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若年女性の急性単純性膀胱炎、キノロン以外どんな選択枝がありますか
☑️はじめに
薬剤師国家試験で取り上げられる急性膀胱炎の薬剤は、シプロフロキサシンが多い印象があります。
エビデンスが豊富かつキノロンの中では狭域で、尿路感染症に繁用されてきました。一方、CYP1A2阻害作用を有し、テオフィリンなどと相互作用を有するため、代替薬が必要になるケースがあります。
レボフロキサシンでも良いのですが、大腸菌にキノロン耐性が増えていることから、キノロン以外の抗菌薬を考えてよいかも知れません。AMR対策として薬剤師も役割を期待されています。
記事では疑義照会やトレーシングレポートを書く際に役立つ情報を掲載したいと思います。
若い女性の単純性膀胱炎の治療ですけれど、年配の医師はレボフロキサシンやシプロフロキサシン、若い医師はセファレキシンやオーグメンチン、バクタを使われる印象があります。
JAID/JSC2011のガイドラインではキノロンを第一選択としていたけれど、近年はAMR対策としてキノロンを抑制する方向で進んでいるよ。一緒に見ていこう!
プロローグ
若い女性が尿意切迫感、頻尿を訴えて受診しました。
発熱なし。尿検査で白血球反応あり。
尿道炎を否定するためGram染色すると、GPC Clusterが見えました。
あなたが処方するのは…
出典: twitter.com
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☑️大腸菌はキノロン耐性化が進んでいる
尿路感染症の主な原因菌は大腸菌ですが、キノロン耐性化が増加しています。
複雑性尿路感染症において約40%、単純性尿路感染症でも約12%と、高い耐性頻度になっています。
尿路感染症にキノロンの一辺倒使用はストップ!
☑️キノロンの使用状況と大腸菌のレボフロキサシン耐性率
日本で使用される抗菌薬の93%は経口薬であり、そのうちの20%がキノロン(内訳は54%がレボフロキサシン、21%がガレノキサシン)です。
レボフロキサシンの使用量は、2004年から2016年にかけて34%も増加しました。
厚生労働省院内感染対策サーベイランスの2017年のデータによると、大腸菌のレボフロキサシン耐性率は全体で40%、外来患者で29%でした。
そのため、市中感染症・医療関連感染症のどちらにおいても、その有用性が低下していると考えられます。
【ミニレビュー】フルオロキノロン系抗菌薬
出典: www.theidaten.jp
☑️抗菌薬の使用と耐性菌の誘導の間には関連性がある
ある抗菌薬が使用されることで、その抗菌薬に対する耐性菌が誘導されることは間違いありません。
耐性菌が生じるのは3~5年の短い期間ではなく、10~20年という長い期間で徐々に世界規模で広がるため、各国でのサーベイランスのデータに注目していくことが大切です。
尿路感染症にキノロンの一辺倒使用はストップ!
☑️日本政府の方針-薬剤耐性(AMR)対策
耐性菌は国際的な問題となっている
近年、様々な抗菌薬に対する薬剤耐性菌が世界的に増加しており、国際社会でも問題になっています。
2015年5月の世界保健総会、翌6月に行われたG7サミットにおいて「薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクションプラン」が採択され、日本でもそれに応じて2016年4月に「AMR対策アクションプラン」が取りまとめられました。
キノロン使用の抑制が国策として掲げられている
AMR対策の一つの柱として抗微生物薬の適正使用の推進が挙げられており、これは適正使用を推進することによって不必要な抗菌薬の使用を減らし、耐性菌の減少を目指すものです。
キノロンはその標的の一つとなっており、2020年までに(2013年と比較して)使用量を50%減らすことが目標値として設定されました。また、大腸菌のキノロン耐性率を25%以下にすることも数値目標として設定されています。
2013年から2018年にかけて経口キノロンの販売量が17.1%減少しており、適正使用への意識は高まり、良い方向に進んでいっているように思われます。
キノロンの適正使用の重要性・必要性は明らかであり、国の政策の一つでもあります。
【ミニレビュー】フルオロキノロン系抗菌薬
出典: www.theidaten.jp
☑️「JAID/JSC感染症治療ガイド2019」 尿路感染症での改訂点
GNRではセフェム、BLI配合ペニシリンを第一選択
全体的にキノロン系薬の使用を可能な限り抑制するよう記載されています。
「JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015―尿路感染症・男性性器感染症―」においても、急性単純性膀胱炎については、閉経前女性の場合、「キノロン系薬を第一選択としてもよいが、尿検査でグラム陰性菌が確認されている場合にはセフェム系薬またはBLI(βラクタマーゼ阻害薬)配合ペニシリン系薬を推奨」としています。
耐性を避けるためキノロンを常に第一選択としない
現在、閉経前の単純性膀胱炎では原因菌の約70%がグラム陰性桿菌、約65%が大腸菌ですが、その一方で約30%がグラム陽性球菌です。
初期治療でグラム陰性桿菌とグラム陽性球菌をカバーする必要があります。
とはいえ、グラム陰性桿菌のキノロン耐性などを避けるためには、キノロン系薬を常に第一選択とすることは控えなければなりません。
GPCではキノロンを第一選択としてもよい
そのため、単純性膀胱炎でも、尿検査により原因菌の形態を判別することが重要とされています。
そして、グラム陰性桿菌が疑われる場合には、第一選択をBLI 配合ペニシリン系薬、セフェム系薬を第一選択として推奨しています。
もちろん、グラム陽性球菌が確認されている(疑われる)場合には、キノロン系薬を第一選択としてもかまいません。
尿路感染症にキノロンの一辺倒使用はストップ!
☑️グラム陽性球菌が確認された場合はキノロンでないといけないか
腸内の常在細菌叢への影響を考えると、キノロンの使用は極力さけたいところです。
グラム陽性球菌が検出された場合、キノロンを使用しない方法はあるのでしょうか。
疫学
非複雑性UTIの場合、次のような調査結果があります。
・大腸菌…75%
・肺炎桿菌…6%
・腐生ブドウ球菌…6%
・腸球菌…5%
・B群連鎖球菌…3%
Nat Rev Microbiol. 2015;13(5):269-284.
腸球菌や連鎖球菌をどう考えたらよいか
上述した結果にも関わらず、特別な背景のない若年女性の単純性膀胱炎において、グラム陽性菌としては腐生ブドウ球菌をカバー出来ればよいと思われます。
尿から腸球菌や連鎖球菌が検出されることがあっても、病原性は弱く、解剖学的な異常がない限り、通常は原因菌とならないと考えられるからです。
亀田感染症ガイドライン 女性の尿路感染症(version 3)
腐生ブドウ球菌(S. saprophyticus)治療例
サンフォード感染症治療ガイド2021を参照すると、腐生ブドウ球菌による単純性膀胱炎にはキノロン以外の抗生物質が推奨されていました。
これは国内の若い医師が選択する薬剤そのものです。
第一選択
Cephalexin または Amoxicillin Clavulanic Acid 7日間
Trimethoprime-sulfamethoxazole 3日間サンフォード感染症治療ガイド2021
☑️まとめ
特別な患者背景のない若年女性の単純性膀胱炎に、キノロン以外の選択枝があるか見て来ました。
初期治療として大腸菌と腐生ブドウ球菌をカバーすればよいと考えられます。
キノロン耐性が増えていますので、極力使用を避けるのは国のAMR対策として推進されているところです。
JAID/JSC感染症治療ガイド2019からセフェム、BLI配合ペニシリンを選択することが可能と考えられます。
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最終更新日2022年3月16日
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