ベルソムラ®はジルチアゼムの併用で血漿中の総濃度だけでなく全血中の遊離型濃度も上昇しますか

この記事を読むのに必要な時間は約 14 分です。



ベルソムラ®はジルチアゼムの併用で血漿中の総濃度だけでなく全血中の遊離型濃度も上昇しますか

☑️はじめに

ベルソムラ®はCYP3A4で代謝される薬剤です。

添付文書では強い阻害剤とは併用禁忌、また中程度の阻害剤では10mgでの使用を考慮と書かれています。

ところで血中濃度の測定は、通常血漿中の総薬物濃度です。私たちは添付文書を読むとき、あまり意識せずにこのデータで臨床判断しています。

ですが、薬効や副作用と関連するのは総濃度ではなく遊離型のみの薬物濃度です。遊離型濃度の測定は一般的ではありません。相互作用の評価に、常に代替の指標として使用して良いのでしょうか?

また薬物のPK特性を正確に把握するには血漿中濃度でなく、全血中濃度に対応したパラメータで考察する必要があります。私たち薬剤師は変換方法も熟知する必要があります。

本記事ではベルソムラ減量の判断をする際、全血中遊離薬物濃度の代わりに血漿中総濃度を用いる妥当性について、薬物動態学の観点から精密に考察します。

さくら先輩、薬物動態は分かりづらいです…

うん、曖昧な部分を少しずつ整理していけば大丈夫。ゆきさん、一緒に見て行こう。

プロローグ


🆕ベルソムラ10mg
ジルチアゼム

👴寝つきの薬が出てる?
👨‍⚕️💭相互作用を考慮した減量だ

根拠としてIFで示されたデータは全血中遊離ベルソムラ®濃度でなく、血漿中総ベルソムラ®濃度。相互作用を臨床判断する代理の指標として妥当?

👩‍🎓結論から言うと、ベルソムラ®のこの相互作用に関しては妥当と言えます。薬物動態学の観点から詳しく考察してみましょう。

出典: twitter.com

運営者から、クローズドコミュニティに対する思いをお伝えしています。

クローズドコミュニティが今後の主流になるたったひとつの理由

記事の続きをどうぞ。


Googleアイコンをクリックすると無料登録/ログイン出来ます。会員規約にご同意の上、14日間の無料トライアルをお試し下さい。

☑️薬物のPK特性から変動要因を決定する

薬物のPKの特徴づけを行うことで、血中濃度の変動を解釈できます。

順をまとめると以下のようになります。

1.個々の薬物の PK パラメータの特徴づけを⾏う
2.各PKパラメータの変動要因を明確にする(Table 1111〜2332)
3.変動要因の変化について検討する

薬物の体内動態パラメータ値とその特徴づけ ~病態変化に伴う血中非結合形濃度の 予測への応用

出典: www.maruzen-publishing.co.jp

☑️ベルソムラ®のPKパラメータを文献から入手する

ベルソムラ®について、審査報告書、IF、申請書から以下の値を得ました。

*F……0.62 (20mg投与時:用量依存性に低下する)
*Ae……<1%
*CLtot……48.7(mL/min)
*Vd……48.6(L)
*fuB……<0.01
*B/P……0.59

PMDA医療用医薬品 情報検索

ベルソムラ®審査報告書、IF、申請書

出典: www.pmda.go.jp

☑️ベルソムラ®PKパラメータの特徴づけを⾏う

分布容積と肝クリアランスは血漿でなく全血として評価することに注意して下さい。

B/P比を用いて変換を行っています。

*Ae……<30%で肝代謝型
*Vd……Vd(B)=48.6L/0.59=82.4 <50Lで分布容積大
*EH……CLtot=CLHとし、EH(B)=48.7/0.59/1600=0.05 <0.3で消失能依存型
*fuB……fuB=fuP<0.01 <0.2より蛋白結合依存性

薬物の体内動態パラメータ値とその特徴づけ ~病態変化に伴う血中非結合形濃度の 予測への応用

出典: www.maruzen-publishing.co.jp

☑️各PKパラメータの変動要因を明確にする(Table 1111〜2332)

以上のPKの特徴づけから、ベルソムラ®は緒方らの提唱するtable number 1131の薬物に分類されます。

パラメータが変動した際のクリアランス等の変化の詳細は、リンクをご参照下さい。

PKの特徴づけとtable番号

出典: www.maruzen-publishing.co.jp

☑️変動要因の変化について検討する

☑️全血中の遊離型ベルソムラ®経口クリアランスの変動要因

全血中の遊離型ベルソムラ®経口クリアランスの変動要因は、肝固有クリアランスと腸管吸収率のみです。

CLpof(B)=CLintH/Fa

肝固有クリアランスが低下すると、全血中の遊離型ベルソムラ®経口クリアランスは低下し、全血中の遊離型濃度は上昇します。

☑️全血中の総ベルソムラ®経口クリアランスの変動要因

全血中の総ベルソムラ®経口クリアランスの変動要因は、遊離分率と肝固有クリアランス、腸管吸収率です。

CLpo(B)=fuB・CLintH/Fa

肝固有クリアランスが低下すると、全血中の総ベルソムラ®経口クリアランスは低下し、全血中の総ベルソムラ®濃度は上昇します。

PKパラメータの変動要因とそれらの病態の変化に伴う動き

出典: www.maruzen-publishing.co.jp

☑️CYP3A4阻害剤服用時のPK変化:予測

遊離分率の変動はありません。肝固有クリアランスが低下し、全血中の総ベルソムラ®濃度は上昇することが予測されます。

実際に測定される血漿中の総ベルソムラ濃度はこれに比例し、B/P比で変換されます。

また薬効を発揮し、副作用と関連する全血中の遊離型ベルソムラ®濃度は肝固有クリアランスの低下により上昇していることが予測されます。

☑️CYP3A4阻害剤服用時のPK変化:文献調査

インタビューフォームから次の文献情報を得ました。

外国人健康成人を対象としたジルチアゼム(CYP3Aを中等度に阻害する薬剤)との薬物相互作用試験で、ジルチアゼム(240mg1日1回)反復投与時に本剤(20mg)を単回投与した際のスボレキサントのCmax及び AUCは、それぞれ22%及び105%上昇した。

スボレキサント®IF

出典:

詳細は文献をご参照下さい。

Effect of CYP3A Inhibition and Induction on the Pharmacokinetics of Suvorexant: Two Phase I, Open-Label, Fixed-Sequence Trials in Healthy Subjects

出典: www-ncbi-nlm-nih-gov.translate.goog

☑️まとめ

薬物動態学の観点から考察を行い、測定される血漿中総ベルソムラ®濃度と同様に、全血中遊離ベルソムラ®濃度も上昇することが分かりました。

したがって、ジルチアゼムの併用による減量の判断は血漿中総ベルソムラ®濃度を使用して妥当性がある、と判断されます。

☑️会員のススメ

今回の記事はいかがでしたでしょうか?気に入って下さったら、会員登録をお勧めします。会員限定の記事が閲覧出来るようになります。月々の購読料は、喫茶店で勉強する時に飲むコーヒー一杯の値段で提供しています。人生で一番価値のある資源は時間です。効率的に学習しましょう!値段以上の価値を提供する自信があります。

クリック会員について

会員になりませんか?

最終更新日2021年1月28日

☑️コラム

職場の悩みはありませんか?

わたしも最初の職場がどうしても合わず、1年足らずで退職。今の職場は上司や同僚に恵まれ、毎日楽しく働いています。

あなたが現状に悩んでいるのであれば、専門家に相談してみてはいかがでしょうか?

転職を考える場合、現在の環境から離れることを一番に考えてしまいがちですが、転職先には現在の職場にない問題があります。

わたしはラッキーでしたが、転職後の方が辛い思いをしてしまった、と言う話も耳にします。

自分に適した職場を見つけるためには、頼れるスタッフに協力してもらうことが重要です。

回り道のように見えますが、転職を成功させるための最短の近道と思います。

あなたも1歩踏み出してみてはいかがでしょうか?

迷っているならまずは登録してみましょう。

スポンサーリンク
完全無料!1分間の簡単登録
あります!今よりアナタが輝く職場
薬剤師の求人ならエムスリーキャリア

☑️推薦図書

臨床薬物動態学

今回紹介した薬物動態の概念は、大部分の読者の方に馴染みのないものだったのではないかと想像します。

この書籍で基礎から解説されていますので、ご興味を持った方はぜひ購入して習得することをお勧めします。

スポンサーリンク

スポンサーリンク


☑️拡散のお願い

わたしのサイトが参考になったと思って下さったあなた、バナークリックをお願いします。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ
にほんブログ村

自分だけ知ってるのはもったいないと思って下さったあなた、SNSボタンでシェアをお願いします。