バラシクロビル服用中の脱水やNSAIDs等の併用は急性腎障害のリスクになりますか

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バラシクロビル服用中の脱水やNSAIDs等の併用は急性腎障害のリスクになりますか

☑️はじめに

バラシクロビルの活性体、アシクロビルは溶解度が低い薬剤です。

腎排泄される際に高濃度に濃縮されるため、投与量が多かったり、腎血流が少ないと析出し、急性腎障害を起こす場合があります。

夏場の不十分な飲水による脱水症状、腎血流量を減少させるNSAIDs、RAS阻害薬は、理論的に急性腎障害のリスクと考えられますが、実際はどうなのでしょう。

バラシクロビル療法を行う場合に急性腎障害を引き起こすリスク因子について、国内データベースで検証した論文がありましたので、紹介します。

記事は、以下の論文をもとに執筆しています。

Risk Evaluation for Acute Kidney Injury Induced by the Concomitant Use of Valacyclovir, Analgesics, and Renin-Angiotensin System Inhibitors: The Detection of Signals of Drug-Drug Interactions

Front Pharmacol. 2019 Aug 8;10:874.
PMID: 31440161 PMCID: PMC6694181
CC BY(4.0)

出典: www.frontiersin.org

薬理学的に予想されるリスクですけれど…

実際のところはどうなのかな。理論的に導かれる仮説を臨床研究で検証しよう!

プロローグ

Rp.バラシクロビル
アセトアミノフェン
👵帯状疱疹です。今日は暑いわね。お薬手帳?
📖エナラプリル(内科)
📖ロキソプロフェン(整形)
👨💭AKIリスクになりそうだ…
👩副作用DBからリスク因子として抽出されています。
👨十分な飲水を心がけて、痛み止めはアセトアミノフェンの方を使って下さい

出典: twitter.com

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☑️論文をDeepLで翻訳してみる

論文タイトルは、邦訳すると「バラシクロビル、鎮痛剤、レニン-アンジオテンシン系阻害剤の併用による急性腎臓障害のリスク評価。薬物-薬物相互作用のシグナルの検出」です。

国内の副作用報告データーベースを利用した研究です。論文のアブストラクトをDeepLで翻訳しました。

背景-Buckground

バラシクロビル治療の副作用として、薬剤性急性腎障害がよく知られている。

帯状疱疹の疼痛を治療するために鎮痛剤がバラシクロビルと併用されることが多いが、バラシクロビル関連の急性腎障害(AKI)に関する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアセトアミノフェンの違いは不明であった。

また、NSAIDsと同様のメカニズムでAKIを引き起こす可能性のあるレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害剤とバラシクロビルの併用によるAKIリスクも不明である。

そこで、これらの薬剤の併用とバラシクロビル関連AKIとの関連を、JADER(Japanese Adverse Drug Event Report)データベースに従って特徴づけながら評価した。

方法-Method

JADERデータベースは自発的な報告システムであり、そのデータを解析した。

AKIのシグナルを評価するために、報告オッズ比を使用した。結果バラシクロビル関連AKI症例は夏季に発生する割合が高かった。

バラシクロビルとNSAIDsの併用例ではAKIシグナルの増加が見られたが、バラシクロビルとアセトアミノフェンの併用例では増加は検出されなかった。

バラシクロビルとNSAIDsを併用した症例では、高齢者、女性、高血圧患者でAKIイベントの発生頻度が高くなった。

さらに、NSAIDsの有無にかかわらず、RAS阻害剤の併用でバラシクロビル関連のAKIのシグナルが増加することが確認された。

結論-Coclusion

バラシクロビル関連AKIには季節変動があることが確認された。

さらに、バラシクロビル関連AKIに関しては、アセトアミノフェンはNSAIDsよりも安全な鎮痛剤である可能性が示唆された。

また、NSAIDsの併用によるAKIのリスクファクターとして、高齢、女性、高血圧などの候補が挙げられた。

さらなる研究が必要であるが、今回の結果は、バラシクロビルによるAKIを回避するために、尿量減少につながる薬剤の併用と季節的要因を考慮する必要性を強調するものである。

☑️AKIの報告オッズ比(ROR)

論文では、各薬剤を使用した場合、AKIを発症した場合と発症しなかった場合の粗オッズ比を算出し、年齢、性別、報告年で調整しています。

バラシクロビルとNSAIDを併用した場合のRORは、バラシクロビル単剤療法の場合よりも有意に高い(調整ROR:13.60 [12.52–14.77] vs 28.76 [24.76–33.41]、p <0.0001)と言う結果でした。

対照的に、アセトアミノフェンを併用した症例のRORは、単剤療法のRORよりも高くありませんでした。

☑️「デキる薬局の腎機能チェック」を読んでみる

ここまで論文を見て来ました。

バラシクロビル療法の注意について、成書では次のように簡単に書かれていますが、本記事を読んで頂いた皆さんには、根拠を持って理解することが出来るはずです。

尿中排泄率はアシクロビルとして70~80%と高いため、腎機能が低下することで容易に中毒性の副作用を発症する。また鎮痛剤を併用する際は、糸球体濾過量(GFR)を低下させないアセトアミノフェンを医師に提案し、患者に十分な水分摂取を促す。

家族や介護者の目が少ない高齢者は夏場、冷房の入っていない暑い居室で過ごしていることが多い。このような状態の患者で、血清Crの上昇と同時にBUNの上昇がみられる場合、脱水の可能性が疑われるので腎機能を慎重に評価する必要がある。

デキる薬局の腎機能チェック 調剤と情報7月増刊号 じほう 2020年7月

出典:

☑️まとめ

バラシクロビル関連腎障害のリスク因子について、国内データベースを検証しました。

報告オッズ比をもとにしたAKIシグナルを検証したところ、夏季・NSAIDsを併用した場合・RAS阻害薬を併用した場合、シグナルの増加が確認されました。

バラシクロビル療法を安全に行う為に、尿量減少につながる薬剤の併用と、夏場の不十分な飲水による脱水を考慮する必要があります。

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最終更新日2022年4月9日

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