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アトピー性皮膚炎にシクロスポリンは安全かつ有効な治療法ですか
☑️はじめに
アトピー性皮膚炎は日常診療で頻繁に遭遇する疾患です。
これまで国内には、2つのガイドラインがありました。
日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン。皮膚科診療を専門とする医師を対象として作成されたものです。
厚生労働省研究班および日本アレルギー学会の診療ガイドライン。皮膚科以外のアレルギー疾患の診療に関わる医師、関連領域の医療従事者を対象として作成されたものです。
2018年に、2つを統合し、アトピー性皮膚炎の患者の診療に関わるすべての医師、医療従事者を対象とした診療ガイドラインが作成されました。
薬剤師としても押さえておきたいガイドラインです。今回はシクロスポリンの処方監査が出来ることを目的に、ガイドラインを読んでみましょう。
プロローグ
Rp.シクロスポリン150mg分2
ステロイド外用
👨アトピーがひどくて
👩💭この前教えてもらったっけ
出典: twitter.com
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☑️日本皮膚科学会ガイドライン
CQ15:難治性のアトピー性皮膚炎の治療にシクロスポリン内服はすすめられるか.
推奨文:ステロイド外用やタクロリムス外用,スキンケア,悪化因子対策を十分に行ったうえで,コントロールが困難なアトピー性皮膚炎にはシクロスポリン内服を行ってもよい.
推奨度:2,エビデンスレベル:A
出典:
2021年版は、国内外で発表されたアトピー性皮膚炎に関する新しい知見を加えて作成された改訂版です。
evidence-based medicine(EBM)の観点から、現時点における日本国内のアトピー性皮膚炎の治療方針における目安や治療の目標など診療の道しるべを示すもので、診療の現場での意思決定の際に利用することができます。
ただし、臨床現場での最終的な判断は、主治医が患者の価値観や治療に対する希望も十分に反映して、患者と協働して行わねばなりません。
シクロスポリンについても、EBMに基づいた指針が示されています。
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解説:アトピー性皮膚炎に対するシクロスポリン内服療法の有効性は過去の国内外の臨床試験の結果から十分に証明されている.
国内の成人(16歳以上)の重症アトピー性皮膚炎を対象とした臨床試験では,有効性および有害事象の検討から3mg/kg/日を開始用量(症状により5mg/kg/日を超えないよう適宜増減)とし,8~12週間で終了または継続する場合は休薬期間を挟んだ投薬が有効かつ安全性が高いと結論された.
しかしながら長期投与の有効性と安全性についてはまだ確立しているとは言えないことから,患者にはあらかじめ有効性と安全性についてよく説明した上で使用する必要がある.
安全性の問題に加えて薬価が高価であることもあり,既存治療で十分な効果の得られない重症者を対象として使用時には同法を遵守し,症状が軽快後は速やかに一般的な外用治療に切り替えることが重要である.
また内服治療中に外用療法を併用した方が,内服治療単独よりも治療効果 が早くみられるとともに,再燃しにくいとの報告がある.
なお,小児については,有効性は検証されているものの長期の安全性について十分な検証がなされておらず,現在国内ではアトピー性皮膚炎に対して使用が認められていない.
日本皮膚科学会ガイドライン
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021
出典: www.dermatol.or.jp
☑️シクロスポリンはアトピー性皮膚炎への有効性が示されている
シクロスポリンは欧米の多くの国でアトピー性皮膚炎に対する有効性が示され、アトピー性皮膚炎に対する使用が承認されています。
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『アトピー性湿疹患者の治療におけるシクロスポリン – システマティックレビューとメタアナリシス』
【目的】重症アトピー性湿疹患者における全身性シクロスポリンの有効性を系統的に評価すること。
【研究デザイン】対照試験および非対照試験の系統的レビューとメタアナリシス。電子検索(MEDLINE、Cochrane databases)および公開文献の手作業による検索。2名の査読者による独立した標準化された適格性評価とデータ抽出。
【方法】定性的レビューでは、研究デザイン、研究対象、方法論、結果、忍容性、方法論の質に関するデータを、2名の査読者が独立に抽出した。質的に均質な研究は、ランダム効果モデルを用いてプールされた。
定量的解析では、客観的な疾患重症度の平均相対変化量を主なアウトカム指標として選択した。出版バイアスは、治療効果をサンプルサイズに回帰させることで探索した。感度分析では、研究固有の共変量(小児の対象、研究タイプ、外用療法の併用、研究の質)のメタ回帰を行った。
【結果】602人の患者を含む15件の研究が適格基準を満たした。分析されたすべての研究で、シクロスポリンは一貫してアトピー性湿疹の重症度を減少させた。12の研究は、プールするのに十分なほど均質であった。
治療2週間後、低用量シクロスポリン(3 mg/kg)のプール平均重症度低下は22%(95%-CI 8-36%)、4 mg/kg以上では40%(95%-CI 29-51%)と、用量に関連した反応が見られました。6-8週間後の相対的有効性は55%(95%-CI 48-62%)であった。
【結論】出版バイアスの証拠があるため、定量的結果は慎重に解釈される必要がある。シクロスポリンの有効性は成人と小児で同等であるが、忍容性は小児でより優れている可能性がある。
アトピー性湿疹患者におけるシクロスポリンの長期的な有効性と安全性を適切に評価するデータがないため、長期的なレジストリが推奨される。
Schmitt J, Schmitt N, Meurer M: Cyclosporin in the treatment of patients with atopic eczema-a systematic review and meta-analysis, J Eur Acad Dermatol Venereol, 2007; 21: 606―619.
出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
☑️国内の適応、用法用量と使用期間
2008年10月、シクロスポリンにアトピー性皮膚炎に対する適応が国内でも追加されました。
適応となるのは、16歳以上で既存治療で十分な効果が得られない最重症(強い炎症所見を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる)の患者です。
国内の成人(16歳以上)の重症アトピー性皮膚炎を対象として、有効性および有害事象を検討する臨床試験が行われています。
3mg/kg/日を開始用量(症状により5 mg/kg/日を超えないよう適宜増減)とし、8~12週間で終了または継続する場合は休薬期間を挟んだ投薬が有効かつ安全性が高いと結論されました。
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【要約】
アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2002で最重症と規定された成人のアトピー性皮膚炎患者に,シクロスポリンMEPC(ネオーラル ®)を間歇投与で長期間治療した際の安全性および有効性評価を目的とした試験を実施した.
ネオーラル ®は3mg/kg/日を開始用量として2~5mg/kg/日の範囲で用量調節しながら原則8週間(最長12週間)の治療期と2週間以上の休薬期を1クールとし,52週後まで繰り返した.
皮疹の重症度および罹病範囲のスコア変化率は,治療期1ではそれぞれ-70.4%および-48.3%,2では-58.8%および-43.1%,3以降の治療期でも50%以上および40%以上の低下を示し,効果の減弱はみられなかった.有害事象は全被験者に発現し,副作用は76.8%の患者で発現した.
ネオーラル ®の投与中止を必要とした有害事象は1例であり,問題となる有害事象はなかったため,ネオーラル ®は成人の最重症アトピー性皮膚炎長期間コントロールに有用な薬剤であると結論した.
ネオーラルによるアトピー性皮膚炎治療研究会:成人の 重症アトピー性皮膚炎患者に対するシクロスポリン MEPC 間歇投与法の安全性および有効性評価:多施設 共同,オープン,長期間観察試験,臨皮,2009; 63: 163― 171.
出典: webview.isho.jp
☑️外用剤の併用も重要
シクロスポリン内服中も、抗炎症外用薬を併用した方が、内服単独より治療効果が早くみられたとする報告があります。
また、併用した方が、シクロスポリン内服のみで治療するより再燃までの期間が長くなるとしています。
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『シクロスポリンで治療中の中等症から重症のアトピー性皮膚炎における外用薬併用の重要性』
【要旨】
シクロスポリン(CS)は、難治性アトピー性皮膚炎(AD)患者に広く用いられている。CS治療中、多くの患者は疾患の改善とともに外用薬のアドヒアランスを低下させる傾向がある。我々は、CS療法と外用剤の併用療法とCS療法単剤療法の効果および再発率を比較することを目的とした。
本試験は、中等度から重度のAD患者60名を対象とし、CSと外用剤を併用する群とCSのみの群の2群に無作為に割り付け、6ヶ月間の前向きの無作為化試験とした。臨床結果は、治験責任医師によるグローバル評価(IGA)スコア、湿疹面積および重症度指数スコア、経表皮水分損失に基づいて決定された。試験期間中に治療が成功した場合(IGAスコア≦2)、CSは中止された。CS中止後3ヶ月間の再発率および再発までの時間を評価した。
治療成功率は併用群で有意に高かった(p=0.028)。併用群は単剤群に比べ、奏効までの期間中央値が短く(p = 0.040)、累積投与量が少なく(p = 0.041)、再発までの時間が長かった(p < 0.01)。
CS単剤療法はADに対して有効であるが、外用剤を併用することが望ましいと思われる。
キーワード:アトピー性皮膚炎,シクロスポリン,湿疹,治療-外用剤,外用剤
Kim JE,et al.
Importance of concomitant topical therapy in moderate-to-severe atopic dermatitis treated with cyclosporine
Dermatol Ther, 2016; 29: 120―125.
出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
☑️安全性を検討したクロスオーバー試験
有効性と安全性を検討したクロスオーバー試験が報告されています。
シクロスポリン治療により、血清尿素、クレアチニン、ビリルビンの平均濃度が上昇したが、ビリルビンの上昇のみが有意でした(p = 0.001)。
シクロスポリンは重症難治性アトピー性皮膚炎に対する安全かつ有効な短期治療法であることが確認された、としています。
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『重症難治性アトピー性皮膚炎を対象としたシクロスポリンの二重盲検比較対照クロスオーバー試験』
【概要】全身性ステロイド、アザチオプリン、および光化学療法による治療にもかかわらず、成人になってもアトピー性皮膚炎に重症のままである患者が少なからず存在する。
33名の患者が二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験に参加し、重度の難治性アトピー性皮膚炎の成人患者におけるシクロスポリン(5 mg/kg/日)の有効性と安全性を評価した。
治療は8週間ずつ行われ、1つのグループ(n = 16)にはプラセボの後にシクロスポリンが投与され、別のグループ(n = 17)にはシクロスポリンの後にプラセボが投与された。
疾患活動性、疾患の程度、睡眠と痒み、局所ステロイドの使用、有害事象が2週間ごとに評価された。皮膚炎の程度と活動性は、主観的な疾患評価と同様に、有意に改善された(p=0.001未満)。
シクロスポリン投与群では20名の患者が、プラセボ投与群では8名の患者が有害事象を報告したが、試験の中止を余儀なくされた患者はいなかった。シクロスポリン治療により、血清尿素、クレアチニン、ビリルビンの平均濃度が上昇したが、ビリルビンの上昇のみが有意であった(p = 0.001)。
この結果から、シクロスポリンは重症難治性アトピー性皮膚炎に対する安全かつ有効な短期治療法であることが確認された。
Sowden JM, Berth-Jones J, Ross JS, et al: Double-blind, controlled, crossover study of cyclosporin in adults with severe refractory atopic dermatitis, Lancet, 1991; 338: 137―140.
出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
☑️300mg/日または150mg/日の固定用量も安全で有効との報告
体重に依存しないシクロスポリン投与が、重症アトピー性皮膚炎の短期治療において実行可能との報告もあります。
300mg/日の開始用量は150mg/日よりも有効ですが、150mgの用量は腎臓への忍容性が優れているため、治療開始に望ましいとされています。
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『シクロスポリンミクロエマルジョンの体重に依存しない投与法は重症アトピー性皮膚炎に有効であり、QOLを改善する』
【背景】シクロスポリンは重症アトピー性皮膚炎に有効であることが示されている。この疾患に対する新しいマイクロエマルジョン製剤(サンディミュン、ネオーラル)の治療法については、ほとんど報告されていない。また、シクロスポリンの体重に依存しない投与法がアトピー性皮膚炎の治療に適切であるかどうかも検討されていない。
【目的】本研究の目的は、重症アトピー性皮膚炎におけるシクロスポリンミクロエマルジョンの体重に依存しない投与法について、投与開始量の高低を比較することにより検討することであった。
【方法】重症アトピー性皮膚炎の成人106名をこの二重盲検試験に登録し、シクロスポリンミクロエマルジョン1日150 mg(低用量)または300 mg(高用量)のいずれかを開始用量として無作為に投与した。2週間後、臨床症状スコアが50%以上減少した場合、投与量を50%削減することができました。8週間後、反応者は4週間のフォローアップ段階に入り、治療を中止するか、最後の有効量を2日おきに投与し続けるかに無作為に割り付けられた。
【結果】治療2週間後、症状スコアの合計はシクロスポリン150mgで59.0から39.3へ、300mgで60.7から33.2へ減少した(P <.05)。8週目まで臨床症状スコアはさらに低下し、低用量療法では30.8、高用量療法では25.5となった。また、体表面積、かゆみ、睡眠障害、QOLの評価においても同様の効果が認められた。2週目の血清クレアチニン値は150mg投与群で0.6%、300mg投与群で5.8%の増加が認められた(P<0.01)。8週目における血清クレアチニンへの影響も同様であり,低用量群で1.1%,高用量群で6.0%の上昇がみられた。本試験では,体重は有効性および忍容性に影響を与えなかった。
【結論】シクロスポリンによる体重に依存しない投与は、重症アトピー性皮膚炎の短期治療において実行可能であると思われる。300 mg/日の開始用量は150 mg/日よりも有効であるが,150 mgの用量は腎臓への忍容性が優れているため,治療開始に望ましいと思われる.
Czech W, Bräutigam M, Weidinger G, et al: A bodyweight-independent dosing regimen of cyclosporine microemulsion is effective in severe atopic dermatitis and improves the quality of life, J Am Acad Dermatol, 2000; 42: 653―659.
出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
☑️まとめ
ガイドラインを概観し、アトピー性皮膚炎に対してのシクロスポリンのエビデンスに基づいた情報を確認しました。
成人の重症アトピー性皮膚炎に8~12週投与し、2週間の休薬を挟むことが分かりました。
シクロスポリンの用量は3~5mg/kg/日で適宜増減、300mg/日または150mg/日の固定用量を用いる場合もあるようです。
また、外用の抗炎症薬を併用することで奏功までの期間を短縮し、再発までの期間を延長します。
処方監査し、服薬指導する為に必要となる、多くの情報が得られました。
添付文書だけに頼るのでなく、積極的に学会ガイドラインを確認する癖をつけておきましょう。
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最終更新日2022年9月24日
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