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こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です
今日は糖尿病の治療薬の話です。糖尿病には様々な薬があり、1種類で思うように治療効果が上がらない場合に、複数の薬を組み合わせて治療することは良くあります。いったい、どの薬と、どの薬を組み合わせるのが良いのでしょうか。専門家でも迷うような問いと思います。それに示唆を与えるような論文がありましたので、今回紹介いたします。
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今回取り上げるのは、英国の大規模なコホート研究です。集団を長期間フォローすることによって、薬剤効果を推定するような研究です。
2型糖尿病患者11,807人を対象に、メトホルミンに上乗せする薬剤としてDPP-4阻害剤とSU剤を比較しています。
プライマリ・エンドポイントとして心筋梗塞、脳卒中、総死亡の複合アウトカムを検討しました。
結果、イベント発生は1.2%/年vs2.2%/年であり、バイアスを排除するための傾向スコアによる調整後ハザード比(HR)0.62; 95%CI, 0.40-0.98で、DPP-4阻害剤を併用した群においてリスクが統計的に有意に低下していました1)。
この論文からは、メトホルミンに上乗せする薬剤はSU剤よりもDPP-4阻害剤の方が好ましいと言えるかも知れません。今後、この研究の結果を支持するような研究が現れるのか、あるいは覆すような研究が現れるのか、注目して行きたいと思います。
今日の話はいかがでしたでしょうか。ご家族の健康を守るための参考になさってください。
最後に、アブストラクトの翻訳を掲載します。機械翻訳を手直ししています。
「目的:ファーストラインの治療に失敗後、DPP-4阻害剤とSU剤、またはメトホルミンを併用した場合、どちらが主要心血管イベント(心筋梗塞および脳卒中)リスク、及び総死亡リスクの低下と関連づけられるかを決定する。方法:1988年1月1日から2011年12月31日の間にメトホルミンまたはSU剤単独療法で新たに治療された患者集団を英国臨床実践研究データリンクを用いて同定し、2012年12月31日まで追跡調査した。 DPP-4阻害剤-メトホルミン併用とSU剤-メトホルミン併用を比較したハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を、Cox比例ハザードモデルを用いて推定し、心筋梗塞、脳卒中および総死亡から成る複合エンドポイントのリスクを研究した。モデルは、高次元の傾向スコアデシルに対して調整された。結果:コホートは、DPP-4阻害剤 – メトホルミンの併用で2286人、SU剤- メトホルミンの併用で9521人を含む11,807人の患者から成っていた。複合エンドポイントの粗発生率(95%CI)は、それぞれDPP-4阻害剤 – メトホルミンおよびスルホニルウレア – メトホルミンの組み合わせについて、それぞれ1.2%(0.8%〜1.7%)および2.2%(1.9%〜2.5%)であった。高次元傾向スコア調整モデルでは、DPP-4阻害剤 – メトホルミンの併用は、スルホニルウレア – メトホルミンの併用と比較して、複合エンドポイント(調整HR:0.62; 95%CI 0.40〜0.98)のリスクが38%減少した。結論:スルホニル尿素 – メトホルミンの併用と比較して、メトホルミン- DPP-4阻害剤の併用は、主要心血管イベントおよび総死亡率の低下と関連していた。」
1)Yu OH et al. The combination of DPP-4 inhibitors versus sulfonylureas with metformin after failure of first-line treatment in the risk for major cardiovascular events and death. Can J Diabetes. 2015 Oct;39(5):383-9. PMID: 25840943
Can J Diabetes. 2015 Oct;39(5):383-9. doi: 10.1016/j.jcjd.2015.02.002. Epub 2015 Apr 1.