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腎移植後脂質異常症にスタチンは有効かつ安全ですか
☑️はじめに
腎移植後には高血圧、糖尿病、脂質代謝異常など、さまざまな合併症が発症します。移植腎機能や移植患者の生命予後に影響する因子であり、合併症の適切な管理は長期予後を改善するために必須です。
ところが腎移植後に使用されるステロイド、免疫抑制薬はこの合併症を悪化させる為、適切な管理が必要です。また合併症に対する治療薬が相互作用により薬物動態を変化させてしまう現象もみられます。
腎移植においては合併症の管理に特殊な側面がみられます。 日本臨床腎移植学会では2011 年に「腎移植後内科・小児科系合併症ガイドライン」を発表しています。
腎移植に関わる医療者は医師、薬剤師、看護師など多種職にわたり、腎移植はこれらの専門家による包括的医療として遂行されてはじめて成功します。
皆さんの日常業務に役立つことを期待し、移植後脂質代謝異常にしぼり、ガイドラインに記載されている内容と問題点を概観します。
プロローグ
Rp.シクロスポリン
フルバスタチン
etc.
👨腎移植を受けて透析しなくて良くなりました
👧良かったですね!
👧💭低用量のスタチンなら使用できるのね
出典: twitter.com
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☑️疫学と発症要因
移植後の脂質代謝異常は高い頻度で起こります。外来移植患者132症例のうち、53%がスタチンを内服、5%がエゼチミブ単独あるいはスタチンと併用したとする報告があります。
移植後の脂質代謝異常は、肥満、糖尿病、腎機能低下に起因する面もありますが、薬剤誘発性の側面が高いです。 ステロイド、カルシニューリン阻害薬、mTOR阻害薬はLDL-C上昇、TG上昇作用があります。
これらの薬剤の減量あるいは中止は脂質代謝異常に好影響を与えますが、拒絶反応が増加してしまうことも懸念されます。
同じカルシニューリン阻害薬でも若干脂質代謝異常への影響は異なります。シクロスポリンからタクロリムスに変更することにより、LDL-CやTGを有意に低下することができたとする報告があります。
☑️治療について
脂質異常とCVDは腎移植レシピエントの主要な合併症です。
一般集団と異なり、脂質異常症がCVDの危険因子であると言うエビデンスは腎移植レシピエントでは明らかではありません。
しかし腎移植後のCVDは高頻度であり、CVDの危険因子である脂質異常症を管理することは、予後を改善するものと考えられます。
非薬物療法
LDL-Cが目標値を超えている場合、まず生活習慣の是正を試みます。
禁酒、血糖コントロール、適切な運動療法、体重コントロールなどを行い、管理栄養士による低脂肪食指導を行います。
生活習慣の改善だけでは管理目標に至らない場合、次に薬物療法を開始します。
薬物療法
薬物療法としては、スタチンが最もエビデンスのある薬剤です。しかしカルシニューリン阻害薬を使用している腎移植レシピエントでは、スタチンの血中濃度が上昇することが示されており注意が必要です。
アトルバスタチン、シンバスタチンはともにCYP3A4で代謝されるため、濃度上昇が生じやすいと考えられています。(注:また非代謝性スタチンにおいても相互作用があり、肝取り込みトランスポーターOATPの関与が指摘されています。)ピタバスタチンとロスバスタチンは、シクロスポリンと併用禁忌とされています。
高TG血症については、本邦ではフィブラートが第一選択とされますが、腎排泄型であり横紋筋融解症のリスクとなります。腎機能障害をかかえる腎移植レシピエントでは使用は推奨されません。
☑️治療目標
腎移植レシピエントで移植以前に冠動脈疾患をもっている患者においては、2次予防群としてLDL-C<100を管理目標とします。
また、冠動脈疾患既往がなくとも末期腎不全から透析療法を経て動脈硬化性疾患を有しやすい腎移植患者は、すべて高リスク群と考えLDL-C<120を管理目標とします。
☑️スタチンのエビデンス
スタチン使用により腎移植後CVDの予後を改善させるかについては、わずかな利益性が示されているのみです。
唯一のランダム化試験であるALERT試験は、腎移植患者にフルバスタチンとプラセボを割り付けてCVDの予後を5.1年観察したものです。
LDL-C値を32%減じたものの、心臓死や心筋梗塞を減じることはありませんでした。(注:ASCVDではなく血管の石灰化に起因した残余リスクによるものではないかと考えられます。)
Effect of fluvastatin on cardiac outcomes in renal transplant
recipients: a multicentre, randomised, placebo-controlled trial
その後2年の追跡では、フルバスタチン群で心臓死の危険は低くなりましたが、総死亡率やグラフト予後に差はありませんでした。
また、移植後2年までの早期のスタチン治療は、6年以降に開始した群に比して心臓死の危険を59%減らしたとする報告もあります。
カルシニューリン阻害薬を使用下の腎移植患者へのスタチン併用は、スタチン血中濃度を上昇させることが示されています。
筋肉痛、横紋筋融解症を避けるべく注意が必要ですが、スタチンの投与量を減じることで安全に使用できるとの報告は多くあります。(注:エビデンスレベルIVb:横断研究、症例対照研究)
☑️まとめ
腎移植レシピエントの移植後脂質異常症についてのガイドラインを概観しました。
移植後のCVDは高頻度であること、コレステロール上昇は移植管理の薬剤に起因することが分かりました。
エビデンスは不十分ですが、CVD発症頻度が高いので脂質管理が重要視されていること、1次予防でLDL-C<120、2次予防でLDL-C<100が目標であることが分かりました。
また、スタチンが第一選択ですが、カルシニューリン阻害薬の併用で血中濃度が上昇するため、低用量を慎重に使用する必要があると分かりました。
ガイドラインでは、相互作用の影響は2〜20倍だが、程度は代謝経路によると言う表現に留まり、この辺りに薬剤師の関与出来る余白がありそうです。
腎移植後内科・小児科系合併症ガイドライン2011
日本臨床腎移植学会ガイドライン作成委員会出典: www.jscrt.jp
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最終更新日2022年9月3日
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