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発熱と悪寒の併存する麻黄湯証、体は温めるのと冷やすのとどちらがよいですか
☑️はじめに
風邪の引き初めには熱と同時に悪寒がします。
いったい保温とクーリングのどちらがいいのでしょう。
記事ではこの病態の把握と治療法を西洋医学と漢方の両面から解説します。
さくら先輩、麻黄湯は太陽病期の表実証、真熱表仮寒証に用いるのでしたね。
ゆきさん、勉強しているね。漢方の病態把握と治療法を再確認しよう。
プロローグ
Rp.麻黄湯
👨熱があります。寒気がして震えが
👧先輩が真熱表仮寒証とか言ってたやつ…体は温める?冷やす?👩風邪を引くと、体は熱の放散を防ぎ、また熱産生を増やそうとします。
👩寒気があれば、熱が上昇する途中なので、熱があっても保温が必要です。
👩体の火照りを感じるようになったら、クーリングの適応となります。👧麻黄湯は白湯に溶いて飲み、寒気がある間は毛布で保温して下さいね。
👩漢方による病態把握をもう少し詳しく説明しましょう。まず…出典: twitter.com
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☑️悪寒・戦慄について
西洋医学での悪寒・戦慄の解釈をおさらいしておきます。
風邪などにかかると、体温調節中枢の調節レベルが通常よりも高く設定されます。
この時、生体は体熱の放散を減らし、反対に体熱産生を増やそうとします。
皮膚血管と立毛筋を収縮させることで、体熱の放散量が急速に減少します。この時に生じる異常な感覚を悪寒と呼びます。
さらに筋肉を収縮させることで、体熱の産生を増加させます。このときに起きる震えを戦慄と呼びます。
体温調節中枢が設定したレベルまで体温が上昇してしまうと、悪寒や戦慄は消失します。
熱が急激に上がるとき、悪寒・戦慄が起こるのはなぜ?
☑️寒気があるときは保温する
保温の必要性を確認しておきましょう。
体温計の数値が高くても、本人が寒気を感じているときは熱産生中であるため、保温が必要です。
体温が上がりきるまで悪寒・戦慄は続きます。
身体の火照りを感じるようになった時が、調整レベルに至った印であり、初めてクーリングの適応となります。
熱が急激に上がるとき、悪寒・戦慄が起こるのはなぜ?
☑️漢方のパラダイムによる病態の認識法と治療法
漢方でも風邪の初期は体を温める解表剤を用います。
漢方による病態把握と治療法を見てみましょう。
症例から学ぶ和漢診療学
☑️陰陽の認識
まず陰陽について解説します。
漢方のパラダイムにおいて、生体は気血水および五臓の働きによって恒常性を維持していると考えます。さらに生体の恒常性が乱された場合、2型の生体反応の様式があると考えます。これが陰陽二元論です。
生体の呈する修復作用の性質が、熱性・活動性・発揚性の場合、陽の病態、すなわち陽性と呼びます。これに対して、寒性・非活動性・沈降性の場合、陰の病態、すなわち陰性と呼びます。
陽証・陰証は、経済指標におけるGDPのように、全体を把握するための概念です。後述する虚実・表裏・寒熱を総合的に判断して、陽証・陰証が決定されます。
☑️虚実の認識
虚の病態、すなわち虚証とは、生体が外乱因子による歪みを受けた場において動員された気血の力が弱い病態であり、一般的には生体全体の気血の量の水準が低いことを背景としたものです。
実の病態、すなわち実証とは、生体に加わった外乱因子が強力で、これに対して動員された気血の力が旺盛な病態です。一般的には生体全体の気血の量の水準が高く維持された状況を背景として成立します。
☑️寒熱の認識
生体が外乱因子によって恒常性を乱された場合、生体が呈する病状が熱性(熱感・充血・局所温度の上昇)であるか、寒性(冷感・冷え・血流低下・局所温度の低下)であるかを分かつ考え方が寒熱の認識です。
もっぱら局所的な病状の認識法として用いられる言葉です。例えば身体の上部の熱感と下半身の冷え(上熱下寒)の他、表裏の部位の症状についても表寒、裏寒、表熱裏寒などと表現されます。
寒熱の認識によって、陰陽に分ける闘病反応の認識に局所的な病床の要素が追加され、治療薬剤の具体的な指示が与えられます。
☑️真熱表仮寒証
熱証は冷まし、寒証は温めるのが基本原則です。
太陽病期の真熱表仮寒証について、寺澤は次のように書いています。
この時期(=太陽病期・表の陽証)の初発時にみられる悪風・悪寒は引き続いて起こる発熱の準備状態であるので、陰証でみられる真の表寒証でなく、偽性の表寒証とするのが正しい病態認識である。
症例から学ぶ和漢診療学
☑️解表剤と安静仰臥
太陽病期に用いる方剤は、発汗を促して解熱させます。このことを解表(かいひょう)といいます。
表の部位に気血を動員することで、表の偽寒証を改善します。
この治療法を成功させるためには、解表剤を服用後、安静仰臥し、身体を布団で被い、汗が出るのを待つことが必要です。
☑️傷寒論
漢方医学の古典である『傷寒論』では、麻黄湯は太陽病期(の表実証・表仮寒証)に用いる解表剤としています。
発熱、頭と項の痛み、悪寒、体の痛みなどを認め、発汗のないことが目標です。
太陽病、頭痛発熱、身疼腰痛、骨節疼痛、悪風(おふう:風に当たるとゾクゾクと嫌な感じがする)シ、汗無クシテ喘スル者、麻黄湯之ヲ主ル」
出典:傷寒論 太陽病中篇
☑️まとめ
風邪の初期に悪寒がする場合について、西洋医学と漢方医学、それぞれの考え方と対応を見てきました。
悪寒・戦慄は体温が上がり切るまで続く生体反応ですので、それまではクーリングでなく保温が必要です。
麻黄湯は太陽病期に用いる解表剤のひとつです。白湯に溶いて服用し、布団に入って体を温めて下さい。汗が出て解熱すれば、目的を果たしているため、服用を終了して構いません。
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最終更新日2022年4月30日
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