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こんにちは。今日はコレステロールの薬を飲んでいるAさんの話です。Aさんは73歳女性。高血圧と脂質異常症で通院中です。標準体型で腎機能は保たれています。合併症や既往はありません。カウンターで薬の確認が終わった後、おもむろにバッグから血液検査の検査票を取り出して話し始められました。
「悪玉コレステロールのLDL109、善玉コレステロールのHDL46と、今までになく低くなっていてね。それでも薬を飲み続けないといけないか、主治医にも相談したんだけれど、はかばかしい答えが返って来なかったの。主人に合わせてササミなんかをメインに動物性脂肪を減らしたり、食事を気をつけた生活を3ヶ月続けたせいと自分では思うの。血圧も上が110とか120くらいまで下がっているわ。(検査票から腎機能は正常、糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞の既往はないことは確認ずみ)。出来れば薬を飲みたくないんだけれど、あなたは率直にどう思う?」
治療契約は医師としか結べない為、Aさんには判断材料を伝えて、次回診察時に主治医の先生ともう一度相談して頂くことにしました。以下、Aさんにお伝えした内容です。
・スタチンのクリニカルパスについて
現在のガイドラインでは、合併症のない場合LDL160以上でスタチン系の薬を開始し、レギュラースタチンのメバロチンによってLDLは20%程度下がる。Aさんの年齢ではLDL140が治療の目安になる。
・非薬物療法の効果について
食事や運動などによってLDLは15%程度下がる。動物性脂肪の摂取により体内でコレステロールが合成されるので、避けるのは正解。
・コレステロール低下させる意義について
動脈硬化の進展を阻止し、脳梗塞・心筋梗塞を予防するのが意義だが、欧米人に比して日本人は非常に低リスクのため、糖尿病や腎症など合併症や脳梗塞・心筋梗塞の既往がなければ未治療でも発症による心筋梗塞の発症リスクは10年で1%未満。
・スタチンの利益と不利益について
糖尿病や腎症の合併、脳卒中や心筋梗塞の既往があれば、利益は相対的に大きくなるが、なければ利益は小さい。不利益は稀な筋傷害の他、恒久的に薬のコストがかかること。かけすての保険のようなものと考えてよい。LDL100 HDL40程度に降下による不利益はおそらくないだろう。
・スタチンの服用について
半量にすれば、スタチンのLDL低下効果は減量前の6割程度になる。隔日服用はLDLは低下するが脳卒中や心筋梗塞予防のエビデンスはない。
いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守る参考になさってください。