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経口マグネシウムの片頭痛予防効果について
☑️はじめに
片頭痛の予防には一般的にはミグシス®やトリプタノール®などが処方される機会が多いと思います。
妊婦や挙児を望む女性には使いづらい薬剤です。
このようなケースで、マグネシウム製剤が処方される場合があります。
さくら先輩、どんなエビデンスがあるのでしょう?
ゆきさん、いっしょに見ていこう
プロローグ
Rp.酸化マグネシウム
👩便秘ですが片頭痛にも効くかもって。
👨⚕️💭片頭痛にカマ?👩🎓予防薬剤です。
一般的には抗てんかん薬、三環系抗うつ薬、β遮断薬、Ca拮抗薬など用いますが、妊娠希望でベースに便秘があればMg製剤が選択肢になる場合が。
👨⚕️知りませんでした!
👩🎓エビデンスを確認しましょう。
出典: twitter.com
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☑️妊婦に対する片頭痛の予防治療は難しい
ミグシス®は添付文書上、妊婦に使用禁忌です。
大量投与の実験動物で障害の報告があるからです。
ヒトでの催奇形性や障害の報告はありませんが、服用中に妊娠した場合は服用を中止が必要です。
トリプタノール®も妊娠中の服用は回避すべきです。
デパケン®はヒト胎児での催奇形性や胎内暴露によるIQの低下が疫学的に示されています。
妊娠の可能性がある場合、片頭痛予防を目的とした投与は容認されません。
このように、妊婦や挙児を望む場合、一般的な片頭痛予防薬の使用は難しく、代替を考える必要があります。
☑️厚生労働省のサイトでマグネシウムのエビデンスを確認する
まず、統合医療に係る厚生労働省のサイトを参照しました。
頭痛に対するマグネシウムの効果については、次のように書かれていました。
マグネシウム欠乏は頭痛を助長する要因と関連しており、片頭痛になる人はそうでない人に比べて体内のマグネシウム濃度が低い可能性があります。
米国神経学会および米国頭痛学会のガイドラインでは、マグネシウムはおそらく有効であり、片頭痛予防ために検討されるべきであるとしています。
マグネシウムのサプリメントは、下痢を引き起こす可能性があり、一部の薬と相互作用する場合があります。
片頭痛のために摂取するマグネシウムの量は、このミネラルの許容上限摂取量(ほとんどの人に対し安全であると考えられる最大の量)を超えているため、片頭痛のためのマグネシウムのサプリメントは、医療スタッフの監視の下でのみ使用するべきです。
厚生労働省eJIM(イージム:「統合医療」情報発信サイト)
☑️RCTでマグネシウムの定量的な効果を確認する
PubMed検索で文献を見つけた
おそらく有効とのことですが、どの程度の効果が期待できるのでしょうか。
マグネシウムの服用で片頭痛の予防効果を検討した文献をPubMed検索で見つけました。
PECOに沿って紹介します。
P:18歳から65歳の片頭痛(平均月に3.6回の発作)の患者81人
E:マグネシウム(毎朝600mg)を12週間投与
C:偽薬
O:実薬群での発作の頻度はプラセボ群に比べて有意に減少した。(41.6%vs15.8%、p<0.05)
発作の持続時間と痛みの強さもプラセボ群に比べて減少傾向をみせたが、統計学的に有意とはいえなかった。
実薬群では18.6%に下痢が、4.7%に胃部不快感がおこった。
Prophylaxis of migraine with oral magnesium: results from a prospective, multi-center, placebo-controlled and double-blind randomized study
PMID: 8792038
効果を定量的に考える
マグネシウムはプラセボに対して相対リスクを62%減少させました。
・相対リスク減少率(RRR)1ー(15.8/41.6)=62%
また絶対リスクを25.8%減少させました。
・絶対リスク減少率(ARR)41.6-15.8=25.8%
治療必要数(NTT)は3.87人でした。
・1/0.258=3.87(人)
すなわち、組み入れ基準を満たした患者1人が効果を得るためには、約4人が12週間毎日マグネシウムを服用する必要があったと言うことです。
言い換えれば、本研究と患者背景の似通った4人がマグネシウムを12週間飲めば、そのうち1人に片頭痛予防効果が得られるだろうと言えます。
医学統計の基本シリーズ第4回:リスク比とオッズ比、相対リスクと絶対リスク
解説4:NNTとは
☑️システマティックレビューでエビデンスレベルを確認する
システマティックレビューとは、データーベースで文献を網羅的に調査することで、出版バイアスなどの偏りを無くすのが目的です。
研究の種類(観察研究・RCT等)と質により、エビデンスレベルを決定することが出来ます。
今回のシステマティックレビューでは、マグネシウムによる片頭痛の予防について、グレードC(有効である可能性)のエビデンスが得られた。
高濃度のクエン酸マグネシウム(600mg)による片頭痛の予防的治療は、安全で費用対効果の高い戦略として臨床使用されているようである。
Magnesium in Migraine Prophylaxis-Is There an Evidence-Based Rationale? A Systematic Review
PMID: 29131326
☑️まとめ
マグネシウムによる片頭痛の予防効果をリサーチしました。
システマティックレビューにおいて、グレードC(有効である可能性)のエビデンスが得られています。
過去のRCTの結果から、1日600mgのマグネシウムを服用すれば
・4人に1人の割合で発作の頻度を減らす。
・持続時間と痛みの強度も軽減される可能性がある。
ただしマグネシウムは医薬品との相互作用があり、また万人に安全とされるミネラル摂取量の上限を超えます。
片頭痛の発作予防目的でマグネシウムを服用する場合は、医療者の管理下で服用するようにしましょう。
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最終更新日2021年11月29日
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