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膀胱尿管逆流症はRIVUR研究からST合剤を予防内服する
☑️はじめに
3歳の女の子、体重12kgに次のような薬が処方されました。
バクタ配合顆粒 0.3g 1日1回夕食後 28日分
母親によると、膀胱炎の予防に内服しているそうです。
さくら先輩、初めて見る処方です。添付文書の記載より少ないけれど、妥当ですか。
聞き取りと用法用量から、膀胱尿管逆流症への適応外の使用と思われるよ。ゆきさん、一緒に見て行こう。
プロローグ
🆕ST配合顆粒28日分
👩👧予防に飲みます👨⚕️💭何の予防?
これは膀胱尿管逆流症(VUR: Vesicoureteral reflux)。
有熱性膀胱炎を繰り返します。
軽症であれば4~5歳までに消失します。RIVUR研究においてST合剤による再発予防効果が検証されています。
👩⚕️しっかり継続して下さいね😊✨
出典: twitter.com
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記事の続きをどうぞ。
☑️膀胱尿管逆流症(VUR:vesicoureteral reflux)について
VURとは
膀胱内の尿が膀胱の充満時、あるいは排尿時に尿管、腎盂、さらには 腎実質内に逆流する現象をさします。
多くは尿管と膀胱の接合部が生まれつき弱い、形成不全により生じているものです。
乳児の0.5-1.0%に認められ、乳幼児期に有熱性・症候性の尿路感染症を繰り返す原因となります。腎瘢痕・高血圧・慢性腎不全のリスク因子です。
診断とGRADE
排尿時膀胱尿道造影(voiding cystourethrography: VCUG)で診断し、国際分類を用いて程度を表します。
I度:尿管までにたまる逆流。
II度:腎孟まで逆流するが尿管・腎孟の拡張や腎杯の変形はない。
III度:軽度の尿管・腎孟の拡張と腎杯の変形を伴う。
Ⅳ度:中等度の尿管・腎孟の拡張と腎杯の鈍化を呈する。
V度:高度の尿管・腎孟の拡張と尿管の屈曲・蛇行、腎杯の拡張および乳頭部の形態消失。
また腎瘢痕化の評価はシンチグラフィティで行われます。
上部尿路感染症の直後は瘢痕化を過大評価するため、3~6ヶ月開けて行われます。
治療
感染の再発を予防する目的で抗生物質の内服を行います。
薬物療法の他に、逆流防止術、膀胱鏡下注入療法があります。
予後
VURは軽症では4-5歳で自然治癒を期待できます。
治癒率はGRADE I-IIで80%、III-IVでは30-50%との報告があります。
両側IV以上は自然治癒の可能性は低いです。
Pediatric Vesicoureteral Reflux Guidelines Panel summary report on the management of primary vesicoureteral reflux in children
J Urol. 1997 May;157(5):1846-51. PMID: 9112544
☑️予防内服(CAP:continuos antibiotec prophylaxis)について
対象
上部尿路感染症の既往およびVURの両方がある場合が対象になります。
乳児は全例、幼児はVUR GRADEIII以上に予防内服を行います。
薬剤
第一選択はST合剤0.025g/kg/day、トリメトプリムとして2mg/kg/dayを適応外で使用します。
ただしST合剤は低出生体重児、新生児では核黄疸を起こすリスクがあり、禁忌です。
ST合剤が禁忌ならセファクロルを
ST合剤が禁忌の場合、CCL 1-5mg/kg/dayが使用出きますが、ESBL産生腸内細菌による尿路感染症のリスクを高めるとする報告があります。
JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015―尿路感染症・男性性器感染症―
☑️膀胱尿管逆流症に対する予防内服のエビデンス
2014年に発表された無作為試験、RIVUR studyがあります。
PECOは以下のとおりです。
PECO
P:VUR(GRADEIーIV)の確定診断のついた2か月以降6歳未満(90%は女児)の607人、2群に無作為割付。
E:ST合剤(TMPとして3mg/kg/day)を2年間の予防内服。
C:プラセボ。
O:プライマリ・エンドポイントであるUTI再発は予防内服群で有意に低かった(HR0.50 [95%CI 0.34-0.74])。
交互作用の解析を行うと、膀胱機能障害のある群において、より再発を予防する効果の高い可能性が示唆された(HR0.21[95%CI 0.08-0.58])。
一方で、腎瘢痕形成には差がなく(11.9% vs 10.2%)、予防内服群でST合剤耐性E.coliの出現頻度が高かった(63% vs 19%)。
Antimicrobial prophylaxis for children with vesicoureteral reflux
NEJM 2014 Jun 19;370(25):2367-76. PMID:24795142
☑️まとめ
膀胱尿管逆流症(VUR)は尿管・膀胱接合部の形成不全から、膀胱内の尿が逆流する現象を指します。
尿路感染症を繰り返し、腎瘢痕化・高血圧・慢性腎炎のリスク因子となるため、抗生物質の予防内服を行う場合があります。
第一選択はST合剤0.025g/kg/day です。
低体重出生児・新生児では核黄疸のリスクがあり、禁忌となるため注意しましょう。
☑️参考文献
小児尿路感染症に関する最近の考え方 日児腎誌 Vol. 27 No. 2
上部尿路感染症について 日本赤十字社 愛知医療センター名古屋第二病院
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最終更新日2021年10月17日
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