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シクロスポリンと併用する場合、アトルバスタチンの用量はどの程度にすればよいですか
☑️はじめに
本邦において、アトルバスタチンはシクロスポリンともっとも併用されているスタチンです。
添付文書においてピタバスタチン、ロスバスタチンが併用禁忌であり、唯一シクロスポリンと禁忌記載のないストロングスタチンのためと考えられます。
この併用でスタチンのAUCが上昇することは有名です。
Googleで検索すれば各スタチンのAUC上昇率が容易に調べられ、ミオパシーや横紋筋融解症のリスクになると書かれています。
スタチンは低用量を慎重に使用する必要があると考えられます。
それではアトルバスタチンとシクロスポリンを併用する場合、アトルバスタチンの用量はどの程度にすればよいのでしょうか
実際に横紋筋融解症を起こした症例報告はあるのでしょうか。
記事ではPubmedで検索した論文をもとに、この臨床疑問を考えて行きます。
プロローグ
1,2000人のフォロアーを有するTwitterでアンケートをとりました。
シクロスポリンと併用する場合、アトルバスタチンの用量は回答の殆どが10mg未満。
そのうちの半分強は5mg未満との回答でした。相互作用を考慮し、低用量で慎重に使用している実態が分かりました。
出典: twitter.com
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☑️シクロスポリンとアトルバスタチンによる横紋筋融解症
シクロスポリンにはCYP3A4阻害作用、P糖タンパク阻害作用の他、肝取り込みトランスポーターOATP1B1阻害作用があります。
アトルバスタチンのPKはこの全ての相互作用の影響を受けると考えられます。AUC上昇はミオパシーや横紋筋融解症のリスクになると考えられます。
実際、この併用による横紋筋融解症の症例報告があります。禁忌でなくとも慎重な使用が必要と考えられます。
H C Maltz, et al.
Rhabdomyolysis associated with concomitant use of atorvastatin and cyclosporine
Ann Pharmacother . 1999 Nov;33(11):1176-9.
☑️液クロによるアトルバスタチンTDMが望ましい
アトルバスタチンのTDMおよび血清濃度に基づく減量は、シクロスポリンとの相互作用による合併症を予防または軽減するのに有効です。
しかし高速液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて行われるべきアトルバスタチンのTDMは、多くの施設において利用できない可能性があります。
その場合、低用量での使用を考慮しなくてはなりません。
Moradi, et al.
Drug-Drug Interactions among Kidney Transplant Recipients in The Outpatient Setting
Int J Organ Transplant Med . 2020;11(4):185-195.
☑️アトルバスタチン10mg/日を超えないことを推奨
UpToDate®を見ると、シクロスポリンを併用している患者ではアトルバスタチンの用量を10mg/日を超えないように推奨しています。
UpToDate®
Kidney transplantation in adults: Lipid abnormalities after kidney transplantation出典: www.uptodate.com
☑️臨床試験の用量も10mg/日が多い
また、ほとんどの臨床試験では、シクロスポリンベースの免疫抑制レジメンでアトルバスタチン10mg/日を使用しています 。
Cardiac Disease Evaluation and Management Among Kidney and Liver Transplantation Candidates
☑️日本人では更に低用量から開始が安全かも知れない
アトルバスタチンではありませんが、アジア人において、ロスバスタチンの経口クリアランスが白人に比して約半分であることが知られています。
この差はOATP1B1をコードするSLCO1B1の遺伝子型分布の違いによると解釈されています。集団平均として白人の用量の半分で同程度の暴露に相当すると考えられます。
アトルバスタチンも同様に考えて用量は5mg/日以下とするのが安全かも知れません。
Lee, et al.
Rosuvastatin pharmacokinetics and pharmacogenetics in white and Asian subjects residing in the same environment
Clin Pharmacol Ther . 2005 Oct;78(4):330-41.
☑️併用でアトルバスタチンAUC6~15倍との報告
ネットで流布している情報のソースです。
アトルバスタチンを2.5mg/日で使用した場合、AUC上昇は承認上限の40mg/日を超えない計算です。
Pertti J Neuvonen, et al.
Drug interactions with lipid-lowering drugs: mechanisms and clinical relevance
Clin Pharmacol Ther . 2006 Dec;80(6):565-81.
☑️まとめ
アトルバスタチンとシクロスポリンの併用について概観しました。
併用によるAUC上昇率についてはネットで情報が多いですが、実際に服用した場合の情報については日本語の情報は多くありません。
Pubmedを検索するとアトルバスタチンとの併用で横紋筋融解症を発症した症例があり、添付文書で併用禁忌でなくとも慎重になる必要があると分かります。
UpToDate®では、アトルバスタチンは10mg/日を超えないことを推奨しているようです。また海外の臨床試験のレジメンでも10mg/日がほとんどのようです。
しかしOATP1B1の遺伝子型分布の違いから、アジア人は白人の半分の経口クリアランスである可能性が高く、アトルバスタチンも5mg/日以下から慎重に使用が望ましいかも知れません。
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最終更新日2022年9月10日
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