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エゼチミブとPCSK9阻害薬はASCVD超ハイリスク患者にのみ有益ですか
☑️はじめに
米国のコレステロール管理ガイドラインは、米国心臓協会(AHA)から発表されたガイドラインです。
2018年に5年ぶりに改訂されました。2013年版はスタチン一辺倒だったのですが、エゼチミブ、PCKS9阻害薬の位置づけが明らかにされました。
ガイドラインでは、コレステロール管理の目的は動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症予防にあるとしています。
そしてASCVD2次予防に関しては、ASCVDが「超ハイリスク」という患者カテゴリーが新設されました。
このカテゴリーで最大耐用量によるスタチン治療を行ってもLDL-C高値であれば、エゼチミブの追加を、それでも効果不十分な場合はPCSK9阻害薬の追加を妥当としています。
エゼチミブとPCSK9は、いずれもスタチンに比して高薬価な薬物である上、スタチンほど堅固なエビデンスを有していません。
使いどころを定めることが肝要ですね。
Safi U Khan, et al.
PCSK9 inhibitors and ezetimibe with or without statin therapy for cardiovascular risk reduction: a systematic review and network meta-analysis
BMJ . 2022 May 4;377:e069116. doi: 10.1136/bmj-2021-069116.
プロローグ
Rp.ロスバスタチン
エゼチミブ
DAPT、DPP4-I、ACE-I…
👨心筋梗塞をして退院後、初めての外来だよ。
👧💭煙草臭い、BMI>25は余裕、Type2DM。ACS1年以内でASCVD超ハイリスクだわ。
👩AHAの2018年のGLではASCVD超ハイリスクが新設されている。
👩スタチン最大耐用量でもLDL≧70の場合、エゼチミブの併用をクラスIIaで推奨しているよ。出典: twitter.com
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☑️コレステロール管理ガイドライン2018
米国のコレステロール管理ガイドライン(2018 Guideline on the Management of Blood Cholesterol)は、米国心臓協会(American Heart Association: AHA)から発表されたガイドラインです。
2013年から5年ぶりの改訂で、エゼチミブ、PCKS9阻害薬の位置づけが明らかにされました。
コレステロール管理の目的は、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症予防にあるとしています。
そして2次予防に関して、ASCVDが「超ハイリスク」(very high risk)という患者カテゴリーが新設されました。
米コレステロール管理GL、5年ぶりに改訂
☑️ASCVD「超ハイリスク」
定義は、過去1年以内の急性冠症候群、心筋梗塞の既往、虚血性脳卒中の既往、症候性の末梢動脈疾患という主要なASCVDを複数認める患者、もしくはASCVDは1つだが複数の心血管危険因子を持つ患者というものです。
このカテゴリーに該当する患者に対しては、最大耐用量によるスタチン治療を行ってもLDLコレステロールが70mg/dL以上であれば、まずエゼチミブの追加を、それでも70mg/dLを切らない場合はPCSK9阻害薬の追加を、それぞれ妥当としました(クラスIIa=中程度の推奨)。
PCSK9阻害薬のランダム化比較試験では、中~高強度のスタチン治療でもLDL-Cが70mg/dLを切らない患者にPCSK9阻害薬を併用し、有意なASCVDリスクの抑制が示されました。
しかしPCSK9阻害薬は高額であり、費用対効果の点から2018年版ガイドラインではエゼチミブの併用を優先しました(クラスI=強い推奨)。
米コレステロール管理GL、5年ぶりに改訂
☑️ネットワークメタ分析
PCSK9阻害剤またはエゼチミブとスタチンの併用療法により、心血管リスクは低減するのでしょうか。
この臨床疑問を検証した、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を紹介します。
この研究は、最大耐容量のスタチン療法を受けているか、もしくはスタチン不耐の成人を対象にエゼチミブとPCSK9阻害薬を投与し、心血管アウトカムへにどのような影響があるかを比較しています。
Safi U Khan, et al.
PCSK9 inhibitors and ezetimibe with or without statin therapy for cardiovascular risk reduction: a systematic review and network meta-analysis
BMJ . 2022 May 4;377:e069116. doi: 10.1136/bmj-2021-069116.
☑️エゼチミブのエビデンス
まず各薬剤のエビデンスを確認します。
エゼチミブの推奨は、IMPROVE-ITに基づいています。
エゼチミブとシンバスタチンは、シンバスタチン単独の用量アップ(40mgから80mg/日)と比較して、LDLコレステロールを有意に低下させ、急性冠症候群(ACS)患者の心血管予後をわずかに改善するという結果を示しています。
Christopher P Cannon, et al.
Ezetimibe Added to Statin Therapy after Acute Coronary Syndromes
N Engl J Med . 2015 Jun 18;372(25):2387-97.
☑️PCSK9阻害薬のエビデンス
PCSK9阻害薬の推奨は、FOURIER試験とODYSSEY OUTCOMES試験の結果に基づいています。
急性冠症候群を発症したばかりの患者において、スタチン治療(エゼチミブを併用、または併用なし)にPCSK9阻害薬を追加することにより、LDL-C値を顕著に低下させ、心血管障害を改善させました。
しかしながら、PCSK9阻害薬のコストが高いことから、その実際の正価性について懸念されています。
費用対効果分析では、PCSK9阻害薬のコストは、その臨床的価値よりもかなり高いことが示されています。
Fonarow GC, et al.
Cost-effectiveness of evolocumab therapy for reducing cardiovascular events in patients with atherosclerotic cardiovascular disease.
JAMA Cardiol2017;2:1069-78.
☑️リスクを層別化したメタ分析
これらの患者を心血管リスクで層別化し、エゼチミブとPCSK9阻害剤を単独または併用療法による効果を評価した大規模試験またはメタ解析は、これまでありませんでした。
この問題を調査するため、システマティックレビューとネットワークメタ解析が実施されました。
このレビューは、エゼチミブとPCSK9阻害薬について、リスク層別化された推奨を行うガイドラインのために、心血管アウトカムへの効果の定量的な情報を提供しました。
Practice Rapid Recommendations
PCSK9 inhibitors and ezetimibe for the reduction of cardiovascular events: a clinical practice guideline with risk-stratified recommendationsBMJ 2022; 377 doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2021-069066 (Published 04 May 2022)
Cite this as: BMJ 2022;377:e069066出典: www.bmj.com
☑️ネットワークメタ分析の主要な知見
最大限のスタチン治療を受けているかスタチン治療に不耐性の83,660人を対象としたネットワークメタ分析です。
エゼチミブまたはPCSK9阻害剤は、心血管リスクが非常に高い、または高い成人において非致死的心筋梗塞および脳卒中を減らす可能性があるが、中等度および低心血管リスク者では減少しないことが示されました。
バックグラウンドの脂質低下療法に、エゼチミブまたはPCSK9阻害剤を追加しても、全死亡率または心血管死亡率に有意な影響はありませんでした。
心血管リスクが最も高い患者では最大の効果が得られるかもしれません。しかしながら、心血管リスクが中等度から低度の患者では、非致死的心筋梗塞と脳卒中の絶対的減少は僅かでした。
同様に、スタチン不耐性の患者にエゼチミブまたはPCSK9阻害薬を投与すると、心血管系リスクが非常に高い患者と高い患者で心筋梗塞と脳卒中が減少する可能性があります。
全体として、PCSK9阻害薬はバックグラウンド療法に追加した場合、心筋梗塞と脳卒中の絶対的減少率が最も高いと思われ、ezetimibeがそれに続きました。
Safi U Khan, et al.
PCSK9 inhibitors and ezetimibe with or without statin therapy for cardiovascular risk reduction: a systematic review and network meta-analysis
☑️まとめ
最大耐容量のスタチン治療を受けている成人またはスタチン不耐性の成人において、エゼチミブとPCSK9阻害剤は、心血管リスクが非常に高いまたは高い成人では非致死的心筋梗塞と脳卒中を減少させる一方、心血管リスクが中等度および低度の成人では減少させない可能性が示されました。
したがって、これらの脂質低下薬の処方は、望ましい心血管効果を得るために、心血管リスクが非常に高いまたは高い患者の適切な患者において検討する必要があることが分かりました。
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最終更新日2022年7月23日
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