テグレトールで治療される胃腸炎関連けいれん、予防手段はありますか?

Print Friendly, PDF & Email

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。



テグレトールで治療される胃腸炎関連けいれん、予防手段はありますか?

☑はじめに

テグレトール®が胃腸炎の3歳患児に単回処方されました。

テグレトール®️細粒50%
1回70mg(力価)
1回分 帰宅後すぐ服用

出典: hb.afl.rakuten.co.jp

抗けいれん薬ですが、患児にてんかんの既往はありません。

 

胃腸炎にテグレトール®? 何のための処方でしょう?

 

これは、胃腸炎関連けいれんの治療が目的です。

 

本記事では胃腸炎に伴うけいれんとその治療について、また胃腸炎を予防できるワクチンについて解説します。

記事は以下の論文情報を元に執筆しています。

続きは会員ログイン後にどうぞ。

Googleアイコンをクリックすると無料登録/ログイン出来ます。会員規約にご同意下さい。

Benign convulsion with mild gastroenteritis

Ben Kang, MD and Young Se Kwon, MD, PhD

Korean J Pediatr. 2014 Jul; 57(7): 304–309.
PMCID: PMC4127392
PMID: 25114690

出典: www.ncbi.nlm.nih.gov

☑胃腸炎関連けいれん(Benign convulsion with mild gastroenteritis : CwG)

 

胃腸炎関連けいれん(以下CwG)は、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス等による軽度胃腸炎発症後、1~5日目に起きる、群発性、無熱性のけいれんです。

 

通常、てんかんの家族歴は陰性です。ただし、最近の研究によると1親等・2親等内のてんかんの家族歴は16.4%まで報告されています。

好発年齢は6か月~3歳です。頻度ですが、ロタウイルス性胃腸炎に関連するCwGの発生率は約2%~3%とされます。

24時間以内に1~8回の発作が発生する群発性けいれんです。ほとんどの発作は通常1~2分以内に収まります。

予後は一般に良好で、将来的にてんかんを発症することはなく、精神運動発達も正常です。長期の抗てんかん薬治療は必要ありません。

☑CwGは脳炎と見分けが付きにくく入院が基本

急性壊死性脳炎、髄膜炎、Reye症候群、弛緩性麻痺などのCwG以外の神経学的症状は、ロタウイルス感染症の2~5%と関連しています。

いくつかのケースではCwGを模倣した症状を呈することがありますので、CwG疑いの場合、入院して経過観察することが望ましいと考えられます。

帰宅で経過観察となった場合も、けいれんを起こしたら再受診が必要です。

☑けいれん治療にテグレトール®(カルバマゼピン)が使用される

ベンゾジアゼピン系薬剤は効果がないのに対し、カルバマゼピンやリドカインによる治療はCwGに伴う発作の停止に有効である可能性があることがいくつかの研究で報告されています。

5mg/kgを1日1回の低用量カルバマゼピンが、ロタウイルス関連CwGの治療に有効であることを示す報告があります。(PMID:19168832)

☑ロタウイルス予防接種が定期接種になった

胃腸炎、ひいてはけいれん予防に有効

ロタウイルス胃腸炎には経口投与するワクチンがあります。

日本での接種率は2012年7月で約35%、2017年で約70%、一方英国では90%です。

日本では2020年10月から定期接種となり、公費、すなわち無料化されることになりました。

ロタウイルスによる胃腸炎関連けいれんを予防する手段となるので、全員への接種が勧められます。ワクチンにはロタリックス®とロタテック®の2製剤があります。

ロタリックス®とロタテック®について

ロタリックス®は生後2か月から14週6日までに初回を、その後4週あけて生後24週0日までに合計2回接種します。

ロタテック®は生後2か月から14週6日までに初回を、その後4週あけて生後32週0日までに合計3回接種します。

ロタウイルスワクチンによる予防に限界もあるが…

ロタウイルスとCwGとの関連を調査している多くの研究にもかかわらず、CwGの胃腸炎はロタウイルス感染だけに限定されているわけではありません。

CwG患者の便検体中にノロウイルス、サポウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルスなどの他の消化管ウイルスが検出されたことが報告されています。

ロタウイルスワクチン普及後は、その他のウイルスによるCwGの割合が増えると考えられます。

それでも前述したようにロタウイルスに関連した脳炎があり、それを予防するので接種した方がよいと思われます。

☑まとめ

胃腸炎の際に処方されるテグレトール®は、胃腸炎関連けいれんの治療のためと分かりました。脳炎と鑑別がつきにくく入院となる場合が多いので、院外処方せんで目にする機会は珍しいかも知れません。

ロタウイルスワクチンは、胃腸炎関連けいれんの予防にも有効と考えられます。日本では2020年の秋から公費対象となるので、接種されることが望ましいでしょう。

全ての胃腸炎関連けいれんが予防できる訳ではありませんが、ロタウイルスによる脳炎を予防も期待出来ますので、価値のある予防策と考えられます。

 

今回の記事はいかがでしたでしょうか?気に入って下さったら、会員登録をお勧めします。会員限定の記事が閲覧出来るようになります。ひと月あたりの購読料は、喫茶店で勉強する時に飲むコーヒー一杯の値段で提供しています。人生で一番価値のある資源は時間です。効率的に学習しましょう!値段以上の価値を提供する自信があります。

 

クリック👉会員について

会員になりませんか?

最終更新日2020年5月7日

本記事の執筆に際してDeepLによる翻訳を利用しました。

☑参考文献

1)Benign convulsion with mild gastroenteritis Korean J Pediatr. 2014 Jul; 57(7): 304–309. PMCID: PMC4127392 PMID: 25114690

☑️推薦図書

初期研修医・総合診療医のための小児科ファーストタッチ

保険薬局の薬剤師はカルテを見る機会が無いので、医師の鑑別の組み立て等の診断のプロセスを独力で学習する必要があります。

医師のように診断する訳ではありません。処方箋を妥当性を保ちながら解釈したり、疑義が無いか判断したり、的確な服薬・療養指導を行う為には、奥行のある診断プロセスの理解が必要と考えます。

本書は上述の目的を達成するのに十分な内容で、小児科の処方箋を受ける保険薬局の薬剤師に一番にお勧めしたい書籍です。

わたしも調剤室でいつも手元において参照しています。買って後悔させません❗

☑️コラム

職場の悩みはありませんか?

わたしも最初の職場がどうしても合わず、1年足らずで退職。今の職場は上司や同僚に恵まれ、毎日楽しく働いています。

あなたが現状に悩んでいるのであれば、専門家に相談してみてはいかがでしょうか?

転職を考える場合、現在の環境から離れることを一番に考えてしまいがちですが、転職先には現在の職場にない問題があります。

わたしはラッキーでしたが、転職後の方が辛い思いをしてしまった、と言う話も耳にします。

自分に適した職場を見つけるためには、頼れるスタッフに協力してもらうことが重要です。

回り道のように見えますが、転職を成功させるための最短の近道と思います。

あなたも1歩踏み出してみてはいかがでしょうか?

迷っているならまずは登録してみましょう。

スポンサーリンク
完全無料!1分間の簡単登録
あります!今よりアナタが輝く職場
薬剤師の求人ならエムスリーキャリア

 

参考になったと思って下さったあなた、バナークリックをお願いします。

 

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ
にほんブログ村

 

自分だけ知ってるのはもったいないと思って下さったあなた、SNSボタンでシェアをお願いします。

 

サイトQRコード

Copyright©️2017 PHARMYUKI™️ All rights reserved