抗てんかん薬の催奇形性、特に神経管開存は葉酸代謝阻害が一因と考えられ、妊娠前からの葉酸服用を指導する必要がある。

要点:抗てんかん薬の催奇形性、特に神経管開存は葉酸代謝阻害が一因と考えられ、妊娠前からの葉酸服用を指導する必要がある。

バルプロ酸(VPA)による特徴的な奇形として、二分脊椎が1~2%の頻度発生した事が報告されています。VPAの催奇形の危険度は投与量・血中濃度と相関があり、血中濃度が70ug/mL以下ではリスクの増大が見られない為、治療上可能であれば、この濃度以下に維持する事の重要性が指摘されています。過去に、てんかん妊婦938例の妊娠について調査が行われ、抗てんかん薬に暴露されたてんかん妊婦の児の奇形発生率は9.0%でした。VPA用量は奇形発生率と相関があり、VPA濃度が70ug/mL以上では奇形発生率は41.7%(5/12)、70ug/mL未満では6.3%(3/48)でした1)。

バルプロ酸ナトリウムによる先天性の奇形の発症頻度は、1日服用量が1,500mg以上ではオッズ比が10.9だったのに対して、1日服用量が1,500mg以下では3.7だったとの疫学調査が報告されています2)。別の研究者は、バルプロ酸ナトリウムの1日服用量が600mg以下では、1,000mg以上と比較して胎児の先天異常のリスクは有意に少なかった事を報告しています。

ヨーロッパにおける5つの前向き研究に蓄積された1,379例の児のデータが再分析されている。バルプロ酸の1日服用量が>1,000mg以上では、≦600mg服用群と比較して、先天大奇形MCA(特に神経管欠損)の有意なリスク増加が見られました3)。[RR:6.8, 95%CI: 1.4-32.7]

日本てんかん学会のガイドラインでは、妊娠前から葉酸の補充を行うこと、抗てんかん薬と葉酸の血中濃度を測定する事が勧告されています。「てんかんを持つ妊娠可能年齢の女性に対する治療ガイドライン」によれば、妊娠前の発作の抑制として、必要最低限の抗てんかん薬単剤で試み、VPAは1,000mg/日以下が望ましい、とされています。また、血中濃度に依存して奇形発現率が増加するので、なるべく徐放剤を用いることが推奨されます。

抗てんかん薬の催奇形性、特に神経管開存は葉酸代謝阻害が一因と考えられています。葉酸補充が催奇形の頻度を減少させるかは必ずしも明らかになっていませんが、抗てんかん薬内服の場合は、妊娠前から1日5mgの葉酸の服用が推奨されています。抗てんかん薬服用中の葉酸の効果はまだ十分なデータはありませんが、一般集団では葉酸の0.4mg/日の服用によって、神経管開存の70%程度が防止出来ることが報告されています4)。

葉酸の摂取による胎児奇形の発症防止は、妊娠4週から7週末までの絶対過敏期(ほぼ妊娠2ヶ月に相当する)にしか有効に働きません。この時期に入った事は、基礎体温を記録しながら余程慎重に見ていなければ気づかれないので、葉酸を効果的に投与するには、妊娠前からの服用を指導する必要があります。

参考文献
「実践 妊娠と薬 第2版」
1)Congenital malformations due to anti epileptic drugs. Epilepsy Res, 33(2-3): 145-158. 1999

2)Antiepileptic drug use of women with epilepsy and congenital malformations  in offspring. Neurology, 64(11): 1874-1878, 2005
3)Material use of Antiepileptic drugs and the risk of major congenital malformations: a joint European prospective study of human teratogenesis associated with maternal epilepsy. Epilepsia, 38(9): 981-990, 1997

4)Recommendation for the use of folic acid to reduce the number of cause of spina bifida and other neural tube defects. MMWR Morb Mortal Wkly Rep, 49: 513-516, 1991

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