クラビットはNSAIDsと併用すると痙攣リスクがある?疑義照会は必要?



クラビットはNSAIDsと併用すると痙攣リスクがある?疑義照会は必要?

国試ではニューキノロン系抗菌剤とNSAIDS(非ステロイド性解熱鎮痛剤)は、けいれんを起こしやすくなると習ったけれど、実際に薬剤師として働きだすと、併用を目にする機会は少なくありません。2つのケースを見てみましょう。

ケース1です。

歯科からタリビット錠100mg 1回1錠 1日3回とボルタレン錠25mg1回1錠頓用の処方箋が来た。患者さんは既往症のない若い男性

クリニカルクエスチョン:併用注意で禁忌ではないけれど疑義照会すべき?

ケース2です。

腎盂腎炎でクラビット錠500mgとカロナール錠200mgが処方になった。

別の機会に、頭痛にロキソニン錠60mgが処方されている。カロナールが効かなかったら飲んでも良いかと質問あり。

患者さんはてんかん既往の若い女性。

クリニカルクエスチョン:併用注意だけど、飲んで良い?

今回のブログを読めば、薬理学や基礎研究の知識による推論だけでなく、実際に患者さんが薬を飲んでどうだったかを調査、統計処理した臨床研究を取り入れ、総合的に考える手法を身につけるきっかけが掴めると思います。

☑️ニューキノロンとNSAIDs

痙攣(けいれん)を起こすメカニズム

ニューキノロンは単独でも痙攣を誘発する作用があります。

これは、抑制系の神経末端にあるGABA受容体に神経伝達物質GABAが結合するのを、ニューキノロンが妨げる為です。

その結果中枢神経の興奮が起こると考えられています。そして、NSAIDsの存在下でニューキノロンのGABA受容体結合阻害率が上がる事が基礎研究で報告されています1)。

添付文書の記載は禁忌と併用注意がある

ニューキノロンが有するGABA受容体へのGABA結合阻害率は、薬剤により程度が異なります。

けいれんを発生させる機序から考えると、GABA受容体へのGABA結合阻害作用が強いニューキノロンほど、痙攣をひき起こしやすいのではないかと言う仮説が立てられます。

GABA受容体へのGABA結合阻害作用の強さについては、次のような報告があります2)。

バクシダール>シプロキサン≧オフロキサシン、オゼックス、バレオン>クラビット

出典: www.jstage.jst.go.jp

この仮説に従えば、クラビットは比較的痙攣を起こしにくいのではないか、と考えられます。

NSAIDSの影響も一様ではなく、薬剤により程度が異なると考えられます。

国内の添付文書が禁忌としているのは、シプロキサンとケトプロフェンの組み合わせだけです。

一方、酸性NSAIDS、すなわちフェニル酢酸系とプロピオン系NSAIDSは、クラビット等と併用注意としています。

フェニル酢酸系に分類されるNSAIDSは、ボルタレン、ハイペンの2つです。また、プロピオン酸系に分類されるNSAIDSは、ブルフェン、ロキソニン、ナイキサンの3つです。

☑️クラビットとNSAIDSの併用リスクについて

安全性の高いカロナール、ポンタールとクラビットの処方頻度が多い

2003年に2病院を対象に行われた調査があります3)。

キノロン系薬が処方されていたものは、三井記念病院810枚であり、NSAIDs・ 解熱鎮痛薬が併用されていたものは282枚(外来キノロン系薬処方の34.8%)であった。(引用注:解熱鎮痛剤は配合剤を含む)

外来処方せんにおけるキノロン系薬は、三井記念病院においては、levofloxacin (LVFX)がその79.4%を占めた。(引用注:LVFXはクラビットの略号)

キノロン系薬との併用処方では、三井記念病院、三楽病院ともにacetaminophenおよびその配合剤がもっとも多く、それぞれ57.8%、50.9%を占めていた。三井記念病院においては、次いでloxoprofen sodium(loxoprofbn Na),mefenamic acidが多かった。(引用注:acetaminophenはカロナール、loxoprofenはロキソニン、mefenamic acidはポンタール

出典: www.jstage.jst.go.jp

カロナールとポンタールは、添付文書にもニューキノロンと併用注意の記載がない、安全性の高い解熱鎮痛剤です。

次に、併用注意とされる組み合わせ、すなわちクラビットとフェニル酢酸系/プロピオン酸系NSAIDSの併用で、痙攣を起こしやすくなるのか見て行きましょう。

併用注意であるロキソニン、ブルフェン、ボルタレンとも痙攣は少ない

クラビットとロキソニン、ブルフェン、ボルタレンの併用の安全性を調査した報告があります4)。

NSAIDs 併用有無別の中枢神経系副作用発現率は,NSAIDs 非併用群で 0.04%(1/2,707)、フェニル酢酸系・プロピオン酸系 NSAIDs 併用群で0.07%(2/2,828)、その他の NSAIDs 併用群で 0.10%(2/2,062)であり、NSAIDs 非併用群と NSAIDs 併用群との間に有意差は認められなかった。

出典: www.chemotherapy.or.jp

論文では、併用した患者群と併用しなかった患者群で、痙攣の発生率は統計的に差がなかったとしています。

てんかん既往、腎機能低下、高齢はリスク因子かも知れない。

この論文では、副作用を起こした患者に共通する因子を抽出しています。

基礎疾患・合併症を有さない症例に対するLVFX と NSAIDs 併用時の安全性を検討した結果、臨床において LVFX に対する NSAIDs の影響はきわめて小さいことが示唆された。

痙攣発現症例 84 例の患者背景の分析結果から、「てんかん等の痙攣性疾患を有する患者」、「腎障害(特に Ccr<40 mL/分)を有する患者」、「75 歳以上の高齢者」が痙攣発現のリスク因子と考えられている。

これら背景因子を有する症例においては、NSAIDs の併用の有無にかかわらず慎重に投与することが重要となろう。

出典: www.chemotherapy.or.jp

因子は全部で3つ。すなわち、てんかん既往、腎機能低下(CLcr40未満)、高齢(75歳以上)です。

これらのリスク因子があれば、クラビット服用に際して、NSAIDS併用に関わらず注意喚起した方が良いかも知れません。

補足:3の法則で論文のn数の妥当性を判断する

副作用を検出するために必要な例数は、3の法則(rule of three)が知られています5)。3の法則は、臨床研究を正しく評価するにはにも解説されています6)。

p=0.001 すなわち千人に1人の割でしか観測されない事象を1人以上の被験者で観測する確率を0.95以上にするには3000 人の被験者を必要とする。

出典: www.jstage.jst.go.jp

上述した論文は0.1%の頻度の副作用に2,000~3,000人程度の被験者を組み入れているので、ある程度の妥当性は担保されそうです。

☑️まとめ

一般論として、クラビットはNSAIDS併用の有無に関わらず、痙攣リスクは僅かと考えられます

ただしリスク因子がある場合、すなわち、てんかん既往、腎機能低下(CLcr40未満)、高齢(75歳以上)である場合は、併用の有無に関わらず、けいれんに注意が必要の様です。

それでは、ここまで見てきたことを踏まえて冒頭の2つのケースを振り返ってみましょう。

(ケース1)
健康な若い男性であれば、クラビットのラセミ体であるタリビットとボルタレンを併用しても、痙攣を起こしやすくする可能性は低いと考えられ、疑義照会の必要性は少ないかと考えられます。

(ケース2)
てんかん既往があり、けいれんのリスク因子を有する患者です。

ロキソニンは別の機会に処方された薬であり、処方医は今回カロナールを選択しています。

今回クラビットと併用することはけいれんを起こしやすくなる可能性があり、避けた方が無難ではないでしょうか。

最終更新日:2020年2月24日

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☑️参考文献

1)GABA受容体結合におけるキノロン薬と非ステロイド薬の薬物相互作用に関する研究― 非ステロイド薬からみた構造活性相関―
臨床薬理Jpn J Clin Pharmacol Ther28(1)Mar1997 437-438

2)Drug Metab Pharmacokinet. 2009;24(2):167-74.

3)市中病院における処方せんからみたキノロン系薬と非ステロイド性抗炎症薬・解熱鎮痛薬との併用に関する実態調査―中規模2 市中病院を対象として―
日本化学療法学会雑誌 第51巻第9号 SEPT.2003 561-581

4)Levofloxacin と非ステロイド性消炎鎮痛薬併用時の安全性
日本化学療法学会雑誌第54巻第4号 JULY2006 321-329

5)稀な事象の生起確率に関する統計的推測 Rule of Three とその周辺
Statistical Inference for the Occurrence Probability of Rare Events ~ Rule of Three and Related Topics ~
計量生物学Vol. 26, No. 2, 53{63 (2005)

6)臨床研究を正しく評価するには Dr.ファーバーグが教える26のポイント (ライフサイエンス選書) [ベント・フルベルク]

☑️推薦図書

「3ステップで推論する副作用のみかた・考えかた」

今回参考にした書籍を推薦します。「副作用を考える時は対照が必要」と書いてあります。

今回の記事で紹介した論文でも、併用群の対照として非併用群が設定され、統計的に差があるかの検討がなされています。

科学的に副作用を考える手法を学びたい方は、ぜひ本書を手に取って下さい。

「臨床研究を正しく評価するには―Dr.ファーバーグが教える26のポイント」

3の法則を始め、論文解釈のピットホールが解説されています。読めば臨床研究を正しく評価できるようになること請け合い。


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