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市販点鼻薬の使い過ぎによる薬剤性鼻炎の治療法
☑️はじめに
薬剤性鼻炎の発見は1946年の報告に遡るとされます。
広義には抗うつ薬や降圧剤などによる副作用も含まれますが、頻度が高いのは点鼻血管収縮剤による薬剤性鼻炎です。
点鼻血管収縮剤は短期の使用に留め、発症した場合の治療には薬剤の中止と局所ステロイドの使用が必要であることが既に記されています。
Rhinitis medicamentosa
Proc Staff Meet Mayo Clin. 1946 Sep 18;21(19):367-71.
そんな昔から知られていたんですね
そして今でも周知されていないかも。市販薬を扱う薬剤師の果たす役割は大きいよ
プロローグ
👨⚕️薬剤性鼻炎について教えて下さい。
👩🎓ナファゾリン等の血管収縮剤の点鼻の連用で起きます。
1ヶ月の使用でほぼ確実に起きるとされます。1~2週間に使用を留めるよう、販売時に説明を。
薬剤性鼻炎の治療はステロイド点鼻。1週間以内に80%の人が改善したと報告されています。
👨⚕️成る程。
出典: twitter.com
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記事の続きをどうぞ。
☑️点鼻血管収縮剤は限定的に使用すべき薬剤
鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版では、点鼻血管収縮剤について次のように推奨しています。
通年型アレルギー性鼻炎、花粉症ともに重症や最重症の鼻閉型または鼻閉を主とする充全型に、2週間以内の使用に留める。
しかしながら、市販医薬品の点鼻血管収縮剤を長期に渡って使用する患者は一定数存在し、かえって症状が悪化する症例も少なくないと考えられます。
薬剤性鼻炎は、罹病期間の短い花粉症よりも通年性アレルギーで問題になる場合が多いと考えられます。
鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版(改定第9版)
☑️点鼻血管収縮剤による薬剤性鼻炎とは
鼻粘膜の血管平滑筋に存在するα受容体を刺激することで鼻粘膜が収縮し、鼻腔抵抗が減少することで鼻腔通気度が改善、鼻呼吸がしやすくなります。
鼻閉はその逆で鼻粘膜が腫脹することで起こります。重症の場合口呼吸やいびき、睡眠時無呼吸症候群を起こす場合もあります。
血管収縮剤の1日の点鼻回数が多かったり、長期間に渡り漫然と使用すると、α受容体の反応性が低下して、刺激しても鼻粘膜の収縮が起こらなくなり、かえって鼻閉が悪化する状態になってしまいます。この状態が薬剤性鼻炎です。
点鼻用血管収縮薬による薬剤性鼻閉33例の検討
☑️治療について
原因となる点鼻血管収縮剤を中止します。直ちに中止できない場合は1日の点鼻回数を1~2回以内に制限し、徐々に減らして行きます。
代わりになる薬剤としては、点鼻噴霧ステロイドや内服の血管収縮剤(第二世代抗ヒスタミン・血管収縮剤の配合剤)または抗ロイコトリエン薬などが適しています。
薬剤切替の際に、血管収縮剤を長期使用していた患者は一旦中止しても2~3日のうちに再開してしまう場合も多いです。
局所ステロイドは効果発現まで3~7日かかること、2週間後以降は顕著な鼻閉の改善が期待できることを患者に説明し、血管収縮剤を再度使用することのないよう指導しましょう。
Rhinitis medicamentosa: aspects of pathophysiology and treatment
Allergy. 1997;52(40 Suppl):28-34. doi: 10.1111/j.1398-9995.1997.tb04881.x.
☑️薬剤性鼻炎は防腐剤のベンザルコニウムも一因
防腐剤として点鼻薬中に含まれるベンザルコニウム塩化物が薬剤性鼻炎の成因のひとつになる可能性が報告されています。
ほとんどの市販されている点鼻血管収縮剤に含有される成分です。
Rhinitis medicamentosa: aspects of pathophysiology and treatmentAllergy. 1997;52(40 Suppl):28-34. doi: 10.1111/j.1398-9995.1997.tb04881.x.
☑️薬剤性鼻炎は防腐剤の有無にかかわらず、局所血管収縮剤の過剰使用によって誘発、または悪化する
ただし防腐剤が含有されて無くとも、血管収縮剤の過剰使用により薬剤性鼻炎が起きることが報告されています。
Long-term use of oxy- and xylometazoline nasal sprays induces rebound swelling, tolerance, and nasal hyperreactivity
Rhinology. 1996 Mar;34(1):9-13.
☑️まとめ
点鼻血管収縮剤の過剰使用による薬剤性鼻炎について概観しました。
ガイドラインで重症・最重症例のみ1~2週に限定して使用とされている薬が、市販薬として簡単に手に入る現状です。
通年性アレルギーを持ち様々な理由から通院がままならない患者は、薬剤性鼻炎を起こしている方も少なくないと考えます。
薬剤性鼻炎は使用方法を守ることで予防でき、また発症しても点鼻血管収縮剤の中止と点鼻ステロイドの使用で治療可能です。
薬剤師は初回販売時に長期連用によるリスクを説明し、モニタリングをしながら場合に応じて耳鼻咽喉科への受診勧告をすることが重要と思われます。
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最終更新日2021年1月15日
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