ニューキノロンとNSAIDSの併用は痙攣リスクがあると薬学部で習ったけれど、疑義照会は必要?

1 はじめに

歯科からタリビット錠100mg 1回1錠 1日3回とボルタレン錠25mg1回1錠頓用の処方箋が来た。患者さんは既往症のない若い男性。

国試ではニューキノロンとNSAIDSはけいれんと習った。併用注意で禁忌ではないけれど疑義照会すべき?

誰かタスケテ・・・

そんなあなたに。

2 ニューキノロンとNSAIDs

2-1 痙攣(けいれん)を起こすメカニズム

ニューキノロンは単独でも痙攣を誘発する作用があります。

これは、抑制系の神経末端にあるGABA受容体に神経伝達物質GABAが結合するのを、ニューキノロンが妨げる為です。

その結果中枢神経の興奮が起こると考えられています。そして、NSAIDsの存在下でニューキノロンのGABA受容体阻害率が上がる事が基礎研究で報告されています1)。

2-2 添付文書の記載は禁忌と併用注意がある

GABA受容体の阻害率は、ニューキノロンによって様々です。NSAIDSの影響も薬剤により様々です。

添付文書では、シプロキサンとケトプロフェンの組み合わせを禁忌としています。

酸性NSAIDSであるフェニル酢酸系とプロピオン系は、クラビット、ジェニナック、グレースビット、オゼックス、シプロキサンと併用注意としています。

フェニル酢酸系は、ボルタレン、エトドラクです。プロピオン酸系は、ブルフェン、ロキソニン、ナイキサンです。

2-3 実臨床では併用の機会は多い

2003年に2病院を対象に行われた調査では、ニューキノロンが処方された際、30%にアセトアミノフェン/NSAIDsの併用がありました2)。

そのうち約半数がアセトアミノフェンで、次いでロキソニン、ポンタールでした。

また、処方されたニューキノロンの8割はクラビットでした。

2ー4 クラビットとロキソニン、ブルフェン(イブ)、ボルタレンの併用は痙攣頻度を増やさず安全かも知れない

表題の併用の安全性を調査した報告があります3)。

中枢神経系の副作用の発生率は、NSAIDSを併用しなかった群で 0.04%でした。フェニル酢酸系・プロピオン酸系 NSAIDSを併用した群で 0.07%でした。その他の NSAIDSを併用した群で 0.10%でした。

論文では、併用した患者群と併用しなかった患者群で、痙攣の発生率は統計的に差がなかったとしています。

差があるけれど、その差が偶然でないと証明出来なかった、と言う意味合いです。

2ー5 てんかん既往、腎機能低下(CLcr40未満)、高齢(75歳以上)はリスクがあるかも知れない。

論文では副作用を起こした患者に共通する因子を抽出しています。

てんかん既往、腎機能低下(CLcr40未満)、高齢(75歳以上)です。

これらのリスク因子があれば、NSAIDSの併用に関わらず注意喚起をした方が良いでしょう。

また、ニューキノロンは腎排泄されるので、腎機能に応じた用量の調節を適切に行う必要があるでしょう。

3 まとめ

健康な若い男性であれば、クラビットのラセミ体であるタリビットとボルタレンを併用しても、痙攣を起こしやすくする可能性は低いと考えられ、疑義照会までは必要ないのではないでしょうか。

4 書籍紹介

今回参考にした紹介を紹介します。「副作用を考える時は対照が必要」と書いてあります。

今回の記事で紹介した論文でも、併用群の対照として非併用群が設定され、統計的に差があるかの検討がなされています。

科学的に副作用を考える手法を学びたい方は、ぜひ本書を手に取って下さい。

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6 参考文献

1)GABA受容体結合におけるキノロン薬と非ステロイド薬の薬物相互作用に関する研究― 非ステロイド薬からみた構造活性相関―
臨床薬理Jpn J Clin Pharmacol Ther28(1)Mar1997 437-438

2)市中病院における処方せんからみたキノロン系薬と非ステロイド性抗炎症薬・解熱鎮痛薬との併用に関する実態調査―中規模2 市中病院を対象として―
日本化学療法学会雑誌 第51巻第9号 SEPT.2003 561-581

3)Levofloxacin と非ステロイド性消炎鎮痛薬併用時の安全性
日本化学療法学会雑誌第54巻第4号 JULY2006 321-329


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