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セント・ジョーンズ・ワートは医薬品との相互作用に注意が必要ですか
☑️はじめに
セント・ジョーンズ・ワートは比較的ポピュラーなハーブです。
薬情で「本剤の服薬中は飲用を避けること」と書かれる場合があり、相互作用の懸念されるサプリメントと覚えている方も多いと思います。
いったい、どの程度の強度の相互作用があるのでしょうか。特別に注意が必要な薬剤はあるのでしょうか。
記事は栄養研究所のデータベースの他、臨床薬物動態学の成書、及びセント・ジョーンズ・ワートに関する2002年の総説を基に記述します。
St John’s wort (Hypericum perforatum): drug interactions and clinical outcomes
Br J Clin Pharmacol. 2002 Oct; 54(4): 349–356.
さくら先輩、厚労省から注意喚起された薬剤名は限られていますけど。
CYP3A4に関してはフェニトイン並みに併用薬のAUCを低下させる可能性があるよ。CYP3A4の寄与率が高く治療域が狭い薬等は注意が必要。
プロローグ
Rp.🆕シクロスポリン
👱♀セントジョーンズワートのハーブティーを毎日飲んでます。私の国ではポピュラーよ👩🎓SJWに含まれるhyperforinは酵素誘導と酵素阻害作用を有します。
👩🎓単回投与では併用薬のAUC増加、反復投与ではAUC低下を起こす事が予想されます。
👩⚕️💭なるほど
👩⚕️シクロスポリンの効果を弱める場合があるので、セントジョーンズワートは控えてくださいね。
👱♀Echt!?(ほんと?)出典: twitter.com
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☑️セント・ジョーンズ・ワートについて
セント・ジョーンズ・ワート(St.Jhon’wort、SJW)は和名をセイヨウオトギリソウと言います。
ヨーロッパ原産、アジア・北アフリカに分布する多年草で、30~90 cmの高さになります。中国語名は「貫葉連翹」。
俗に、うつ状態を改善するハーブと言われています。軽度のうつ状態に対しては、有効性を示唆する報告も一部あります。
しかし、様々な医薬品と相互作用があるため、使用には注意が必要と考えられます。
健康食品の素材情報データベース
☑️抑うつ症状への効果
ドイツのコミッションE (薬用植物評価委員会) は、SJWのうつ状態に対する使用を承認しています。
SJW抽出物は、抑うつに対してはおそらく有効と考えられます。
2007年7月までを対象に、7つのデータベースで検索できた二重盲検無作為化プラセボ対照試験29報について検討したシステマティックレビューにおいて、セイヨウオトギリソウの摂取は抑うつ症状の改善に寄与する可能性が認められました。
St John’s wort for major depression
Cochrane Database Syst Rev. 2008 Oct 8;2008(4)
PMID: 18843608 PMCID: PMC7032678
☑️SJW抽出物の薬理作用
9つのグループの化合物が同定され、その中のフラボノール配糖体にはMAO‐A阻害作用のあることが確認されています。
そしてSWJ抽出物は、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの取り込みを阻害することが示されています。
ただし、SJWの治療効果の原因となる正確なメカニズムは不明なままです。
St John’s wort (Hypericum perforatum): drug interactions and clinical outcomes
Br J Clin Pharmacol. 2002 Oct; 54(4): 349–356.
☑️SWJ抽出物と薬剤の相互作用
セント・ジョーンズ・ワートは薬物代謝酵素であるCYPを誘導するため、 多くの薬剤との相互作用が知られています。
例えば、SJW含有成分のhyperoforinはPXRの活性化によりCYP3A4等を誘導し、同時に阻害作用を有します。
SJW抽出物のボリコナゾールの血漿中動態に及ぼす二相性変動が報告されています。
Opposite effects of short-term and long-term St John’s wort intake on voriconazole pharmacokinetics
J.Clin pharmacol Ther 78: 25(2005)
またSJW抽出物には、P糖タンパク誘導作用があることも知られています。ジゴキシンのAUCを低下させるメカニズムと考えられます。
☑️医薬品等安全性情報での注意喚起
日本では2000年5月、厚生省がセイヨウオトギリソウ(SJW)と医薬品との相互作用について、医薬品等安全性情報で注意喚起を行っています。
薬物代謝酵素、特にCYP3A4及びCYP1A2を強く誘導すること、インジナビル、シクロスポリン、ジゴキシン、テオフィリン、ワルファリン、経口避妊薬等の効果を減弱した報告があることが周知されました。
また、健康被害の発生は現在まで報告されていないものの、併用により効果が減少するおそれの高い医薬品28品目がリストアップされました。
そして、これらの薬剤とSJWを併用注意とするよう、添付文書の改訂が指示されています。
更にそれ以外の医薬品についても、薬物代謝酵素誘導により影響を受ける可能性があることから、医薬品を服用する際にはSJW含有食品を摂取しないことが望ましいとしました。
セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)と医薬品の相互作用について
出典: www.mhlw.go.jp
☑️CR-IR法ではSJWのICはフェニトイン並み
大野らの提唱するCR-IR法は、併用による基質薬物のAUC変化率を予測する手法です。
特筆すべきは、相互作用の報告のないものにも応用が可能であることです。
誘導薬によるクリアランス増加率をICと言うパラメータで表現します。
CR-IR法のポスターを参照すると、CYP3A4で代謝される基質薬物において、SJW併用によるクリアランス増加率は、フェニトイン併用時のそれに相当します。
この結果から、SJWと併用される薬剤でCYP3A4の代謝寄与率が高く、かつ治療域が狭い薬剤は厚労省のリストに無くてもとくに注意が必要と考えられます。
薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015
☑️まとめ
セント・ジョーンズ・ワートによる薬物相互作用を見て来ました。
反復摂取により酵素誘導することが解明されており、特にCYP3A4とCYP1A2を強く誘導します。厚生労働省は2000年にSWJと医薬品の相互作用について注意喚起しています。
該当する医薬品等安全性情報を見ると、作用減弱の報告もしくはその可能性がある薬剤の添付文書を併用注意と改訂している他、それ以外の医薬品でも、服用する際はSJW摂取しないことが望ましいとしています。
CYP3A4誘導作用を例に取ると、フェニトインと同程度のクリアランス増加が予測されます。
該当する分子種による代謝寄与率が高く、かつ治療域が狭い薬剤は注意が必要です。クリアランス増加によってAUCが低下し、期待する治療効果が得られない可能性があります。
このような薬剤の新規開始時には、セント・ジョーンズ・ワートの常飲の有無をあらためて確認することが望ましいと考えられます。
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最終更新日2022年5月14日
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