81歳、体重52㎏の女性に出ているエリキュース錠5mgは、タイミングを見て減量提案しようと思います。

こんにちは✨😃❗アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

わたしは薬局の仕事が落ち着いている時に、よく過去の電子薬歴を見ています。

今朝も、いつものように薬歴を見ていて、81歳女性のAさん(仮)にエリキュース錠5mgが1年以上処方されているのに気づきました。

体重52kg、身長151cmで、体表面積1.46m^2です。腎機能は不明です。用量に関して処方医に疑義照会した記録はありません。

エリキュース錠について、添付文書には以下の情報があります。今後、折をみて減量の検討が必要になると思われます。

「1.非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制:

次の基準に該当する患者は、出血のリスクが高く、本剤の血中濃度が上昇する恐れがあるため、1回2.5mg1日2回経口投与する:

80歳以上か≦60kgかSCr≧1.5mg/dLに2つ以上該当のNVAF(SCr:血清クレアチニン、NVAF:非弁膜症性心房細動)1)。」

ちなみに、この3つの条件をCockcroft-Gault式に当てはめると、クレアチニンクリアランスは女性の場合28mL/minと計算されます。

学会で公表されている薬剤投与量一覧を見てみましょう2)。「クレアチニンクリアランス30mL/min未満では腎機能正常者に比してAUCが44%増加するため、1回2.5mg1日2回投与が推奨」とされています。

ここで一点、注意が必要なことがあります。

血清クレアチニンの測定法は日本では酵素法ですが、欧米ではJaffe法です。添付文書に記載されている血清クレアチニンの測定はJaffe法が殆どです。

詳しい説明は省きますが、この場合、クレアチニンクリアランスは個別eGFRで代用できます3)。個別eGFRは標準化eGFR x体表面積÷1.73で求められ、正常値は100(mL/min)です。

用量設定を決めたのは国際共同第III相ARISTOTLE 試験で、全世界39カ国の1,034施設で実施されています。このため添付文書の血清クレアチニンはJaffe法で書かれていると判断しました。

減量した場合のエリキュースの有効性と安全性については、次のように記されています。

「NVAF 患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ARISTOTLE 試験)及び国内第Ⅱ相試験(ARISTOTLE-J 試験)の有効性及び安全性の結果に基づき、本剤の用法及び用量を設定した。

NVAF 患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ARISTOTLE 試験)では、本質的に出血リスクが高いと考えられる集団における本剤の血中濃度上昇リスクを最小限にするため、「80 歳以上」、「体重 60kg 以下」、「血清クレアチニン 1.5mg/dL 以上」のうち 2 つ以上を満たす患者に対しては、無作為化割付時に本剤の用量を2.5mg 1 日 2 回投与(BID)に減量することとし、試験期間を通して同用量を継続した。

その結果、本剤 2.5mgBID の有効性は、5mgBID と比較して大きな違いはみられなかった。

また、2.5mgBID の患者数は少ないものの、対照薬と比較して優れた有効性及び安全性が示されたことから、前述の減量規定は妥当であると考えられた4)。」

Aさんはあざの出来やすさ等の訴えがないので、今度血液検査をしたタイミングで腎機能を評価し、疑義照会しようと思いました。

参考文献
1)エリキュース錠2.5mg・5mg 添付文書
2)腎機能低下時に最も注意の必要な薬投与量一覧2018改定31版 日本腎臓病薬物療法学会
https://www.jsnp.org/docs/JSNP-yakuzai_dosing_31.pdf

3)腎臓病に関するQ&A
http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/clpharm/database/docs/qa02.pdf#search=%27Jaffe%E6%B3%95+%E6%8E%A1%E7%94%A8+%E5%9B%BD%27

4)エリキュース錠2.5mg・5mg インタビューフォーム



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シンバスタチン服用中にイトラコナゾールのパルス療法を受けて横紋筋融解症を来たした例。

こんにちは☺アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。今日は併用禁忌についての話を書きます。ちょっと真面目な話です😩

わたしが以前、過去の電子薬歴を見ていて見つけた症例です。

Aさん(仮)当時64歳は、内科で高コレステロール血症の治療を受けていましたが、ある時皮膚科から爪白癬の治療を受けることになりました。

これがその際の処方です。

イトラコナゾール400mg/日(爪白鮮のパルス療法。)
シンバスタチン10mg/日

当時担当した薬剤師は、イトラコナゾールとシンバスタチンが併用禁忌に当たる為、疑義照会しました。けれど皮膚科医師からは処方通りとの返答で、調剤したと記録にあります。

読み進めます。

イトラコナゾール服用3日目でAさんは顔面浮腫、体重も3~4kg増えました。血圧も低下していたそうです。Aさんは医師に電話で相談、イトラコナゾールとシンバスタチンを中止するように言われました。

中止したところ、浮腫みは治まったとの事です。

いったい、Aさんに何が起こったのでしょう。

イトラコナゾールはアゾール系の抗真菌薬です。薬物代謝酵素を阻害することが知られています。

機序として、薬物代謝酵素の活性中心であるヘム鉄にイトラコナゾールが配位結合することで、酵素を可逆的に阻害します。

そのため、阻害作用の発現にマクロライドのようなタイムラグがありません。飲んだ日から阻害作用が現れます。

阻害様式からは非特異的に複数のCYP分子種を阻害すると予想されますが、実際にはCYP3A4を強く阻害します1)。

そしてシンバスタチンの代謝はCYP3A4に強く依存します。

そうです。イトラコナゾールにより、シンバスタチンの代謝が阻害され、シンバスタチンの体内濃度が上昇したのです。

その結果、横紋筋融解症を発症したのでしょう。

浮腫は横紋筋融解症による腎不全によるものと考えられます。

横紋筋融解症は、骨格筋細胞の壊死や融解により、筋細胞内成分が血液中に流出した状態を言います。

流出した大量のミオグロビンが尿細管を閉塞し、急性腎不全を併発することが多いとされます。

それだけではなく、循環血液量減少にともなうショックや、高カリウム血症により突然の心停止をきたす危険があります。

早期大量輸液、高カリウム血症対策と尿アルカリ化、強制利尿が急性腎不全の治療およびその予防としておこなわれます。

Aさんには命に関わるような危険があったのです。

Aさんに起こったことは、予見できなかったのでしょうか。

PISCSと言う理論から、今回の併用でシンバスタチンの体内濃度がどの程度上昇したのか予測することが出来ました。

イトラコナゾールのCYP3A4代謝阻害率IR〉0.9

シンバスタチンのCYP3A4代謝寄与率CR=1.0

AUC上昇率=1/(1-IR・CR)・・・①

①式より、併用によってシンバスタチンのAUCは10倍以上になったと予測されます2)。

当時はPISCS理論はまだ発表されていなかったので、後知恵と言われればそうですが、添付文書で併用禁忌であること、症例報告を見れば危険な併用であることは分かったはずです。

Rhabdomyolysis-induced acute renal failure due to itraconazole and simvastatin association.  2011;26(2):79-80.

わたしたちは、どうしたら良かったでしょう?

少し長くなりますが、以下の引用をご一読下さい。

・・・薬剤師に疑義照会義務を負わせている法の趣旨は、「医師等の処方の過誤を正し、医薬品使用の適正を確保し、過誤による生命、健康上の被害の発生を未然に防止する」ためにあります。薬学的に疑義が残り、医薬品の適正使用にならないような場合に、医師が対応しないからといってそのまま調剤してしまったとすれば、この目的が達成されないことは明らかです。

このような趣旨で設けられた義務である以上、形式的に医師に確認をしたとしても、薬剤師の薬学的疑義が解消され、適正に使用されることが確認できなければ、薬剤師は義務を果たしたとはいえないと解釈されます。

今回の質問のような場合、薬剤師には注意義務違反(過失)が認められ、損害賠償責任を負うことになります。また,刑事責任や行政責任に問われる可能性も否定はできません。

・・・医師が疑義照会に応じないことはありえます。「医師と薬剤師の関係から考えると仕方ないのではないか」、「薬剤師が責任を負うのはおかしいのではないか」という意見もあるかと思います。薬剤師が医師を介して患者に責任を負っているのであれば、そのような考え方もできるでしょう。

しかし、薬剤師はあくまで独立の専門職であり、患者に対して直接責任を負っています。薬剤師は医師のために調剤をしているのではなく、患者のために調剤をしているのであり、患者のために最善を尽くさなければ義務を果たしたとはいえません。医師が疑義照会に応じず、医師との関係から疑義照会をしにくいとしても、患者にその不利益を負わせてよいことにはなりません。

「患者に健康被害が起こるかもしれないが、医師が疑義照会に応じないから仕方がない」と考えて調剤することは,患者に対して「健康被害(最悪の場合は死に至る)が起きても仕方がない」と判断しているといわれかねません。このような場合、患者に対して最善を尽くしたとは到底いえませんので、薬剤師は責任を負うことになります。当然のことですが,薬剤師が患者に対する義務を果たしたかどうかの判断のポイントは、あくまで患者のために最善を尽くしたかどうかなのです3)。

重い言葉です。

今回書いたケースも、形式的な疑義照会と言われて仕方ないですし、司法のステージに進んでもおかしくなかった事例です。

司法的判断がすべてとは言いませんが、引用した赤羽根先生は弁護士であるとともに薬剤師でもあります。わたしには、薬剤師と言う職業に期待を込めた言葉と思えました。

あなたならどうしますか?

参考文献

1)Vol.50 No.7 2014 ファルマシア 655 https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/7/50_654/_pdf

2)薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015 鈴木洋史,大野能之

3)薬局・薬剤師のためのトラブル相談Q&A47 赤波根秀宣 じほう

https://www.jiho.co.jp/Portals/0/ec/product/ebooks/book/45871/45871.pdf

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糖尿病患者の生活習慣改善による体重減少のエビデンス。心血管リスクを増やすことなく、減薬出来ました。

Look AHEAD Trial は2型糖尿病患者に強化生活習慣改善介入(ILI: Intensive Lifstyle Intervention)を加えることにより、1年後(PMID:17363746)、4年後(PMID:20876408)それぞれにおいてHbA1cのみならず、心血管疾患(CVD)リスク因子が低下したことを示しました。

観察期間の中央値9.6年で試験は中止されましたが、減量を中心としたILIは心血管疾患イベントの発生を減少させませんでした。

5145例の過体重の2型糖尿病患者(45~74歳・BMI>25・HbA1c<11・BP 160/100未満・TG<600を2群に分け、ILI群では>7%の減量およびその維持を目標、グループセッションおよび個人面談を行い、カロリー制限食(脂肪によるカロリー摂取を最大30%減少、蛋白質によるカロリー摂取を最低15%減少)と運動(目標は中等度の運動175分/週)を実施しました。

さらに必要に応じて減量薬の投与または行動療法を実施しました。対照群では食事・運動・社会支援に関するグループセッションを3回実施しました。1年後・4年後の体重は臨床的に有意に減少(1年後:8.6%vs0.7%、4年後:6.15% vs 0.88%)、それにより糖尿病コントロールおよびCVDリスク因子は改善され、薬物療法を要する患者も減少しました。

試験は2012年9月に中止され、治療経過観察期間は中央値は9.6年でした。試験終了時、依然として体重減少率に有意差がありました(6.0%vs3.5%、P<0.05)。

HbA1cは、ILI群で7.3%、対照群で7.2%でした。複合一次エンドポイントである心血管疾患新規発症は、ILI群403例(1.83/100人・年)、対照群418例(1.92/100人・年)と有意な差は認められませんでした(ハザード比0.95, 95%CI:0.83-1.09, P=0.51)。

見方を変えれば、心血管リスクを増やさず、薬が減らせたと解釈することも出来ると考えられます。

高価なDPP-4阻害剤が心血管リスクに関してプラセボと有意差なしと謳って販売されているのを見るにつけ、私たちの社会的コンセンサスでは、リスクを増やさないと言うだけでアドバンテージと見る事はあながち間違いではないかも知れません。

参考文献 内科診療ストロングエビデンス



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かかりつけ医院に黙ってほかの病院を受診し、同効薬のオメプラゾールとタケキャブが重複して処方されていた話。

こんばんは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

先日、ショックを受けた事がありました。

70代のAさん(仮)は、わたしの薬局の前にある内科医院に通院しています。オメプラゾールと言う胃酸分泌を抑える薬と、他に血圧の薬を2つ、計3つを一包化しています。

一包化と言うのは、一回分ずつ薬をパックして、氏名や朝食後など飲み方を印字して準備することです。飲み方に不安のある高齢者の方などに、このような準備の仕方をする事が多いです。

薬の準備が出来て、カウンターに行く前に、電子薬歴とお薬手帳をチェックしていると、他の中規模のB病院の消火器内科から、タケキャブと言う胃酸分泌を抑える薬が処方されている事に気付きました。

😲天を仰ぐような気分になりつつ、カウンターでAさんに話を聞きました。「胃の調子が悪く、内科医院には黙ってB病院を受診した。薬はB病院の前の薬局でもらった。両方飲むと飲みすぎると思ったので、自己判断で、オメプラゾールは自分で一包化から抜いて飲んでいた。」

😲突っ込みどころが満載です。

①お薬手近があるにも関わらず、B病院の消火器内科医師は、オメプラゾールの同効薬のタケキャブを処方された。オメプラゾール中止指示があったかは不明。

②B病院の前の薬局の薬剤師は、お薬手帳があるにも関わらず、タケキャブを調剤した。定期薬の一包化薬にはノータッチ。オメプラゾール中止指示をしたかは不明。

😞あなたたち、仕事しなさいよ、と言いたくなります。

わたしの薬局に処方箋が持ち込まれたなら、B病院の消火器内科医師に電話して、オメプラゾール中止指示を確認、内科医院の薬と一包化する了解を得た後、一包化薬からオメプラゾールを抜いて、タケキャブを入れて再度一包化した事でしょう。

薬局をひとつに決めておくメリットは、まさにこのようなケースに対応出来る事です。お薬手帳を持っているだけでは不十分であることが、図らずも証明されてしまいました。

薬を安全に、効果的に使用出来るように、クスリをもらう薬局は、やはりひとつに決めておきましょう。



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カルバマゼピン服用中の甲状腺機能低下について

こんばんは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

薬局で電子薬歴を見ていたら、カルバマゼピン服薬中に甲状腺の数値(具体的には不明)が少し下がっていて、薬剤性の疑いがあると主治医から説明されたと書かれていました。

恥ずかしながら、知らない内容でしたので、カルバマゼピン(CBZ)の服用と甲状腺機能の低下について調べました。

検索していて、2報の論文を見つけましたので、簡単に紹介します。

CBZ服用の29例の前向き研究において、甲状腺機能障害のない群においては、TSH値の上昇は正常範囲、一方、甲状腺機能障害があり、レボチロキシン投与が行われていた群においては、TSH値の上昇があり、治療の変更が必要になったと報告されています1)。

CBZ服用群(n=58)と対照群(n=54)のFT3,FT4,TSHを測定したところ、統計的有意差は示されなかったと言う報告もあります。論文では、CBZは甲状腺ホルモン濃度を低下させるが、甲状腺機能低下症を起こすことは希としています2)。

さらに検索していて、厚労省の重篤副作用疾患別対応マニュアルを見つけました。甲状腺ホルモンの代謝を促進するものとしてカルバマゼピンが挙げられています3)。前述の内容を整理できると考えたので、マニュアルの記述を抜粋しました。

カルバマゼピンは、甲状腺ホルモンであるT4及びT3の代謝を促進します。甲状腺ホルモン産生予備能があまりない場合、またレボチロキシン補充中の患者の場合にカルバマゼピンを投与すると、甲状腺機能低下症を発症してレボチロキシン補充療法の開始が必要になったり、既に発症している患者では補充量の増量が必要となる場合があります。

カルバマゼピンは、肝臓における薬物代謝酵素系を誘導するとともに、結合蛋白であるTBGと甲状腺ホルモンの結合を阻害します。血中総T4 は40%程度減少、総T3 はそれより軽度減少します。遊離ホルモンであるFT4は、多くのキットでは、artifact として低く測定されますが、血中TSH の値は正常域にとどまります。

どうやら、甲状腺の基礎疾患のある場合はチラーヂンが必要性になりそうですが、そうでなければ経過観察となりそうです。

参考文献
1)Carbamazepine and risk of hypothyroidism: a prospective study. Acta Neurol Scand. 2007 Nov;116(5):317-21.  PMID:17850408

2)The effects of carbamazepine on thyroid functions in childhood epilepsy.2013; 40 (4): 533-536 Dicle Medical Journal doi: 10.5798/diclemedj.0921.2013.04.0328

3)重篤副作用疾患別対応マニュアル 甲状腺機能低下症 平成21年5月 厚生労働省



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ピロリ菌除菌の薬を飲む人が、他に飲んでいる薬を頓服も含めて全て病院と薬局で伝えたほうがよい、たったひとつの理由。

こんにちは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

みなさんの中には、ご家族がピロリ菌の除菌を受けようと考えている方がいらっしゃるかも知れません。ピロリ菌除菌療法は、早期胃癌の方が内視鏡手術後に行うことで、胃癌の再発を抑制した、と言うエビデンスがあります1)。

治療については詳しいリーフレットが用意されていて、わたしの薬局にも常備されています。

手にとって見ると、除菌のリスク・ベネフィットや、除菌の成功率などについて、かなり詳しく書かれているのですが、薬剤師の視点からは重要なのに書いてない、と思うことがあります。

それは、薬の飲み合わせです。今日はピロリ菌除菌の薬の飲み合わせについてお話しようと思います。

ピロリ菌1次除菌のレジメンでは、胃酸分泌抑制薬+ペニシリン系抗生物質+マクロライド系抗生物質の組み合わせを、朝・夕食後に1週間飲んで頂きます。

このうち、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン(商品名クラリス/クラリシッド)が、飲み合わせに注意が必要な薬です。

クラリスロマイシンは肝臓の酵素である「CYP3A4(シップスリーエーフォー)」で代謝されます。

その際に一部の代謝中間体がCYP3A4と結合して離れなくなり、CYP3A4が酵素として働かなくなってしまいます。結果、この酵素で代謝される全ての薬の体内濃度が高くなってしまいます。

この現象を「酵素が阻害(そがい)される」と言います。酵素阻害はクラリスロマイシンを飲み始めてから3、4日でピークに達し、飲み終わってからも3、4日は続きます。

クラリスロマイシンの阻害作用は、用量依存性があります。つまり、1日に飲む量が多い程、阻害作用が強くなります2)。

クラリスロマイシンは副鼻腔炎などの治療では1日量400mgですが、ピロリ菌除菌療法では、1日量400mgまたは800mgを服用します。800mgのレジメンで、より併用のリスクが高くなると考えられます。

ピロリ菌の除菌レジメンとは飲み合わせの悪い薬の代表として、シンバスタチンを例にとってみましょう。シンバスタチンはコレステロールの薬です。

ほぼ100%肝臓のCYP3A4で代謝されるので、クラリスロマイシンの影響を強く受けます。また、体内濃度が高くなると、横紋筋融解症と言う重篤な副作用を起こすリスクが高くなるので、飲み合わせに特に注意が必要です。

PISCS(ピスクス)と言う理論を用いる事で、仮にクラリスロマイシンとCYP3A4で代謝される薬を一緒に飲んだ場合、どれくらい体内濃度が高くなるのか、予測することが出来ます。

シンバスタチンを服用中に、クラリスロマイシン(1日量500~1,000mg)を服用した場合、AUC(エーユーシー、生体が利用できる薬の総量)が8.33倍と推定されました。

これは、シンバスタチン8倍量を飲んだような状況です。実際に、2剤を併用した結果、シンバスタチンのAUCが11.9倍になったと言う報告があります3)。

そして、実際にこの飲みあわせで横紋筋融解症を起こし、入院に至ったという症例が、複数報告されています4-8)。

リスクを回避するための取り組みが、日々の業務で行われています。シンバスタチンまたは類薬のアトルバスタチンとCYP3A4阻害剤の併用処方に関連するリスクについて、地域の薬剤師から知らされた時に、10人の医師のうち9人が処方を変更、または起こりうる副作用をモニターしました9)。

過去の報告から、一般に2種類以上の薬を処方されている患者の60%に、飲み合わせに問題がある可能性があるとされます10)。そして薬による副作用は、入院に至る原因の6.5%を占めていて、そのうちの17%は薬の飲み合わせが原因でした11)。

ですから、皆さんは薬局で必ずお薬手帳を作って下さい。そして病院と薬局の両方で提出し、薬の飲み合わせについてダブルチェックを受けて下さい。

使い方を誤れば諸刃の刃となる薬を、安全に、そして効果的に使用するための必須のツールとなるはずです。

参考文献

1)Effect of eradication of Helicobacter pylori on incidence of metachronous gastric carcinoma after endoscopic resection of early gastric cancer: an open-label, randomised controlled trial. Lancet. 2008 Aug 2;372(9636):392-7. doi: 10.1016/S0140-6736(08)61159-9.

2)Dose-dependent inhibition of CYP3A activity by clarithromycin during Helicobactre pylori eradication therapy assessed by changes in plasma lansoprazole levels and partial cortisol clearance to 6β-hydroxycortisol Clin Pharmacol Ther. 72. 33-43 (2002)

3)これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの理論と実践  大野能之・樋坂章博 編著 じほう

4)Wagner J, Suessmair C, Pfister HW. Rhabdomyolysis caused by co-medication with simvastatin and clarithromycin. J Neurol. 2009;256(7):1182–1183. [PubMed]

5)Molden E, Andersson KS, Jacobsen D. Interactions between statins and macrolide antibiotics. [Article in Norwegian] Tidsskr Nor Laegeforen. 2007;127(12):1660–1661. [PubMed]

6)Kahri AJ, Valkonen MM, Vuoristo MK, Pentikainen PJ (2004) Rhabdomyolysis associated with concomitant use of simvastatin and clarithromycin. Ann Pharmacother 38:719 [PubMed][Google Scholar]

7)Lee AJ, Maddix DS (2001) Rhabdomyolysis secondary to a drug interaction between simvastatin and clarithromycin. Ann Pharmacother 35:26–31[PubMed][CrossRef][Google Scholar]

8)Molden E, Andersson KS (2007) Simvastatin-associated rhabdomyolysis after coadministration of macrolide antibiotics in two patients. Pharmacotherapy 27:603–607[PubMed] [CrossRef] [Google Scholar]

9) Molden E, Skovlund E, Braathen P. Risk management of simvastatin or atorvastatin interactions with CYP3A4 inhibitors. Drug Saf. 2008;31(7):587–596. [PubMed]

10)Potential drug-drug interactions in the medication of medical patients at hospital discharge.
Egger SS, et al. Eur J Clin Pharmacol 58, 773-8 (2003)

11)Adverse drug reactions as cause of admission to hospital: prospective analysis of 18 820 patients. Pirmohamed M, et al. BMJ 329, 15-9 (2004)



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心房細動で薬を飲んでいる人が、花粉症の薬を病院でもらう時に、お薬手帳を持参した方がよい、たったひとつの理由。

こんにちは。アロマ薬剤師のゆきです。

スギ花粉症の季節になりましたね。昨年の夏が暑かったので、今年は花粉の量が多いのではないかと言われています。今まで花粉症の症状がなかったり、軽かったので花粉症の薬を飲んでいなかった人が、今年になって飲み始めることがあるかも知れません。そこで、今日は、花粉症の薬の飲み合わせの話をしたいと思います。

花粉症の薬、セチリジン(商品名ジルテック)の添付文書には、併用注意としてピルシカイニド(商品名サンリズム)が記載されています。引用文献がないので、PUBMED と言う医療データベースで検索したところ、該当すると思われる文献を見つけました1)。再構成して話してみようと思います。

72歳のAさん(仮)は、腎機能が低下している方で、ピルシカイニドを1日150mg服用していました。心房細動の治療薬です。ある時、花粉症の薬、セチリジンを1日量20mgで処方されました。セチリジンを服用開始して3日目、Aさんは失神して病院に運ばれました。

徐脈、幅広いQRS波と、ピルシカイニドの過量投与を疑わせる症状があり、ピルシカイニド中止により回復しました。血液検査で、ピルシカイニドとセチリジン双方の血中濃度が上昇していたことが分かりました。

その後、健康なボランティアにピルシカイニドとセチリジンを単回投与した試験が行われ、ピルシカイニドとセチリジンのクリアランスが、各々半分程度まで低下することが分かりました。

ピルシカイニドもセチリジンも腎臓から尿に排泄される薬であり、排泄経路が競合するために起こる相互作用ではないかと考えられます。

基礎研究の知見から、腎尿細管にある薬物トランスポーター、MRP1やOCT2が、この相互作用に関与しているのではないかと考えられています。

心房細動は加齢とともに発症する病気であり、皆さんのご家族でもピルシカイニドを飲んでいる方は多いのではないかと思います。

もし花粉症で病院を受診する際は、必ずお薬手帳を持参して、病院と薬局の両方で、薬の飲み合わせについて、ダブルチェックを受けて下さい。

1)Severe arrhythmia as a result of the interaction of cetirizine and pilsicainide in a patient with renal insufficiency: First case presentation showing competition for excretion via renal multidrug resistance protein 1 and organic cation transporter 2.



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健康診断でコレステロール値が高いと指摘された人は、薬を飲まないとダメ?家族性高コレステロール血症って何ですか?

こんばんは。アロマ薬剤師ゆき、こと、研修認定薬剤師の奥村です。

健康診断で、コレステロールが高いのを指摘される人は少なくないと思います。いったい、薬を飲んでコレステロール値を下げた方が良いのでしょうか?

コレステロール値を下げる目的は、動脈硬化を予防し、心筋梗塞等の発症を予防する事です。実は日本人は心筋梗塞の発症率が欧米人の1/3程度 1)と低いので、ガイドラインに盲従することなく、リスク・ベネフィットを勘案して治療対象としない選択肢はあると思います。

例外的に、リスク・ベネフィットから強力な治療をした方がよい(と、わたしは思う)グループがあります。家族性高コレステロール血症(FH)の治療です。今日は、FHの話をしようと思います。

Aさんは40代の女性です。標準体型より、やややせ形。先月が初診でLDL(いわゆる悪玉コレステロール)が216と高く、アトルバスタチン10mgが開始されました。

20代の頃からコレステロール値が高いことを指摘されていたそうです。親兄弟、祖父と皆コレステロール値が高かったそうです。

本日の血液検査でコレステロール値はLDL100程度、HDL70程度と検査票より確認しました。病院では色々検査をされたとの事です。

聞き取りした内容から、Aさんは家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体ではないかと想像します。FHは日本人の250人に1人程度の割合で存在する、遺伝子疾患です。

FHの人は幼少時からコレステロール値が高く、血管へのコレステロールの負荷がかかるため、未治療の男性で30~50歳、女性で50~70歳の間に心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患の発症が多いと報告されています2)。

つまり、FHでない人と比べて、若くして心筋梗塞などを起こすリスクが高いため、治療の意義が高いと考えられます。それでは、どんな人がFHの可能性が高いのでしょう。

FHヘテロ接合体の診断基準は、次のようになります3)。
①高LDL血症(未治療時のLDL値180mg/dL以上)
②腱黄色腫、あるいは皮膚結節性黄色腫の存在。
③FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内の血族)

上記2項目が当てはまる場合、FHと診断します。捕捉すると、
・LDLが250mg/dL以上の場合、FHを強く疑います。
・早発性冠動脈疾患は男性55歳未満、女性65歳未満と定義します。
・FHと診断した場合、家族についても調べることが望ましいです。

また、FHでは動脈硬化性疾患のリスクが高いため、生活習慣の改善を実施する前に、労作性狭心症の有無の問診、運動負荷心電図、心エコー検査によって、動脈硬化性疾患の評価を行います。

FH患者のLDL管理目標値は一次予防(心筋梗塞等の発症予防)が100mg/dL未満、あるいは未治療時の50%未満。二次予防(心筋梗塞等の再発予防)で70mg/dLとします。

FHは未治療の方が多い疾患です。家族歴のある方はぜひ診察を受けられて、もしFHと診断されたら、治療を受けられらる事をお勧めします。

1)Turin TC, et al. Lifetime risk of acute myocardial infarction in Japan. Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2010; 3: 701-3.
2)Mabuchi H, et al.: Circulation 79(2): 225-232, 1989
3)日本動脈硬化学会 編 : 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版, 杏林舎, 2012



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FH診断に用いるDutch Lipid Clinic Network基準

FHのスクリーニングに用いるDutch Lipid Clinic Network基準を紹介します。

1群:家族歴
(i) 一親等親族に若年発症(男性:55歳未満,女性60歳未満)の冠動脈疾患ないしは(1ポイント)
(ii) 一親等親族のLDL-C値が国の同性・同年齢の95パーセンタイル値超ないしは(1ポイント)
(iii) 一親等親族に腱黄色腫・角膜輪のいずれか ないしは(2ポイント)
(iv) 18歳未満の子女のLDL-C値が国の同性・同年齢の95パーセンタイル値超(2ポイント)

2群:既往歴
(i) 若年発症(男性:55歳未満,女性60歳未満)の冠動脈疾患(2ポイント)
(ii) 若年発症(男性:55歳未満,女性60歳未満)の脳血管障害または末梢動脈疾患(2ポイント)

3群:身体所見
(i) 腱黄色腫(6ポイント)
(ii) 45歳以前に角膜輪(4ポイント)

4群:LDL-C値
>325 mg/dL(8ポイント)
251 ~ 325 mg/dL(5ポイント)
191 ~ 250 mg/dL(3ポイント)
155 ~ 190 mg/dL(1ポイント)

5群:DNA分析
LDL受容体,アポB100,PCSK9のいずれかに疾患惹起的変異(8ポイント)

1)Nordestgaard BG, et al; European Atherosclerosis Society Consensus Panel. Eur Heart J. 2013; 34: 3478-90a.

家族歴や既往歴、身体所見など5グループに分けられた9項目の評価・ポイント付けを行い、合計が8ポイント超であれば「確実な( definite)FH」と診断します。また6〜8ポイントの場合「まず確実な( probable)FH」、3〜5ポイントでも「FHの可能性」を疑います。FHを除外できるのは、原則的に2ポイント以下のみです。

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費用対効果を満たす冠動脈疾患一次予防のスタチン療法。糖尿病・脂質異常症合併の疫学とスタチンのエビデンス。

冠動脈疾患の一次予防目的のスタチン療法において、1日薬価112円で計算した場合、すべての群において費用対効果の面からは推奨されない、と言う記事を書きました。

ただし、これは2012年時点でのプラバスタチン10mgの薬価での評価であり、現在最も安価なジェネリックがその1/5の薬価である事から、糖尿病を含めた一部の群では一次予防が推奨される、という経済分析が新たに報告されています1)。

そこで、脂質異常症の既往のある患者の、冠動脈疾患の一次予防目的のスタチン療法について、疫学、スタチンのエビデンスを紹介します。

日本の疫学研究であるJDCS(Japan Diabetes Complication Study) 2)の9年次中間報告によると、2型糖尿病患者の冠動脈疾患・脳卒中の発症率は10年リスクに換算して9.6%、7.6%であり、一般住民 3)の各々3倍、2倍です。

年齢・性別の影響を除いた冠動脈疾患のリスク因子は、LDL、年齢、TG、HbA1c、Cペプチド、性別、喫煙、また脳卒中のリスク因子はsBP、年齢、性別でした。糖尿病の治療においては、HbA1cだけでなく、コレステロール値や中性脂肪にも注意が必要です。

コレステロール管理に関して、スタチンは非糖尿病患者と同等の相対リスク低減効果が報告されています。むしろベースラインリスクが高いので、治療効果は相対的に大きくなります。

英国のCARDSスタディは、糖尿病で心血管リスクを有する脂質異常症の患者にアトルバスタチンを投与した介入試験です。心血管イベントはプラセボに比して有意に低く(37%減少)、全死亡も低下傾向(27%減少)だった為、試験は早期終了されました。4)

ただ、経済分析されているプラバスタチンはレギュラースタチンです。LDL低下率は20%程度であり、治療前の患者のLDL値が150以上であればTreat to targetの目標値LDL<120を達成できないかも知れません。薬だけで目標値を達成するためにLDL低下率が40%程度のストロングスタチンを使用した場合、1日薬価はリピトール10mgで113.6円、最も安価なジェネリックでも76.5円ですので、費用対効果を満たさない治療と評価される可能性があります。

肥満など生活習慣の改善の余地があれば、食事・運動療法で更に15%のLDL低下5)を目指し、それでも目標値を達成出来ない場合に限り、アトルバスタチンなどストロングスタチンの使用を考慮、もしくはアトルバスタチン等を開始後、生活習慣の改善でLDLが十分低値となった場合にプラバスタチンに切替る方法は、治療効果と経済性を両立できるのではと考えます。

1)薬局2018年4月号 所得格差時代の薬物療法

2)Japan Diabetes Complication Study(1996-):日本人の2型糖尿病患者2250人を対象にした生活習慣の効果を検討した前向き研究。開始時の平均年齢59.4歳、平均罹病期間11.9年、平均HbA1C7.74%でした。

3)久山町研究第3集団(約30%の糖尿病・耐糖能異常者を含む)において、10年リスクは冠動脈疾患で男3.5%/女1.8%、脳卒中で男5.3%/女3.9%でした。

4)Primary prevention of cardiovascular disease with atorvastatin in type 2 diabetes in the Collaborative Atorvastatin Diabetes Study (CARDS): multicentre randomised placebo-controlled trial.PMID:15325833
5)NCEP-ATP IIIのTherapeutic Lifestyle Change Dietを適応すれば、LDLを5~15%下げることが可能とされています。

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