カルバマゼピンとグレープフルーツジュースの相互作用の強度を、理論から予測出来るか。


CYP3A4で代謝されるカルバマゼピンと、CYP3A4阻害作用を有するグレープフルーツジュース摂取についての考察

グレープフルーツジュース果汁に含まれるフラノクマリンと言うフラボノイドが、小腸粘膜にある薬を代謝する酵素CYP3A4と結合し、酵素としての機能を不可逆的に無くすことが、この相互作用の原因と考えられています。

阻害効果は酵素が新しく作られるまでの数日間持続します。併用により、カルバマゼピンのCmax及びAUCが1.4倍になったと言う報告があります1)。

テグレトールの至適血中濃度は4~12μg/mL(文献によっては4~10μg/mL)と幅が狭く、上限近くでコントロールしている場合は、グレープフルーツジュースの併用で至適濃度を超えることがあるかも知れません。

8μg/mL以上で、頭痛、嘔気、傾眠、活動性の低下、不安などが起こることが知られています。カルバマゼピンを服用している患者さんは、出来ればグレープフルーツジュースの飲用は避けたほうが良いかも知れません。

一般にグレープフルーツジュースは消化管における薬物代謝能を低下させるので、初回通過代謝における消化管の寄与が大きな薬物ほどグレープフルーツジュース摂取によって体内動態が大きく変動すると考えられます。

また、血漿蛋白結合率の大きな薬物は肝臓への移行が制限されることから、肝代謝の寄与が小さくなり、消化管代謝の寄与が相対的に大きくなります。

この考え方を利用すれば、薬物とグレープフルーツジュースの相互作用の大きさは、薬物の血漿蛋白結合率から推測できると考えられます。薬物を代謝する CYP3A4の小腸における含有量は、肝臓の80分の1程度です。

添付文書より、カルバマゼピンの血漿蛋白結合率は70~80%で、非結合率を20%と仮定すると、肝臓での代謝は80(酵素量比)x20(%、血漿蛋白質非結合率)=1600(任意単位)となるのに対して、吸収時の消化管内では血漿蛋白がないと仮定できますので、消化管での代謝は1(酵素量比)x100(%、血漿蛋白質非結合率)=100(任意単位)となります。

従ってこの場合、肝臓と小腸における代謝の寄与率は16:1となりますから、もしグレープフルーツジュース飲用によって、小腸におけるカルバマゼピンの代謝が完全に阻害されるとすると、体全体としてバイオアベイラビリティでの小腸と肝臓での代謝は94%に低下することになり、AUCは1.06倍程度に上昇すると考えられます2)。

このように実測値と理論値に乖離があります。論文ではTmaxは変化させなかったとの事なので、吸収速度に影響は与えなかったようです。

半減期について、アブストラクトには記載がなかったのですが、もし半減期が延長していれば、肝臓での代謝も阻害している可能性があります。25%程度阻害していれば、実測値と等しくなると考えます。

論文のコンクルージョンにも、” Grapefruit juice increases the bioavailability of carbamazepine by inhibiting CYP3 A4 enzymes in gut wall and in the liver” とありますので、その解釈で良いのかと思います。

1)Effect of grapefruit juice on carbamazepine bioavailability in patients with epilepsy.
2)月刊薬事、44:1587-1608 (2002)



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血漿蛋白結合率の高いリピトールは大量のグレープフルーツジュース飲用でAUCが2倍強上昇する。


リピトールの添付文書には、グレープフルーツジュース1.2L/日との併用により、本剤のAUC0-72hが約2.5倍に上昇したとの報告がある、と記載があります。

一般にグレープフルーツジュースは消化管における薬物代謝能を低下させるので、初回通過代謝における消化管の寄与が大きな薬物ほどグレープフルーツジュース摂取によって体内動態が大きく変動すると考えられます。

また、血漿蛋白結合率の大きな薬物は肝臓への移行が制限されることから、肝代謝の寄与が小さくなり、消化管代謝の寄与が相対的に大きくなります。

この考え方を利用すれば、薬物とグレープフルーツジュースの相互作用の大きさは、薬物の血漿蛋白結合率から推測できると考えられます。薬物を代謝する CYP3A4の小腸における含有量は、肝臓の80分の1程度です。

そこで、この仮定に基づいて、リピトールと大量のグレープフルーツジュース飲用時のAUCが、理論的にどの程度上昇すると予想出来るか、検証してみます。

リピトールの血漿蛋白結合率は、95.6~99.0%以上と記載がありますので、非結合率を1%と仮定すると、肝臓での代謝は80(酵素量比)x1(%、血漿蛋白質非結合率)=80(任意単位)となるのに対して、吸収時の消化管内では血漿蛋白がないと仮定できますので、消化管での代謝は1(酵素量比)x100(%、血漿蛋白質非結合率)=100(任意単位)となります。

従ってこの場合、肝臓と小腸における代謝の寄与率は4:5となりますから、もしグレープフルーツジュース飲用によって、小腸におけるカルバマゼピンの代謝が完全に阻害されるとすると、初回通過効果の小腸及び肝臓での代謝は44%にまで低下することになり、体内に移行する薬物量=バイオアベイラビリティx投与量(Ab=F・D)より、バイオアベイラビリティFがジュース飲用によりF’=F/0.44に上昇している、と表せます。

またGFJは小腸に限定されたCYP3A4阻害作用であり、全身クリアランス(CLtot)に影響を与えないと考えられるため、経口投与されて循環血に乗る薬物量Ab=F・D、Ab’=F’・D=F・D/0.44 CLtot=Ab/AUCevと言う式を適用すると、経口投与時のAUCevは2.3倍程度上昇すると考えられます。

これはケースレポートの数値とほぼ一致し、この仮定での予測に一定の妥当性があることが分かります。

グレープフルーツジュースと併用した場合のデータが無い薬剤の場合でも、CYP3A4の代謝寄与率が高く、血漿蛋白結合率が99%の場合、大量のグレープフルーツジュース飲用でAUCが2倍程度上昇することが予測されます。もしその薬剤の治療域が狭い場合は、休薬や減量などの注意が必要になると考えられます。




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ザイザル半錠を1日2回服用すると、1錠1日1回と比較して、定常状態の体内濃度のピークをー32%抑える。

こんにちは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。スギ花粉症の季節ですね。わたしはラッキーなことに花粉症がないのですが、アレルギーのある人には大変な季節だなあと思います😞

さて、今日はアレルギーの薬のザイザルの話をします。ザイザルは、大人の場合、1回5mgを1日1回、就寝前に飲む薬ですが、7歳から15歳未満のお子さんは、1回2.5mgを1日2回、朝食後及び就寝前、と飲み方が変わります。

一日量が同じなのに、分割して飲むのは、意味があるのでしょうか?一回量は減るけれど、飲む間隔は短くなりますよね?どう考えたら良いのでしょう😥

これは、薬学部で勉強する、薬物動態学の知識を応用すれば説明出来ます。やや専門的な内容になりますが、なるべくかみ砕いて書きますので、お付き合いお願いします🙇

体内の薬の量が、半分になるまでにかかる時間を、半減期T1/2(ティー・ハーフ)と言います。半減期を重ねる度に、体内の薬の量は、1/2、1/4、1/8、1/16…と減っていきます。1/16になれば、体内の薬の量は、ほぼ0になったと考えて良いです。

半減期が長い薬の場合、薬が0になる前に、再度薬が体の中に入ります。そのため、繰り返し飲んでいると、体内の薬物量の推移は一回しか飲んでいない時よりも少しずつ多くなって行きます。

やがてピーク濃度は一定の値になります。この状態を、定常状態(ていじょうじょうたい:Stedy State)と呼びます。

体内の薬の量がピークになっている時の濃度を、最高血中濃度と呼びます。濃度はCで表します。

一回だけ飲んだ時の最高血中濃度をCmax(シー・マックス)とすると、定常状態の最高血中濃度であるCss.max(シー・ステディ・ステイト・マックス)は、変数である蓄積率R(ちくせきりつ、アール)を使って、Css.max=R・Cmaxと表現されます。

蓄積率Rは、投与間隔τ(タウ)とすると、投与間隔/半減期を計算し、表から得ます。

τ/T1/2 >4.0  3.0  2.0  1.5  1.0  0.8  0.7
R      1.0  1.1  1.3  1.5  2.0  2.4  2.6

分割して飲むと、1回量は減るのでCmaxは減りますが、投与間隔が短くなるので蓄積率Rは大きくなります。

総合的には体内の薬のピーク濃度が抑えられると予想されますが、本当にそうなのか、また、どの程度抑えられるのか、計算してみましょう。

ザイザルは、成人の半減期T1/2=7.3時間です。

また、投与量と最高血中濃度であるCmax、利用出来る薬の総量である、血中濃度‐時間曲線下面積AUC(エーユーシー)は、投与量に比例して増加することが次の表より分かります。

Cmax(ng/mL)   AUC(ng・h/mL)
5mg   232.60    1814.06
10mg  480.00    3546.51

小児も同様と仮定して、話を進めて行きます。

①ザイザル5mgを24時間おきで投与した場合、
投与間隔/半減期=τ/T1/2=24/7.3=3.28
∴蓄積率R≒1.1
ザイザル5mg単回投与時の最高血中濃度をCmax5と表記すると、
定常状態の最高血中濃度Css.max=1.1・Cmax5

②ザイザル2.5mgを12時間おきで投与した場合、
投与間隔/半減期=12/7.3=1.64
∴蓄積率R’=1.5
ザイザル2.5mg単回投与時の最高血中濃度をCmax2.5と表記すると、Cmax2.5=0.5・Cmax5
定常状態の最高血中濃度Css.max’=1.5・Cmax2.5=0.75・Cmax5

ここで、Css.max’/Css.max=0.68 です。

したがって、②の飲み方をすると、①の飲み方と比べて、定常状態の最高血中濃度が‐32%抑えられる、と予想されます。

このように、二回に分けて飲むのは、ピーク濃度を抑える事が目的と考えられます。おそらく、分割せずに飲むと、眠気などの副作用が出やすくなるのではないでしょうか。

いかがでしょうか?学部で習った知識が、日常業務の疑問を解いてくれます☺みなさんも、蓄積率をぜひ活用して下さいね!



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コレステロールの薬を飲んでいるけれど、名前は正確に覚えていない人が、風邪で病院を受診する時にお薬手帳を持参した方がよい、たったひとつの理由。

こんばんは。アロマ薬剤師のゆきです。娘がおもちゃに指を入れたら抜けなくなり、救急外来のお世話になりました。先生、親の不注意ですみませんでした…。

さて、今日は薬の飲み合わせの話です。薬局で患者さんに、「他に飲んでいる薬はありませんか?」と必ず尋ねるのですが、返ってくる答えで多いのは、「血圧の赤い玉の薬」とか、「コレステロールの白い玉の薬」とかです。薬局あるあるでしょうか😅

赤い玉の薬も、白い玉の薬も、沢山あります…。でも、血圧の薬とか、コレステロールの薬とか分かったら、飲み合わせは分かるんじゃない?って思ってます?😏実際はどうなのでしょう。今日は、そういうお話をします。

風邪でC耳鼻咽喉科を受診したAさんは、「お薬手帳を持って来ていないけれど、コレステロールの薬を飲んでいます」、とカウンターでおっしゃいました。

皆さんはこれで飲み合わせなどのリスク回避が十分出来ると思います?答えはイエスであり、ノーです😰その理由を一緒に見て行きましょう。

Aさんは、数年前、B内科医院からコレステロールの薬、シンバスタチンを飲んでいた事が、薬局の電子薬歴に記録されていました。体重はデータなし、腎機能もデータなし、シンバスタチンの規格(ミリ数)も不明です。シンバスタチンのまま現在も継続しているかも確実には分かりません。

現在の日本で、コレステロールの薬のスタチンは、5種類が発売されています。飲み合わせは薬ごとに特徴があり、注意の必要な度合いも異なります。

同時に飲むと若干吸収率が下がって効き目が落ちる程度の飲み合わせから、時間を空けて飲んでも、重篤な副作用である横紋筋融解症が起きるリスクが高まるケースまで様々です1)。

そのため、最適な処方設計をするためには、薬剤名、規格、飲み方の正確な情報が必要になります。

Aさんの飲んでいたシンバスタチンは、100%肝臓の酵素で代謝されるタイプのスタチンです。薬物代謝酵素「CYP3A4(シップスリーエーフォー)」で代謝されます。

この酵素の働きを邪魔する薬を飲むと、てきめんにシンバスタチンの体内濃度が上昇し、薬を何錠も一度に飲んだのと同じような状況が起こります。その結果、副作用が起こりやすくなるのです2)。

この相互作用は時間をあけて飲んでも避けることが出来ません。CYP3A4の働きを邪魔する薬で有名なのが、日本で風邪の時に頻繁に処方される抗生物質、クラリスロマイシンです。

Aさんが受診したC耳鼻咽喉科の先生は、クラリスロマイシンを処方されませんでした。コレステロールの薬が特定出来ないのであれば、最もリスクが高い場合を想定して、その薬を避けようと考えられたのかも知れません。

リスク回避は出来ましたが、もしAさんが飲んでいる薬がシンバスタチンでないとはっきり分かっていれば、C医師はクラリスロマイシンを処方されたかも知れません。

飲んでいる薬の正確な情報を伝えられなかった為に、Aさんが自ら治療の選択肢の幅を狭めてしまったことは確かでしょう。

風邪薬程度でしたので、今回は深刻な問題にならなかったのが幸いですが、お読みになって、いかがでしたか。これがイエスであり、ノーである、とわたしが最初に書いた理由です。

タイトルでは、コレステロールを飲んでいる人の風邪薬に限定しましたが、基本、複数の薬を飲むのであれば、飲み合わせの問題は常に起こり得ます。

薬を安全に、効果的に使用できるよう、病院や薬局、ドラッグストアに行く際はお薬手帳を持参されることを、薬剤師として、わたしは心からお勧めします。

脚注
1)Statin toxicity from macrolide antibiotic coprescription: a population-based cohort study.PMID: 2377890

472,591人を対象としたカナダのコホート研究です。CYP3A4で代謝されるアトルバスタチン、シンバスタチン服用患者にエリスロマイシン、クラリスロマイシンを投与した場合の安全性の検討をしています。

アジスロマイシンと比較して、30日以内の横紋筋融解症による入院は絶対リスクで0.02%(95%CI;0.01-0.03)上昇しました。

急性腎傷害は絶対リスクで1.26%(95%CI0.58-1.95%)、総死亡は絶対リスクで0.25%(95%CI0.17-0.33%)上昇しました。

2)これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの理論と実践  大野能之・樋坂章博 編著 じほう

併用によるAUCの上昇率のデータは次のようになります。シンバスタチン   基質の寄与率 CR(CYP3A4):1.00
クラリスロマイシン 阻害率IR(CYP3A4):0.88  PISCS予測値のAUC8.33倍 実測値のAUC11.9倍

エリスロマイシン  阻害率IR(CYP3A4):0.81     PISCS予測値のAUC5.26倍 実測値のAUC6.2倍

AUCが5~10倍、すなわち薬を5~10錠いっぺんに飲んだ時のような状況が起きる事が予想されます。

パキシル(一般名パロキセチン)を飲んでいる人が、眼科を含めて他の病院を受診するときにしなければいけない、たったひとつのこと。

かかりつけ医院に黙ってほかの病院を受診し、同効薬のオメプラゾールとタケキャブが重複して処方されていた話。

皮膚科と耳鼻咽喉科を掛け持ち受診して、持ち込まれた2枚の処方箋で抗生物質が重複した話。

耐性菌の話。どこか遠い国の話ではなく、日本の日常診療でも耐性菌は溢れています。

ピロリ菌除菌の薬を飲む人が、他に飲んでいる薬を頓服も含めて全て病院と薬局で伝えたほうがよい、たったひとつの理由。

心房細動で薬を飲んでいる人が、花粉症の薬を病院でもらう時に、お薬手帳を持参した方がよい、たったひとつの理由。

コレステロールの薬を飲んでいるけれど、名前は正確に覚えていない人が、風邪で病院を受診する時にお薬手帳を持参した方がよい、たったひとつの理由。

シンバスタチンとフルコナゾールは安全に併用出来ますか?

シンバスタチン服用中にイトラコナゾールのパルス療法を受けて横紋筋融解症を来たした例。

1日1回夕食後にリリカを飲んでいて、ふらつきが翌日の午前中まで続く人は、1日3回に分けて飲むと、ふらつかなくなる可能性があります。蓄積率を応用して定量的に考察しました。

Aさんは60代女性です。整形外科から、痛み止めの薬のリリカ75mgを、1日1回夕食後で処方されています。痛みは軽減しているが、翌朝の午前中までふらつきが続いているとの事です。

リリカの投与方法を変えることで、ふらつきを改善することが出来ないでしょうか。痛みを軽減したまま、ふらつきが抑えられれば、ベストな薬物療法が提供できます。

時間とともにふらつきが解消されるので、この副作用はリリカの血中濃度に依存するものと考えられます。最高血中濃度を抑えてやれば、副作用を回避出来るのではないかと考えました。

では、1日1回投与と、1日3回の分割投与では、どれくらい最高血中濃度が変わるのでしょう。

ブログでは、蓄積率と言う概念を使って、試算して見ます。これを読めば、根拠を示しながら分割投与の処方提案が出来るようになります。

年齢から腎機能を推定

Aさんの腎機能は、Jaffe法によるクレアチニン・クリアランス(CCr)(≒個別eGFR)で60mL/min程度と推定されます。(20歳の腎機能100mL/minで1年毎に1mL/minづつ低下すると仮定しました。)腎機能が中程度低下していると考えられます。

リリカは1日3回投与も添付文書に記載がある

リリカの添付文書を読むと、腎機能が中程度低下している(CCr:30~60mL/min)場合、オプションとしてリリカ25mg 1日3回と言う、分割した飲み方が記載されています。1日1回と比べて、どれくらい体内動態が変わるのか、添付文書の情報から考えてみることにしましょう。

リリカのCmaxとAUCは投与量に比例する

リリカは、ほぼ100%、未変化体のまま腎排泄されます。単回投与した時の最高血中濃度とAUCは、投与量に比例して上昇します(線形です)。

その裏づけとなる、リリカの基本データが、添付文書に記載されていました。

リリカ50mgを腎機能の異なる群に単回投与した(海外データ)
CCr:60mL以上 T1/2 9.11hr
CCr:30~60   T1/2 16.7hr
CCR:15~30   T1/2 25.0hr

リリカを単回投与した際のCmaxとAUC
50mg 2.03μg/mL 10.7μg・hr/mL
100mg 3.56     20.4
200mg 6.35     43.2
300mg 8.25     61.7

1回投与と3回分割投与のCmaxを試算する

ここで、(A)75mg 1日1回投与と、(B)25mg 1日3回投与した場合、それぞれの反復投与時の最高血中濃度を推算してみます。

①CCr:60mL/min以上の場合、
(A)τ/T1/2=24/9.11=2.6  ∴蓄積率R≒1.2
(B)τ/T1/2=8/9.11=0.88  ∴蓄積率R≒2.2

リリカ25mgを単回投与した際のCmaxをC25maxとすると、定常状態の最高血中濃度は
(A)3.6・C25max
(B)2.2・C25max

従って、1日3回にすれば、定常状態の最高血中濃度は1日1回に比べて約40%抑えることが出来ると考えられます。効果の指標であるAUCは同等と考えられます。

②CCr:30~60mL/minの場合、
(A)τ/T1/2=24/16.7=1.44≒1.5 ∴蓄積率R=1.5
(B)τ/T1/2=8/16,7=0.48≒0.5 ∴蓄積率R=3.4

リリカ25mgを単回投与した際のCmaxをC25maxとすると、定常状態の最高血中濃度は
(A)4.5・C25max
(B)3.4・C25max

従って、1日3回にすれば、定常状態の最高血中濃度は1日1回に比べて約33%抑えることが出来ると考えられます。AUCは同等と考えられます。

ちなみにリリカ75mgを1日1回の場合、定常状態の最高血中濃度は、CCr:60mL/min以上に比べて30~60mL/minでは、蓄積率から計算すると25%上昇していると考えられます。

まとめ

以上より、投与方法を変えるオプションは、一考の価値があると考えます。

処方提案も根拠を示しながら行えば、受け入れられるのではないでしょうか。

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PISCSで臨床報告のない相互作用を定量的に評価。簡単な式で必要なパラメーターはAUCの他は2つだけ。


ISCSで臨床報告のない相互作用を定量的に評価。簡単な式で必要なパラメーターはAUCの他は2つだけ。

はじめに

未知の組み合わせの薬物相互作用も、PISCS理論で定量的に評価できる

添付文書に併用注意の相互作用は沢山書かれています。でも、一体どれくらい注意したら良いのか、困る事はありませんか?

そこで紹介したいのが、PISCS理論です。薬剤固有のパラメーターを利用して、臨床報告のない組み合わせの相互作用も定量的に評価する理論です。

東大病院薬剤部の大野先生が発案された理論で、成書も出版されています。厚労省の相互作用の評価にも採用されています。

相互作用を表記する用語を概観した後、PISCS理論を紹介しようと思います。

薬物相互作用を表記する用語

基質薬、阻害薬って何?

酵素で代謝される薬のことを基質薬、酵素を邪魔する薬のことを阻害薬と呼びます。

基質薬の肝臓(及び小腸)の酵素での代謝を、阻害薬が邪魔することで、相互作用が起こります。

基質薬の体内濃度が高くなることで、副作用が起こりやすくなります。

相互作用は、酵素のサブタイプごとに決まる

CYP(シップ)分子種で表される酵素ごとに、相互作用が規定されます。

AUCって何?

併用で薬の効果がどれくらい高くなるかは、一般にAUCと言うパラメーターを指標にされることが多いです。

AUC(Area Under the blood concentration-time Curve)は、日本語にすれば、血中濃度-時間 曲線下面積です。血中濃度の推移を時間で積分して求めた数値(面積)です。

そのため、AUCは、最高血中濃度(Cmax)と半減期(t1/2)の双方の要素を含む、総合的な指標になります。一般的にAUCが大きいことは薬をたくさん利用できることを意味し、具体的には高い効果が得られる、あるいは副作用が強く出るといったことを意味します。

PISCS理論について

AUC、CR、IRの3つのパラメーターで予測

PISCSは、臨床報告のない組み合わせでもAUCの変化を予測する理論です。

阻害薬の併用による経口投与時の基質薬のAUCの変化率は次の式で表されます。

阻害薬の併用時のAUC/AUC=1/(1-CRxIR)

CR、IRって何?

CRは、Conribution Ratioの略です。CYP分子種の基質薬のクリアランスへの寄与率を表します。

IRは、Inhibition Ratioの略です。阻害薬の阻害率を表します。

予測出来るのは、肝臓(及び小腸)での代謝阻害で起こる相互作用

ただし、この式が適用できるのは、基質薬の未変化体としての尿中排泄の寄与が大きくない場合、すなわち肝臓(または小腸)での代謝がメインである薬に限られることに注意して下さい。

PISCS理論の実例

「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用」掲載のデータで計算

実例をいくつか挙げます。CRとIRは、「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015」から数値を得ました。

CYP2D6が関与する相互作用

・メトプロロール(CR:0.8)をパロキセチン(IR:0.9)と併用した場合、メトプロロールのAUCは3.6倍。

・デキストロメトルファン(CR:0.9)をパロキセチン(IR:0.9)と併用した場合、デキストロメトルファンのAUCは5.3倍。

CYP3A4が関与する相互作用

・カルバマゼピン(CR:0.8)とグレープフルーツジュース(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍。

・カルバマゼピン(CR:0.8)とクラリスロマイシン(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍。

・カルバマゼピン(CR:0.8)とエリスロマイシン(IR:0.7)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.3倍。

まとめ

このようにPISCS理論を利用する事で、未知の相互作用によるAUCの理論値を求める事が出来ます。

ここで得たAUCの増加率は、未知の組み合わせによる相互作用を経た場合も安全な血中濃度域に留まるかの、有力な判断材料になると考えます。

実測値を文献で調べる事が一番ですが、新薬等の理由で情報が少ない場合には、非常に有効な手法と考えます。

これからの薬剤師は、身につけたい理論です。大野先生の書籍を手に入れて、精読することをお勧めします。

推薦図書

「これからの薬物相互作用マネジメント―臨床を変えるPISCSの基本と実践」

PISCSの運用方法が書かれています。薬局に一冊備えておきたい本です。

「医療現場のための薬物相互作用リテラシー」

薬物相互作用の基礎、ピットフォール、定量的にマネジメントする手法について解説されています。

薬物相互作用を勉強したい方にお勧めです。

特にPISCSの理論的背景については類書に無い内容ですので、更に詳しく学びたい方は、ぜひ本書を手に取って下さい。

薬物相互作用のマネジメントは、薬剤師の職能そのものと思いますので、ぜひPISCSを技の1つに加えましょう。

定量的な予測が加われれば、あなたの疑義照会や処方提案も受け入れられやすくなると思います。

参考文献

「これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践」大野能之 じほう

「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015」

関連記事

ピロリ菌除菌レジメンとシンバスタチンの相互作用のリスクについて書きました。

PISCSによるAUC上昇率に加えて、実際に併用して横紋筋融解症を起こした症例報告の論文等を紹介します。

ピロリ菌除菌の薬を飲む人が、他に飲んでいる薬を頓服も含めて全て病院と薬局で伝えたほうがよい、たったひとつの理由。

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テグレトール(カルバマゼピン)とクラリスロマイシンで眠気が出ることを定量的に評価する試みをしました。

Aさんは17歳6ヶ月、体重不明です。てんかんの薬、カルバマゼピン500mg/日を1日2回に分けて服用しています。TDMのデータ不明です。クラリスロマイシンを飲んで、強い眠気が出たと聞きました。

ここでは、併用による血中濃度の変化を、定量的に評価する試みをします。

まず、カルバマゼピン血中濃度を以下の手法により推定します。6.13±1.46μg/mL(治療域4-12μg/mL)と考えられます。

17歳6ヶ月の平均体重53.1kgを使用。F・S・D/Tau=Css.ave・CLtotに次のパラメーターを代入します。
F=1、S=1、D=250、Tau=12、CLtot=0.064L/hr/kgx53.1kg
またVd=1.61×53.1kgより、FSD/2Vd=1.46

カルバマゼピンの至適血中濃度は4~12μg/mLですが、文献によっては4~10μg/mLとするものもあります。8μg/mL以上で、頭痛、嘔気、傾眠、活動性の低下、不安などが起こることが知られています。

Aさんは、クラリスロマイシンを服用して眠くなったとのことですが、体内でのカルバマゼピンの挙動は、どれくらい変わるのでしょう。

PISCSの理論からは、カルバマゼピン(CR:0.8)とクラリスロマイシン(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍と予測されます。

AUC(Area Under the blood concentration-time Curve)は、日本語にすれば、血中濃度-時間曲線下面積です。血中濃度の曲線の積分値(面積)のことで、利用できる薬の総量を意味します。AUCは、血中濃度×時間で表され、最高血中濃度(Cmax)や半減期(t1/2)の要素も含めた総合的な指標になっています。

一般的に、AUCが大きいことは薬をたくさん利用できることを意味し、具体的には高い効果が得られる、あるいは副作用が強く出るといったことを意味します。

類薬のエリスロマイシンでは、Cmaxは変化しないが、AUCは1.34倍、t1/2は1.46倍に延長、クリアランスは23%低下したとする報告があります。他の報告でもCmaxは上昇しませんでした。

パラメーターの変化は個人差が大きく、エリスロマイシン併用によるカルバマゼピン濃度の予測が困難であるため、併用の必要がある時には患者モニタリングを綿密に行うことが推奨されています。

https://www.fpa.gr.jp/global-image/units/upfiles/1348-1-20120514161648.pdf

予測は困難と書かれていますが、得られたデータから試算を試みようと思います。カルバマゼピンを成人に反復投与した場合の半減期は7~15時間とされます。ここでt1/2=11hrと仮定します。

蓄積率の手法を利用して、反復投与時の最高血中濃度(Css.max)が、単回投与時の最高血中濃度(Cmax)の何倍になるかを推定します。

Tau/t1/2=12/11=1.1 ゆえに蓄積率R≒2で、Css.maxはCmaxの約2倍になると推定されます。

エリスロマイシンの併用で、カルバマゼピンの半減期t1/2が1.46倍になったと言うデータを利用すると、半減期t1/2’=16hrです。

従って、Tau/t1/2’=12/16=0.75  ゆえに蓄積率R’=2.4~2.6 簡便に2.6倍とすると、R’/R=1.3
以上のことより、エリスロマイシンの併用により、定常状態のカルバマゼピンの最高血中濃度は、併用しない場合の1.3倍になると考えられます。

クラリスロマイシンの場合もおそらく半減期が延長し、反復投与することで定状状態の血中濃度が上昇したのではないかと推測されます。PISCSの予測より、併用時の最高血中濃度は1.3倍以上になったのではないかと考えられます。

カルバマゼピン服用中の5人の患者に、カルバマゼピンを30~40%減量した上でクラリスロマイシンを投与した報告があります。5人とも血中濃度が上昇し、3人は中毒域に達していました。著者らはカルバマゼピンを30~50%減量し、薬物濃度を注意深く観察することを勧めています。

Clarithromycin-carbamazepine interaction in a clinical setting. O’Connor NK1, Fris J. J Am Board Fam Pract. 1994 Nov-Dec;7(6):489-92. PMID:7847111



明日から薬局業務に生かせる、腎排泄型薬剤の用量調節に覚えておくべき、たったひとつの公式。

こんばんは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。娘がオレンジスイートの香りを気に入っていて、今夜も寝室はオレンジスイートの精油の匂いが漂っています。甘くて懐かしい、落ち着く香りです。娘が眠ってしまった後に、この記事を書いています。

さて、今日は腎機能の話です。薬には、腎臓から尿に出ていくタイプの薬と、肝臓から便に出ていくタイプの薬があります。腎機能は加齢と共に低下するので、腎臓から尿に出ていくタイプの薬は、腎機能に応じて飲む量を加減する必要があります。

添付文書と言う、薬について来る説明書には、腎機能に応じて量を加減する目安が書いてあります。そこには大抵「クレアチニンクリアランス(mL/分)」と言う数値を基準に、減量の目安が書いてあります。

ところが、わたしたちが普段薬局で働いていて目にする腎機能の検査値は、eGFR(mL/分/1.73m^2)と思います。これは、標準化eGFRと呼ばれる数値で、腎機能の低下のステージ分類をするための数値です。そのままでは薬の減量の目安に使用することは出来ません。

では、どうしたら良いでしょうか?実は、必要な公式は、たったひとつです。

添付文書のクレアチニン・クリアランス≒検査票の標準化eGFR×患者さんの体表面積÷1.73(mL/分)

これだけです。体表面積は、ネット上に計算アプリがありますので、それを利用すれば簡単に得られます。体表面積は、患者さんの身長と体重が分かれば算出出来ます。計算式は、デュボア式を選んで下さい。ちなみに正常値は100mL/分で、健康な20代の方はこのくらいです。

上式で得られた数値は、個別eGFR(mL/分)と呼ばれます。細かい理屈は色々あるのですが、実務ではこの式が使えれば対応可能と思います。興味がある方は、成書にあたられて下さい。

腎機能に応じた用量調節は、例えばバルトレックスによるアシクロビル脳症を未然に防ぐ、有力な手段になります。

いかがでしたか。薬局業務の質を、わたしたち、みなの力で底上げして行きましょう。



リリカを初めて飲みます。小柄だから少ない量にしておくねと言われていますが、体格と関係あるんですか?

こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。寒くなりましたね。こちらは外は雪がちらついています。

さて、今日は50代の小柄な女性Aさんの話です。足腰の痛みが強く、リリカ25mgが処方になりました。小柄なので、少ない量にしておきますと説明あったそうです。

リリカは痛みの伝達を抑える薬で、25mgが一番小さい規格、一番大きいのは150mgです。病院でAさんが聞かれたように、体格や腎臓の機能、症状で調節されます。

体格が関係あるの、とおっしゃるAさんには、こんな風に説明しました。

体格の影響は、例えばスティックタイプのインスタントコーヒーを考えてください。大きいマグカップで丁度よい濃さでも、小さいデミタスでは濃くなりすぎる事がないでしょうか。

また、リリカは腎臓からおしっこになって体から出ていきます。ペットボトルに水を汲んで、穴をあけると、穴が大きければ水は早く無くなり、小さければ時間がかかると思います。

これで、一回の薬の量や、飲む間隔の調整が必要なことが分かって頂けると思います。

Aさんは成る程ねぇ、と納得されてお帰りになりました。

いかがでしたでしょうか?皆さんの健康を守るご参考になれば、幸いです。

透析患者のLVFXの用法用量はCCr<20に準じる。過量投与は中枢性副作用を起こす場合があり、注意が必要。

こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。まだまだ髪を切る順番が来ないので、更にブログ記事更新します。

透析患者に対するレボフロキサシン(LVFX)の用法用量は、添付文書には記載がありません。

第一三共のサイトを確認すると、透析中の用法用量は確立されていないが、米国ではクレアチニンクリアランス(CCr)<20に準じるとの情報がありました。

具体的には、初回のみローディングドース500mgを使用し、以降は48時間おきに250mgを使用します。

日本腎臓病薬物療法学会の「腎機能低下時に最も注意が必要な薬剤投与量一覧表」2018年1月24日改定31版にも、同様の用法用量が推奨されています。

CCr<20の腎機能高度低下患者に常用量を投与した場合、どうなるかを試算しました。

Guisti-hayton法より補正係数0.27であり、腎機能正常者(CCr≧80)と比較して、単回投与時のAUCが約4倍に上昇します。

また半減期が7.9時間から34時間に延長していることから、反復投与した場合、Ritschel理論より半減期の5倍の170時間、7日目に定常状態に達します。

最高血中濃度Css.maxは、蓄積率1/(1-exp(-0.693・24/34)=2.58より、単回投与時のおよそ2.6倍と推定されます。

一方、腎機能正常であればCss.maxは単回投与時の1.14倍と推定されます。

民医連HPの副作用モニター情報によると、腎機能の低下した高齢者に標準量のLVFXを投与して、認知症様の中枢神経系症状が生じた症例が報告されており、過量投与には注意が必要と考えられます。