テオフィリン服用中の膀胱炎にシプロフロキサシンは注意が必要ですか

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テオフィリン服用中の膀胱炎にシプロフロキサシンは注意が必要ですか

☑️はじめに

シプロフロキサシンはテオフィリンと併用注意です。

CYP1A2阻害作用があるからです。

では、どの程度の強度の相互作用なのでしょう。

臨床的に意味のある相互作用なのでしょうか。

先輩、国試で似たような出題を見た記憶があります。

103回 問270・271だね。文献やガイドラインを参照して、国試と臨床をつなげてみよう。

プロローグ

Rp.シプロフロキサシン✨3日分
👩この前、膀胱炎になった時と同じ薬?飲んだら眠れなくて、そんな副作用ありますか?

📖既往:喘息 定期薬:テオフィリン✨
‍👨‍⚕️CYP1A2の相互作用?

‍👩‍🎓併用によりテオフィリン経口クリアランスが低下、中毒症状が出た可能性があります。

CYP1A2の発現量は個人差が大きく、テオフィリン経口クリアランスの低下の程度も4.4~30%と差が大きいが平均して19%程度です。

シプロフロキサシン併用によりテオフィリン中毒による入院リスクが調整オッズ比約2倍、一方レボフロキサシン、ST合剤、βラクタムでは有意差なしの報告あり。

またレボフロキサシンの阻害作用はキノロンをIII群に分けたうち最も弱い群に分類にされます。

‍👨‍⚕️…という理由で、キノロンでしたら相互作用の少ないレボフロキサシン、若しくはCVA/AMPC、ST合剤、CCL等を考慮して頂けないでしょうか
☎️分かりました。今回はグラム染色でGPC(+)でしたので、レボフロキサシン3日分に変更お願いします。

出典: twitter.com

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☑️シプロフロキサシンによるテオフィリン代謝阻害作用は個人差が大きく、一律の減量はそぐわない

この2剤の併用は、添付文書で禁忌ではなく併用注意です。

AUC上昇率は1.2倍と、そこまで強度の高い相互作用ではありません。

文献を確認すると、併用によるテオフィリン経口クリアランスの低下の程度は平均19%、ただし4.4~30%と個人差が大きいのが目立ちます。

この理由として、CYP1A2の発現量及び/又は肝CYP1A2及びCYP3A4の阻害の程度に起因と考察されています。

テオフィリン減量の判断は、個々のケースで考える必要がありそうです。

The effect of ciprofloxacin on theophylline pharmacokinetics in healthy subjects

Br J Clin Pharmacol . 1995 Mar;39(3):305-11. doi: 10.1111/j.1365-2125.1995.tb04453.x.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️引用文献をDeepLで読んでみよう

…以上のように、今回の研究により、シプロフロキサシンとテオフィリンの相互作用の影響は個人によって大きく異なることが明らかになった。

また、シプロフロキサシンの投与後、テオフィリンを一律に減量すると、テオフィリン濃度は低下し、シプロフロキサシの影響をほとんど受けない集団の大部分では治療量以下の濃度になると考えられる。

そのため、シプロフロキサシン投与開始2~3日後に血漿中テオフィリン濃度を測定し、テオフィリン濃度が顕著に上昇した患者のみ、投与量を減量することが相互作用への適切な対処法である。

The effect of ciprofloxacin on theophylline pharmacokinetics in healthy subjects

Br J Clin Pharmacol . 1995 Mar;39(3):305-11. doi: 10.1111/j.1365-2125.1995.tb04453.x.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️シプロフロキサシンによる治療は、高齢者のテオフィリン中毒のリスクの有意な上昇と関連

併用によりテオフィリンAUCが上昇することは分かりましたが、臨床上問題になるものなのでしょうか。

ここで、併用リスクを検討した観察研究を紹介します。

テオフィリンによる治療を受けた、66歳以上のオンタリオ州住民のコホートを対象としています。

シプロフロキサシンによる治療は、テオフィリン中毒のリスクの有意な上昇と関連しているため、臨床的に適切であれば、テオフィリン投与中の高齢患者には代替抗生物質を検討すべき、と結論しています。

Ciprofloxacin-induced theophylline toxicity: a population-based study

Eur J Clin Pharmacol . 2011 May;67(5):521-6. doi: 10.1007/s00228-010-0985-0. Epub 2011 Jan 14.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️引用文献をDeepLで読んでみよう

テオフィリンによる治療を受けている高齢者77,251人のうち、テオフィリン中毒で入院した適格症例180人とマッチした対照者9000人が同定された。

多変量解析による調整後、シプロフロキサシンの投与によりテオフィリン中毒のリスクが約2倍上昇した[調整後OR 1.86、95%信頼区間(CI)1.18-2.93]。

一方、中立的な比較対照抗生物質(レボフロキサシン、トリメトプリム・スルファメトキサゾール、セフロキシム)の投与を受けた患者群では、テオフィリン中毒のリスク上昇は認められなかった(調整後OR 0.78; 95% CI 0.38-1.62 )。

Ciprofloxacin-induced theophylline toxicity: a population-based study

Eur J Clin Pharmacol . 2011 May;67(5):521-6. doi: 10.1007/s00228-010-0985-0. Epub 2011 Jan 14.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️急性単純性膀胱炎(閉経前)の代替薬をJAID/JSC感染症治療ガイドラインで考える

シプロフロキサシン併用により、高齢者においては有意なテオフィリン中毒リスクがあることを確認しました。

ここからは、どのような処方提案が出来るか考えてみます。

まず、治療に適切な抗生物質の選択肢を確認しましょう。

ガイドラインでは基本的なスタンスとして次のように書かれています。

・・・(キノロンは)JAID/JSC感染症治療ガイド2011では閉経前、閉経後に関わらず、(急性単純性膀胱炎の)第一選択として位置づけられていた。しかし、近年ではE. coliを中心とするグラム陰性桿菌におけるキノロン耐性株およびESBL産生株の割合が年々増加する傾向にあり、今後はキノロン系薬の使用は抑制していくべきと考えられている。

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―尿路感染症・男性性器感染症―

出典: www.kansensho.or.jp

☑️推奨される治療薬について

基本姿勢を踏まえて、ガイドラインを読み進めます。

推奨グレード:Bは「一般的な推奨」、文献エビデンスレベル:IIは「非ランダム化比較試験」を指します。

・急性単純性膀胱炎から分離されるE. coliの薬剤感受性は多くの薬剤に対して比較的良好であるが、BLIが配合されていないペニシリン系薬単体の有効性は低い。BLI配合ペニシリン系薬、セフェム系薬、キノロン系薬いずれも 90%以上の感受性が認められる(BⅡ)。

・βーラクタム系薬はグラム陽性球菌に無効なことが多いため、尿検査でグラム陽性球菌が疑われる場合にはキノロン系薬を選択する3(BⅡ)。

・尿検査でグラム陰性桿菌が確認されている場合にはキノロン系薬の使用を控え、セフェム系薬またはBLI 配合ペニシリン系薬を推奨する(BⅡ)。

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―尿路感染症・男性性器感染症―

出典: www.kansensho.or.jp

☑️処方例

具体的には、次のような処方が推奨されています。

第一選択
● LVFX 経口 1 回 500mg・1 日 1 回・3 日間
● CPFX 経口 1 回 200mg・1 日 2~3 回・3 日間
● TFLX 経口 1 回 150mg・1 日 2 回・3 日間

第二選択
● CCL 経口 1 回 250mg・1 日 3 回・7 日間*
● CVA/AMPC 経口 1 回 125mg/250mg・1 日 3 回・7 日間*
● CFDN 経口 1 回 100mg・1 日 3 回・5~7 日間*
● CFPN-PI 経口 1 回 100mg・1 日 3 回・5~7 日間*
● CPDX-PR 経口 1 回 100mg・1 日 2 回・5~7 日間*
● FOM 経口 1 回 1g・1 日 3 回・2 日間**
● FRPM 経口 1 回 200mg・1 日 3 回・7 日間**

*グラム陽性球菌が疑われる場合、または検出されている場合は選択しない
**ESBL 産生菌が疑われる場合、または検出されている場合に選択する

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―尿路感染症・男性性器感染症―

出典: www.kansensho.or.jp

☑️まとめ

テオフィリンとシプロフロキサシンの併用について概観して来ました。

併用によりテオフィリン経口クリアランスが低下すること、CYP1A2の相互作用で強度に個人差が大きいこと、観察研究において高齢者の入院リスクと有意に関連することが分かりました。

また閉経前の急性単純性膀胱炎に用いる抗生物質について確認しました。

以前はキノロンが第一選択とされましたが、キノロン耐性化、ESBL産生菌の誘導の観点からキノロンを温存したいこと、グラム陽性球菌が関与すればキノロンを使用すること、グラム陰性桿菌が関与すればBLI配合ペニシリン・セフェムを使用することが分かりました。

また、キノロンが必要な場合、レボフロキサシンが代替薬になり得ることが分かりました。

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最終更新日2022年3月3日

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