エゼチミブの適正使用ですが、ASCVDの2次予防で考慮できますか

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エゼチミブの適正使用ですが、ASCVDの2次予防で考慮できますか

☑️はじめに

エゼチミブは、既に最大耐用量のスタチンを投与されている患者さんに、望ましいLDL-C値を達成するために併用される薬剤です。

スタチンに追加されることで20~25%のLDL-C低下を達成し、これは動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクの低減を実現します。

2018年の米国のコレステロール管理ガイドラインは、最適なスタチン投薬を受けているにも関わらず、ASCVDリスクが高い患者にエゼチミブを使用することをクラスIIbで推奨しています。

ランドマークスタディであるIMPROVE-IT研究では、エゼチミブがCTTコラボレーションの推定値と一致するレベルでLDL-Cを低下させることを示し、CTTのメタ分析に外挿することに妥当性を与えています。

Akhil Sasidharan, et al.

Cost-effectiveness of Ezetimibe plus statin lipid-lowering therapy: A systematic review and meta-analysis of cost-utility studies

PLoS One. 2022; 17(6)

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

エゼチミブの使いどころって何処でしょう?

心血管ハイリスク患者で、スタチン最大用量使ってもLDL‐Cが下がり切らない場合がそうだよ。

プロローグ

Rp.ロスバスタチン
 エゼチミブ他

👴心筋梗塞で去年入院したんだよ

👧💭超ハイリスクだわ

👩お薬手帳に検査票が挟んであったよ。併用でLDL<70を達成しているみたいだね

👩日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防GL2017」では、二次予防目的の患者に対してLDL<100、心血管イベント高リスク例に対してはLDL<70を考慮する、としているよ

出典: twitter.com

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☑️米国のコレステロール管理ガイドライン

米国のコレステロール管理ガイドライン(2018 Guideline on the Management of Blood Cholesterol)を概観します。

動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の2次予防患者に対するアルゴリズムは次のようなものです。

●ASCVDがvery high risk*

→高強度または最大耐用量のスタチン(クラスI)
→最大耐用量のスタチンでLDL70以上であればエゼチミブ併用は妥当(クラスIIb)/PCSK9阻害薬を考慮する場合はエゼチミブの併用を優先(クラスI)

●ASCVDがvery high riskでない

→75歳以下
→高強度のスタチン、目標:50%以上のLDL-C低下(クラスI)
→高強度のスタチンに不耐なら中強度のスタチン(クラスI)
→最大耐用量スタチンでLDL-Cが70以上ならエゼチミブは妥当(クラスIIb)

*ASCVD超ハイリスク

ASCVD「超ハイリスク」(very high risk)という患者カテゴリーが新設されました。

定義は、過去1年以内の急性冠症候群、心筋梗塞の既往、虚血性脳卒中の既往、症候性の末梢動脈疾患といった主要なASCVDを複数認める患者、もしくはASCVDは1つだが複数の心血管危険因子を持つ患者です。

2018 Guideline on the Management of Blood Cholesterol

GUIDELINES MADE SIMPLE
A Selection of Tables and Figures

Updated June 2019

出典: www.acc.org

☑️コレステロール管理ガイドラインのアルゴリズムの解説

超ハイリスクの2次予防患者に対しては、最大耐用量によるスタチン治療を行ってもLDL-Cが70mg/dL以上であれば、まずエゼチミブの追加を、それでも70mg/dLを切らない場合はPCSK9阻害薬の追加を、それぞれ妥当としています(クラスIIa=中程度の推奨)。

PCSK9阻害薬のRCTでは、中~高強度のスタチンとPCSK9阻害薬を併用し、有意なASCVDリスクの抑制が示されています。しかし高額であり、費用対効果の点からエゼチミブの併用を優先しています(クラスI=強い推奨)。

超ハイリスクではない2次予防患者に対しては、概ね2013年版と同じ内容の推奨です。このカテゴリーでのエゼチミブとスタチンの併用は、75歳以下で最大耐用量のスタチン治療でもLCL-Cが70mg/dL以上の場合とされました(クラスIIb=弱い推奨)。

☑️IMPROVE-ITとCTTコラボレーションのメタ分析

シンバスタチンとエゼチミブの併用療法がもたらす恩恵の程度は、これまでのスタチン試験で見られたものと一致しており、LDL-Cの低下度合いに応じて心血管イベントの発生が同様に減少しています。

IMPROVE-ITにおけるLDL-C 1mmol/L当たりの臨床的有用性のハザード比は0.80であり、CTTメタアナリシスにおけるスタチンのハザード比は0.78でした。

Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170 000 participants in 26 randomised trials

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

スタチン以外の脂質低下薬も心血管系リスクを低下させるという結果は、LDL仮説(LDLコレステロールの低下が心血管系イベントの減少につながる)を間接的に支持します。

しかし最も重要なことは、IMPROVEーIT研究の結果が、スタチンだけが有益であるという「スタチン仮説」を覆すものであることです。

この知見は、過去の試験でスタチン以外の脂質改善薬を追加しても、有意な効果が得られなかったという点で注目に値します。

Ezetimibe added to statin therapy after acute coronary syndromes.

出典: www.nejm.org

☑️まとめ

エゼチミブの適正使用について、米国コレステロール管理ガイドライン2018と、ランドマークスタディであるIMPROVE-IT研究を概観しました。

ASCVDの2次予防として、超ハイリスクの患者、または超ハイリスクではない75歳以下の患者で、最大耐用量のスタチンを服用していてもLDL-Cが70mg/dL以上の場合、使用が妥当とされていることが分かりました。

またIMPROVE-IT研究の結果は、エゼチミブの併用によるLDL-C低下がCTTコラボレーションの知見の外挿に妥当性を与えることを確認しました。

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最終更新日2022年7月16日

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