テグレトール(カルバマゼピン)とクラリスロマイシンで眠気が出ることを定量的に評価する試みをしました。

Aさんは17歳6ヶ月、体重不明です。てんかんの薬、カルバマゼピン500mg/日を1日2回に分けて服用しています。TDMのデータ不明です。クラリスロマイシンを飲んで、強い眠気が出たと聞きました。

ここでは、併用による血中濃度の変化を、定量的に評価する試みをします。

まず、カルバマゼピン血中濃度を以下の手法により推定します。6.13±1.46μg/mL(治療域4-12μg/mL)と考えられます。

17歳6ヶ月の平均体重53.1kgを使用。F・S・D/Tau=Css.ave・CLtotに次のパラメーターを代入します。
F=1、S=1、D=250、Tau=12、CLtot=0.064L/hr/kgx53.1kg
またVd=1.61×53.1kgより、FSD/2Vd=1.46

カルバマゼピンの至適血中濃度は4~12μg/mLですが、文献によっては4~10μg/mLとするものもあります。8μg/mL以上で、頭痛、嘔気、傾眠、活動性の低下、不安などが起こることが知られています。

Aさんは、クラリスロマイシンを服用して眠くなったとのことですが、体内でのカルバマゼピンの挙動は、どれくらい変わるのでしょう。

PISCSの理論からは、カルバマゼピン(CR:0.8)とクラリスロマイシン(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍と予測されます。

AUC(Area Under the blood concentration-time Curve)は、日本語にすれば、血中濃度-時間曲線下面積です。血中濃度の曲線の積分値(面積)のことで、利用できる薬の総量を意味します。AUCは、血中濃度×時間で表され、最高血中濃度(Cmax)や半減期(t1/2)の要素も含めた総合的な指標になっています。

一般的に、AUCが大きいことは薬をたくさん利用できることを意味し、具体的には高い効果が得られる、あるいは副作用が強く出るといったことを意味します。

類薬のエリスロマイシンでは、Cmaxは変化しないが、AUCは1.34倍、t1/2は1.46倍に延長、クリアランスは23%低下したとする報告があります。他の報告でもCmaxは上昇しませんでした。

パラメーターの変化は個人差が大きく、エリスロマイシン併用によるカルバマゼピン濃度の予測が困難であるため、併用の必要がある時には患者モニタリングを綿密に行うことが推奨されています。

https://www.fpa.gr.jp/global-image/units/upfiles/1348-1-20120514161648.pdf

予測は困難と書かれていますが、得られたデータから試算を試みようと思います。カルバマゼピンを成人に反復投与した場合の半減期は7~15時間とされます。ここでt1/2=11hrと仮定します。

蓄積率の手法を利用して、反復投与時の最高血中濃度(Css.max)が、単回投与時の最高血中濃度(Cmax)の何倍になるかを推定します。

Tau/t1/2=12/11=1.1 ゆえに蓄積率R≒2で、Css.maxはCmaxの約2倍になると推定されます。

エリスロマイシンの併用で、カルバマゼピンの半減期t1/2が1.46倍になったと言うデータを利用すると、半減期t1/2’=16hrです。

従って、Tau/t1/2’=12/16=0.75  ゆえに蓄積率R’=2.4~2.6 簡便に2.6倍とすると、R’/R=1.3
以上のことより、エリスロマイシンの併用により、定常状態のカルバマゼピンの最高血中濃度は、併用しない場合の1.3倍になると考えられます。

クラリスロマイシンの場合もおそらく半減期が延長し、反復投与することで定状状態の血中濃度が上昇したのではないかと推測されます。PISCSの予測より、併用時の最高血中濃度は1.3倍以上になったのではないかと考えられます。

カルバマゼピン服用中の5人の患者に、カルバマゼピンを30~40%減量した上でクラリスロマイシンを投与した報告があります。5人とも血中濃度が上昇し、3人は中毒域に達していました。著者らはカルバマゼピンを30~50%減量し、薬物濃度を注意深く観察することを勧めています。

Clarithromycin-carbamazepine interaction in a clinical setting. O’Connor NK1, Fris J. J Am Board Fam Pract. 1994 Nov-Dec;7(6):489-92. PMID:7847111



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