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小青竜湯を始めとした麻黄を含む漢方はアレルギー性鼻炎に有効ですか
☑️はじめに
アレルギー性鼻炎の治療は、抗ヒスタミンや抗ロイコトリエン薬、ステロイド点鼻を用いるのが今日の主流です。漢方はレスキューとしての位置づけです。しかしながら抗ヒスタミンでは眠気が強くて…と小青竜湯を好む患者さんもあります。いったい、小青竜湯にはどんなエビデンスがあるのでしょう。漢方で小青竜湯以外の選択肢はあるのでしょうか。また麻黄剤を併用する場合、どんな注意が必要になるでしょうか。記事ではこの3点を解説します。
花粉症と言えば小青竜湯ですね。その他の漢方処方も時々みかけますが、選択する基準が分からないです…
漢方にもEBM的な視点は大事、小青竜湯の定量的な効果を確認しておこう。その他の漢方の使い分けと麻黄剤併用時の注意も説明するね。
プロローグ
Rp.小青竜湯
👩アレルギー性鼻炎ですが薬の眠気が強くて。
📖ケトチフェン👨⚕️💭ガイドラインではレスキューみたいな使い方だった。エビデンスは?
👩🎓多施設DBのRCTで通年性鼻アレルギーに対する有効性が証明されています。
👩🎓またスギ花粉症に対する予防効果はケトチフェンと同等とされます。
出典: twitter.com
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☑️アレルギー性鼻炎と漢方
アレルギー性鼻炎にはどんな漢方が用いられるのか、総説では次のように書かれています。急性の症状を改善する目的では、一般に麻黄を含む麻黄剤が効果があるとされます。以下、総説を引用します。
アレルギー性鼻炎に対する漢方治療には、症状を改善するためのもの(発作時)と、体質を改善するもの(寛解期)があり、前者として小青竜湯、麻黄附子細辛湯、苓甘姜味辛夏仁湯、越婢加朮湯、葛根湯、麻黄湯、五虎湯(引用者注:苓甘姜味辛夏仁湯を除き、いずれも麻黄を含む)などが挙げられる。
二重盲検比較試験によりエビデンスが明らかになっている薬剤は小青竜湯のみであるが、麻黄剤は一般に有効性を示す。
「第114回日本耳鼻咽喉科学会総会ランチョンセミナー」 耳鼻咽喉科領域における漢方治療
☑️ランドマークスタディ
小青竜湯については多施設二重盲検のランダム化試験が行われています。絶対リスク減少26.5%で治療必要数3.77。従って試験の組み入れ基準を満たす患者が服用すれば、4人に1人は中等度から高度の改善が期待できると考えられます。以下、DeepLによる翻訳で抄録を引用します。
小青竜湯の有効性と安全性について、プラセボを対照とした共同二重盲検試験で検討した。試験は61の病院で通年性鼻アレルギー患者220名を対象に行われた。1回3gの顆粒を1日3回、2週間にわたって投与した。中等度から高度の改善が、投与された患者の44.6%、プラセボを投与された患者の18.1%で記録された。この差は有意であった(p <0.001)。副作用は、治療群の6.5%、対照群の6.4%に認められた(有意差なし)。副作用は軽度であり、患者の日常生活に影響を与えるものではなかった。
小青竜湯の通年性 鼻アレルギーに対する効果―二重盲検比較試験―.耳鼻咽喉科臨床 88(3), 389-405, 1995
出典: ci.nii.ac.jp
☑️証による使い分け
小青竜湯が効果不十分だったり、副作用が出た場合、他の薬剤を使うケースもあるでしょう。どのような基準で何を選択しているのでしょう。以下、総説を引用します。
証からみた場合
陰証なら麻黄附子細辛湯、陽証なら越婢加朮湯をまず用いてみるという方法があります。また、証をあまり考えずに、中間証に用いられる小青竜湯をまず用いて、その効果をみて、効果が不十分と感じたら、炎症が強く熱証らしいときは麻黄や石膏の多い薬剤に変更し、寒証らしい場合は附子剤の併用をするか、麻黄附子細辛湯に変更するといった方法もあります。
小青竜湯で副作用が出た場合
副作用として動悸、胃腸症状が出ることがあり、その場合は麻黄を含まない苓甘姜味辛夏仁湯を用います。
小青竜湯で症状が残る場合
水様鼻漏なら苓甘姜味辛夏仁湯、あるいは麻黄附子細辛湯と同時投与し、鼻閉の場合には麻黄湯に変更します。今中らは、花粉症には小青竜湯と五虎湯との併用が極めて有効としています。
「第114回日本耳鼻咽喉科学会総会ランチョンセミナー」 耳鼻咽喉科領域における漢方治療
☑️麻黄剤を併用する場合の注意
麻黄は特に厚労省の重大な副作用の項目はありませんが、重複による有害作用が予想され、注意が必要です。
主成分エフェドリンによる薬理作用の過剰効果
エフェドリンは交感神経、すなわちα・β受容体刺激作用を持ちます。副作用として心悸亢進、血圧上昇、頭痛、手指の震え、発汗、排尿困難、不安・幻覚などが報告されています。
麻黄の特徴
麻黄の主なアルカロイドはエフェドリンの他に光学異性体のプソイドエフェドリンがあります。エフェドリンと比べて、血圧上昇・心拍数増加・中枢作用は弱く、気管支拡張作用は同等、抗炎症作用や利尿作用は強いとされます。中麻黄と呼ばれる生薬はプソイドエフェドリンの含量が高いとされます。
エフェドリンの常用量
1回12.5~25mgを1日1~3回であるため内服の上限量は75mgと設定できます。二つのアルカロイドを指標にすると、エフェドリン上限量75mg≒ 麻黄4.7~10.6gとなります。麻黄湯の麻黄含有量は5gなので、麻黄湯でエフェドリン量としては上限と考えられそうです。麻黄の含量は、特に咳止めや炎症を抑えるエキス剤には4g以上配合される傾向があり、単剤で上限に近く、重複に注意が必要です。
麻黄成分が重複し、合計5gを超えた場合は疑義照会が必要
麻黄として1日5gを超える場合、前述したような理由で疑義照会をした方がよいでしょう。漢方エキス剤の中で麻黄湯の麻黄含量が最大量となり、その量が5gであることから、5gは安全性を担保するため一定の根拠になると考えられます。
マオウの1日あたりの総量がツムラ麻黄湯エキス顆粒(医療用)1日分に含まれる5gを超える場合は、疑義照会を行うこととした。
薬事情報やまなしNO.99
☑️まとめ
小青竜湯のエビデンスを確認しました。通年性アレルギー性鼻炎の患者を対象としたRCTがあり、治療必要数3.77で中等度以上の改善を示しました。
また麻黄を含む方剤は一般にアレルギー性鼻炎の急性症状に効果を期待できます。患者の証に応じて小青竜湯以外の麻黄剤を選択できる他、動悸・胃腸症状がでれば麻黄を含まない苓甘姜味辛夏仁湯を選択することも出来ます。また、麻黄剤の併用は麻黄が5gを超えたら疑義紹介した方がよいでしょう。
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最終更新日2022年3月25日
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