肝硬変でザイザル®AUC増大は肝腎症候群による腎機能低下に起因する

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肝硬変でザイザル®AUC増大は肝腎症候群による腎機能低下に起因する

☑️はじめに

ザイザル®の添付文書には肝障害のある患者を注意喚起しています。

高い血中濃度が持続するおそれがあると記載されています。

ラセミ体であるセチリジンを原発性胆汁性肝硬変患者に投与したデータがありますので見てみましょう。

薬物動態パラメーターとして、Cmaxが1.3倍、T1/2が1.9倍、AUCが1.9倍です。

ザイザル®は腎排泄型の薬剤と考えられますが、どうして肝硬変で高い血中濃度が持続するのでしょう?

これは実は腎機能が低下しているためと考えられます。

薬物動態学の知識を駆使して、文献データを読み解きましょう。

プロローグ

👧ザイザルは腎排泄型なのに、肝硬変でT1/2が延長、AUCが増大はなぜ?

👩PKの変動要因は遊離分率と腎固有クリアランスだね?腎機能低下が起きていると思うよ。

👧え!腎機能ですか

👩肝硬変ではシャントの成立をきっかけに、様々な要因が重なって腎機能障害が進行する。

👧メモメモ

👩そしてザイザルのPKの変動要因だけど…

出典: twitter.com

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☑️薬物のPK特性から変動要因を決定する

薬物のPKの特徴づけと病態時における⽂献情報を組み合わせることにより、病態時における血中濃度の変動の要因を解釈できます。

手順をまとめると以下のようになります。

1.個々の薬物の PK パラメータの特徴づけを⾏う

2.各PKパラメータの変動要因を明確にする(Table 1111〜2332)

3.⽂献を検索し、病態時における各変動要因の変化について解釈する

ザイザル®(レボセチリジン)を例に見て行きましょう。

薬物の体内動態パラメータ値と特徴づけ 病態変化に伴う⾎中⾮結合形濃度の予測への応⽤

出典: www.maruzen-publishing.co.jp

☑️個々の薬物の PK パラメータの特徴づけを⾏う

ザイザル®添付文書やインタビューフォーム等から、以下の情報を得ました。

①Ae=0.8     腎排泄型
②CL/F=40mL/min 消失能依存型
③Vd/F=25L    分布容積小
④fuB=0.08     血漿たん白結合依存型

また
F>0.9
B/P不明

ザイザル錠5mg添付文書/インタビューフォーム

出典: www.info.pmda.go.jp

☑️各PKパラメータの変動要因を明確にする(Table 1111〜2332)

ザイザル®は、緒方らの提唱する薬物の分類でTable2111に該当すると思われます。

経口投与時のクリアランスCLpo、半減期T1/2、AUCpoは次式であらわされます。

CLpo≒fuB・CLintR/Fa
T1/2≒0.693・Vp/fuB・CLintR
AUCpo≒D・Fa/fuB・CLintR

PKパラメータの変動要因とそれらの病態の変化に伴う動き table2111

出典: www.maruzen-publishing.co.jp

☑️肝硬変が進行した場合に想定しうるパラメーターの変化

肝硬変が進行した場合に想定しうる変化は次のようになります。
・肝血流量の減少Qh↓
・肝固有クリアランスの減少CLintH↓
・血漿たん白遊離分率の増加fuB↑
・腹水による血漿容積の増大Vp↑

また、肝腎症候群と言って、肝硬変では2次的に腎機能低下を来す場合があります。糸球体ろ過率が低下します。
・腎固有クリアランスCLintR↓

肝硬変における肝以外の臓器の障害

出典: www.jstage.jst.go.jp

☑️病態時における各変動要因の変化について⽂献を検索し、解釈する

CLpo≒fuB↑・CLintR↓/Fa(肝硬変患者ではfuBとCLintRの影響が逆⽅向に働くため、CLpoはそれぞれの影響の程度により増減する可能性)

T1/2≒0.693・Vp/fuB↑・CLintR↓(肝硬変患者ではfuBとCLintRの影響が逆⽅向に働くため、T1/2はそれぞれの影響の程度により増減する可能性)

AUCpo≒D・Fa/fuB↑・CLintR↓(肝硬変患者ではfuBとCLintRの影響が逆⽅向に働くため、AUCpoはそれぞれの影響の程度により増減する可能性)

ここで冒頭の添付文書に戻ります。fuB・CLintRの変化の比が前後で<1であれば、T1/2延長、AUCpo増加の説明が付きます。腎固有クリアランスの低下が今回のPKパラメーター変化の変動要因であることが説明されました。

☑️まとめ

ザイザル®のPKパラメーターから薬物の動態学的特徴づけを行い、病態時における変動要因を明らかにしました。

肝硬変時に半減期が延長しAUCが増大するのは、腎機能低下に起因する可能性が挙げられ、肝腎症候群と言う病態的特徴で説明できることが分かりました。

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最終更新日2021年8月25日

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