ハーボニーは軽度・中等度の腎機能低下では、用量調節は不要。

ハーボニーはledipasvir/sofosbuvirの配合剤です。sofosbuvirは代謝物が腎排泄されるため、重度腎障害(補正eGFR<30)、透析患者では禁忌とされています。軽度・中等度腎障害の場合はどう考えたらよいでしょうか。

米国・EUの添付文書では、軽度・中等度の腎機能障害に用量調整は不要とされています。米国の添付文書では、特別な集団として腎機能低下者の動態が検討されています。軽度(補正eGFR:80~50)、中等度(補正eGFR:50~30)ではsofosbuvirのAUC 0-infは61%、107%増加、また主代謝物GS-331007のAUC 0-infは55%、88%増加しました。1)

薬剤師のるぅ先生から腎機能中等度低下時のsofosbuvirの補正係数0.5で妥当だろうかとコメントを頂いたのですが、それを裏付けるようなデータと考えます。

sofobuvirは3倍量の1200mg単回投与で、有害事象の頻度と重症度はプラセボと同様でした。

GS-331007の半減期は、腎機能正常で22.7時間より、補正係数0.5の場合、2倍の45.4時間に延長していると考えられます。蓄積率は、1/(1-exp(-0.693Tau/T-half))から1.9と3.3ですから、中等度腎機能低下でもCss.maxは単回投与時の3.3倍程度であり、安全性はあると解釈出来るかも知れません。

るぅ先生は、ハーボニー配合錠1錠48時間おき、と言う処方を受けられたそうです。

ハーボニー配合錠の用法用量設定の根拠、と言う資料がありました。1) 第1相試験でledipasvir(LDV)90mgを3日間単独投与での血漿中LDV濃度のトラフ値は、ジェノタイプ1のHCV平均推定EC90の127.4倍とあります。半減期は約50時間ですので、投与間隔が倍の48時間になったとして、トラフ値はEC90の63.7倍で、これは30mgを3日間投与でのトラフ値のEC50の51.1倍と同程度です。また第2相の用量設定試験で4剤併用した結果、SRV24率は、LDV30mg+DAAの24週間投与群と、90mg+DAAの12又は24週間投与群で統計的有意差は認められませんでした。

これらの知見から、承認外の用法用量ですが、ハーボニー配合錠48時間おきも、ある程度の有効性はあるかも知れません。

ただ、確実な治療効果を得る為には、用量調節をしない投与方法を取る方がbetterではないかと私は思います。

参考文献

1)PMDA「ハーボニー配合錠に関する資料」


0

妊娠中のアセトアミノフェンとNSAIDsの安全性

アセトアミノフェンは、FDA薬剤胎児危険度分類基準でB:人での危険性の証拠はない、妊娠の全ステージにおいて比較的安全に使用出来る薬剤です。

添付文書に妊娠末期の動脈管収縮リスクが記載されていますが、根拠としている動物実験はラットに常用量の15倍を投与したデータであり、ヒトに常用量を投与した観察研究では結論が出ていません。

胎児性動脈管早期閉鎖は全分娩の0.6%に生じ、その2/3以上は特発性との報告があります。母体にアセトアミノフェンの服用歴があったとしても、因果関係があるとただちに結論する事は困難です。

また妊娠初期にアセトアミノフェンに曝露した9146例において、奇形等の増加は認められませんでした。1)

NSAIDsには流産リスクの報告があります。

米国カリフォルニア州のコホート研究で、妊娠中にイブプロフェン、ナプロキセンを服用した場合、20週までの流産リスクが1.8倍に高まりました。

特に妊娠初期や1週間以上の長期服用では、5.6~8.1倍と大幅にリスクが高まる結果でした。

一方で、アセトアミノフェンでは流産の相対リスクは1.2(95%CI:0.8-1.8)、妊娠1週間以内の服用と1週間以上の服用でも相対リスクはそれぞれ、0.8倍、0.7倍で、すべて有意差はありませんでした。

研究グループは妊娠を望む女性は妊娠初期のアスピリンやNSAIDsの服用は避けるべきと警告しています。2)

1)Perinatology.com/Drugs in Pregnancy and Lactation(Briggs GG)
2)Exposure to non-steroidal anti-inflammatory drugs during pregnancy and risk of miscarriage: population based cohort study BMJ 2003.8.16

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

実践妊娠と薬第2版 10,000例の相談事例とその情報 [ 林昌洋 ]
価格:14040円(税込、送料無料) (2018/9/20時点)

 

 

0

OATP1を介したスタチンの相互作用と横紋筋融解症リスク。

横紋筋融解症の発症リスクはスタチン単独療法で低く、アトルバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチンで0.44/10,000人年と報告されています。スタチンにフィブラートを併用すると、特に高齢の糖尿病患者でリスクが増加するのが観察されました。発売中止となったセリバスタチンは発症リスクが高く、単独で5.34/10,000人年でした。また、アトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチンとフィブラートとの併用療法では5.98/10,000人年とリスクが上昇し、特にフィブラートと組み合わせたセリバスタチンは1,035/10,000人年の発症をもたらしました1)。

基礎研究の知見から、セリバスタチンによる横紋筋融解症は、SLCO1B1遺伝子によってコードされる肝取り込みトランスポーターOATP1B1の遺伝子変異、及びOAT1B1を介した相互作用の関与が想定されています2)。また、大規模なコホート研究で、プラバスタチンを含むCYP3A4で代謝されないスタチン内服患者におけるクラリスロマイシンの安全性の検討がありました。結果、アジスロマイシンに比して急性腎傷害による入院を1.65倍、高カリウム血症による入院を2.17倍、全死亡リスクを1.43倍有意に増加させました。理由として、肝取り込みトランスポーターOATP1B1とOATP1B3がクラリスロマイシンにより阻害される機序が考えられています3)。ただ、クラリスロマイシンの海外用量は1,000mg/dayですので、外的妥当性の解釈には注意が必要です。

スタチンとOATP1を阻害する薬剤の併用は慎重を期した方が良いかも知れません。新規薬剤では、心不全に適応のあるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤サクビトリルと、アトルバスタチンの併用による横紋筋融解症が報告されています。カナダの添付文書には、併用によりアトルバスタチンのCmax2倍、AUC1.3倍に増大させること、サクビトリルがOATP1B1および1B3を阻害することが記されています4)。

最後に、横紋筋融解症を回避する為のマネジメントについて触れておきます。米国のStatin Muscle Safety Task Forceのアルゴリズムでは、スタチンを休止するCKの判断値を正常上限値(upprr limit of the normal range:ULN)の3倍としています。日本臨床化学会(JSCC)の標準化対応法によるCKの基準値は男性55~204IU/L 女性42~164IU/Lですが、試薬や機器によっては若干異なるため、上限値(ULN)を250とする施設もあります。ULNを200IU/Lとすると600IU/Lが判断値となります。CK≦3xULNであれば継続投与し、CK>3xULNまたは筋症状があれば2~4週間休薬して経過を見ます。休薬によって症状が改善した場合、その薬を中止・他のスタチンを低用量で投与開始し、とくに異常がなければ最大容量または目標とするLDL値が得られるまで増量するとしています。

1)Incidence of hospitalized rhabdomyolysis in patients treated with lipid-lowering drugs. PMID:15572716
2)OATP1B1-related drug–drug and drug–gene interactions as potential risk factors for cerivastatin-induced rhabdomyolysis PMCID: PMC3894639
3)Risk of adverse events among older adults following co-prescription of clarithromycin and statins not metabolized by cytochrome P450 3A4. PMID: 25534598
4)Rhabdomyolysis After Coadministration of Atorvastatin and Sacubitril/Valsartan (Entresto™) in a 63-Year-Old Woman PMCID: PMC5089965

0

フェンタニル口腔粘膜製剤は、血漿中蛋白濃度で効果に差が生じるか。

フェンタニル口腔粘膜製剤は強オピオイド定時投与中の突出痛を有するがん患者のレスキューに用いられる製剤です。
血漿蛋白結合率が高い為、血清アルブミン濃度が低いと効果や副作用が強く出るのではないかと懸念されます。
実際、オピオイドスイッチングで他剤からフェンタニル貼付剤に切り替えた場合、血清アルブミンレベルの層別で効果に差があったとする報告があります1)。
薬物動態理論からはどのように分析されるでしょうか。

フェンタニルの薬物動態パラメーターは以下です。
-----------------------
バイオアベイラビリティ F: 65%(50%は口腔粘膜から、15%は消化管から)
未変化体尿中排泄率  Ae:10% : 主に肝代謝
分布容積 Vd:420L   : 7L/kg
全身クリアランス CLtot= 766.7mL/min
腎クリアランス   CLR=Ae・CLtot/D=76.7mL/min
肝クリアランス    CLH=CLtot-CLR=690mL/min
血漿蛋白結合率80~86%で、fuP14%(<20%) :binding sensitive
-----------------------
B/P比は不明ですので、B/P>0.5を用います。
EH’=690(mL/min)/0.5x(1600mL/min)=0.86
EH’は0.86より小さな値ですので、CLH=QH、CLH=CLH、CLH=fuB・CLintHの可能性があります。
フェンタニルは脂溶性なので、血球移行率は高いと予想されます。B/P比が0.6程度あれば、EH’>0.7で肝血流量依存型と判断されます。
実際、文献よりフェンタニルが肝血流量依存型と言う情報を得ました2)。

従って、CLtot=CLH=QHと表現されます。
総濃度はCLtot=QH (CLpo=fuB・CLintH/Fa)
遊離型濃度は CLtotf=QH/fuB (CLpof=CLintH/Fa)

EH’>7で遊離型薬物濃度が増加(fuBが上昇)すると、
持続注入(パッチ剤を想定)を行っている場合、fuBが上昇してもCLtotは変化しないので、定常状態の薬物総濃度は変化しませんが、CLtotfは低下するので遊離型薬物濃度は上昇することが推定されます。
静注繰り返し投与(バッカル剤の口腔粘膜吸収を想定)の場合、fuBが上昇してもCLtotは変化しないので、定常状態の平均薬物総濃度は変化しませんが、CLtotfは低下するので平均遊離型濃度は上昇することが推定されます。
経口繰り返し投与(バッカル剤の消化管吸収を想定)の場合、fuBが上昇するとCLpoは上昇するので、定常状態の平均薬物総濃度は低下し、CLpofは変化しないので遊離薬物濃度は変化しないことが推定されます。

参考文献
第3版 臨床薬物動態学 緒方宏泰編著
1)Influence of Serum Albumin Levels during Opioid Rotation from Morphine or Oxycodone to Fentanyl for Cancer Pain
2)フェンタニル・パッチにおける薬学的ケア 日病薬誌 第46巻5号(647‒649)2010年

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

臨床薬物動態学第3版 薬物治療の適正化のために [ 緒方宏泰 ]
価格:5184円(税込、送料無料) (2018/9/20時点)

0

SUR2受容体に親和性の高いSU剤は、虚血性心疾患のリスクとなるかも知れない。

要点:虚血性心血管の既往症があってSU剤を使用する場合、虚血プレコンディショニングを邪魔しないグリクラジドが安全性が高いかも知れない。

デンマークの観察研究の報告では、SU剤はメトホルミンと比して全死亡率や心血管死亡率との関連が認められました。

グリメピリド、グリベンクラミド、グリピジドおよびトルブタミドを含む繁用されるSU剤を用いた単独療法で、死亡率および心血管リスクの増加と関連しているようだと結論されています。

一方、グリクラジドおよびレパグリニドは、他のSU剤より低リスクのようでした。

具体的な結果を見ましょう。心筋梗塞の既往のない患者において、総死亡のハザード比はグリメピリド:1.32(1.24-1.40)、グリベンクラミド:1.19(1.11-1.28)、グリピジド:1.27(1.17-1.38)、トルブタミド:1.28(1.17-1.39)でした。

また、心筋梗塞の既往のある患者では、グリメピリド:1.30(1.11-1.44)、グリベンクラミド:1.47(1.22-1.76)、グリピジド:1.53(1.23-1.89)、トルブタミド:1.47(1.17-1.84)でした。

統計的有意差を持って、リスクの増大が観察されました。

また、心筋梗塞の既往がない患者、および既往のある患者で、総死亡のハザード比はグリクラジド:1.05(0.94-1.16)および0.90(0.68-1.20)、レパグリニド:0.97(0.81-1.15)および1.29(0.86-1.94)で、メトホルミンと比較して統計的有意差は観察されませんでした。

薬理学的に見ると、SU剤は膵β細胞膜のSUR1に直接結合し、KATPチャネルを閉口させ、これにより細胞膜の脱分極が生じ、電位依存性Ca2+チャネルが開口、Ca2+イオンが細胞内に流入します。

ここから先は、グルコースによる生理的なインスリン分泌と共通の経路になります。これがSU剤がインスリン分泌を促すメカニズムです。

SU剤の作用する受容体SUR1は、膵β細胞の他、大脳皮質や視床下部に分布しています。

また、SUR2は心筋、骨格筋、平滑筋、血管平滑筋に分布しています。とくに心筋に発現しているSUR2Aは虚血プレコンディショニングと言う心筋保護作用に関わっていると考えられています。

心筋のKATPチャネル(SUR2A)は通常はほとんど閉口されていますが、心筋が虚血状態(心筋内ATP濃度低下)となったときには、KATPチャネルが開口することで心筋収縮力を低下させて心筋を保護します。

これを、虚血プレコンディショニングといいますが、心筋のSUR2Aに親和性をもつSU薬は心筋KATPチャネルの開口を阻害し、心筋障害を助長してしまう可能性があります。

ベンズアミド構造を持つグリベンクラミドなどのSU剤は、心臓のSUR2受容体に親和性が強く、心虚血時に悪影響を及ぼす可能性が指摘されていました。

今回の観察研究は、その仮説を支持する結果でした。グリクラジドはリスク増加傾向はありましたが、メトホルミンと比較して統計的有意差は観察されませんでした。

これはグリクラジドが膵SUR1受容体に選択性が高いと言う薬理学的知見と矛盾しません。

これらの知見から、心筋梗塞など虚血性心疾患の既往のある患者にSU剤を使用する場合は、グリクラジドが安全性が高いかも知れません。

1)Mortality and cardiovascular risk associated with different insulin secretagogues compared with metformin in type 2 diabetes, with or without a previous myocardial infarction: a nationwide study. PMID: 21471135

2)月刊糖尿病 2009.7 医学出版
3)類似薬の使い分け  羊土社

0

抗てんかん薬の催奇形性、特に神経管開存は葉酸代謝阻害が一因と考えられ、妊娠前からの葉酸服用を指導する必要がある。

要点:抗てんかん薬の催奇形性、特に神経管開存は葉酸代謝阻害が一因と考えられ、妊娠前からの葉酸服用を指導する必要がある。

バルプロ酸(VPA)による特徴的な奇形として、二分脊椎が1~2%の頻度発生した事が報告されています。VPAの催奇形の危険度は投与量・血中濃度と相関があり、血中濃度が70ug/mL以下ではリスクの増大が見られない為、治療上可能であれば、この濃度以下に維持する事の重要性が指摘されています。過去に、てんかん妊婦938例の妊娠について調査が行われ、抗てんかん薬に暴露されたてんかん妊婦の児の奇形発生率は9.0%でした。VPA用量は奇形発生率と相関があり、VPA濃度が70ug/mL以上では奇形発生率は41.7%(5/12)、70ug/mL未満では6.3%(3/48)でした1)。

バルプロ酸ナトリウムによる先天性の奇形の発症頻度は、1日服用量が1,500mg以上ではオッズ比が10.9だったのに対して、1日服用量が1,500mg以下では3.7だったとの疫学調査が報告されています2)。別の研究者は、バルプロ酸ナトリウムの1日服用量が600mg以下では、1,000mg以上と比較して胎児の先天異常のリスクは有意に少なかった事を報告しています。

ヨーロッパにおける5つの前向き研究に蓄積された1,379例の児のデータが再分析されている。バルプロ酸の1日服用量が>1,000mg以上では、≦600mg服用群と比較して、先天大奇形MCA(特に神経管欠損)の有意なリスク増加が見られました3)。[RR:6.8, 95%CI: 1.4-32.7]

日本てんかん学会のガイドラインでは、妊娠前から葉酸の補充を行うこと、抗てんかん薬と葉酸の血中濃度を測定する事が勧告されています。「てんかんを持つ妊娠可能年齢の女性に対する治療ガイドライン」によれば、妊娠前の発作の抑制として、必要最低限の抗てんかん薬単剤で試み、VPAは1,000mg/日以下が望ましい、とされています。また、血中濃度に依存して奇形発現率が増加するので、なるべく徐放剤を用いることが推奨されます。

抗てんかん薬の催奇形性、特に神経管開存は葉酸代謝阻害が一因と考えられています。葉酸補充が催奇形の頻度を減少させるかは必ずしも明らかになっていませんが、抗てんかん薬内服の場合は、妊娠前から1日5mgの葉酸の服用が推奨されています。抗てんかん薬服用中の葉酸の効果はまだ十分なデータはありませんが、一般集団では葉酸の0.4mg/日の服用によって、神経管開存の70%程度が防止出来ることが報告されています4)。

葉酸の摂取による胎児奇形の発症防止は、妊娠4週から7週末までの絶対過敏期(ほぼ妊娠2ヶ月に相当する)にしか有効に働きません。この時期に入った事は、基礎体温を記録しながら余程慎重に見ていなければ気づかれないので、葉酸を効果的に投与するには、妊娠前からの服用を指導する必要があります。

参考文献
「実践 妊娠と薬 第2版」
1)Congenital malformations due to anti epileptic drugs. Epilepsy Res, 33(2-3): 145-158. 1999

2)Antiepileptic drug use of women with epilepsy and congenital malformations  in offspring. Neurology, 64(11): 1874-1878, 2005
3)Material use of Antiepileptic drugs and the risk of major congenital malformations: a joint European prospective study of human teratogenesis associated with maternal epilepsy. Epilepsia, 38(9): 981-990, 1997

4)Recommendation for the use of folic acid to reduce the number of cause of spina bifida and other neural tube defects. MMWR Morb Mortal Wkly Rep, 49: 513-516, 1991

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

実践妊娠と薬第2版 10,000例の相談事例とその情報 [ 林昌洋 ]
価格:14040円(税込、送料無料) (2018/9/20時点)

0

スタチンとマクロライドの相互作用リスクは一様でない。リスクの高いのは、シンバスタチン、クラリスロマイシンが共に高用量の場合。




要点:シンバスタチンを高用量で服用している小柄な女性は、クラリスロマイシン800mg/dayを含むピロリ菌除菌レジメンで横紋筋融解症を起こしやすい。

スタチンとマクロライドの相互作用は、CYP3A4を介する薬物代謝阻害作用と、OATPsを介する薬物トランスポーター阻害作用が知られていますが、今回は薬物代謝阻害作用の面から考察をします。

72,591人を対象としたカナダのコホート研究で、CYP3A4で代謝されるアトルバスタチン、シンバスタチン服用患者にエリスロマイシン、クラリスロマイシンを投与した、安全性の検討があります。アジスロマイシンと比較して、30日以内の横紋筋融解症による入院は絶対リスクで0.02%(95%CI;0.01-0.03)上昇しました。急性腎傷害は絶対リスクで1.26%(95%CI0.58-1.95%)、総死亡は絶対リスクで0.25%(95%CI0.17-0.33%)上昇しました1)。

この論文の結果を日本の臨床に応用することは可能でしょうか。外的妥当性の解釈を試みます。

まず、国内の添付文書上、アトルバスタチンはクラリスロマイシンと併用注意であり、併用により血漿中薬物濃度の有意な上昇(Cmax+55.9%、AUC+81.8%)が見られたと記載されています。エリスロマイシンは具体的な数値はありませんが、併用注意であり、危険因子-横紋筋融解症のと思われますが-、腎機能障害と記載されています。また、シンバスタチンは、添付文書上エリスロマイシン・クラリスロマシンと併用注意であり、具体的な数値はありませんが、急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症が現れやすい。腎障害のある患者には特に注意すること、と記載されています。

インタビューフォームを参照すると、アトルバスタチン:本剤10mgを1日1回、8日間経口投与し、その投与開始後6日目にクラリスロマイシン500mgを1日2回、3日間経口投与、併用による本剤の血漿中活性体濃度の上昇(Cmax:+55.9%、AUC0-Tlast:+81.8%)が認められた。相互作用発現機序として、クラリスロマイシンによる代謝阻害が示唆された。 また、エリスロマイシン500mgを1日4回、11日間経口投与し、その投与開始後8日目に本剤10mgを1日1回、4日間経口投与結果:併用による本剤の血漿中HMG-CoA還元酵素阻害活性体濃度の上昇(Cmax:+37.9%、AUC0-∞:+32.5%)が認められた。相互作用発現機序として、エリスロマイシンによる代謝阻害が示唆された、とあります。

同様にシンバスタチンは1.5g/日のエリスロマイシンまたはプラセボを2日間投与し、2日目に40mg/日のシンバスタチンを経口投与した後の血清中のシンバスタチン、シンバスタチンのオープンアシド体、エリスロマイシンの濃度を24時間後まで測定した。エリスロマイシンは、シンバスタチンの最高血清濃度(Cmax)を3.4倍上昇させ、0~24時間後までの血清シンバスタチンのAUC(0~24)を6.2倍増大させた。エリスロマイシンはシンバスタチンのオープンアシド体のCmaxを5倍上昇させ、AUC(0~24)を3.9倍増大させた、とあります。

また、PISCS理論からは、次のまとめ表が参考になります2)。
リポバス       リピトール
CR(CYP3A4):1.00 CR(CYP3A4):0.68
クラリスロマイシン IR(CYP3A4):0.88  AUC11.9倍      AUC1.8~4.4倍 (実測値)
エリスロマイシン  IR(CYP3A4):0.81   AUC6.2倍       AUC1.3倍      (実測値)

上述のコホート研究の結果を日本に外挿することは出来るかですが、注意が必要なのは、薬剤の用量です。

クラリスロマイシンの国内用量は400mg/dayですが、海外用量は1,000mg/dayです。クラリスロマイシンのCYP3A4阻害作用はMBIかつ用量依存性が指摘されていますので、通常の400mg/dayでの相互作用は相対的に少ないと考えられます。CAM400mg/day、800mg/day 1週間の投与により、内因性コルチゾールのクリアランスは各々30%、60%低下したと言う報告があります3)。CLtot=Dose/AUCと言う関係式から、AUCは各々1.43倍、2.5倍に上昇すると推定されます。

また、スタチンの用量にも注意が必要です。
シンバスタチンの国内用量は~20mg/dayですが、海外用量は~80mg/dayです。リポバスのインタビューフォームには、米国の添付文書が掲載されていて、「治療開始1年間は、横紋筋融解症を含むミオパチーのリスクが上昇するため、80mgの投与は、筋毒性の形跡がなく、慢性的(例えば、12ヶ月もしくは以上)に服用している患者に制限すること。すでに80mgを服用して禁忌もしくは、シンバスタチンの上限用量に関係している相互作用のある薬剤を服用する必要のある患者は、相互作用の可能性の少ないスタチン製剤に切り替えること。横紋筋融解症を含むミオパチーのリスクは、80mgの用量に関連して上昇するため、40mgでLDL-Cの目標達成できない患者には、80mgを投与するのではなく、LDL-C低下がより効果のあるその他のLDL-C低下薬を選択すること」とあります。

以上の知見から、スタチンとマクロライドの併用について考える場合、リスクは一様でなく、薬剤によって異なり、また使用する用量によっても異なります。患者背景によっても異なります。国内で遭遇する可能性がある処方で注意が必要なのは、シンバスタチンを10~20mgの用量で用い、腎機能が低下していて、体格が小柄であり、ピロリの除菌をクラリスロマイシン800mg/dayのレジメンで使用する場合、また感染症の治療にエリスロマイシン1,200mg/dayで使用する場合。これらは特にリスクが高く、注意が必要と考えられます。

参考文献
1)Statin toxicity from macrolide antibiotic coprescription: a population-based cohort study.PMID: 23778904
2)これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの理論と実践  大野能之・樋坂章博 編著 じほう
3)”Dose-dependent inhibition of CYP3A activity by clarithromycin during Helicobactre pylori eradication therapy assessed by changes in plasma lansoprazole levels and partial cortisol clearance to 6β-hydroxycortisol”Clin Pharmacol Ther. 72. 33-43 (2002)

0

甘草含有する漢方薬を長期服用する場合、定期的なカリウム値のチェックが望ましい。




要点:甘草を含有する漢方薬を長期に服用する場合は、低カリウム血症を早期に発見出来るように、定期的なカリウム値のチェックが望ましい。

1993年Stormerは、従来の偽アルドステロン症の発症量を計算し、グリチルリチン酸のヒトの1日許容摂取量を10mg、最小中毒量を100mg/日としました1)。グリチルリチンを含む製剤は、適量でも慢性的に使用していると血圧を上昇させ、血中カリウム濃度を低下させると言う報告もあります2)。ある症例報告では1日12~18mgのグリチルリチンを2、3年間服用してカリウム1.2mEq/Lに至る、偽アルドステロン症を起こした70歳の被験者に、86mgのグリチルリチンを11日服用させた所、7日目に血清カリウムは3.0mEq/Lまで低下しました。

一方で、厚労省の重篤副作用疾患別対応マニュアルでは偽アルドステロン症の概要を以下のように記載しています。「男女比では1:2で女性が多い。全体の80%が50~80 歳代での発症となっている。さらに低身長、低体重など体表面積の小さい人や高齢者に発症しやすい。発症期間は10日以内~数年と幅は広いが、40%が3カ月以内の発症となっている。副作用の発現量は初期の報告例では、大量投与例が多かったが、最近では1 日甘草1~2g程度やグリチルリチンとして1 日150mgの製剤でも報告例がある。原因物質は甘草に含まれるグリチルリチン酸(グリチルリチン)の代謝物グリチルレチンである。」

甘草1g当たりには約40mgのグリチルリチンが含まれています(厚生省昭和53年;薬発第158号)。一般用医薬品(OTC薬)におけるグリチルリチン量の含有量は1 日量として200mg、甘草として5gを超さないこととなっています(厚生省昭和53年;薬発第158号)。

早期発見に必要な検査と実施時期ですが、特に自覚症状はないが、血液検査で偶然に低カリウム血症、カリウムの低値が発見され、本症の診断に至るものも少なくありません。低カリウム血症に伴い、心室性の不整脈を来した症例もまれではありません。本症を惹起しうる薬剤を服用している患者にあっては、投与開始時、あるいは投与量の変更時は1カ月以内、維持期でも3カ月から6カ月に1回の定期的な血清カリウム値のチェック、あるいは心電図の検査などが重要であると考えられています4)。

1)Glycyrrhizic acid in liquorice–evaluation of health hazard.
2)The association between consistent licorice ingestion, hypertension and hypokalaemia: a systematic review and meta-analysis. PMID: 28660884
3)重篤副作用疾患別対応マニュアル(平成18 年)。
4)シリーズ重篤副作用疾患別対応マニュアル(4)偽アルドステロン症 薬学の時間2009

0

高齢者のジゴキシンは、ジゴキシン中毒を起こしやすいので、TDMが望ましい。

要点:高齢者のジゴキシン使用は、ジゴキシン中毒を起こしやすいので、TDMが望ましい。

ジゴキシンは慢性心不全に処方される症例を散見します。ジゴキシンは、DIGスタディにおいて、左室駆出率45%以下の慢性心不全患者に対してACE阻害薬とループ利尿薬に追加した場合、総死亡率は変えないが入院を相対リスクで28%(95%CI:21-34%)減少させました1)。添付文書に記載のジゴキシンの治療濃度域は0.8-2.0ng/mLですが、DIGのpost hocのサブグループ解析では用量依存的に死亡率が増加した為、0.8ng/mL以下(0.5-0.8ng/mL)でのコントロールが推奨されています2)。日本循環器学会等の合同研究班による慢性心不全治療ガイドラインでは、ジゴキシンの使用についてAHA/ACCstage分類C(症候性心不全)NYHAⅡ度において、洞調律で重症心室性不整脈を伴わない非虚血性心筋症には低用量ジゴキシンの使用を考慮する、としています3)。

ジゴキシン必要量(μg/日)は体重(kg)×CCr÷30で近似出来ますが、推定クレアチニン・クリアランスの変数である年齢・性別・体重・血清クレアチニンの他、Ca拮抗薬・アミオダロン・マクロライド系抗菌薬などの併用薬、心不全等が関連するため、正確な予測は難しく、血中濃度測定が望ましいとされます4)。実際、尿中クレアチニン、尿量、体表面積で推定されたクレアチニンクリアランスに基づいて算出されたジゴキシンの半減期は、 2点以上で測定された血清ジゴキシン濃度から得られた値より有意に短かった(p <0.01)と言う報告もあります。論文では、高齢者のジゴキシン療法では日常的に測定することで、血清ジゴキシンをコントロールすることが望ましいことが示唆され、場合によってはCCrの利用もあまり適切ではないかもしれない、と結論しています5)。

また、相互作用の例として、症例対照研究の報告があります。ジゴキシン服用者にクラリスロマイシンを投与した場合、投与しない場合と比較して、ジゴキシン中毒による入院のリスクは調整オッズ比で14.8(95%CI; 7.9-27.9), 倍でした。エリスロマイシン、アジスロマイシンは共に3.7( 95%CI; 1.1-12.5)倍、セフロキシムは0.8(95%CI 0.2-3.4)倍でした6)。クラリスロマイシンにはP糖蛋白阻害があり、肝臓でのジゴキシン排泄を阻害することでジゴキシン中毒を起こしやすくするのではないか、と考察されます。

以上の知見から、生理機能が低下し、合併症や併用薬も多い高齢者がジゴキシンを安全に使用するためには、定期的なTDMが望ましいと考えます。

1)The effect of digoxin on mortality and morbidity in patients with heart failure. PMID: 9036306
2)Association of serum digoxin concentration and outcomes in patients with heart failure. PMID: 12588271
3)慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)
4)クスリのリスク Drug Aging 28(10):831-84,2011 J Clin Pharmacol 37(2):92-100,1997
5)ジゴキシンの生体内半減期と腎機能検査値(Scr,SUN,CLcr)との相関性
6)Macrolide-induced digoxin toxicity: a population-based study. PMID: 19606089



0

ラメルテオンはフルボキサミンと併用した場合、AUC82.6倍、Cmax28.1倍に上昇する為、併用禁忌。

要点:ラメルテオンはフルボキサミンと併用禁忌だが、併用した場合、AUC82.6倍、Cmax28.1倍に上昇する。

ラメルテオンはフルボキサミンと併用禁忌1)ですが、その妥当性について考察したいと思います。

添付文書等によると、フルボキサミン200mgを併用投与した時、ラメルテオン8mgを単独投与した時に比べ、未変化体のAUC0-infは82.6(95%CI;59.7-114.3)倍、Cmaxは28.1(95%CI;19.8-39.8)倍に増加しました1)。これは代謝の競合阻害に起因する相互作用と考えられています。

フルボキサミンは、強力なCYP1A2阻害剤です。未変化体のラメルテオンから代謝物であるM-IIへの変換は、主にCYP1A2が寄与し、M-IIのヒトメラトニン(MT1,MT2)受容体に対するアゴニスト活性は、ラメルテオン未変化体の1/17,1/28です。
次に、ロゼレム添付文書には過量投与に「本剤を160mgまで単回投与した外国臨床研究において、眠気、倦怠感、めまい、腹痛、頭痛等の症状が認められている」とあります。

ラメルテオン160mg投与時やフルボキサミン併用時において投与量と未変化体AUCが線形か厳密には分かりませんが、治療域を逸脱しているとは言えるでしょう。

以上の知見より、メラトニン受容体活性の強いラメルテオンの未変化体は、フルボキサミンの併用によりAUCが顕著に上昇し、死に至る転帰はないかも知れませんが、過量投与とされる場合のAUCを超える可能性があるので、併用は適切ではないとして良いでしょう。

1)ロゼレム錠8mg 添付文書・承認時資料

0