処方せん記載のクレアチニンクリアランスは60.6mL/minで一見減量が必要になように見えますが、本当にそうでしょうか。

こんばんは🌙😃❗アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。今夜は腎機能の話をします✨

74歳女性、体重43kgの方に、次のような処方箋が来ました。

ダビガトランカプセル75mg 4カプセル 分2 朝夕食後

処方せんに検査値が記載されていました。

血清クレアチニン0.65、クレアチニンクリアランス60.6mL/min。

処方せん記載のクレアチニンクリアランスは60.6mL/minで一見減量が必要ないように見えますが、本当にそうでしょうか。

①血清クレアチニンの測定方法が添付文書はJaffe法であるが、国内では酵素法による測定である。

②女性の係数である0.85を乗じてないように思われる。

わたしは、この2点に懸念が残りました。

酵素法によるクレアチニンクリアランス(CCrEnz)=60.6mL/min(非女性)は、Jaffe法の女性では幾つになるか、計算してみましょう。

Jaffe法は、試薬のアルカリ性ピクリン酸のJaffe反応を応用した検査法です。血清中のクレアチニン以外にピルビン酸等とも反応するため、精度の高い酵素法に比べて0.2程度数値が高くなります。

そこで、血清クレアチニン(酵素法)に0.2を加えてJaffe法に補正する事が慣例的に行われています。

Cockcroft-Gault式を用いてJaffe法によるクレアチニンクリアランス(CCrJaffe)を求めてみます。女性の係数0.85を乗じます。

Cockcroft-Gault式は、次になります。
CCr=((140-年齢)x体重)/72x血清クレアチニン

計算してみます。
CCrJaffe=0.85x((140-74)x43)/72x(0.65+0.2)=39mL/min

このように、クレアチニンクリアランスが大きく低下する結果になりました。

Jaffe法によるクレアチニンクリアランスの正常値は100mL/minですが、酵素法では120mL/min程度で、補正しないと腎機能を過大評価することになるのです。

添付文書では減量基準が以下のように記載されています。

ダビガトランエテキシラートとして1回150mgを1日2回経口投与する。なお、必要に応じて、ダビガトランエテキシラートとして1回110mgを1日2回投与へ減量する。

<用法・用量に関連する使用上の注意>
1.次の患者では、ダビガトランの血中濃度が上昇する恐れがあるため、本剤1回110mg1日2回投与を考慮し、慎重に投与する:1)中等度腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者。

処方元の医療機関には、用量について疑義照会した方がよいケースだと思いました。

検査値が書いてあっても、吟味しなければミスリードしてしまいかねない、と言う好例と思いました。

参考:副作用を防ぐために知っておきたい腎機能の正しい把握法
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03212_02

エキスパートが教える薬物動態 じほう


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81歳、体重52㎏の女性に出ているエリキュース錠5mgは、タイミングを見て減量提案しようと思います。

こんにちは✨😃❗アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

わたしは薬局の仕事が落ち着いている時に、よく過去の電子薬歴を見ています。

今朝も、いつものように薬歴を見ていて、81歳女性のAさん(仮)にエリキュース錠5mgが1年以上処方されているのに気づきました。

体重52kg、身長151cmで、体表面積1.46m^2です。腎機能は不明です。用量に関して処方医に疑義照会した記録はありません。

エリキュース錠について、添付文書には以下の情報があります。今後、折をみて減量の検討が必要になると思われます。

「1.非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制:

次の基準に該当する患者は、出血のリスクが高く、本剤の血中濃度が上昇する恐れがあるため、1回2.5mg1日2回経口投与する:

80歳以上か≦60kgかSCr≧1.5mg/dLに2つ以上該当のNVAF(SCr:血清クレアチニン、NVAF:非弁膜症性心房細動)1)。」

ちなみに、この3つの条件をCockcroft-Gault式に当てはめると、クレアチニンクリアランスは女性の場合28mL/minと計算されます。

学会で公表されている薬剤投与量一覧を見てみましょう2)。「クレアチニンクリアランス30mL/min未満では腎機能正常者に比してAUCが44%増加するため、1回2.5mg1日2回投与が推奨」とされています。

ここで一点、注意が必要なことがあります。

血清クレアチニンの測定法は日本では酵素法ですが、欧米ではJaffe法です。添付文書に記載されている血清クレアチニンの測定はJaffe法が殆どです。

詳しい説明は省きますが、この場合、クレアチニンクリアランスは個別eGFRで代用できます3)。個別eGFRは標準化eGFR x体表面積÷1.73で求められ、正常値は100(mL/min)です。

用量設定を決めたのは国際共同第III相ARISTOTLE 試験で、全世界39カ国の1,034施設で実施されています。このため添付文書の血清クレアチニンはJaffe法で書かれていると判断しました。

減量した場合のエリキュースの有効性と安全性については、次のように記されています。

「NVAF 患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ARISTOTLE 試験)及び国内第Ⅱ相試験(ARISTOTLE-J 試験)の有効性及び安全性の結果に基づき、本剤の用法及び用量を設定した。

NVAF 患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ARISTOTLE 試験)では、本質的に出血リスクが高いと考えられる集団における本剤の血中濃度上昇リスクを最小限にするため、「80 歳以上」、「体重 60kg 以下」、「血清クレアチニン 1.5mg/dL 以上」のうち 2 つ以上を満たす患者に対しては、無作為化割付時に本剤の用量を2.5mg 1 日 2 回投与(BID)に減量することとし、試験期間を通して同用量を継続した。

その結果、本剤 2.5mgBID の有効性は、5mgBID と比較して大きな違いはみられなかった。

また、2.5mgBID の患者数は少ないものの、対照薬と比較して優れた有効性及び安全性が示されたことから、前述の減量規定は妥当であると考えられた4)。」

Aさんはあざの出来やすさ等の訴えがないので、今度血液検査をしたタイミングで腎機能を評価し、疑義照会しようと思いました。

参考文献
1)エリキュース錠2.5mg・5mg 添付文書
2)腎機能低下時に最も注意の必要な薬投与量一覧2018改定31版 日本腎臓病薬物療法学会
https://www.jsnp.org/docs/JSNP-yakuzai_dosing_31.pdf

3)腎臓病に関するQ&A
http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/clpharm/database/docs/qa02.pdf#search=%27Jaffe%E6%B3%95+%E6%8E%A1%E7%94%A8+%E5%9B%BD%27

4)エリキュース錠2.5mg・5mg インタビューフォーム



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心房細動で薬を飲んでいる人が、花粉症の薬を病院でもらう時に、お薬手帳を持参した方がよい、たったひとつの理由。

こんにちは。アロマ薬剤師のゆきです。

スギ花粉症の季節になりましたね。昨年の夏が暑かったので、今年は花粉の量が多いのではないかと言われています。今まで花粉症の症状がなかったり、軽かったので花粉症の薬を飲んでいなかった人が、今年になって飲み始めることがあるかも知れません。そこで、今日は、花粉症の薬の飲み合わせの話をしたいと思います。

花粉症の薬、セチリジン(商品名ジルテック)の添付文書には、併用注意としてピルシカイニド(商品名サンリズム)が記載されています。引用文献がないので、PUBMED と言う医療データベースで検索したところ、該当すると思われる文献を見つけました1)。再構成して話してみようと思います。

72歳のAさん(仮)は、腎機能が低下している方で、ピルシカイニドを1日150mg服用していました。心房細動の治療薬です。ある時、花粉症の薬、セチリジンを1日量20mgで処方されました。セチリジンを服用開始して3日目、Aさんは失神して病院に運ばれました。

徐脈、幅広いQRS波と、ピルシカイニドの過量投与を疑わせる症状があり、ピルシカイニド中止により回復しました。血液検査で、ピルシカイニドとセチリジン双方の血中濃度が上昇していたことが分かりました。

その後、健康なボランティアにピルシカイニドとセチリジンを単回投与した試験が行われ、ピルシカイニドとセチリジンのクリアランスが、各々半分程度まで低下することが分かりました。

ピルシカイニドもセチリジンも腎臓から尿に排泄される薬であり、排泄経路が競合するために起こる相互作用ではないかと考えられます。

基礎研究の知見から、腎尿細管にある薬物トランスポーター、MRP1やOCT2が、この相互作用に関与しているのではないかと考えられています。

心房細動は加齢とともに発症する病気であり、皆さんのご家族でもピルシカイニドを飲んでいる方は多いのではないかと思います。

もし花粉症で病院を受診する際は、必ずお薬手帳を持参して、病院と薬局の両方で、薬の飲み合わせについて、ダブルチェックを受けて下さい。

1)Severe arrhythmia as a result of the interaction of cetirizine and pilsicainide in a patient with renal insufficiency: First case presentation showing competition for excretion via renal multidrug resistance protein 1 and organic cation transporter 2.



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PL配合顆粒でひどい眠気が出た人が、受診時にそれを伝えなくてはいけない、たったひとつの理由。

こんにちは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

今日はバレンタインデーですね。娘は幼稚園から帰ったら、チョコレートを溶かしてトッピングした手作りチョコを作りたいと言っていました。女子力が高いです😸

さて。今日は薬を飲んだ時の作用の強さには、個人差がある、と言うお話をします。

やや長い記事ですが、お付き合い下さい。最後にPL配合顆粒の意味が分かると思います。

いつも、わたしの薬局を利用して下さるAさんは、慢性心不全で循環器科に通院しています。慢性心不全は、心臓のポンプ機能が徐々に低下していく病気で、心筋梗塞の後などに起こります。

治療にはACE阻害薬、β遮断薬、ループ利尿薬と呼ばれる薬などを用います。この中で、薬の効き目に個人差が大きい薬があります。

それはβ遮断薬です。心臓のアクセルを緩める薬です。以前は心不全に禁忌とされましたが、現在は大規模臨床研究で、予後を改善することが確立している、慢性心不全の治療薬です。専門医が、少量から慎重に使う薬です。

個人差が大きい理由は、心不全の程度等にも依ると思うのですが、薬剤師の立場から重視したいのは、β遮断薬の代謝に個人差が大きい事です。

β遮断薬の多くは、肝臓の酵素のひとつである、「CYP2D6(シップツーディーシックス)」によって代謝され、活性のないものに変えられます。ところが、「CYP2D6」は、代謝能が遺伝的に決まり、極めて個人差が大きい酵素です。これを遺伝子多型と言います。

わたしたちは、遺伝的に与えられた「CYP2D6」の代謝能に応じて、EM(代謝能は通常)、IM(代謝能は中程度低下)、PM(代謝能は欠損)の3グループに分けられます。

代謝能の小さい人は、より少量の薬でも期待する効果が得られると考えられます。通常の用量では作用が強く現れ、不都合な作用(副作用)が現れるかも知れません。

Aさんは、ある時β遮断薬が開始されました。少量でしたが、添付文書で推奨される開始用量の2倍からのスタートでした。循環器の専門医でしたが、この医師は開始用量はいつも、この用量であることをわたしたちは知っていました。そのため、担当した薬剤師は問い合わせはしないで、Aさんに薬をお渡ししました。

ところが、Aさんはこの薬が開始になってから足にひどい浮腫が出て、薬を続ける事が出来ませんでした。あまりにつらくて、とおっしゃっていました。

Aさんがお帰りになった後、わたしは電子薬歴を詳細に見返していて、あっ、と思いました。過去に風邪薬のPL配合顆粒を飲んで、起き上がれない程の眠気を感じたと書いてあったのです。

PL配合顆粒の眠気を起こすのは、抗ヒスタミンのプロメタジンです。プロメタジンは肝臓の酵素「CYP2D6」で代謝されます。

そうです、問題のβ遮断薬を代謝するのと同じ種類の酵素です。もしもAさんが、この酵素の代謝能が中程度低下、もしくは欠損しているとしたら、ひどい浮腫と、起き上がれない程の眠気の両方が、矛盾なく説明出来ます。確定するには遺伝子診断が必要ですが、その可能性は高いと思います。

今でも、Aさんのβ遮断薬を、もっと低用量から開始していれば、服薬が継続出来たかなと思う、苦い経験です。

PL配合顆粒は、ありふれた風邪薬なので、みなさんも飲む機会があるのではと思います。もし、ひどい眠気が出た方がいらっしゃれば、病院と薬局で教えて頂けないでしょうか。「CYP2D6」で代謝される薬を安全に、有効に使うための、重要な情報になる可能性があります。

そして、飲んでいる薬の事で、なにか疑問があれば、薬剤師にご相談下さい。薬物療法のリスクを最少限に、効果を最大限にするのが、わたしたちの仕事です。



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主要血管イベントのベースラインリスクが5年間で10%未満の患者へのスタチンによる主要血管イベントの抑制効果は不明

低リスク患者に対するスタチン治療の効果を検証したメタ分析(Cholesterol Treatment Trialists'(CTT))の紹介をします。

一次予防の部分だけ抜き出して紹介をします。

この報告によれば、5年間の主要血管イベント(major vascular events:MVE)のベースライン・リスクが5%≦,<10%では、血管疾患の既往がない場合、血管死は相対リスクRR 0.75(0.55~1.04)でした。

また、ベースライン・リスクが<5%では相対リスクRR 0.80(0.43~1.47)でした。

このように、有意差が示されず、低リスク患者へのスタチンによる主要血管イベントの抑制効果は不明、と解釈されます。

主要血管イベント(MVE)と呼んでいるものには、主要冠動脈イベント(非致死的MIまたは冠動脈死亡)と脳卒中と冠血管再建術を含んでいます。

なお、動脈硬化学会の2017年のガイドラインでは、一次予防の場合、10年間の冠動脈疾患発症率が2%未満を低リスク、2-9%未満を中リスク、9%以上を高リスクと定義しています。

冠動脈疾患には、心筋梗塞、冠動脈バイパス、冠動脈形成術、24時間以内の内因性急性死が含まれます。

1)The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials.

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心房細動を伴った急性冠症候群のPCI後の抗血栓療法。

こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。今日から仕事初めです。休憩を利用してブログ更新しています。

さて、今日は心房細動を伴った急性冠症候群のPCI後の抗血栓療法を受けている仮想症例を考えてみたいと思います。

DAPTはステント留置後約2年継続していた。ワーファリン(WF)と合わせて3剤併用療法を開始して経過観察中、鼻出血からプラビックス中止。HAS-BLEDスコア2点(重大な出血のリスク:中等度)。

PCI・ステント留置後は経時的に冠動脈の梗塞リスクが減少するので、出血リスクと勘案しながら抗血小板薬の処方を決定する必要があります。

ESCガイドラインでは心房細動を伴った急性冠症候群のPCI後の抗血栓療法として、出血リスクの低い患者(HAS-BLEDスコア:0~2点)では3剤併用療法を6ヶ月、その後アスピリンまたはクロピトグレルを中止して2剤で1年後まで、1年以降は抗凝固薬単剤(NOACが推奨)治療を推奨しています2)。

ただ、冠動脈病変リスクが高い場合は抗凝固薬に加えてアスピリンかクロピトグレルの併用が推奨されています。

これらは、JAST試験(低用量アスピリンvs偽薬)、ACTIVE-W試験(DAPTvsWF)1)において抗血小板薬に心房細動に伴う脳梗塞の予防効果はない事、メタ分析3)から冠動脈疾患において抗凝固薬は出血リスクが多いもののイベント抑制効果があった事、BAT試験において重篤・重症な出血の年間発症率は、抗血小板薬単独で1.21%、抗血小板薬併用2.00%、WF単独2.06%、WFと抗血小板薬併用で3.56%であった事も踏まえられていると考えられます。

本症例はスタチン+フィブラートを服用しています。再狭窄が進み易く、冠動脈病変リスクが高いと判断されてNOAC+アスピリンが選択されているかと考えます。

参考文献
1)ACTIVE Writing Group of the ACTIVE Investigators. Clopidogrel plus aspirin versus oral anticoagulation for atrial fibrillation in the Atrial fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention of Vascular Events (ACTIVE W): a randomised controlled trial.  PMID:16765759

2)Oral anticoagulant therapy in patients with coronary artery disease: a meta-analysis. PMID: 10591389
参考:2014年に出されたESC他5学会のコンセンサス文書

3)Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA) endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-79.

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リスクとベネフィットを天秤にかけてみる。心房細動の抗凝固療法を例に考えて見ましょう。

こんにちは。ノロウイルスから回復中の奥村です。職場で、冗談が言えるようになった、いつもの奥村さんに戻ったと言われました。私はそう言うキャラなのでしょうか。奥村です。(×3)

さて、今日は薬物療法のリスクとベネフィットを考えて見ましょう。心房細動の際のワーファリンをれいにします。

これまで見て来たように、CHADS2スコア1点で、脳梗塞の年間発症率は2.8%、2点で4.0%です。これがベースラインのリスクです。

複数の臨床研究から、ワーファリン服用で脳梗塞の初発が相対的に70%予防出来ると分かっています。これを適用すると、CHADS2スコア1点、2点でのベースラインリスクを、それぞれ1.96%、2.8%減らす事が予測されます。これを絶対リスク減少と呼びます。こなれない表現ですが、専門用語でご容赦下さい。

ここで治療必要数と言う概念を利用すると、1年間に1人の脳梗塞を予防するためにワーファリンを飲む必要のある人数が分かります。細かい説明は省きますが、100を絶対リスク減少で割って、それぞれ51人、36人と算出されます。これがワーファリン服用で得られるベネフィットの指標になります。

一方で出血イベントが年間2%あるとすれば、害必要数と言う概念を利用して、50人が1年間ワーファリンを飲むと、1人の出血イベントが起こると算出されます。これがワーファリン服用によるリスクの指標です。

CHADS2スコア2点ではベネフィットが勝りますが、1点ではリスクとベネフィットが拮抗しているのが分かります。

日本の循環器学会のガイドラインではCHADS2スコア1点でワーファリンを考慮、2点で服用推奨としているのは、このあたりからも裏付けられると思います。

いかがだったでしょうか?皆さんの生活のリスクマネジメントのご参考になれば幸いです。

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薬を飲むことによる不利益、つまり対抗リスクをより詳細に検討する。心房細動でワーファリンを飲んだ方がよいですか?

こんにちは。生牡蠣を食べた後、体調不良をおして出勤している奥村です。相方が優しくしてくれるので、頑張ります。

さて、以前のブログでワーファリンの利益と不利益について書きました。

CHADS2スコアを利用して、個々の脳梗塞リスクを推定したように、出血リスクも十把一絡げ2.0%でなく、個別に推定する手段が考えられています。

HAS-BLEDスコアと言うスコアリングがそれです。抗血小板薬の併用や腎機能等を考慮する事で、より個別に出血リスクを評価することが可能になります。

0点で0.9~1.1%、1点で1.0~3.4%、2点で1.9~4.1%、3点で3.7~5.8%、4点で8.7~8.9%、5点で9.1~12.5%と報告されています1)。

目安として、0点で低リスク、1~2点で中等度リスク、3点以上で高リスクとなりそうです。

CHADS2スコアが1点でも、HAS-BLEDスコアが0点であれば、ワーファリンの使用が考慮されるかも知れません。

1)Chest.2010 Nov

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CVDリスクのある日本人においてメトホルミンはSU剤に比して大血管症を低下させることが示唆されている。

CVDリスクのある日本人においてメトホルミンはSU剤に比して大血管症を低下させることが示唆されています。論文アブストラクトを掲載します。

機械翻訳です。

「背景:いくつかの経口血糖降下薬(OHA)は、2型糖尿病(T2DM)における心血管疾患(CVD)のリスクを低減することが示唆されている。 OHAがCVDリスクに影響を及ぼすかどうかは、日本の多元医療費会計データベースのコホート分析で確認した。

方法:(1)単一のOHA(スルホニルウレア、ビグアナイド、チアゾリジンジオン、α-グルコシダーゼ阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤)を用いた治療を開始した(1)2型糖尿病患者の4095および1273人のデータを、グリシン、またはジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤)を投与し、約1〜 (ii)ベースラインでのヘモグロビン(Hb)A1cレベルが利用可能であった; (iii)ベースライン時の年齢は40〜70歳であった。 ICD-10によるスルホニルウレアに対するOHAsのCVDリスクへの影響を、カプラン – マイヤー曲線を用いて104日間分析した(図3)。

結果:CVDの有無のT2DM患者を対象とした研究1では、ビグアニドによる初期およびベースライン治療は、スルホニルウレアと比較してCVDのリスクを有意に低下させ、HbA1cの制御とは無関係であった。研究2では、CVDの病歴を有するT2DM患者において、ビグアニドのスルホニルウレアに対するCVDリスクに対する同様の有意な予防効果が観察された。

結論:ビグアニドの初期治療およびベースライン治療は、日本人のT2DM患者におけるビグアニドの血糖降下効果とは無関係に、スルホニル尿素と比較してCVDリスクを低下させることができる。」

1)Tanabe M et al. Reduced vascular events in type 2 diabetes by biguanide relative to sulfonylurea: study in a Japanese Hospital Database. BMC Endocr Disord. 2015 Sep 17;15:49. PMID: 26382923

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JAST試験:アスピリン150-200mg/日投与は、心原性脳卒中予防に対して有効でなく、安全性も認められなかった.

JAST試験(Japan Atrial Fibrillation Stroke Trial)を紹介します。

低リスクの日本人非弁膜性心房細動患者において、予後改善に対する低用量アスピリンの有効性と安全性が検討されています。

一次エンドポイントは心血管死、脳卒中、心原性脳塞栓、血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)の複合エンドポイントで、二次エンドポイントは非心血管死、頭蓋内出血、重篤な出血、末梢動脈塞栓でした。

中間解析の結果、アスピリン治療により重篤な出血が生じ、かつ一次および二次エンドポイントにおいてアスピリン群が抗血小板薬・抗凝固薬を使用しない対照群に比し、優れる可能性がきわめて低い(0.015%)ことが判明した為、907例を登録した時点で試験は中断されました。

結論として、アスピリン150-200mg/日投与は、脳卒中予防に対して有効でなく、安全性も認められなかったとしています1)。

以下、アブストラクトの機械翻訳です。

「背景と目的:非弁膜性心房細動(NVAF)患者の脳卒中の一次予防に対する抗凝固療法の有効性が確立されているが、出血性合併症が頻発するため、低リスク患者に対する抗血小板療法の有効性が疑われている。日本人のNVAF患者におけるアスピリン治療の有効性と安全性を無作為化多施設共同試験で検討した。

方法:NVAF患者をアスピリン群(1日150~200mgのアスピリン)または抗血小板薬または抗凝固療法のない対照群にランダム化した。主要エンドポイントには、心臓血管死、症候性脳梗塞、または一過性虚血性発作が含まれた。

結果:合計426人の患者がアスピリン群にランダム化され、445人が無治療群にランダム化された。アスピリン群では27例(年率2.4%、95%CI、1.5%~1.4%)のプライマリーエンドポイントイベントが27件あったため、この試験は早期に中止されました(年間3.1%、95%CI、2.1%〜4.6%/年) 3.5%/年)であり、一次エンドポイント予防のためのアスピリン治療の優位性の可能性が低いことを示唆している。さらに、アスピリンでの処置は、対照群(2人の患者; 0.4%;フィッシャーの正確な検査P = 0.101)と比較して、重大な出血のリスクがわずかに増加した(7人の患者; 1.6%)。

結論:NVAF患者の脳卒中予防のために、1日当たり150~200mgのアスピリンは効果的でも安全でもないようである。日本人NVAF患者の脳血管イベントに対する最良の予防的治療法を決定するためには、さらなる前向き研究が必要である。」

1)Sato H et al. Low-dose aspirin for prevention of stroke in low-risk patients with atrial fibrillation: Japan Atrial Fibrillation Stroke Trial. Stroke. 2006 Feb;37(2):447-51. PMID: 16385088

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