ACS患者でPCI後のチカグレロルからクロピトグレルへのスイッチは有益ですか

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ACS患者でPCI後のチカグレロルからクロピトグレルへのスイッチは有益ですか

☑️はじめに

ステント留置後のDAPTはアスピリンとP2Y12阻害薬が使用されます。

チクロピジン、クロピトグレルを経て、近年では新規P2Y12阻害薬のプラスグレルやチカグレロルがGLでも高い推奨度を得るようになっています。

これらは抗血小板作用が強力であり、CYP2C19 遺伝子多型の影響を受けにくい薬剤です。

しかしながら、クロピトグレルと比較して出血リスクが高くなることが懸念されていました。

急性期以降に治療強度を減弱するSAPT(抗血小板薬単剤療法)の他、デ・エスカレーションまたはスイッチと呼ばれる手法が検討されています。

高齢のACS患者における強力なP2Y12阻害剤とクロピドグレルの結果のメタアナリシスでは、強力なP2Y12阻害剤がCV死とMIの軽減に効果的であることがわかりました。

(中略)しかし、それらは安全ではなく、クロピドグレルと比較して出血のリスクが高くなりました。DAPTを使用した高齢ACS患者のある研究によると、虚血性イベントは急性期でより一般的であり、出血イベントは後期でより一般的です。

したがって、患者は急性期にチカグレロルと一緒にアスピリンを服用し、その後、後期にアスピリンとクロピドグレルを服用することが推奨されます。この推奨は、PCIを受けているACS患者でチカグレロルがクロピドグレルに切り替えられたいくつかの研究によって裏付けられています。

Mohammed Ahmed Akkaif, et al.,

Coronary Heart Disease (CHD) in Elderly Patients: Which Drug to Choose, Ticagrelor and Clopidogrel? A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials

J Cardiovasc Dev Dis. 2021 Oct; 8(10): 123.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

P2Y12阻害薬のスイッチ…初めて聞く治療法です。

どんなエビデンスがあるのかな。いっしょに見てみよう!

プロローグ

Rp.🆕クロピトグレル
 バイアスピリン
 etc.
👴薬変えると聞いたよ
👩‍⚕️💭前回までブリリンタだったわ

👩‍🎓これはデエスカレーション。ローディングなしで切替、12ヵ月の心血管死、MI、脳卒中、出血の複合エンドポイントで非劣勢の報告があります。

出典: twitter.com

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☑️「2020年JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法」

2020年3月に発行された本邦のガイドラインにおいて、デ・エスカレーション(スイッチ)について次のように書かれています。

デ・エスカレーション:

(アスピリン若しくはP2Y12阻害薬による単剤療法の他)出血リスクを低減するもう1つの方法として、ACS発症早期にのみプラスグレルまたはチカグレロルと低用量アスピリンの DAPTを行い、その後はクロピドグレルと低用量アスピリンのDAPT に切り替える(スイッチ)戦略も検討されている。

小規模研究ではあるが TOPIC試験において、ACS発症1ヵ月後にクロピドグレルにスイッチすることにより、1年時の虚血イベントを増加させることなく、出血イベントを低下させたことが報告されている。

2020 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法

出典: www.j-circ.or.jp

☑️TOPIC(2017)

646人のオープンラベル、単盲検、無作為化試験。

ACS発症1ヵ月後にDAPTを低用量アスピリン+新規P2Y12阻害薬(プラスグレルまたはチカグレロル)から低用量アスピリン+クロピトグレルに変更することの有用性を評価。

切り替え(Switched)DAPTは、変更なし(unchanged)DAPTに比べ、ACS後の虚血性イベントを増加させることなく出血性合併症を予防するのに優れていた。

Thomas Cuisset, et al.

Benefit of switching dual antiplatelet therapy after acute coronary syndrome: the TOPIC (timing of platelet inhibition after acute coronary syndrome) randomized study

Eur Heart J . 2017 Nov 1;38(41):3070-3078.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️ガイドライン発行後に追加されたエビデンス

クロピトグレルは切り替え時にローディングをすべきなのか、臨床疑問がありました。

これは2021年のTALOS-AMI試験で検証されています。

ガイドライン発行以降に発表されたP2Y12阻害薬スイッチのエビデンスを確認しましょう。

PCI後の抗血小板療法の減弱化(de-escalation)は重要なテーマである。PCI後の急性心筋梗塞患者で、チカグレロルからクロピドグレルへの変更は、虚血リスクを増大することなく出血リスクを有意に低下させることが、TALOS-AMI 研究として報告された。このように、PCI 後の抗血小板療法は減弱化(de-escalation)の方向に向かうものと考えられる。

脳・心・腎・血管疾患 クリニカル・トライアル2022

出典: j-clear.jp

☑️TALOS-AMI(2021)

韓国32施設2,697人の非盲検、評価者マスク、多施設、非劣性、無作為化試験。

PCI後の安定した急性心筋梗塞患者において、チカグレロルから一律の非ガイド下(=クロピトグレルのローディングのない)de-escalation戦略は、主に出血イベントの減少により、12カ月までのイベントリスクを有意に減少させた。

Chan Joon Kim, et al.

Unguided de-escalation from ticagrelor to clopidogrel in stabilised patients with acute myocardial infarction undergoing percutaneous coronary intervention (TALOS-AMI): an investigator-initiated, open-label, multicentre, non-inferiority, randomised trial

Lancet . 2021 Oct 9;398(10308):1305-1316.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️まとめ

韓国の多施設2,697人のRCTにおいて、急性期の低用量アスピリン+チカグレロルのDAPT後、低用量アスピリン+クロピトグレルへ切り替えが検討されました。

出血イベントを減少させることで12カ月までの複合イベントを減少させることが、2021年のTALOS-AMI試験により示されています。

ACS患者にPCIを施行した後にはDAPTが行われますが、出血リスク低減のために急性期以降はSAPT等、治療強度を減弱させる治療法が検討されています。

P2Y12阻害薬のスイッチは、その選択肢のひとつとして今後も注視して行きたい治療法です。

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最終更新日2022年7月9日

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