アロプリノール禁忌や不耐性の痛風にフェブキソスタットは安全に使用できますか

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アロプリノール禁忌や不耐性の痛風にフェブキソスタットは安全に使用できますか

☑️はじめに

フェブキソスタットは2011年に国内発売された尿酸降下薬です。

強力な尿酸降下作用を有し、アロプリノールと異なって腎機能の影響を受けにくく、処方も増えています。2021年度上期の売上は193億円(前年より9.7%増)でした。

しかしながら薬価が高く、2012年のACRガイドラインでは、英国NICEは費用分析の評価により、高額なフェブキソスタットはアロプリノールに禁忌や不耐性の痛風患者の尿酸降下療法に推奨すべき、と結論付けたことが紹介されています。

また、フェブキソスタットは2018年のCARES試験以降、心血管リスクを増やすのではないかとの懸念が続いていました。数々のRCTや観察研究でも結果が一貫しなかったのです。

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」

出典: minds.jcqhc.or.jp

ここでクリニカルクエスチョンが生じます。

フェブキソスタットはアロプリノール禁忌や不耐性の痛風患者に代替薬として安全に使用できるのでしょうか?

記事ではフェブリク®添付文書に注意記載された経緯を振り返り、最新のシステマティックレビュー・メタ分析を紹介したいと思います。

プロローグ

👧英語論文、難しそうです…
👩DeepLで翻訳しながら読むと英語はクリアできるよ。
👩試験デザインや解析法などは、すぐに全部理解するのは難しいので、少しずつ学んで行こう。
👧はい、先輩!

出典: twitter.com

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☑️フェブリク®添付文書を確認する

フェブリク®の添付文書を見ると、重要な基本的注意に心血管リスクの記載があるのに気づきます。
この起因になったのが、CARES試験(2018)です。

8. 重要な基本的注意
8.3 心血管疾患を有する痛風患者を対象とした海外臨床試験において、アロプリノール群に比較してフェブキソスタット群で心血管死の発現割合が高かったとの報告がある。本剤を投与する場合には心血管疾患の増悪や新たな発現に注意すること。

フェブリク®添付文書(2020年8月改訂・2020年12月改訂 )

出典: www.info.pmda.go.jp

☑️医薬品・医療機器等安全性情報 No.365(2019年8月)

CARES試験においてアロプリノール群に比較してフェブキソスタット群で心血管死及び全死亡の発現割合が高かったとの報告等を踏まえ、心血管系リスクについて国内における対応策が、2019年に医薬品医療機器総合機構で検討されました。

機構の見解として、現時点でフェブリク®の適用患者を限定する等の措置は必要ないとする一方、 CARES試験の結果は一定の精度下での結果であり、添付文書を改訂し、データベース調査等により情報収集を行う必要がある、としています。

フェブキソスタットの安全対策について
医薬品・医療機器等安全性情報 No.365(2019年8月)

出典: www.mhlw.go.jp

☑️CARES試験(2018)

心血管疾患を有する痛風患者6,190人を対象とした、二重盲検非劣性試験です。

主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症に対する緊急血行再建術の複合エンドポイント。
アロプリノール群に対し、フェブキソスタット群で非劣性が示されました。

問題となったのは探索目的の副次評価項目。心血管死の発現がフェブキソスタット群で4.3%、アロプリノール群で3.2%と、フェブキソスタット群が高い結果でした。ハザード比[95%信頼区間]: 1.34[1.03, 1.73]でした。

両群ともに心突然死が最も多い結果でした(フェブキソスタット群で2.7%、アロプリノール群で1.8%)。また、全死亡の発現についても、フェブキソスタット群で7.8%、アロプリノール群で6.4%であり、フェブキソスタット群で高い結果でした。ハザード比[95%信頼区間]: 1.22[1.01, 1.47]でした。

William B White, et al.
Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout
N Engl J Med. 2018 Mar 29;378(13):1200-1210.
PMID: 29527974

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️メタ分析(2021)

痛風治療におけるフェブキソスタットとアロプリノールの心血管安全性の比較した、最新のシステマティックレビューとメタ分析を紹介します。

前述したように、痛風治療におけるフェブキソスタットの心血管系への安全性は、アロプリノールと比較していまだ不明確でした。

そこで2000年3月1日から2021年4月4日までに発表された論文を、言語制限なしにMEDLINEとEmbaseで検索。慢性痛風の治療において、アロプリノールと比較したフェブキソスタットの心血管安全性を評価するために、システマティックレビューとメタ解析が行われました。

240の関連性のある文献から、16の研究を抽出して解析されました。その結果は次のようなものでした。

研究の概要

フェブキソスタットはアロプリノールと比較して、緊急冠動脈再血行再建術(OR: 0.84, 95% CI: 0.77-0.90, p<0.0001) および脳卒中(OR: 0.87, 95% CI: 0.79-0.97, p=0.009)の複合エンドポイントで、有意にすぐれたアウトカムを有していました。

また、非致死的心筋梗塞(OR: 0.99, 95% CI: 0.80-1.22, p=0.91)、心血管関連死亡(OR: 0.98, 95% CI: 0.69-1.38, p=0.89)、全死亡(OR: 0.93, 95% CI: 0.75-1.15, p=0.52)において差は見られませんでした。心血管関連死亡率および全死亡率については、どのサブグループにおいても有意差は認められませんでした。

論文では、フェブキソスタットの投与はアロプリノールと比較して、死亡または重篤な心血管関連の有害事象のリスク上昇とは関連していなかった。このメタ分析により、フェブキソスタットの患者における心血管系の安全性に関して新たなエビデンスが追加された、としています。

Linggen Gao, et al.
Cardiovascular safety of febuxostat compared to allopurinol for the treatment of gout: A systematic and meta-analysis
Clin Cardiol. 2021 Jul;44(7):907-916.
PMID: 34013998 PMCID: PMC8259158

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️CARES試験の限界

CARES試験ですが、解釈を難しくする問題が多々あります。

群間に有意な差は無かったとされるものの、脱落が56%と多いこと。

心血管リスクに関しては副次評価項目で検出力が十分か不明。

多重検定で偶然の結果だった可能性があること。

これらが論文のlimitationとして書かれています。

William B White, et al.
Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout
N Engl J Med. 2018 Mar 29;378(13):1200-1210.
PMID: 29527974

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️考えたこと

ランドマーク試験と思われるCARES試験、および最新のシステマティックレビュー・メタ分析を概観しました。

今回紙幅の都合で、紹介に留まる記事内容でした。

また、FAST試験など他の重要な試験があります。

今回触れることが出来なかったので、機会をあらためて記事にしたいと考えました。

☑️まとめ

痛風治療に用いるフェブキソスタットの心血管リスクの懸念は、大規模なRCTであるCARES試験の副次評価項目に端を発しました。

最新のメタ分析(2021)でリスクを増加させないという結果が得られています。

安全性はもちろん、医療経済の観点からもアロプリノールを第一選択とすべきです。

しかしながら、禁忌や不耐性などの理由でフェブキソスタットを代替に考える場面があります。

現時点の効果および安全性のエビデンスからは、許容できるのではないかと考えます。

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最終更新日2022年6月25日

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