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ピルシカイニドは腎機能に応じてGiusty-Hayton法で減量する。
☑️はじめに
Aさんは62歳女性。持続性心房細動の治療を受けています。身長は155cm、体重39kg、BMI16.2と小柄で痩せ型の体格です。
処方は抗凝固薬のダビガトラン 110mg 1カプセル、不整脈の薬のピルシカイニド 50mg 1カプセルを12時間おきに服用しています。
ダビガトランとピルシカイニドはどちらも尿から排泄される薬ですので、腎機能に応じて用量の調節が必要です。
さくら先輩、ダビガトランの用量から腎機能低下と予想します。ピルシカイニドはニュースにもなっていましたが、この用量で妥当ですか？
プロローグ
Rp.
ﾀﾞﾋｶﾞﾄﾗﾝ110mg 2c
ﾋﾟﾙｼｶｲﾆﾄﾞ50mg 2c 分2👧先輩、ﾋﾟﾙｼｶｲﾆﾄﾞの監査はどうしたら良いですか？
👩ﾉﾓｸﾞﾗﾑを使う手もあるけど、Ccrが分かればGiusti-Hayton法で計算してもいいよ
👧じ、じゅすてぃへい…
👩あはは、時間があるから詳しくﾚｸﾁｬｰしよう
👧はい
出典: twitter.com
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☑️eGFRは腎機能のステージ表記、クレアチニンクリアランスは用量調整に用いる
腎機能の指標には、eGFRとクレアチニンクリアランスの二つがあります。
eGFR(mL/min/1.73m2)、より正確に表現すると標準化eGFRは、1.73m2の標準体格に補正されていて、腎機能低下のステージの指標に用いられます。
クレアチニンクリアランス（CCr mL/min）は、体格(体重)を反映させた指標で、用法用量の調整に用いられます。
☑️血清クレアチニン値が不明でも年齢でクレアチニンクリアランスを予測する
Aさんのクレアチニンクリアランスや血清クレアチニンなどの検査値は不明です。
腎機能は加齢とともに低下します。そこでクレアチニンクリアランスの正常値が100mL/minで、20歳を越えると1歳ごとに－1mL/minと仮定します。
Aさんは62歳と言う年齢から、58mL/min程度、軽度の腎機能低下があると予想されます。この推定値を用いて話を進めて行きます。
☑️ピルシカイニドの治療域は0.2-0.9μg/mL
ピルシカイニドの治療域は0.2-0.9μg/mLです。血中濃度がこれを上回ると、徐脈、血圧低下、めまい、眠気などの副作用が起きる場合があります。
Aさんはどれくらいの用量が適切なのでしょうか。順を追って見て行きます。
☑️Giusti-Hayton法で腎機能低下時の用法用量を補正する
簡便なGiusti-Hayton法による用法用量の計算をしてみましょう。
R=1-fu(1-CCr/100)と言う式から、クレアチニンクリアランス58mL/minの時の補正係数R=0.62です。
ピルシカイニドの尿中未変化体排泄率fu=0.9としました。また、ピルシカイニドの標準の用法用量を1回50mg 8時間おきとします。
☑️投与間隔を変える場合、投与間隔を補正係数で除する
服用間隔を変える場合、8時間/0.62=12.9時間です。
服用間隔を通常の8時間おきから現状のような12時間おきに延長すればよいと考えられます。
これはAさんの服用している飲み方そのものです。
☑️投与1回量を変える場合、投与1回量に補正係数を掛ける
また、この他に服用量を変える方法もあります。
50mg x0.62=31mgですので、1回量を25mgに減量し、1日3回服用すればOKです。
こちらの方法の方が血中濃度の変動幅を狭く出来ます。
☑️まとめ
ピルシカイニドは腎排泄されるため、腎機能に応じた減量が必要であることを見て来ました。
クレアチニンクリアランスを予測し、Giusti-Hayton法で投与間隔または1回投与量を補正します。
ハイリスク薬の監査は薬剤師の重要な業務です。今回の記事で紹介した手法が、皆さんの日常業務に役立てば幸いです。
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最終更新日2021年7月13日
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