薬局はあなたの毎日を守る小さな小さな最後の砦(「アンサング・シンデレラ」単行本カバーより)


68歳のAさん(仮)は進行性急性糸球体腎炎で通院されている患者さんです。

ある時、循環器内科からリクシアナ錠60mgを含む処方せんを持って来られました。心房細動のため、開始になったとのことです。

過去のデータから、Aさんは体重52kg、クレアチニンクリアランス(CCr)32.7mL/minであることを把握していました。

Aさんのリクシアナ錠60mgは、このまま調剤してよいのでしょうか?

リクシアナ錠60mgは、体重60kg以下または腎機能が中程度低下していると30mgに減量が必要

エドキサバン(商品名リクシアナ)の添付文書には、次のように書かれています。

非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制:エドキサバンとして次の用量を1日1回経口投与する。

体重60kg以下:30mg。
体重60kg超:60mg。なお、腎機能、併用薬に応じて1日1回30mgに減量する。

体重60kgを超える患者のうち、次のいずれかに該当する患者には、30mgを1日1回経口投与する:(中略)

(2)非弁膜症性心房細動の虚血性脳卒中発症抑制で30≦Ccr[mL/分]≦50及び非弁膜症性心房細動の全身性塞栓症発症抑制で30≦Ccr[mL/分]≦50(以下略)

つまり、体重60kg以下、またはCCr:30~50mL/minでは、エドキサバン(商品名リクシアナ)は30mgに減量が必要と言うことです。

Aさんは、このどちらも満たしているので、病院に連絡してリクシアナの減量の必要性の確認をしようと考えました。

1回目の疑義照会で腎機能を伝えるが、看護師さんから処方医に取り次いでもらえなかった

「お世話になっております。AさんのCCr32.7と以前伺っています。減量基準に相当すると思われるのですが。」

「本日検査して、腎機能は改善が見られてますけれど。」

「よろしければ数値を教えて頂けませんか?」

「クレアチニン1.45、eGFR39です。」

なんだか雲行きが怪しく、処方医に取り次いでもらえなさそうです。その後もう少しやりとりが続き、電話は終わってしまいました。

2回目の疑義照会で、体重を伝えることで処方医に取り次がれ、リクシアナ30mgに減量

薬局内で他の薬剤師にも相談しましたが、今日の検査値で計算してもCCr35.9mL/minとなり、依然、減量基準に該当します。

腎機能でなく、体重で疑義照会してみたら、と言うアイデアをもらい、もう一度疑義照会することにしました。

「度々申し訳ありません。Aさんの体重52kgと伺っています。リクシアナは添付文書では60kg以下で30mgに減量と書かれているので、減量基準に該当すると思うのですが。」

1回目とは違う看護師さんで、処方医に取りついでもらえました。結果、リクシアナ錠30mgに減量となりました。

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無事、薬をお渡しすることが出来ました。ご家族のお話しでは、現状でもあざが出来やすい傾向があるそうです。

もし減量しないでリクシアナ錠60mgを飲んでいたら、出血リスクがあったかも知れません。

リクシアナの臨床試験であるENGAGE AF-TIMI 48関連の論文を見ると、腎機能に応じて低用量にしても、効果はワーファリンと比べて見劣りしません。

リクシアナの特徴は頭蓋内出血が少ないことなので、規定以上の量を飲むと、薬の良さを消してしまう可能性があります。

薬剤師は、医師の処方に唯一法律的に異議をとなえることが出来る職種です。

安全な薬物療法を提供することは、薬剤師が患者さんに負っている責任です。

今回の事は、処方せんの内容に疑問があれば、臆することなく疑義照会をしようと改めて考えさせられた出来事でした。

関連記事です✏
薬局はあなたの毎日を守る小さな小さな最後の砦(「アンサング・シンデレラ」単行本帯より)その2

アンサングシンデレラ「近くて遠い目の前」でも取り上げられた、ハチ毒アナフィラキシーの救命とβ遮断薬の関係

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処方せん記載のクレアチニンクリアランスは60.6mL/minで一見減量が必要になように見えますが、本当にそうでしょうか。


こんばんは🌙😃❗アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。今夜は腎機能の話をします✨

74歳女性、体重43kgの方に、次のような処方箋が来ました。

ダビガトランカプセル75mg 4カプセル 分2 朝夕食後

処方せんに検査値が記載されていました。

血清クレアチニン0.65、クレアチニンクリアランス60.6mL/min。

処方せん記載のクレアチニンクリアランスは60.6mL/minで一見減量が必要ないように見えますが、本当にそうでしょうか。

①血清クレアチニンの測定方法が添付文書はJaffe法であるが、国内では酵素法による測定である。

②女性の係数である0.85を乗じてないように思われる。

わたしは、この2点に懸念が残りました。

酵素法によるクレアチニンクリアランス(CCrEnz)=60.6mL/min(非女性)は、Jaffe法の女性では幾つになるか、計算してみましょう。

Jaffe法は、試薬のアルカリ性ピクリン酸のJaffe反応を応用した検査法です。血清中のクレアチニン以外にピルビン酸等とも反応するため、精度の高い酵素法に比べて0.2程度数値が高くなります。

そこで、血清クレアチニン(酵素法)に0.2を加えてJaffe法に補正する事が慣例的に行われています。

Cockcroft-Gault式を用いてJaffe法によるクレアチニンクリアランス(CCrJaffe)を求めてみます。女性の係数0.85を乗じます。

Cockcroft-Gault式は、次になります。
CCr=((140-年齢)x体重)/72x血清クレアチニン

計算してみます。
CCrJaffe=0.85x((140-74)x43)/72x(0.65+0.2)=39mL/min

このように、クレアチニンクリアランスが大きく低下する結果になりました。

Jaffe法によるクレアチニンクリアランスの正常値は100mL/minですが、酵素法では120mL/min程度で、補正しないと腎機能を過大評価することになるのです。

添付文書では減量基準が以下のように記載されています。

ダビガトランエテキシラートとして1回150mgを1日2回経口投与する。なお、必要に応じて、ダビガトランエテキシラートとして1回110mgを1日2回投与へ減量する。

<用法・用量に関連する使用上の注意>
1.次の患者では、ダビガトランの血中濃度が上昇する恐れがあるため、本剤1回110mg1日2回投与を考慮し、慎重に投与する:1)中等度腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者。

処方元の医療機関には、用量について疑義照会した方がよいケースだと思いました。

検査値が書いてあっても、吟味しなければミスリードしてしまいかねない、と言う好例と思いました。

参考:副作用を防ぐために知っておきたい腎機能の正しい把握法
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03212_02

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81歳、体重52㎏の女性に出ているエリキュース錠5mgは、タイミングを見て減量提案しようと思います。


81歳、体重52㎏の女性に出ているエリキュース錠5mgは、タイミングを見て減量提案しようと思います。

こんにちは✨😃❗アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

わたしは薬局の仕事が落ち着いている時に、よく過去の電子薬歴を見ています。

今朝も、いつものように薬歴を見ていて、81歳女性のAさん(仮)にエリキュース錠5mgが1年以上処方されているのに気づきました。

体重52kg、身長151cmで、体表面積1.46m^2です。腎機能は不明です。用量に関して処方医に疑義照会した記録はありません。

エリキュース錠について、添付文書には以下の情報があります。今後、折をみて減量の検討が必要になると思われます。

「1.非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制:

次の基準に該当する患者は、出血のリスクが高く、本剤の血中濃度が上昇する恐れがあるため、1回2.5mg1日2回経口投与する:

80歳以上か≦60kgかSCr≧1.5mg/dLに2つ以上該当のNVAF(SCr:血清クレアチニン、NVAF:非弁膜症性心房細動)1)。」

ちなみに、この3つの条件をCockcroft-Gault式に当てはめると、クレアチニンクリアランスは女性の場合28mL/minと計算されます。

学会で公表されている薬剤投与量一覧を見てみましょう2)。「クレアチニンクリアランス30mL/min未満では腎機能正常者に比してAUCが44%増加するため、1回2.5mg1日2回投与が推奨」とされています。

ここで一点、注意が必要なことがあります。

血清クレアチニンの測定法は日本では酵素法ですが、欧米ではJaffe法です。添付文書に記載されている血清クレアチニンの測定はJaffe法が殆どです。

詳しい説明は省きますが、この場合、クレアチニンクリアランスは個別eGFRで代用できます3)。個別eGFRは標準化eGFR x体表面積÷1.73で求められ、正常値は100(mL/min)です。

用量設定を決めたのは国際共同第III相ARISTOTLE 試験で、全世界39カ国の1,034施設で実施されています。このため添付文書の血清クレアチニンはJaffe法で書かれていると判断しました。

減量した場合のエリキュースの有効性と安全性については、次のように記されています。

「NVAF 患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ARISTOTLE 試験)及び国内第Ⅱ相試験(ARISTOTLE-J 試験)の有効性及び安全性の結果に基づき、本剤の用法及び用量を設定した。

NVAF 患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ARISTOTLE 試験)では、本質的に出血リスクが高いと考えられる集団における本剤の血中濃度上昇リスクを最小限にするため、「80 歳以上」、「体重 60kg 以下」、「血清クレアチニン 1.5mg/dL 以上」のうち 2 つ以上を満たす患者に対しては、無作為化割付時に本剤の用量を2.5mg 1 日 2 回投与(BID)に減量することとし、試験期間を通して同用量を継続した。

その結果、本剤 2.5mgBID の有効性は、5mgBID と比較して大きな違いはみられなかった。

また、2.5mgBID の患者数は少ないものの、対照薬と比較して優れた有効性及び安全性が示されたことから、前述の減量規定は妥当であると考えられた4)。」

Aさんはあざの出来やすさ等の訴えがないので、今度血液検査をしたタイミングで腎機能を評価し、疑義照会しようと思いました。

参考文献
1)エリキュース錠2.5mg・5mg 添付文書
2)腎機能低下時に最も注意の必要な薬投与量一覧2018改定31版 日本腎臓病薬物療法学会
https://www.jsnp.org/docs/JSNP-yakuzai_dosing_31.pdf

3)腎臓病に関するQ&A
http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/clpharm/database/docs/qa02.pdf#search=%27Jaffe%E6%B3%95+%E6%8E%A1%E7%94%A8+%E5%9B%BD%27

4)エリキュース錠2.5mg・5mg インタビューフォーム



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心房細動で薬を飲んでいる人が、花粉症の薬を病院でもらう時に、お薬手帳を持参した方がよい、たったひとつの理由。

アレルギーの薬セチリジンと、不整脈の薬ピルシカイニドの飲み合わせは大丈夫?

アレルギーの薬であるセチリジン(商品名ジルテック)の添付文書には、併用注意として、不整脈の薬ピルシカイニド(商品名サンリズム)が記載されています。

引用文献が記してなかったので、PUBMED と言う医療データベースで検索したところ、該当すると思われる文献を見つけました1)。

そこに書かれていたことを再構成して話してみようと思います。

ピルシカイニド(商品名サンリズム)を服用中にセチリジン(商品名ジルテック)を飲んだところ、失神して病院に運ばれた

72歳のAさん(仮)は、腎機能が低下している方で、ピルシカイニドを1日150mg服用していました。心房細動の治療薬です。ある時、花粉症の薬、セチリジンを1日量20mgで処方されました。セチリジンを服用開始して3日目、Aさんは失神して病院に運ばれました。

原因はピルシカイニドの血中濃度が高くなっていた事

徐脈、幅広いQRS波と、ピルシカイニドの過量投与を疑わせる症状があり、ピルシカイニド中止により回復しました。血液検査で、ピルシカイニドとセチリジン双方の血中濃度が上昇していたことが分かりました。

ピルシカイニドとセチリジンを一緒に飲むことで、どちらの薬も体に残りやすくなる

その後、健康なボランティアにピルシカイニドとセチリジンを単回投与した試験が行われ、ピルシカイニドとセチリジンのクリアランスが、各々半分程度まで低下することが分かりました。

クリアランスとは、一定の時間に薬がどれくらい体から排泄されるかの指標です。クリアランスが大きい程、薬は早く体内からなくなります。逆に、小さいほど体から出て行くのに時間がかかり、体内に残りやすくなります。

ピルシカイニドとセチリジンの飲み合わせで何が起こった?

ピルシカイニドもセチリジンも腎臓から尿に排泄される薬であり、排泄経路が競合するために起こる相互作用ではないかと考えられます。

基礎研究の知見から、腎尿細管にある薬物トランスポーター、MRP1やOCT2が、この相互作用に関与しているのではないかと考えられています。

まとめ:危険な飲み合わせを避けるために、病院にかかる際はお薬手帳を持参しましょう

心房細動は加齢とともに発症する病気であり、皆さんのご家族でもピルシカイニドを飲んでいる方は多いのではないかと思います。

もし花粉症で病院を受診する際は、必ずお薬手帳を持参して、病院と薬局の両方で、薬の飲み合わせについて、ダブルチェックを受けて下さい。

参考文献
1)Severe arrhythmia as a result of the interaction of cetirizine and pilsicainide in a patient with renal insufficiency: First case presentation showing competition for excretion via renal multidrug resistance protein 1 and organic cation transporter 2.
PMID 16580907

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パキシル(一般名パロキセチン)を飲んでいる人が、眼科を含めて他の病院を受診するときにしなければいけない、たったひとつのこと。

かかりつけ医院に黙ってほかの病院を受診し、同効薬のオメプラゾールとタケキャブが重複して処方されていた話。

皮膚科と耳鼻咽喉科を掛け持ち受診して、持ち込まれた2枚の処方箋で抗生物質が重複した話。

耐性菌の話。どこか遠い国の話ではなく、日本の日常診療でも耐性菌は溢れています。

ピロリ菌除菌の薬を飲む人が、他に飲んでいる薬を頓服も含めて全て病院と薬局で伝えたほうがよい、たったひとつの理由。

心房細動で薬を飲んでいる人が、花粉症の薬を病院でもらう時に、お薬手帳を持参した方がよい、たったひとつの理由。

コレステロールの薬を飲んでいるけれど、名前は正確に覚えていない人が、風邪で病院を受診する時にお薬手帳を持参した方がよい、たったひとつの理由。

シンバスタチンとフルコナゾールは安全に併用出来ますか?

シンバスタチン服用中にイトラコナゾールのパルス療法を受けて横紋筋融解症を来たした例。

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PL配合顆粒でひどい眠気が出た人が、受診時にそれを伝えなくてはいけない、たったひとつの理由。


PL配合顆粒でひどい眠気が出た人が、受診時にそれを伝えなくてはいけない、たったひとつの理由。

こんにちは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

今日はバレンタインデーですね。娘は幼稚園から帰ったら、チョコレートを溶かしてトッピングした手作りチョコを作りたいと言っていました。女子力が高いです😸

さて。今日は薬を飲んだ時の作用の強さには、個人差がある、と言うお話をします。

やや長い記事ですが、お付き合い下さい。最後にPL配合顆粒の意味が分かると思います。

いつも、わたしの薬局を利用して下さるAさんは、慢性心不全で循環器科に通院しています。慢性心不全は、心臓のポンプ機能が徐々に低下していく病気で、心筋梗塞の後などに起こります。

治療にはACE阻害薬、β遮断薬、ループ利尿薬と呼ばれる薬などを用います。この中で、薬の効き目に個人差が大きい薬があります。

それはβ遮断薬です。心臓のアクセルを緩める薬です。以前は心不全に禁忌とされましたが、現在は大規模臨床研究で、予後を改善することが確立している、慢性心不全の治療薬です。専門医が、少量から慎重に使う薬です。

個人差が大きい理由は、心不全の程度等にも依ると思うのですが、薬剤師の立場から重視したいのは、β遮断薬の代謝に個人差が大きい事です。

β遮断薬の多くは、肝臓の酵素のひとつである、「CYP2D6(シップツーディーシックス)」によって代謝され、活性のないものに変えられます。ところが、「CYP2D6」は、代謝能が遺伝的に決まり、極めて個人差が大きい酵素です。これを遺伝子多型と言います。

わたしたちは、遺伝的に与えられた「CYP2D6」の代謝能に応じて、EM(代謝能は通常)、IM(代謝能は中程度低下)、PM(代謝能は欠損)の3グループに分けられます。

代謝能の小さい人は、より少量の薬でも期待する効果が得られると考えられます。通常の用量では作用が強く現れ、不都合な作用(副作用)が現れるかも知れません。

Aさんは、ある時β遮断薬が開始されました。少量でしたが、添付文書で推奨される開始用量の2倍からのスタートでした。循環器の専門医でしたが、この医師は開始用量はいつも、この用量であることをわたしたちは知っていました。そのため、担当した薬剤師は問い合わせはしないで、Aさんに薬をお渡ししました。

ところが、Aさんはこの薬が開始になってから足にひどい浮腫が出て、薬を続ける事が出来ませんでした。あまりにつらくて、とおっしゃっていました。

“PL配合顆粒でひどい眠気が出た人が、受診時にそれを伝えなくてはいけない、たったひとつの理由。” の続きを読む

主要血管イベントのベースラインリスクが5年間で10%未満の患者へのスタチンによる主要血管イベントの抑制効果は不明

低リスク患者に対するスタチン治療の効果を検証したメタ分析(Cholesterol Treatment Trialists'(CTT))の紹介をします。

一次予防の部分だけ抜き出して紹介をします。

この報告によれば、5年間の主要血管イベント(major vascular events:MVE)のベースライン・リスクが5%≦,<10%では、血管疾患の既往がない場合、血管死は相対リスクRR 0.75(0.55~1.04)でした。

また、ベースライン・リスクが<5%では相対リスクRR 0.80(0.43~1.47)でした。

このように、有意差が示されず、低リスク患者へのスタチンによる主要血管イベントの抑制効果は不明、と解釈されます。

主要血管イベント(MVE)と呼んでいるものには、主要冠動脈イベント(非致死的MIまたは冠動脈死亡)と脳卒中と冠血管再建術を含んでいます。

なお、動脈硬化学会の2017年のガイドラインでは、一次予防の場合、10年間の冠動脈疾患発症率が2%未満を低リスク、2-9%未満を中リスク、9%以上を高リスクと定義しています。

冠動脈疾患には、心筋梗塞、冠動脈バイパス、冠動脈形成術、24時間以内の内因性急性死が含まれます。

1)The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials.

心房細動を伴った急性冠症候群のPCI後の抗血栓療法。

こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。今日から仕事初めです。休憩を利用してブログ更新しています。

さて、今日は心房細動を伴った急性冠症候群のPCI後の抗血栓療法を受けている仮想症例を考えてみたいと思います。

DAPTはステント留置後約2年継続していた。ワーファリン(WF)と合わせて3剤併用療法を開始して経過観察中、鼻出血からプラビックス中止。HAS-BLEDスコア2点(重大な出血のリスク:中等度)。

PCI・ステント留置後は経時的に冠動脈の梗塞リスクが減少するので、出血リスクと勘案しながら抗血小板薬の処方を決定する必要があります。

ESCガイドラインでは心房細動を伴った急性冠症候群のPCI後の抗血栓療法として、出血リスクの低い患者(HAS-BLEDスコア:0~2点)では3剤併用療法を6ヶ月、その後アスピリンまたはクロピトグレルを中止して2剤で1年後まで、1年以降は抗凝固薬単剤(NOACが推奨)治療を推奨しています2)。

ただ、冠動脈病変リスクが高い場合は抗凝固薬に加えてアスピリンかクロピトグレルの併用が推奨されています。

これらは、JAST試験(低用量アスピリンvs偽薬)、ACTIVE-W試験(DAPTvsWF)1)において抗血小板薬に心房細動に伴う脳梗塞の予防効果はない事、メタ分析3)から冠動脈疾患において抗凝固薬は出血リスクが多いもののイベント抑制効果があった事、BAT試験において重篤・重症な出血の年間発症率は、抗血小板薬単独で1.21%、抗血小板薬併用2.00%、WF単独2.06%、WFと抗血小板薬併用で3.56%であった事も踏まえられていると考えられます。

本症例はスタチン+フィブラートを服用しています。再狭窄が進み易く、冠動脈病変リスクが高いと判断されてNOAC+アスピリンが選択されているかと考えます。

参考文献
1)ACTIVE Writing Group of the ACTIVE Investigators. Clopidogrel plus aspirin versus oral anticoagulation for atrial fibrillation in the Atrial fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention of Vascular Events (ACTIVE W): a randomised controlled trial.  PMID:16765759

2)Oral anticoagulant therapy in patients with coronary artery disease: a meta-analysis. PMID: 10591389
参考:2014年に出されたESC他5学会のコンセンサス文書

3)Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA) endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-79.

リスクとベネフィットを天秤にかけてみる。心房細動の抗凝固療法を例に考えて見ましょう。

新規でワーファリンが処方になった心房細動の人があったけど、時々ワーファリンなしの人があるのは何でだろう。

患者さんからも、「私、心房細動ですけど、ワーファリン飲まなくて大丈夫でしょうか?」って聞かれて上手く答えられなかった。

誰かタスケテ…。

そんな方に今日のブログをお届けします。

薬物療法のリスクとベネフィットを、心房細動の際のワーファリンを例に考えてみます。

CHADS2スコア

心房細動の患者さんにワーファリンを開始するかどうかは、CHADS2スコアと言うスコアリングで判断されます。

1点で、脳梗塞の年間発症率は2.8%、2点で4.0%です。

これが所謂ベースラインリスクです。

ワーファリンの効果

複数の臨床研究から、ワーファリン服用で脳梗塞の初発が相対的に70%予防出来ると分かっています。

これを適用すると、CHADS2スコア1点、2点でのベースラインリスクを、それぞれ1.96%、2.8%減らす事が予測されます。

絶対リスク減少と治療必要数

これを絶対リスク減少と呼びます。こなれない表現ですが、専門用語でご容赦下さい。

ここで治療必要数と言う概念を利用すると、1年間に1人の脳梗塞を予防するためにワーファリンを飲む必要のある人数が分かります。

細かい説明は省きますが、100を絶対リスク減少で割って、それぞれ51人、36人と算出されます。

これがワーファリン服用で得られるベネフィットの指標になります。

害必要数と言う概念

一方で出血イベントが年間2%あるとすれば、害必要数と言う概念を利用して、50人が1年間ワーファリンを飲むと、1人の出血イベントが起こると算出されます。

これがワーファリン服用によるリスクの指標です。

リスク・ベネフィットの評価

CHADS2スコア2点ではベネフィットが勝りますが、1点ではリスクとベネフィットが拮抗しているのが分かります。

日本の循環器学会のガイドラインではCHADS2スコア1点でワーファリンを考慮、2点で服用推奨としているのは、このあたりからも裏付けられると思います。

いかがだったでしょうか?皆さんの生活のリスクマネジメントのご参考になれば幸いです。

薬を飲むことによる不利益、つまり対抗リスクをより詳細に検討する。心房細動でワーファリンを飲んだ方がよいですか?

はじめに

新規でワーファリンが処方になった心房細動の人があったけど、時々ワーファリンなしの人があるのは何でだろう。

医師のさじ加減なんて言うけれど、薬剤師のわたしにもロジックが理解出来ないかな?

患者さんから「私、心房細動ですけど、ワーファリン飲まなくて大丈夫でしょうか?」って聞かれたけど、さじ加減ですよね~って、誤魔化しちゃった。

誰かタスケテ…。

そんな方に今日のブログをお届けします。

薬物療法のリスクとベネフィットを、心房細動の際のワーファリンを例に考えてみます。

ワーファリンの不利益をより詳細に考えてみる

以前のブログでワーファリンの利益と不利益について書きました。

CHADS2スコアを利用して、個々の脳梗塞リスクを推定したように、出血リスクも十把一絡げ2.0%でなく、個別に推定する手段が考えられています。

HAS-BLEDスコア

HAS-BLEDスコアと言うスコアリングがそれです。抗血小板薬の併用や腎機能等を考慮する事で、より個別に出血リスクを評価することが可能になります。

スコアリングの項目は以下です。
・高血圧:sBP>160
・腎機能異常:慢性透析,腎移植,または血清クレアチニン≧2.26mg/dL
・肝機能異常:慢性肝疾患、または重篤な肝障害
・出血:出血歴かつ/または出血傾向の既往
・INR不安定
・薬物/アルコール:薬物の併用 (抗血小板薬、NSAIDsまたはアルコール乱用など)

合計による年間出血リスクは以下です。
0点で0.9~1.1%、1点で1.0~3.4%、2点で1.9~4.1%、3点で3.7~5.8%、4点で8.7~8.9%、5点で9.1~12.5% 1)。

目安として、0点で低リスク、1~2点で中等度リスク、3点以上で高リスクです。

ワーファリンを使うのは、多分こんな時

CHADS2スコアが1点でも、HAS-BLEDスコアが0点であれば、ワーファリンの使用が考慮されるかも知れません。

まとめ

HAS-BLEDスコアと言うスコアリングがあるので、それを参考に処方を決めていると思います。

もちろん、それが全てとは思いませんけれど、患者さんに説明する時に、出血リスクと天秤にかけているんですよ、と話せば納得して頂けるのではと思います。

1)Chest.2010 Nov


CVDリスクのある日本人においてメトホルミンはSU剤に比して大血管症を低下させることが示唆されている。

CVDリスクのある日本人においてメトホルミンはSU剤に比して大血管症を低下させることが示唆されています。論文アブストラクトを掲載します。

機械翻訳です。

「背景:いくつかの経口血糖降下薬(OHA)は、2型糖尿病(T2DM)における心血管疾患(CVD)のリスクを低減することが示唆されている。 OHAがCVDリスクに影響を及ぼすかどうかは、日本の多元医療費会計データベースのコホート分析で確認した。

方法:(1)単一のOHA(スルホニルウレア、ビグアナイド、チアゾリジンジオン、α-グルコシダーゼ阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤)を用いた治療を開始した(1)2型糖尿病患者の4095および1273人のデータを、グリシン、またはジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤)を投与し、約1〜 (ii)ベースラインでのヘモグロビン(Hb)A1cレベルが利用可能であった; (iii)ベースライン時の年齢は40〜70歳であった。 ICD-10によるスルホニルウレアに対するOHAsのCVDリスクへの影響を、カプラン – マイヤー曲線を用いて104日間分析した(図3)。

結果:CVDの有無のT2DM患者を対象とした研究1では、ビグアニドによる初期およびベースライン治療は、スルホニルウレアと比較してCVDのリスクを有意に低下させ、HbA1cの制御とは無関係であった。研究2では、CVDの病歴を有するT2DM患者において、ビグアニドのスルホニルウレアに対するCVDリスクに対する同様の有意な予防効果が観察された。

結論:ビグアニドの初期治療およびベースライン治療は、日本人のT2DM患者におけるビグアニドの血糖降下効果とは無関係に、スルホニル尿素と比較してCVDリスクを低下させることができる。」

1)Tanabe M et al. Reduced vascular events in type 2 diabetes by biguanide relative to sulfonylurea: study in a Japanese Hospital Database. BMC Endocr Disord. 2015 Sep 17;15:49. PMID: 26382923