心房細動を伴った急性冠症候群のPCI後の抗血栓療法。

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こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。今日から仕事初めです。休憩を利用してブログ更新しています。

さて、今日は心房細動を伴った急性冠症候群のPCI後の抗血栓療法を受けている仮想症例を考えてみたいと思います。

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DAPTはステント留置後約2年継続していた。ワーファリン(WF)と合わせて3剤併用療法を開始して経過観察中、鼻出血からプラビックス中止。HAS-BLEDスコア2点(重大な出血のリスク:中等度)。

PCI・ステント留置後は経時的に冠動脈の梗塞リスクが減少するので、出血リスクと勘案しながら抗血小板薬の処方を決定する必要があります。

ESCガイドラインでは心房細動を伴った急性冠症候群のPCI後の抗血栓療法として、出血リスクの低い患者(HAS-BLEDスコア:0~2点)では3剤併用療法を6ヶ月、その後アスピリンまたはクロピトグレルを中止して2剤で1年後まで、1年以降は抗凝固薬単剤(NOACが推奨)治療を推奨しています2)。

ただ、冠動脈病変リスクが高い場合は抗凝固薬に加えてアスピリンかクロピトグレルの併用が推奨されています。

これらは、JAST試験(低用量アスピリンvs偽薬)、ACTIVE-W試験(DAPTvsWF)1)において抗血小板薬に心房細動に伴う脳梗塞の予防効果はない事、メタ分析3)から冠動脈疾患において抗凝固薬は出血リスクが多いもののイベント抑制効果があった事、BAT試験において重篤・重症な出血の年間発症率は、抗血小板薬単独で1.21%、抗血小板薬併用2.00%、WF単独2.06%、WFと抗血小板薬併用で3.56%であった事も踏まえられていると考えられます。

本症例はスタチン+フィブラートを服用しています。再狭窄が進み易く、冠動脈病変リスクが高いと判断されてNOAC+アスピリンが選択されているかと考えます。

参考文献
1)ACTIVE Writing Group of the ACTIVE Investigators. Clopidogrel plus aspirin versus oral anticoagulation for atrial fibrillation in the Atrial fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention of Vascular Events (ACTIVE W): a randomised controlled trial.  PMID:16765759

2)Oral anticoagulant therapy in patients with coronary artery disease: a meta-analysis. PMID: 10591389
参考:2014年に出されたESC他5学会のコンセンサス文書

3)Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA) endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-79.