腸管感染症の抗生物質、テオフィリン服用中は何がよいですか?

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腸管感染症の抗生物質、テオフィリン服用中は何がよいですか?

☑️はじめに

さくら先輩、テオフィリン製剤を服用中の方にシプロフロキサシンが処方されました。喫煙習慣ありです。

添付文書上は併用注意だけど、喫煙者はリスクが高いかも。詳しくレクチャーしよう。

プロローグ

📝シプロフロキサシン

👴孫たちとバーベキューしてから下痢で。お薬手帳?
📖ユニフィルLA✨

👧💭タバコ臭いわ
👩CYP1A2の相互作用があるね。シプロフロキサシンは強い阻害剤。

👩しかも喫煙で酵素誘導されているので、阻害の影響も大きいはず。

👧疑義照会ですね
☎️代替はありますか

出典: twitter.com

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☑️ユニフィル®️LA錠の添付文書を確認する

本剤は主として肝薬物代謝酵素CYP1A2で代謝される。

併用注意
(繁用されるキノロンのみ抜粋)
・シプロフロキサシン
・ノルフロキサシン
・トスフロキサシン

テオフィリンの中毒症状があらわれることがある。

肝薬物代謝酵素が阻害され、テオフィリンクリアランスが低下するため、テオフィリン血中濃度が上昇すると考えられる。

出典: www.info.pmda.go.jp

☑️喫煙によりCYP1A2が誘導、テオフィリンクリアランスが上昇している

タバコ
喫煙により肝薬物代謝酵素が誘導され、テオフィリンクリアランスが上昇し、テオフィリン血中濃度が低下すると考えられる。

出典: www.info.pmda.go.jp

☑️テオフィリン過量投与による有害事象

消化器症状、精神症状、心血管症状、低カリウム血症その他の電解質異常、呼吸促進、横紋筋融解症等の中毒症状が発現しやすくなる。

出典: www.info.pmda.go.jp

☑️成書等で添付文書に記載のない情報を補完する

添付文書を見ていて、幾つか疑問が生じます。

①個々のキノロンで阻害の程度に差はあるのか
②喫煙の影響はどう考えたらよいのか
③併用による有害事象の症例報告はあるのか

成書等を参照して補完します。

☑️キノロン併用によるテオフィリンの濃度変化

成書に変化一覧の表がありましたので一部引用します。

  レボフロキサシン シプロフロキサシン トスフロキサシン
テオフィリン 変化なし 1.2倍 1.5倍

医療現場のための薬物相互作用リテラシー

出典:

☑️喫煙によるクリアランス増加があるため、阻害薬の影響は大きいと予測される

テオフィリンと同様、主にCYP1A2で代謝されるジプレキサ®️(オランザピン)の添付文書を参照しました。

そこには、CYP1A2を阻害するフルボキサミンとの併用試験で、喫煙男性のAUC変化率が非喫煙女性のそれより大きかったとする報告がありました。

テオフィリンとシプロフロキサシンにも同様の効果があるのではないかと類推されます。

ジプレキサ錠2.5mg/ジプレキサ錠5mg/ジプレキサ錠10mg

出典: www.info.pmda.go.jp

☑️シプロフロキサシンとテオフィリンの併用例

76歳女性、COPDでテオフィリン徐放錠300mgを1日2回服用していた。骨折で入院。

緑膿菌による尿路感染症にシプロフロキサシン500mgを1日2回投与開始の5日後、昏睡状態となり低血圧と呼吸停止。数時間後に死亡。

テオフィリン濃度は18.6ug/mLから31.0ug/mLに上昇していた。

Ciprofloxacin-theophylline drug interaction
B Paidipaty et al. Crit Care Med. 1990 Jun.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

CR-IR法でざっくり見ても、併用によるテオフィリンAUCは1.5~3倍になると予測されます。

☑️腸管感染症で抗菌薬を考慮する場合について

細菌性腸炎は、市中において一般的によくみられる細菌感染症のひとつです。

多くは対症療法のみで軽快するため、抗菌薬を必要とする例は限られます。個々の症例を見極める事が大切です。

以下のようなリスクの高い場合には、起因菌不明の段階でも empiric therapy を考慮するとされます。

・ 血圧の低下、悪寒戦慄など菌血症が疑われる場合
・ 重度の下痢による脱水やショック状態などで入院加療が必要な場合
・ 菌血症のリスクが高い場合(CD4 陽性リンパ球数が低値の HIV 感染症、ステロイド・免疫抑制剤投与中など細胞性免疫不全者など)
・ 合併症のリスクが高い場合(50 歳以上、人工血管・人工弁・人工関節)

出典: www.kansensho.or.jp

☑️ガイドライン推奨の腸管感染症治療薬

腸管感染症に使用される抗菌薬を概説します。

Empiric Therapy

起因菌が不明な場合、経験的処方の第一選択をガイドラインではLVFX又はCPFXとしています。

ただし、カンピロバクターを強く疑う場合はCAM等のマクロライドを第一選択とすることもあるとしています。

第二選択(キノロン耐性又はキノロンアレルギーの場合)として、AZM又はCTRX点滴静注が推奨されています。

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―腸管感染症―

出典: www.kansensho.or.jp

Definitive Therapy

グラム染色や培養で判明した起因菌により、推奨される抗生物質が変わります。

・大腸菌の場合・・・・・・・・第一選択はキノロン、第二選択はFOMを3日以内に
・サルモネラの場合・・・・・・第一選択はLVFX又はTFLX又はCPFX、第二選択はCTRX静注又はAZM
・カンピロバクターの場合・・・第一選択はCAM又はAZM又はEM

FOM:ホスホマイシン LVFX:レボフロキサシン TFLX:トスフロキサシン CPFX:シプロフロキサシン CTRX:セフトリアキソン AZM:アジスロマイシン CAM:クラリスロマイシン EM:エリスロマイシン

出典: www.kansensho.or.jp

☑️まとめ

シプロフロキサシンはCYP1A2の強い阻害剤です。

患者は喫煙でCYP1A2が誘導されている為、併用するとテオフィリンクリアランスへの影響が大きいと考えられます。

また、細菌性胃腸炎の経験的治療になりますので、ガイドラインより第一選択となるキノロンが好ましいと考えられます。

テオフィリンとの併用でも有意なリスク上昇の報告のない、レボフロキサシンを提案する事が妥当性があるのではないでしょうか。

多変量調整後、シプロフロキサシンの投与後のテオフィリン毒性のリスクのほぼ2倍の増加が観察されました[調整済みオッズ比 1.86; 95%CI 1.18-2.93]。対照的に、レボフロキサシン、トリメトプリム-スルファメトキサゾールまたはセフロキシムを投与された患者のグループ内では、テオフィリン毒性のリスクの増加はありませんでした[調整済みオッズ比 0.78; 95%CI 0.38-1.62]。

Ciprofloxacin-induced theophylline toxicity: a population-based study

Tony Antoniou et al. Eur J Clin Pharmacol. 2011 May.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

なおレボフロキサシンは腎排泄型ですので、腎機能に応じた用量調節を忘れないようにしましょう。

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最終更新日2021年5月8日

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