フロリードゲルとワーファリンが併用禁忌なのはCYP2C9相互作用のため。

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フロリードゲルとワーファリンが併用禁忌なのはCYP2C9相互作用のため。

☑️はじめに

 

循環器内科でワーファリン®️錠を服用中の患者さんに、耳鼻咽喉科からフロリードゲル®️経口用2%の処方箋が来ました。

 

👩‍⚕️先輩が耳鼻咽喉科に電話して、ファンギゾン®️シロップに変更になったけど、どうして?

👩‍⚕️「理由を調べておいてね」って言われたけど、薬歴が溜まって調べる時間が取れない…。

👩‍⚕️誰かタスケテ…。

出典: twitter.com

そんなあなたに今回の記事が役に立ちます。記事は以下の書籍を参考に執筆しました。

「医療現場のための薬物相互作用リテラシー」

出典: hb.afl.rakuten.co.jp

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☑️ワルファリンとミコナゾールは併用禁忌

 

フロリードゲル®️経口用2%の添付文書には、ワルファリンが併用禁忌であることが記載されています。

 

併用禁忌
(併用しないこと)
薬剤名等
ワルファリンカリウム
 ワーファリン
臨床症状・措置方法
ワルファリンの作用が増強し、重篤な出血あるいは著しいINR上昇があらわれることがある。また、併用中止後も、ワルファリンの作用が遷延し重篤な出血を来したとの報告もある。患者がワルファリンの治療を必要とする場合は、ワルファリンの治療を優先し、本剤を投与しないこと。
機序・危険因子
ミコナゾールがワルファリンの代謝酵素であるチトクロームP-450を阻害することによると考えられる。

出典: www.info.pmda.go.jp

この相互作用について、詳しく見て行きます。

☑️ワルファリンについて

ワルファリンは治療域が狭く、薬物相互作用も多い

 

ワルファリンは、心房細動などで血栓が出来やすい方が血栓予防で飲む薬です。治療域が狭く、量の厳密なコントロールが必要です。

 

ワルファリンの用量は、INRと言う検査値を指標に調節します。目標値は疾患毎に異なりますが、例えば心房細動のガイドラインでは70歳未満ではINRを2.0~3.0に、70歳以上では1.6~2.6にコントロールすることが推奨されています。

ワルファリンは他の薬との相互作用が多く、製薬会社からは500ページに及ぶ適正利用の為の書籍が発刊されています。

膨大な情報をいかに評価して、重要な相互作用を見逃さずマネジメントするかが重要です。

ワルファリンはCYP2C9の相互作用が臨床的に重要

ワーファリンは光学異性体であるS-ワルファリンとR-ワルファリンの等量混合物です。S-ワルファリンはR-ワルファリンに比べ、5倍の抗凝固作用を有しています。

そのため、薬効の本体は殆どS-ワルファリンと考えられています。S-ワルファリンはほぼ薬物代謝酵素CYP2C9で代謝されます。

一方R-ワルファリンはCYP3A4、CYP1A2など複数の酵素で代謝されます。

 
そのため、主な薬効を担うS-ワルファリンの代謝酵素、CYP2C9に大きな影響を及ぼす薬は、相互作用を考える際、重要になります。
 

☑️ミコナゾールについて

ミコナゾールゲルは強いCYP2C9阻害作用がある

ミコナゾールはアゾール系の抗真菌薬で、食道カンジタの治療などに用いられます。アゾール系抗真菌薬の中でも、ミコナゾールは特にCYP2C9の相互作用が強い薬剤です。

ミコナゾールゲルは口腔~食道内での効果を期待する薬剤であり、単回投与時の血漿中濃度は定量限界(100ng/mL)未満とインタビューフォームに記載されています。

しかし、定量限界が充分に低いと言えず、また反復投与時の肝臓中濃度がさらに高くなっている可能性があります。

 
ミコナゾールはCYP2C9で代謝される薬剤と併用した場合、5倍以上の変動を与える事が報告されています。これは併用禁忌レベルに該当します。
 

「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015」 CYP2C9の阻害薬 5倍以上の血中濃度の変動が基本的に報告 ミコナゾール

出典: medical-tribune.co.jp

☑️ワーファリンとミコナゾールは添付文書で併用禁忌とされている

併用による出血や著しいINRの延長が多数報告されています。前述のCYP2C9を介する相互作用と考えられます。

非常に重篤な事例が多く、ミコナゾール投与後に相互作用を生じた事例や、相互作用発現後にミコナゾールを中止しても数ヶ月に渡り、相互作用の影響が遷延している報告が複数あります。

「ミコナゾール・ゲルとワルファリンとの重篤な相互作用」
病院薬学
2000年26巻2号p.207-211

出典: www.jstage.jst.go.jp

☑️まとめ

ワーファリンとフロリードゲルは併用禁忌指定されています。CYP2C9を介する相互作用でワーファリンの効果が増強され、多数の症例報告がなされています。

併用は原則避けるべきであり、やむを得ず併用せざるを得ない場合に限って、頻回にINRを測定するなど、非常に慎重に行われるべきです。

代替として、ファンギゾン®️シロップが考えられます。薬効成分のアムホテリシンBは相互作用が少なく、また経口投与した場合、消化管からほとんど吸収されないので、安全に使用出来ると考えられます。

最終更新日:2020年11月3日

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☑️参考文献

「医療現場のための薬物相互作用リテラシー」

☑️推薦図書

「医療現場のための薬物相互作用リテラシー」
薬物相互作用の基本、ピットホールが網羅的に紹介されていて、通読すれば一通りの知識が身に付きます。

中でも、PISCSと言う理論を用いて、薬物相互作用を定量的に予測する方法は圧巻です。

PISCSの適用方法だけでなく、理論的背景まで触れられています。これは今まで発刊されたPISCSの記事に類似するものがなく、わたしは夢中になって読みました。

薬物相互作用のマネジメントは、薬剤師の職能そのものと思いますので、ぜひPISCSを技の1つに加えましょう。

定量的な予測が加われれば、疑義照会や処方提案も受け入れられやすくなると思います。

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