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エチゾラムの代謝経路は2C19PMにおいて3A4以外にもありますか
☑️はじめに
エチゾラムはCYP3A4とCYP2C19で代謝されます。
CYP2C19には遺伝子多形があり、活性のないPMにおいてエチゾラムの半減期が延長したり、作用が増強したとする報告があります。
CYP遺伝子多形が抗不安薬と睡眠薬の薬物動態に与える影響
2C19PMにおいては代償的にCYP3A4の活性が亢進していると予想されます。ケトコナゾールのような強いCYP3A4阻害薬を併用した場合、エチゾラムのAUCはかなりの強度で上昇するのでしょうか。
CYP2C19PMにケトコナゾールを実際に併用した報告があります。結果を見ると、エチゾラムAUC上昇率は僅か2.34倍でした。EMでは1.6倍でした。
確かに、ある程度のCYP3A4活性の亢進が考えらます。ですがAUC上昇率から、PMにおいてもCYP3A4の代謝寄与率は予想した程に高度ではないことが分かります。
この事象から、CYP2C19PMにおいて、エチゾラム代謝にはCYP3A4、2C19以外の経路の関与が予想されました。
プロローグ
👨⚕️エチゾラムの効果に遺伝子多型があるって本当ですか
👩🎓CYP2C19が関与するので、本当です。エチゾラム単独投与時のAUCはPMではEMより2.65倍高い結果でした。また、強力なCYP3A4併用時のAUCは、PMでは2.34倍になります。EMで単独投与時とPMで阻害剤併用時のAUCは実に6倍になる計算です。
👨⚕️エチゾラムで6倍は侮れないですね。
👩🎓おそらくCYP3A4、2C19以外の代謝経路が関与して6倍で済んでいますが、エチゾラムにしては侮れない上昇です。最良の薬物治療が実施できるよう、丁寧に知識を深める必要があります。出典: twitter.com
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☑️CYP2C19のEMとPMにおけるCYP3A4寄与率を各々試算する
エチゾラムのCYP3A4寄与率ですが、文献値は不明でした。論文で報告されているケトコナゾール併用時のAUC上昇率から、寄与率を求めて見ます。
Notable Drug-Drug Interaction Between Etizolam and Itraconazole in Poor Metabolizers of Cytochrome P450 2C19
☑️文献値からCYP2C19のEM/PMの寄与率を得る
エチゾラムのCYP2C19代謝寄与率(CR-2C19)は0.69~0.5であり、EMのCRとして中間値の0.6を用いました。PMのCRは0.0としました。
薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019
出典: www.ptweb.jp
☑️ケトコナゾール併用データから寄与率を試算する
ケトコナゾール(IR=1.0)を併用した場合のAUC上昇率は、CYP2C19EMで1.6倍、CYP2C19PMで2.34倍でした。
CR-IR法の公式を用いてEMおよびPMのCYP3A4代謝寄与率CRを試算し、次の結果を得ました。
2C19EM……CR-3A4=0.38 CR-2C19=0.60 AUC上昇率1.6倍
2C19PM……CR-3A4=0.57 CR-2C19=0.0 AUC上昇率2.34倍
Notable Drug-Drug Interaction Between Etizolam and Itraconazole in Poor Metabolizers of Cytochrome P450 2C19
☑️アジア人はCYP2C19PMが多く、CYP2C9が代謝経路かも知れない
アジア人の15~30%はCYP2C19のPMと報告されています。
Effects of genetic polymorphism of cytochrome P450 enzymes on the pharmacokinetics of benzodiazepines
デパス®添付文書にはCYP3A4とCYP2C9で代謝されると記載されています。社内資料の為、詳細は確認出来ませんでした。
これは想像になりますが、CYP2C19の活性が低下している場合、2C9の経路があるいは利用されているのかも知れません。
☑️まとめ
エチゾラムの体内動態について考察しました。エチゾラムはCYP3A4と2C19で代謝されます。
2C19PMにおいては、ケトコナゾールのような強いCYP3A4阻害薬を併用した場合、2C19EMよりAUC上昇率が大きくなりました。
これは3A4の活性が代償的に亢進していることを示唆します。しかし、ここまで見てきたように、エチゾラムのAUC上昇率はそこまで顕著ではありません。寄与率CR-CYP3A4も0.57と試算されました。
この事象から、CYP2C19PMのエチゾラムの代謝において、3A4と2C19以外の経路の関与している可能性が示唆されます。
2C9の関与を考えましたが、今回証拠を見つけるに至りませんでした。今後、更なるリサーチを継続したいと考えます。
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最終更新日2021年2月5日
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