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7~15歳の小児がザイザル錠2.5mg2錠を1日2回に分けて服用する理由
☑️はじめに
アレルギーの薬のザイザルの飲み方についての話です
ザイザルは、大人の場合、1回5mgを1日1回、就寝前に飲む薬ですが、7歳から15歳未満のお子さんは、1回2.5mgを1日2回、朝食後及び就寝前、と飲み方が変わります。
一日量が同じなのに、分割して飲むのは、意味があるのでしょうか?一回量は減るけれど、飲む間隔は短くなりますよね?どう考えたら良いのでしょう😥
これは、薬学部で勉強する、薬物動態学の知識を応用すれば説明出来ます。やや専門的な内容になりますが、なるべくかみ砕いて書きますので、お付き合いお願いします🙇
はじまり、はじまり
プロローグ
👧先輩…
👩?👧ザイザルですけど、7歳から15歳まで2.5mg錠を1日2回飲みますよね
👧小1から中3まで同じって。どうして?
👩まず分割して飲むと5mg錠1回に対してピーク濃度を30%程度抑えるよ
👩また誘発した皮疹への効果は分割した方が良かったとジルテックIFにある
👧成る程
👩ザイザルやジルテックは腎排泄型で、全身クリアランスはクレアチニンクリアランスまたは個別eGFRに比例すると思われる
👩体表面積辺りのeGFRは2歳頃には成人と同等になる。体表面積は7歳で成人の50%、15歳で95%になるよ
👩従って7歳の飲み方は成人が5mgを1日2回、15歳の飲み方は成人が2.5mgを1日2回飲むイメージではないかな
👩ただし、半減期は小児の方が短くなる。
7歳では成人のt1/2の7.3時間から4.9時間に短縮と予想されるよ。👩半減期は分布容積/全身クリアランス比に比例するけれど、一般に小児のクリアランスは体表面積に比例し、分布容積は体重に比例するからだよ。
kel=CL/Vd
t1/2=0.693/kel👧メモメモ
出典: twitter.com
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☑️ザイザルについて
まず、ザイザルについておさらいをしたいと思います。
ザイザルは錠剤とシロップがある
ザイザルは7歳以上の子供と大人は錠剤を、7歳未満の子供はシロップを飲みます。
子どもは5mgの錠剤を半分にして1日2回飲む
成人の用法用量は5mg錠を1日1回ですが、7歳から15歳の子供は5mg錠の半錠を1日2回飲みます。
アトピー性皮膚炎や蕁麻疹、花粉症や風邪の鼻水に使う薬
ザイザルの添付文書の適応は、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患に伴う痒みです。
飲み続けると血中濃度が若干高くなる
後述するように、1日1回飲み続けるとピーク濃度は1.1倍に、1日2回飲み続けると、ピーク濃度は1.5倍になります。
この現象は、蓄積率と言う概念で説明出来ます。追々、詳しく説明しますので、お楽しみに。
それでは、本題に入りましょう。
☑️薬物動態の基礎知識
半減期について
体内の薬の量が、半分になるまでにかかる時間を、半減期T1/2(ティー・ハーフ)と言います。
半減期を重ねる度に、体内の薬の量は、1/2、1/4、1/8、1/16…と減っていきます。1/16になれば、体内の薬の量は、ほぼ0になったと考えて良いです。
半減期が長い薬の場合、薬が0になる前に、再度薬が体の中に入ります。そのため、繰り返し飲んでいると、体内の薬物量の推移は一回しか飲んでいない時よりも少しずつ多くなって行きます。
やがてピーク濃度は一定の値になります。この状態を、定常状態(ていじょうじょうたい:Stedy State)と呼びます。
体内の薬の量がピークになっている時の濃度を、最高血中濃度と呼びます。濃度はCで表します。
☑️蓄積率について
一回だけ飲んだ時の最高血中濃度をCmax(シー・マックス)とすると、定常状態の最高血中濃度であるCss.max(シー・ステディ・ステイト・マックス)は、変数である蓄積率R(ちくせきりつ、アール)を使って、Css.max=R・Cmaxと表現されます。
蓄積率Rは、投与間隔τ(タウ)とすると、投与間隔/半減期を計算し、表から得ます。
τ/ t1/2 | ≧4 | 3.0 | 2.0 | 1.5 | 1.0 | 0.8 | 0.7 |
蓄積率R | 1.0 | 1.1 | 1.3 | 1.5 | 2.0 | 2.4 | 2.6 |
分割して飲むと、1回量は減るのでCmaxは減りますが、投与間隔が短くなるので蓄積率Rは大きくなります。
総合的には体内の薬のピーク濃度が抑えられると予想されますが、本当にそうなのか、また、どの程度抑えられるのか、計算してみましょう。
☑️ザイザルのピーク濃度はどれくらい抑えられる?
ザイザルは、成人の半減期T1/2=7.3時間です。
また、投与量と最高血中濃度であるCmax、利用出来る薬の総量である、血中濃度‐時間曲線下面積AUC(エーユーシー)は、投与量に比例して増加することが次の表より分かります。
Dose Cmax(ng/mL) AUC(ng・h/mL)
5mg 232.60 1814.06
10mg 480.00 3546.51
小児も同様と仮定して、話を進めて行きます。
①ザイザル5mgを24時間おきで投与した場合
投与間隔/半減期=τ/T1/2=24/7.3=3.28
∴蓄積率R≒1.1
ザイザル5mg単回投与時の最高血中濃度をCmax5と表記すると、
定常状態の最高血中濃度Css.max=1.1・Cmax5
②ザイザル2.5mgを12時間おきで投与した場合
投与間隔/半減期=12/7.3=1.64
∴蓄積率R’=1.5
ザイザル2.5mg単回投与時の最高血中濃度をCmax2.5と表記すると、Cmax2.5=0.5・Cmax5
定常状態の最高血中濃度Css.max’=1.5・Cmax2.5=0.75・Cmax5
ここで、Css.max’/Css.max=0.68 です。
したがって、②の飲み方をすると、①の飲み方と比べて、定常状態の最高血中濃度が‐32%抑えられる、と予想されます。
☑用量設定の設定根拠、ザイザルとジルテックの資料
ザイザル錠5mgに関する資料
ザイザルの用法用量については、以下の資料から、ラセミ体ジルテックの用法用量が根拠になっていることが分りました。
ザイザル錠 5㎎ に関する資料
1.8.3. 用法・用量およびその設定根拠セチリジンはすでに国内外において 1日 1回 10 mgを成人の至適用量として臨床使用され ており、今回国内で実施した薬物動態試験において、海外と同様にレボセチリジン 5 mgと セチリジン 10 mgを投与したときのレボセチリジンの薬物動態の同等性が確認された。
また、 海外のレボセチリジンの臨床試験成績より成人において 1日 1回 5 mg の有効性が検証され ていることから、日本における本剤の成人における用法・用量はセチリジンの用法・用量の 半量である 1日 1回 5 mg が妥当であると考えられ、「通常、成人にはレボセチリジン塩酸 塩として 1回 5 mgを 1日 1回、就寝前に経口投与する。」と設定した。
また、小児においても日本における本剤の用法・用量はセチリジンの半量が妥当であるこ とが類推され、「通常、7歳以上 15歳未満の小児にはレボセチリジン塩酸塩として 1回 2.5 mgを 1日 2回、毎食後及び就寝前に経口投与する。」と設定した。
出典: www.pmda.go.jp
ジルテック錠5mg・10mg・ドライシロップ1.25%医薬品インタビューフォーム
ジルテックの用法用量は、後述する海外の試験が根拠になっていることが分りました。
小児の場合は分割投与した方が良好な結果が得られたとの試験がありました。
ジルテック錠5mg・10mg・ドライシロップ1.25%医薬品インタビューフォーム本邦で行った忍容性試験で検討した体内動態パラメータ、安全性等は海外の成績とよく一致していた。そこで、海外のデータを参考に臨床上の有益性・安全性を推定する事は可能と考えられたことから、用量反応探索試験を省略し、無作為化平行用量反応試験から開始した。
外国人データ(実施国:ベルギー)
目的:本剤10mg 1日1回投与と5mg 1日2回投与の作用の強さ及び持続時間の比較検討「5mg 1日 2回投与の方が10mg 1日1回投与よりも強い効果が長時間維持されることが確認された。」
医師・薬剤師・看護師 医療関係者の皆さまのための医薬品情報 第一三共 Medical Library
小児において、分割投与の方がジルテックの効果が強く、持続時間が長いことについて、メーカーホームページで次のように解釈されていました。
Q.ジルテックの用法が成人では1日1回に対し、小児が1日2回の理由を教えてください。
A.小児においては成人と比べて本剤の成分の血中消失速度が速いこと、成人と同じ用法において最高血中濃度が一時的に高濃度となること、また1日1回投与した場合、同じ用量を1日2回に分割投与した場合と比べて定常状態における最低血中濃度は低くなることから、定常状態における濃度差を少なくし有効性及び安全性を確保する観点より、小児の用法を1日2回と設定しております。
引用文献:
ジルテック錠5・ジルテックドライシロップ1.25% 新医薬品の「使用上の注意」の解説
ザイザルは腎排泄型の薬剤でクリアランスはCcrが指標となる
ザイザルは肝臓で殆ど代謝されず、未変化体のまま腎排泄されます。
従って、ザイザルの全身クリアランスはクレアチニン・クリアランス(Ccr)またはCcrに近似される個別eGFRが指標となります。
ザイザル錠 インタビューフォーム
5.代謝 (1)代謝部位及び代謝経路 〔外国人データ〕 ヒトにおいてレボセチリジンはほとんど代謝されず、その大部分は未変化体として尿中に排泄される。出典: gskpro.com
小児の標準化eGFRは生後3~6ヵ月で成人と同じ程度にはなります。
そして小児の体表面積あたりのGFRは、2歳で成人と同程度になるとされます。(出典 : 小児CKD診断時の腎機能評価の手引き)
また、7歳の個別eGFRは標準化eGFRの50%程度、15歳では95%程度です。
小児の生理・生化学的発達と薬物消失経路を考慮した 新たな小児薬用量推定法 医療薬学 40(12) 698-715 (2014)
3.ePPBD 法による腎排泄型薬剤の推定
(1)2 歳以上の小児を対象とした近似推定
Dc=Da・(GFRc/GFRa)
従って7歳で2.5mgを1日2回服用するのは、成人が5mgを1日2回服用するような形に近いと考えられます。
15歳で2.5mgを1日2回服用するのは、成人が5mgを1日2回に分割して服用するような形に近いと考えられます。
半減期は小児の方が短く、薬物消失速度が早い
ただし、半減期は小児の方が短くなります。7歳では成人のt1/2の7.3時間から4.9時間に短縮と予想されます。
12時間毎に服用した場合の蓄積率R≒1.1程度で、蓄積性は、ほぼありません。
半減期は分布容積/全身クリアランスの比に比例しますが、一般に小児のクリアランスは体表面積に比例し、分布容積は体重に比例します。
この為、半減期は成人に比して小児の方が短くなり、薬物消失速度は早くなります。
kel=CL/Vd
t1/2=0.693/kel
☑️まとめ
ザイザルの小児用量は小学1年生から中学3年生までをカバーします。個別eGFRは50から95mL/分と幅広いです。
eGFRだけに着目すれば、7歳では1回2.5mgを1日1回、15歳では1回5mgを1日1回でも良さそうに思えます。
ただし、小児の場合、薬物消失速度は成人より大きい事を加味して、このように1回2.5mgを1日2回となっていると考えました。
いかがでしょうか?学部で習った知識が、日常業務の疑問を解いてくれます☺みなさんも、蓄積率をぜひ活用して下さいね!
エピローグ
【7~15歳でザイザル分2なのは何故?】
小児の半減期は成人より短い。
kel=CL/Vd, T1/2=0.693/kel
(CLは体表面積、Vdは体重に比例)
7歳では体表面積は成人の1/2,体重は1/3程度。従って消失速度は1.5倍、半減期は0.67倍。
蓄積率は成人・分1でR≒1.1、分2でR≒1.6程度。7歳・分2ではR≒1.2。
出典: twitter.com
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最終更新日2021年1月20日
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