メトホルミン投与量は血清クレアチニンではなくクレアチニンクリアランスで判断しなければいけない

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メトホルミン投与量は血清クレアチニンではなくクレアチニンクリアランスで判断しなければいけない

☑️はじめに

メトホルミンは腎排泄型の薬剤です。腎機能は年齢とともに低下するため、高齢者では適切に減量しないといけません。
血中濃度が上昇し、乳酸アシドーシスのリスクになります。

以前は血清クレアチニンで注意喚起が為されていました(血清 Cr 値で男性 1.3 mg/dl 以上,女性 1.2 mg/dl 以上で非推奨)。
しかし、年齢や体格が考慮されないため、注意としては不適切です。
常用量のメトホルミンで乳酸アシドーシスを発症した症例報告もあります。

常用量のメトホルミンにより重度の乳酸アシドーシス、急性腎不全を呈した1例

出典: general.tane.or.jp

Cockcroft-Gault式を使って推定クレアチニンクリアランス(eCCr)を求めることが重要です。

現行の添付文書には、メトホルミン投与量の目安としてeGFR:60-45では最高1,500mg/日、eGFR:45-30では最高750mg、eGFR<30では禁忌としています。

添付文書ではeGFRは標準化eGFRとして記載されています。現状ではコンセンサスが不十分ですが、体格が標準(1.73m^2)とかけ離れた場合は個別化eGFRの方が評価方法として優ります。個別化eGFRはeCCrに近似しますので、投与量の目安として考える事ができると思われます。

さくら先輩、血清クレアチニンではダメなのですね

年齢や体格が反映されないからね。ちょうどいい症例報告があるよ

プロローグ

👩‍🎓血清Cr0.68だと、

🧔50歳、47kg…クレアチニンクリアランス86mL/min

👵96歳、47kg…クレアチニンクリアランス36mL/min

👩‍🎓🧔はメトホルミンの減量は必要ありませんが、👵は禁忌に近いです。

👨‍⚕️Cockcroft-Gault式による推定CCrは次式で

(140-Age)xBW÷(72xCr)

👩‍🎓女性は更に0.85を乗じて下さい。

出典: twitter.com

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☑️症例報告「薬物有害反応、気づかれなかった腎不全」

メトホルミンが原因と思われる慢性下痢症の症例報告がありましたので、紹介します。
血清クレアチニンでなく、個別化eGFRやCCrで判断することの重要性が分かります。
原文は英文PDFファイルでしたので、ShaperとDeepLを利用したものを掲載します。

Case Report: Adverse drug reactions in unrecognized kidney failure
Can Fam Physician . 2004 Oct;50:1385-7.
PMID: 15526875 PMCID: PMC2214509

出典: www.ncbi.nlm.nih.gov

☑️症例提示

96歳女性L。老人デイホスピタルの薬剤師に、彼女の服薬指導が依頼されました。

主訴はここ数年、数日おきに突然発症する下痢。下痢は昼夜を問わず起こり、昼間の下痢は彼女を非常に苦しめました。

下痢を悪化させる要因も緩和させる要因もわからず、内科医に検査や紹介をしても原因がわかりません。

☑️服用する薬剤と検査値

服薬リスト:メトホルミン1000mg朝食時、500mg昼・夕食時、ワルファリン、ジゴキシン0.125mg/日、フロセミド40mg/日、リシノプリル10mg/日、アムロジピン5mg/日、ソタロール80mg/日、グルコヘプトン酸マグネシウム45mL、カリウム16mEq/日、ニトロフラントイン100mg/日、必要に応じてロペラミドを1日に3回。

血圧正常(120/70)、心拍数72/分で時々不整。頸静脈脈正常。胸部は透明。

カリウム4.1mmol/L(=4.1mEq/L)と血糖値7.0mmol/L(=126mg/dL)は正常、血清クレアチニン60 mmol/L(=0.68mg/dL)、マグネシウム0.58 mmol/L(=1.4mg/dL)と低値でした。

主要臨床検査項目単位換算表

出典: www.zm.emb-japan.go.jp

☑️薬剤師による介入と結果

薬剤師がCockcroft-Gault式を用いてクレアチニンクリアランスを算出したところ、推定糸球体濾過量が36mL/minと、かなりの腎機能障害が認められました。

*メトホルミンを低用量のグリブリドに変更しました。(メトホルミンが下痢に関与しているかどうかの判断と乳酸アシドーシスの潜在的リスクのため。)

*ニトロフラントインをシプロフロキサシン低用量に変更しました。(ニトロフラントインは腎障害では効果が期待できないため。)

*ジゴキシンを減量しました。(低マグネシウム血症の併発による毒性リスクを軽減するため、またメトホルミンと相互作用を有したり、下痢に寄与すると考えられるため。)

出典:

これらの投薬変更後、下痢は止まり、マグネシウムとカリウムは補充なしで正常値を維持し、血糖値はグリブリドでコントロールされました。

慢性的な下痢が止まったことで、患者は孤立感を感じなくなり、人前で自由に動けるようになりました。

☑️考察

患者は何年もメトホルミンを服用していました。糖尿病のコントロールは良好で、血清クレアチニン値も正常範囲内であったため、かかりつけ医は彼女が腎機能低下による毒性を経験している可能性を考慮することはありませんでした。

しかし、クレアチニンクリアランスの計算値(36mL/分)は明らかに異常でした。

腎機能の低下は、メトホルミンの血清レベルの上昇を引き起こし、メトホルミンの有害反応として記録されている下痢の発生につながったのではないかと推測されます。

☑️提言

このケースは、高齢者のケアにおけるいくつかの重要な問題点を示しています。

医師は血清クレアチニン値に依存するのではなく、クレアチニンクリアランスを計算し、それに応じて薬物を調整する必要があります。

またこの症例は、高齢患者の複雑な薬物療法の評価に臨床薬剤師を参加させることの利点を示しています。

☑️まとめ

メトホルミンは腎排泄型で、適切に減量しないと乳酸アシドーシスや慢性下痢症のリスクになることが分かりました。

減量の際は血清クレアチニンではなく、年齢や体格が反映されたクレアチニンクリアランスや、eGFRを使用します。

また標準の体格からかけ離れた場合、標準化eGFRは個別化eGFRと読み替えて判断するのがより適切な場合があります。

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最終更新日2021年2月17日

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