヵ月未満の投与では再発リスクが高いことが分かっています。

12ヵ月以上の投与では再発リスクは変わらないものの、それでも30-40%の再発リスクがあります。

投与終了6か月は2か月毎に、その後は半年、1年毎にフォローします。基本的に生涯フォローが必要です。

ホスピタリストのための内科診療フローチャート

出典:

☑️併用薬について

動悸・振戦などの甲状腺中毒症状に対しては、即効性のあるβ遮断薬を使用します。

またヨウ化カリウム50mg/日をメルカゾール®と併用することで、FT4正常化までの期間を有意に短縮します。

症状が強く、早期にFT4を低下させたい場合はヨウ化カリウムを併用します。

ヨウ化カリウムは4-16週の服用で効果がなくなることが知られ、これはEscape現象と呼ばれています。

よってメルカゾール®の効果が現れるまでの2週間程度、短期のみ使用します。

ホスピタリストのための内科診療フローチャート

出典:

☑️まとめ

メルカゾール®の標準的な使用について概観しました。

・FT4値によらず、初期用量は15mg/日まで。

・TSH値を見ながら減量され、12-18か月で投与終了となる。
・振戦や動悸に対してβ遮断薬が用いられる。

・重症例は即効性のあるヨウ化カリウムが短期併用される。

出典:

日常遭遇する頻度は多いものの標準形が分かりにくい抗甲状腺薬のマネジメントです。今回の記事が参考になればと願います。

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最終更新日2021年11月19日

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