この記事を読むのに必要な時間は約 16 分です。
非結合型バルプロ酸の経口クリアランス及びAUCは蛋白結合率が低下しても変動しない
☑️はじめに
バルプロ酸はアルブミンへの蛋白結合率が高く、殆どが細胞外液中に存在します。
病態や他の薬物による蛋白結合置換で非結合型分率が上昇した場合、作用が増強されることはあるのでしょうか?
結論から言うと、作用強度は変わりません。
薬物の特徴づけから、薬効を発揮する非結合型バルプロ酸のAUCは変動しないことが予想されるからです。
詳しく説明しましょう。
さくら先輩、臨床薬物動態学の考え方に慣れてきました
ゆきさん、頼もしいね。今日も一緒に見て行こう!
プロローグ
📖デパケン®️添付文書
“全身クリアランスは主に肝固有クリアランスと血漿中蛋白非結合率の影響を受ける”
📖デパケン添付文書
“蛋白結合率が低下した場合、総血漿中濃度は低下するが、非結合型濃度は低下しない”👧ずいぶん詳しく書いてありますね
👩内容の理由を説明しよう。まずは薬物の特徴づけだけど…
出典: twitter.com
運営者から、クローズドコミュニティに対する思いをお伝えしています。
記事の続きをどうぞ。
Googleアイコンをクリックすると無料登録/ログイン出来ます。会員規約にご同意下さい。
☑️インタビューフォームの情報を確認する
〇バイオアベイラビリティ(BA)
バルプロ酸のバイオアベイラビリティは剤形の違いによらず約100%である。
〇クリアランス(CL)
バルプロ酸の吸収率を 100%と仮定したとき、全身クリアランスは外国人健康成人 (16~60 歳)で 6~8mL/h/kgである。
すなわち6~8mL/min(60kg)
バルプロ酸の全身クリアランスは主に肝固有クリアランスと血漿中非結合率の影響を受ける。
〇分布容積(Vd)
バルプロ酸の分布容積は 0.1~0.4L/kg であり、ほぼ細胞外液に相当する。
〇血漿蛋白結合率(1-fuB)
バルプロ酸の血漿蛋白結合率(fuP=fuB)は 90%超であり、総血清中濃度がおよそ100μg/mL以上では結合が飽和する。
〇消化管吸収率(Fa)
バルプロ酸の吸収率は90~100%
〇代謝
バルプロ酸の大半は肝臓で代謝され、ヒトでは主に、グルクロン酸抱合、b-酸化、ω、 ω1 及び ω2-酸化を受ける。
デパケン®錠100mg/200mg インタビューフォーム
☑️個々の薬物のPKパラメータの特徴づけを⾏う
PKパラメーターの特徴づけは以下のようになります。
Ae<0.3 肝代謝型
EH<0.3 消失能依存型
Vd=Vp 分布容積は小
fuB<0.2 蛋白結合依存型
B/P=0.64(IF外より)
F=1.0
薬物の体内動態パラメータ値と特徴づけ 病態変化に伴う⾎中⾮結合形濃度の予測への応⽤
☑️各PKパラメータの変動要因を明確にする(Table1111~2332)
変動要因を明確にします。Table1111の薬物に該当します。
PKパラメータの変動要因とそれらの病態の変化に伴う動き Table1111
☑️非結合型バルプロ酸のクリアランスは蛋白結合率の影響を受けない
全身クリアランスは以下のようになります。
CLtot=fuB・CLintH
CLtotf=CLintH
経口クリアランスは以下のようになります。
CLpo=fuB・CLintH/Fa
CLpof=CLintH/Fa
TDMで総濃度が測定されている場合は、測定値のみから判断することは避けるべき薬物です。
非結合型バルプロ酸の経口クリアランスは、蛋白結合率が変動しても変わりません。
クリアランスが変わらないと言うことはAUCも変わらないと言うことです。これを別の面から見てみましょう。
☑️非結合型バルプロ酸の分布容積は蛋白結合率の影響を受ける
分布容積は以下のようになります。
Vd=Vp
Vdf=Vp/fuB
非結合分率の変動は総濃度に基づく分布容積には影響しません。しかし非結合型濃度に基づく分布容積には影響を与えます。
非結合分率が上昇した場合、非結合型バルプロ酸の血中濃度はどうなるでしょう。分布容積Vdfが小さくなります。そのためCmaxは上昇、T1/2は短縮されます。この影響は相互に打ち消しあい、結果的にAUCは変動しません。
T1/2=0.693(Vp/fuB)/CLintH
臨床薬物動態学(改訂第5版): 臨床薬理学・薬物療法の基礎として
☑️まとめ
病態や他の薬物による蛋白結合置換で非結合分率が上昇しても、バルプロ酸の作用強度は変わらないことを見て来ました。
薬効を発揮する遊離型バルプロ酸のAUCが変動しないからです。
総バルプロ酸の経口クリアランスは増大します。そのため総バルプロ酸のAUC、ひいては血中濃度の低下が予想されます。しかし、総濃度だけで判断しないことが重要です。
☑️会員のススメ
今回の記事はいかがでしたでしょうか?気に入って下さったら、会員登録をお勧めします。会員限定の記事が閲覧出来るようになります。月々の購読料は、喫茶店で勉強する時に飲むコーヒー一杯の値段で提供しています。人生で一番価値のある資源は時間です。効率的に学習しましょう!値段以上の価値を提供する自信があります。
クリック会員について
会員になりませんか?
最終更新日2021年9月7日
☑️コラム
職場の悩みはありませんか?
わたしも最初の職場がどうしても合わず、1年足らずで退職。今の職場は上司や同僚に恵まれ、毎日楽しく働いています。
あなたが現状に悩んでいるのであれば、専門家に相談してみてはいかがでしょうか?
転職を考える場合、現在の環境から離れることを一番に考えてしまいがちですが、転職先には現在の職場にない問題があります。
わたしはラッキーでしたが、転職後の方が辛い思いをしてしまった、と言う話も耳にします。
自分に適した職場を見つけるためには、頼れるスタッフに協力してもらうことが重要です。
回り道のように見えますが、転職を成功させるための最短の近道と思います。
あなたも1歩踏み出してみてはいかがでしょうか?
迷っているならまずは登録してみましょう。
スポンサーリンク
完全無料!1分間の簡単登録
あります!今よりアナタが輝く職場
薬剤師の求人ならエムスリーキャリア
☑️推薦図書
臨床薬物動態学
臨床薬物動態学
クスリとリスクと薬剤師
☑️拡散のお願い
わたしのサイトが参考になったと思って下さったあなた、バナークリックをお願いします。
自分だけ知ってるのはもったいないと思って下さったあなた、SNSボタンでシェアをお願いします。