腎排泄型の薬剤であるメマンチンは、腎機能中等度低下した場合、どれくらいの用量が適切でしょうか?薬剤動態の観点から考えて見ました。

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こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。正月用に髪を切りに来ています。待ち時間にブログ記事を更新しています。

今日は、薬物動態の観点から、腎機能低下時の用量について考えて見たいと思います。

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中等度の認知症に用いられる薬剤であるメマリーは、主に腎排泄されるため、臨床の場で、維持量の20mgで用いられないケースもよく目にすると思います。

添付文書には、「2.高度腎機能障害(クレアチニンクリアランス値:30mL/min未満)のある患者には、患者の状態を観察しながら慎重に投与し、維持量は1日1回10mgとする。」との記載があります。

それでは、添付文書に用量調整の記載のない中等度~高度低下(eGFR:30~44mL/min/1.73m^2:CKDステージG3b)の場合、メマンチンの維持量は、薬物動態の観点からは、どれくらいが妥当なのでしょうか。

添付文書を参照すると、メマリー:「5.腎機能障害患者での体内動態本剤は腎排泄型の薬剤であり、腎機能が低下する程度に応じて、本剤のt1/2の延長とAUCの増大が認められている。」「正常者(Ccr>80)t1/2(hr)61.2±7.5」「中等度障害患者(30≦Ccr<50)t1/2(hr) 100.1±16.3」

まず、投与補正係数を求めて、1回投与量の補正を行います。61.2/100.1=0.61なので、維持用量は20mgx0.61=12.2mg≒15mg/dayで目的の血中濃度を得られると考えます。

次に、蓄積率から腎機能低下患者に常用量の20mgを維持用量とした場合、腎機能正常者に比して定常状態の最高血中濃度がどの程度上昇するか検証します。腎機能正常者の蓄積率は1/(1-exp(-0.693・Tau/T-half)=4.20  また、定状状態に達するのに要する時間は半減期の5倍=306時間≒13日。

中等度腎機能低下患者の蓄積率は同様にして6.53 また、定状状態に達するのに要する時間は500時間≒21日。従って、腎機能中等度低下患者が常用量を維持量として服用した場合、21日後に定常状態に達し、最高血中濃度は腎機能正常者に比して55%増加すると推定されます。

この時、安全性はどうでしょうか。添付文書を参照すると、「7.過量投与 メマンチン塩酸塩400mg服用患者において、不穏、幻視、痙攣、傾眠、昏迷、意識消失等があらわれ、また、メマンチン塩酸塩2,000mg服用患者において、昏睡、複視及び激越があらわれ、それぞれ回復したとの報告がある。」

用量と最高血中濃度の関係が線形と仮定すると、腎機能中等度低下での定状状態の最高血中濃度は、メマリー130mg単回投与程度の最高血中濃度と推定されます。

中等度腎機能低下の場合、メマンチンは有効性は15㎎/日でも良いように思われますが、安全域が比較的広いようなので、添付文書に用量調節の記載がないのだろうと考えます。