慢性蕁麻疹にデスロラタジンとグリチルリチンの併用は有効ですか

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慢性蕁麻疹にデスロラタジンとグリチルリチンの併用は有効ですか

☑️はじめに

慢性蕁麻疹は人口の5%が罹患すると言われる、I型アレルギー疾患です。

重度の痒みを伴う再発性の膨疹で、夕方に症状が出ることが多く、生活の質や睡眠に深刻な影響を及ぼします。

現在の多くの仮説では、ヒスタミンとH1受容体の作用によって引き起こされ、自己免疫の病態が関与していると考えられています。

治療にはH1受容体拮抗薬が用いられます。デスロラタジンがセチリジン等より有効かつ安全であることが報告されていますが、有効性は限定され、再発率も高いことが分かっています。

そこで免疫モジュレーターと言われるグリチルリチン製剤との併用療法が、国内のガイドラインにも記載されて来ました。しかし根拠はRCTのみ、推奨グレードはB~Cであり、十分な科学的根拠がありませんでした。

近年あらたにデスロラタジンと複合グリチルリチンとの併用に関するメタアナリシスが発表されましたので、紹介したいと思います。記事は2021年の論文を中心に記述します。

論文はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)CC-BYで公開されています。

原作者のクレジット(氏名、タイトル等)を表示することを主な条件とし、改変はもちろん、営利目的での二次利用も許可される最も自由度の高いCCライセンスです。

論文

Efficiency and safety of desloratadine in combination with compound glycyrrhizin in the treatment of chronic urticaria: a meta-analysis and systematic review of randomised controlled trials

Yulong Wen , Yidan Tang , Miaoyue Li , Yu Lai
Pharm Biol. 2021 Dec;59(1):1276-1285. doi: 10.1080/13880209.2021.1973039.

PMID: 34517748 PMCID: PMC8451672 DOI: 10.1080/13880209.2021.1973039

出典: www.ncbi.nlm.nih.gov

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☑️国内ガイドラインでの扱い

まず、国内ガイドラインでの扱いを確認します。

慢性蕁麻疹に対するグリチルリチン製剤の併用は、クリニカル・クエスチョンとして問いが立てられていました。引用します。

CQ15:‌慢性蕁麻疹にグリチルリチン製剤の併用は有効か

推奨文:抗ヒスタミン薬のみでは効果不十分な慢性蕁麻疹に対し,抗ヒスタミン薬とグリチルリチン製剤の併用は試みても良い.
推奨度 2,エビデンスレベル B~C

出典:蕁麻疹診療ガイドライン2018 日本皮膚科学会

出典: www.dermatol.or.jp

推奨度2(弱い推奨:推奨した治療によって得られる利益の大きさは不確実である。または、治療によって生じうる害や負担と拮抗していると考えられる)

レベルB(中:今後さらなる研究が実施された場合、効果推定への確信性に重要な影響を与える可能性があり、その推定が変わるかも知れない)

レベルC(低い:今後さらなる研究が実施された場合、効果推定への確信性に重要な影響を与える可能性が非常に高く、その推定が変わる可能性がある)

根拠がRCTのみであり、推奨度やエビデンスレベルは高くないことが分かります。

☑️ガイドラインの根拠とする論文(2012年のランダム化試験)

ガイドラインが根拠としている2012年のRCTはこちらです。

国内未承認のH1受容体拮抗薬ミゾラスチンと複合グリチルリチン(グリチルリチン、L-システイン、グリシン)の併用は、4週間の治療後の有効率がミゾラスチン単独より有意に高く(76% vs 91%)、治療終了から1か月後の再発率が低かったとしています。

Zhang Y, Shang T:

Observation of therapeutic effect of mizolastine combined with compound glycyrrhizin in chronic idiopathic urticaria,

J Clin Dermatol(Chinese), 2012; 41: 695―698.

出典: www.researchgate.net

☑️2021年のメタアナリシス

2018年のガイドラインでは2012年のRCTが根拠とされていましたが、2021年にメタアナリシスが発表されていましたので、今回そちらを紹介します。

「慢性蕁麻疹に対するデスロラタジンと複合グリチルリチンの併用療法の有効性と安全性:無作為化比較試験のメタアナリシスとシステマティック・レビュー」

抄録です。

【背景】

H1受容体拮抗薬であるデスロラタジンは、慢性じんま疹(CU)に対する有効な第一選択薬として提案されている。

しかし、デスロラタジン単剤での効果は限定的であり、CUの再発率も比較的高い。

【目的】

CUの治療におけるデスロラタジンと複合グリチルリチンとの併用療法の有効性と臨床的実現性を評価することを目的とした。

【材料と方法】

中国国家知識基盤データベース,VIP,WanFang,PubMed,Web of Scienceの各データベースにおいて,主題語を用いて系統的な文献検索を行った。

「慢性蕁麻疹」、「ロラタジン」、「複合グリチルリチン」で検索した。

2014年1月1日から2021年2月10日までに開始された併用療法とデスロラタジン単独療法の効率性と安全性を比較した無作為化比較試験(RCT)を共同筆者2名が独立して選択し、抽出したデータをRev Man 5.3 ソフトウェアを用いて分析した。

【結果】

14件のRCTがメタ解析に含まれ、総症例数は1,501例であった。

その結果、併用療法はより優れた治療効果をもたらすことが示された。

(総奏功率: RR=1.23, 95% CI: 1.17 to 1.29, p<0.00001; 治癒率: RR=1.50, 95% CI: 1.30 to 1.73, p<0.00001)

再発率も低く、デスロラタジン単独治療と比較して優れた免疫改善効果を示した。また、安全性についても、両治療法に大きな差はなかった。

【考察と結論】

デスロラタジンと複合グリチルリチンの併用は、CUに対する有望な治療法であり、血清IgE値の低下、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の割合の改善と関連していることが示された。

Efficiency and safety of desloratadine in combination with compound glycyrrhizin in the treatment of chronic urticaria: a meta-analysis and systematic review of randomised controlled trials

Yulong Wen , Yidan Tang , Miaoyue Li , Yu Lai
Pharm Biol. 2021 Dec;59(1):1276-1285. doi: 10.1080/13880209.2021.1973039.

PMID: 34517748 PMCID: PMC8451672 DOI: 10.1080/13880209.2021.1973039

出典: www.ncbi.nlm.nih.gov

☑️研究の限界

この研究の限界は次のとおりです。

1)文献のなかで病気の経過と患者の年齢範囲にいくつかの違いがあり、治療効率に違いが生じる可能性がある。

2)14の文献の間で薬剤の投与量が異なり、研究の結果に影響を与える可能性がある。

デスロラタジンの投与量が異なると、副作用の程度が異なる可能性があり、複合グリチルリチンの投与量が多いと、偽アルドステロン症を誘発する可能性が高くなる。複合グリチルリチンの異なる用量も、副作用の軽減におけるこの併用療法の効果に影響を与える可能性がある。

3)文献はすべて中国のデータベースからのものであり、全ての文献の患者は中国人であり、民族的および地理的な偏りを引き起こす可能性が非常に高い。

4)文献を検索する場合、言語を英語と中国語に制限した。

5)文献の質が平均して低かった。すべての研究がランダム実験を採用したが、ランダム化の方法を説明したのは6つだけであり、盲検化の方法と割り当ての隠蔽について言及した研究はほとんどなかった。

☑️論文を読んで考えた事

国内で発売されているグリチロン®配合錠はグリチルリチン、グリシンを含有し、湿疹・皮膚炎に適応を有しています。

安価で全身ステロイドに比すると害の少ない介入であり、試す価値があるかと思われました。

ただし偽アルドステロン症の発症には注意が必要であり、甘草を含む漢方製剤の併用など確認する必要がありそうです。

皮膚科領域でしばしば使用される製剤のうち、十味敗毒湯は甘草1.0g、加味逍遙散は甘草1.5gを含みます。また茵蔯五苓散、黄連解毒湯は甘草を含みません。

☑️まとめ

慢性蕁麻疹の治療として、H1受容体拮抗薬のデスロラタジンと複合グリチルリチンの併用療法のメタアナリシスを確認しました。

論文では有効率・再発防止率とも、デスロラタジン単剤療法に比して有意に優れているとの結果でした。

安価で全身ステロイドに比して害の少ない介入であり、試す価値があると思われます。ただし甘草を含む漢方製剤などによる偽アルドステロン症の発症には注意が必要になりそうです。

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最終更新日2022年5月28日

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