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アトルバスタチンとランサップ800の併用は横紋筋融解症リスクになりますか?
☑️はじめに
アトルバスタチン10mgを服用中の患者さんに、ピロリ菌除菌のランサップ800が処方されました。
添付文書を見ると、併用注意と記載されています。果たして安全に併用出来るのでしょうか。
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☑️アトルバスタチンとクラリスロマイシンは相互作用がある
アトルバスタチンがCYP3A4で代謝され、またCYP3A4の酵素活性がクラリスロマイシンにより不可逆的に阻害されるのはご存知と思います。
リスクを定量化する事は出来ないのでしょうか。
クラリスロマイシンの阻害作用は用量依存的
クラリスロマイシンの阻害作用は用量依存と思われるので、800mgは少し心配です。
Googleで検索すると、次の論文が見つかりました。ブラウザの翻訳機能で内容を確かめます。
👇リンクをクリック、翻訳でチェック😊
Dose-dependent inhibition of CYP3A activity by clarithromycin during Helicobactre pylori eradication therapy assessed by changes in plasma lansoprazole levels and partial cortisol clearance to 6β-hydroxycortisol
Clin Pharmacol Ther. 72. 33-43 (2002)
PMID:12152002
クラリスロマイシン400mg/日、800mg/日 1週間の投与により、内因性コルチゾールのクリアランスが各々30%、60%低下したと報告されています。やはり、阻害作用は用量依存のようです。
PISCSで相互作用を定量化
更にPISCSまたはCR-IR法として知られる、相互作用の定量的予測を試して見ましょう。
CR-IR法についての記事はこちらです👇
インチュニブはクラリスと安全に併用出来るでしょうか?PISCSで予測しました。
併用で、アトルバスタチンAUC上昇の点推定値は2.5倍になりそうです。CR-IR法の精度から、80%の確率で点推定値の67~150%の範囲に正規分布すると考えられます。ただしクラリスロマイシンの1日量が1000mgなのに注意が必要です。
あなたならどうしますか?
スクリプト(台本)を書いて見ましたので、一緒に見て行きましょう。
☑️スクリプト
「アトルバスタチンとクラリスロマイシンは添付文書上、併用注意です。」と疑義照会しました。
でも「ふーん、それで?」と、あまり関心のない反応。
呼吸器感染症でクラリスロマイシンを併用した経験から、併用のリスクを過小評価している医師も多いと思います。
どうしたらよいのでしょう?緊張で身体が震えても声は震えないように堪えながら、あなたは続けます。
「先生、実は併用リスクは、クラリスロマイシンの用量によって左右されます。」
「400mgはあまり警戒しなくてよいと思うのですが、クラリスロマイシン800mgは体格を割引くと海外並みの高用量です。」
「海外用量を基にしたCR-IR法による予測値は、クラリスロマイシンの併用によりアトルバスタチンAUCが80%の確率で1.8~3.8倍、95%の確率で1.3~5.0倍の範囲内に正規分布します。添付文書等、文献に記載されたAUC上昇率1.8~4.4倍も、実は海外用量によるデータです。」
「アトルバスタチンの国内承認用量は家族性高コレステロール血症(FH)で40mg、FHを除けば20mgですから、一時休薬を考慮されては如何でしょうか?」
「クラリスロマイシン1000mgを使用する豪州の公的医薬品規制機関TGAも、Medicines Safety Update No.5;2010 で、スタチンとマクロライド系抗生剤との併用はミオパシーと横紋筋融解症のリスクを増すとして、併用を避けることを呼びかけています。」
👇リンクをクリック、翻訳でチェック😊
Medicines Safety Update No.5; 2010
出典: www.tga.gov.au
「リスク因子は、高用量スタチン、高齢者、甲状腺機能低下、糖尿病、ジルチアゼムやシクロスポリンの併用です。」
「近年のシステマティックレビューでもクラリスロマイシンとアトルバスタチンの併用は避ける事を推奨しています。」
👇リンクをクリック、翻訳でチェック😊
Interaction potential between clarithromycin and individual statins-A systematic review.
Basic & clinical pharmacology & toxicology 2019 Oct19PMID: 31628882
☑️横紋筋融解症のプレアボイドのため、処方変更に
医師の反応が途中から変わりました。あなたはアトルバスタチンとランサップ800の併用リスクについての情報提供が出来、医師の総合的な判断によりアトルバスタチンが休薬、またはランサップ400に変更になりそうです。
緊張が解けて、力んでいた身体の力がへなへなと抜けるようです。でも、充足感があります。あなたの薬剤師としての見解が、診療に反映されました。
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最終更新日2020年10月19日
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☑️推薦図書
「これからの薬物相互作用マネジメント―臨床を変えるPISCSの基本と実践」
PISCSを実践するためのハンドブックです。薬局に一冊、備え付けておきたい本です。PISCSに初めてふれる方にお勧め。
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「医療現場のための薬物相互作用リテラシー」
薬物相互作用の基本、ピットフォールが網羅的に紹介されていて、通読すれば一通りの知識が身に付きます。
中でも、PISCSと言う理論を用いて、薬物相互作用を定量的に予測する方法は圧巻です。
PISCSの適用方法だけでなく、理論的背景まで触れられています。これは今まで発刊されたPISCSの記事に類似するものがなく、わたしは夢中になって読みました。
薬物相互作用のマネジメントは、薬剤師の職能そのものと思いますので、ぜひPISCSを技の1つに加えましょう。
定量的な予測が加われれば、疑義照会や処方提案も受け入れられやすくなると思います。
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