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生姜はアレルギー性鼻炎にロラタジンと同じくらい有効ですか

☑️はじめに

アレルギー性鼻炎（AR）は非感染性の免疫疾患であり、世界的に発症が増加しています。

治療には主として非鎮静性抗ヒスタミンが用いられますが、眠気などが起きることもしばしばあり、代替療法が待ち望まれるところです。

ここで有力な候補が見つかりました。

生姜です。

香辛料として食用として用いられる他、中国・インド・タイ等、アジア諸国で伝統医学に用いられてきました。

今回紹介する研究は、生姜抽出物のアレルギー性鼻炎治療における有効性と安全性を、ロラタジンと比較検討することを目的としています。

プロローグ

Rp.ロラタジン✨

👨花粉症で毎年このシーズンになると飲んでます。
👨鼻水は止まるけど眠くなるんだよね…
👨貝原益軒のTV番組を見て、養生に関心があるんだけれど…

👩💭生姜を勧めようかしら…

出典: twitter.com

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☑️アレルギー性鼻炎の疫学と標準治療について

アレルギー性鼻炎は、世界的に重要な健康問題です。

成人の10〜30％、小児の40％が罹患という報告があり、WHOは、全世界で4億人がARに苦しんでいると推定しています。

アレルギー性鼻炎は、鼻粘膜における特異的IgEを介したアレルギー反応から生じます。

鼻づまり、鼻のかゆみ、水様性鼻汁または鼻水、およびくしゃみによって特徴付けられます。

治療は炎症反応を抑えることに重点が置かれ、抗ヒスタミン薬、点鼻ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬が用いられます。

現在では、第二世代の非鎮静性抗ヒスタミン薬が第一選択薬とされ、有用です。

しかし、抗ヒスタミン薬には、例えば眠気、口渇、発疹または疲労などの副作用があります。

この理由から、より耐容性の高い代替品を探すことが不可欠です。

☑️生姜抽出物の臨床試験について

生姜（Zingiber officinale Roscoe）は、香辛料として世界中で広く使われています。

インドや中国医学などの他の伝統では、生姜は喘息、吐き気や関節炎などのいくつかの障害に使用されてきました。

生姜抽出物には幅広い薬理作用があることが報告されています。

乗り物酔い、吐き気・嘔吐、変形性関節症、糖尿病といった症状に対する臨床的有効性が多くの臨床試験で検討されています。

しかし、生姜抽出物がAR患者の症状を緩和させたという臨床報告はありません。

今回紹介する研究は、生姜抽出物と非鎮静性抗ヒスタミン薬、ロラタジンの無作為化比較試験を実施し、その有効性と安全性を比較検討するものです。

☑️研究の概要

この研究は、生姜抽出物とロラタジンのアレルギー性鼻炎治療における有効性と安全性を比較検討することを目的に計画されました。

方法

アレルギー性鼻炎の患者を対象に、ロラタジン10mg（n=40）に対して生姜抽出物500mg（n=40）を3週間および6週間、無作為二重盲検比較試験で投与しました。

有効性は、臨床検査（鼻症状のトータルスコア（TNSS）、Acoustic Rhinometry（ARM）による鼻腔断面積、鼻・結膜炎QOLアンケート（RQLQ）から評価されました。

また、治療の安全性は、血圧、血液分析、副作用の病歴聴取により測定されました。

結果

ショウガエキス投与群、ロラタジン投与群ともにTNSSスコアが有意に低下しましたが、両群間に有意差はありませんでした。

ARM測定では、生姜投与群は推定鼻腔容積を有意に徐々に増加させ、鼻孔からの距離を減少させましたが、ロラタジン投与群では変化が生じませんでした。

両群とも3週目にはRQLQのすべての項目で有意な改善を示しました。

安全性

血液分析から得られた腎機能、肝機能の結果から、生姜抽出物による治療はロラタジンと同様に安全でした。

また、両治療とも患者の血圧に影響を与えませんでした。

生姜抽出物は、AR患者の鼻症状およびQOLの改善においてロラタジンと同程度の効果があり、しかも副作用、特に眠気、疲労感、めまい、便秘を引き起こしにくいことが分かりました。

結論

生姜抽出物は、AR患者の代替治療として使用できる可能性がある、と論文では結論しています。

Ginger extract versus Loratadine in the treatment of allergic rhinitis: a randomized controlled trial
Rodsarin Yamprasert, et al.
BMC Complement Med Ther . 2020 Apr 20;20(1):119.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

☑️生姜の薬理作用

生姜のエタノール抽出物は、ラット好塩基性白血病（RBL-2H3）細胞のアレルギー反応を抑制した、と報告されています。

抗アレルギー作用

6-ショウガオールと6-ジンゲロールは、抗アレルギー活性を示しました。

川本らは、マウスアレルギーモデルを用いて、ショウガおよび6-ジンゲロールの抗アレルギー作用を検討しています。

その結果、2％の食餌性生姜が、OVAの鼻感作による鼻すすり・くしゃみの重症度を低下させ、鼻粘膜のマスト細胞の浸潤や血清中のOVA特異的IgE分泌を抑制することが示されました。

また、脾臓細胞をOVAで誘導した後、6-ジンゲロールはTh2サイトカイン（IL-4、IL-10、IL-13）およびTh1サイトカイン（IFN-γ）の発現を抑制しました。

抗炎症作用

抗炎症作用に関する研究もあり、生姜が高い抗炎症活性を持つことが分かりました。

生姜抽出物は、ヒト末梢血単核細胞（PBMC）におけるIL-1bの放出に対して強い抑制効果を示し、COX-1およびCOX-2に対して抑制効果を示しました。

以前の研究では、有効成分である6-ショウガオールと6-ジンジャーオールがTNF-aの放出を強力に抑制することが示されました。

☑️生姜抽出物の投与量について

RfDについて

参照用量（RfD）に従っています。

参照用量とは、米国環境保護庁が定めた毒性物質の最大許容経口投与量のことです。

RfDは、実験動物で急性毒性、亜慢性毒性、慢性毒性を試験し、安全で好ましくない影響がないことを確認したNOAEL（No-Observed-Adverse-Exect-Level）値を確率的に掛け合わせたものです。

先行研究について

これまでの研究で、生姜のエタノール抽出物は5000 mg/kgで急性毒性、亜急性毒性ともに毒性を示さないことが示されています。

したがって、生姜抽出物の副作用のない計算上の最大量は、1日あたり3,000mgとなります。

261人の変形性関節症患者を対象とした別の臨床研究では、255mgの生姜抽出物を1日2回6ヶ月間投与すると、生姜抽出物投与患者に不快な胃腸の感覚がありました。

しかしながら、プラセボよりも有意に痛みを緩和することができ、重大なイベントではありませんでした。

したがって、この研究では、ボランティア1人当たり1日500 mgの生姜抽出物を使用しています。

☑️まとめ

アレルギー性鼻炎（AR)に対する生姜の効果について概観しました。

今回紹介した研究は、生姜抽出物によるAR患者の治療とロラタジンとの比較に関する最初の研究報告です。

本研究により、ショウガエキスはAR症状を軽減することができ、また、噫気（おくび）などのごく軽度の消化器系副作用を伴う安全な使用であることが示されました。

生姜抽出物はロラタジンよりも眠気、疲労感、めまい、便秘の発現が少ない点で優れています。

短期かつ小規模な研究なので、今後、生姜エキスの有効性と安全性を完全に評価するために、長期的かつ大規模な研究が待たれます。

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最終更新日2023年1月21日

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