この記事を読むのに必要な時間は約 17 分です。
過体重の人が防風通聖散を飲むと肥満は改善されますか
☑️はじめに
ドラッグストアでは様々なメーカーから防風通聖散がOTCとして発売されています。
内臓脂肪の燃焼を助ける、と言うのがセールストークです。
基礎研究が引用されることが多いですが、臨床研究は規模が小さく結果も一貫しない印象です。
いったい、防風通聖散は本当に痩せる効果があるのでしょうか。
今回2022年に発表されたシステマティックレビュー・メタ分析を読んで、防風通聖散の効果を確認したいと思います。
買い求めるお客様は多いですね…本当に効くのでしょうか？
規模の小さい試験を統合することで、有意差があるか確認が出来る。防風通聖散の実力を見てみよう！
プロローグ
防風通聖散✨
👩体重が気になって
👧💭BMI>25はありそうだわ…
痩せた方が健康によさそう…
本当に痩せるのかな…
👴肥満は痰湿内蕴と言って、飲食物が痰湿となり体の各所に停積する病態。暴飲暴食などで脾胃の運化作用を超えた飲食物は、水穀の精微とならんのじゃ。
脂肪などに相当する痰湿となって更に代謝や機能を阻害するため、肥満が進むことになる。
去痰化湿・健脾・通腑を行う防風通聖散などを使ってもよい。
👧じいちゃん、多謝。薬も効くのね。
👴ただし、漢方薬はあくまで痩せるきっかけを作るもの。食事に気を配ったり、運動を心がける必要があるぞ。
よく噛んで時間をかけて食事し、脾が十分に運輸できる状態を作ろう。
消化されやすく精微に化しやすくなり、数キロの減量が望めるんじゃ。
また、適度の運動は代謝を活発にし、減量の助けになる。
👧やっぱりそうだよね。
👴まあな。エビデンスの紹介は小雪に頼もうかの。
👧好！阿公（おっけー、じいちゃん）。出典: twitter.com
運営者から、クローズドコミュニティに対する思いをお伝えしています。
記事の続きは会員ログイン後、またはブラウザのまま視聴できるラジオでどうぞ。
Googleアイコンをクリックすると無料登録/ログイン出来ます。会員規約にご同意の上、14日間の無料トライアルをお試し下さい。
☑️肥満について
肥満の人は急速に増加しており、2016年には世界で6億5千万人以上の肥満の成人がいると言われています。
さらに、2025年には世界的な肥満の有病率は15％を超えると言われています。
肥満は糖尿病、脂質異常症、高血圧、心血管疾患、死亡率の重大な危険因子であるため、肥満の適切な管理は不可欠な課題です。
肥満への介入は患者の予後を改善する効果があることが、蓄積されたエビデンスにより示されています。
最近の肥満症に関するガイドラインでは、適切なライフスタイルの修正のもとでの薬物治療が推奨されています。
しかし、現在の臨床現場では抗肥満薬の選択肢は限られています。
Effects of weight loss interventions for adults who are obese on mortality, cardiovascular disease, and cancer: systematic review and meta-analysis
Chenhan Ma, et al.
BMJ.2017 Nov14;359:j4849.
☑️肥満への薬物療法
日本では、食欲抑制剤であるマジンドールのみが高度肥満の短期治療に承認されています。
しかし、マジンドールは精神的な副作用があるため、精神障害を持つ患者への使用は困難です。
米国食品医薬品局（FDA）は、他の抗肥満薬も承認しています。膵リパーゼ阻害剤であるオルリスタットは、肥満を改善する代表的な薬剤です。
しかし、オルリスタットは消化器系の副作用も比較的多く、薬物アドヒアランスを制限しています。
そのため、より忍容性が高く、制限の少ない新しい薬理学的選択肢に対するアンメット・メディカル・ニーズが出現しています。
Long term pharmacotherapy for obesity and overweight: updated meta-analysis
Diana Rucker, et al.
BMJ.2007 Dec8;335(7631):1194-9.
☑️研究の概要
漢方の概念によれば、防風通聖散は、肥満患者の便秘などの様々な問題を改善することができます。
これまでの基礎研究で、防風通聖散が過体重、糖脂質異常、高血圧を改善できることが示されました。
しかし、肥満患者に対する防風通聖散の有効性に一貫性のない結果を示した小規模な無作為化対照試験しかありません。
今回のメタアナリシスでは、肥満の参加者における防風通聖散BTSの肥満度（BMI）および心代謝系因子への効果を評価しました。
邦題は「漢方薬の防風通聖散は、肥満の被験者の肥満度を改善する。システマティックレビューとメタアナリシス」です。
【背景】
防風通聖散（中国ではFang-Feng-Tong-Sheng-San）は、肥満症患者のための日本の伝統的な漢方処方である。
最近の基礎研究により、防風通聖散が肥満の病態を改善する可能性があることが示されている。
しかし、防風通聖散が臨床的に肥満症患者のbody mass index（BMI）を低下させるかどうかはまだ不明である。
【研究方法】
2021年6月15日にMedline、EMBASE、Cochrane Library、日・中・韓のデータベースを含む電子データベースを検索した。
無作為化対照試験のメタアナリシスを実施し、肥満の参加者における防風通聖散のBMI、ウエスト周囲径、糖脂質代謝、血圧への影響を評価した。主要アウトカムは、BMIの変化とした。
【結果】
7つの研究、679人の参加者（防風通聖散群351人、対照群328人）を対象とした。
肥満の参加者において、防風通聖散は対照群と比較してBMIを有意に減少させた（平均差、MD [95％信頼区間]。-0.52 kg/m2 [-0.86, -0.18]、P = 0.003）。
ウエスト周囲径、糖脂質パラメータ、および血圧には有意差は認められなかった。
感度分析では、異質性は大きかったが、主要評価項目は頑健な結果であった。
さらに、防風通聖散群では重篤な有害事象は観察されなかった。
【結論】
防風通聖散は、肥満の参加者において、安全かつ忍容性の高いBMIの改善という潜在的な利益を示した。
Japanese traditional Kampo medicine bofutsushosan improves body mass index in participants with obesity: A systematic review and meta-analysis
Kazushi Uneda, et al.
PLoS One . 2022 Apr 13;17(4)
☑️感度分析
感度分析（Sensitivity Analysis）とは、「仮定の変更などで結果がどの程度影響を受けるかを調べることによって、評価の頑健性を判断する方法」と定義されます。
「疑わしいまたは支持されていない仮定に最も依存している結果」を特定することを目的としています。
言い換えると、感度分析の目的は、評価の頑健性を判断することです。
「頑健性」とは、仮定（例：説明変数）が少し変わっても、結果が大きく変わらない（例：有意差が変わらないなど）ことです。
感度分析
出典: note.com
メタ分析に組み込まれた研究間では、防風通聖散の生薬成分に多少のばらつきがありました。
しかし、用量の多い研究を除いた感度分析でも、実薬群のBMIは対照群に比べ有意に減少していました。
別の感度分析では、防風通聖散は緩下剤成分を含むプラセボと比較しても、BMIを改善することが示されました。
これらの一貫した結果は頑健性を暗示し、防風通聖散が肥満治療のための選択肢の1つであることを示すと言えそうです。
☑️ウエスト周囲径は不変だった
これまでの研究で、防風通聖散は実験動物および患者において内臓脂肪を減少させることが報告されています。
研究では、防風通聖散は有意なウエスト周囲径の減少に繋がりませんでした。
内臓脂肪減少における防風通聖散の有効性を明らかにするためには、さらなる調査が必要です。
Bofu-tsu-shosan, an oriental herbal medicine, exerts a combinatorial favorable metabolic modulation including antihypertensive effect on a mouse model of human metabolic disorders with visceral obesity
Kengo Azushima, et al.
PLoS One.2013 Oct9;8(10)
☑️基礎研究の知見
これまでの基礎研究により、防風通聖散の体重減少効果はいくつかの機序で説明されます。
構成生薬のうち、麻黄、甘草、荊芥、連翹は、実験動物において褐色脂肪熱産生および白色脂肪の脂肪分解を促進しました。
また、防風通聖散はグレリン系を調節することで潜在的な食欲抑制活性を示しました。
防風通聖散のこれらのメカニズムは、本研究で示されたBMIの改善につながる効果を発揮する可能性があります。
Bofu-tsu-shosan, an oriental herbal medicine, exerts a combinatorial favorable metabolic modulation including antihypertensive effect on a mouse model of human metabolic disorders with visceral obesity
Kengo Azushima, et al.
PLoS One.2013 Oct9;8(10)
☑️糖脂質代謝や血圧に影響しなかった
防風通聖散群と対照群間の糖脂質代謝の変化は、本研究では有意な差はありませんでした。
過去の研究では、実験動物や患者において耐糖能異常や脂質異常症を改善したことが報告されています。
参加者のベースライン糖脂質パラメーターの軽度の異常は、我々のメタ分析の結果に影響を与える可能性があります。
糖尿病および脂質異常症を有する肥満患者における糖脂質代謝に対する防風通聖散の効果について、さらなる研究が必要です。
Efficacy of bofu-tsusho-san, an oriental herbal medicine, in obese Japanese women with impaired glucose tolerance
Chizuko Hioki, et al.
Clin Exp Pharmacol Physiol. 2004 Sep;31(9):614-9.
また、両群間で血圧の変化に有意な差は見られませんでした。
今回の研究を含め、防風通聖散が血圧を低下させることを報告した臨床研究を見つけることができませんでした。
しかし、肥満の実験動物において、体重と同様に高血圧を改善したとする報告があります。
基礎研究と臨床研究の間で肥満における防風通聖散の血圧に対する効果の不一致を説明するために、更なる調査が必要です。
Preventive effects of Bofutsushosan on obesity and various metabolic disorders
Tsutomu Shimada, et al. Biol Pharm Bull . 2008 Jul;31(7):1362-7.
☑️限界とまとめ
いくつかの研究ではバイアスのリスクが比較的高い結果でした。
また、主要アウトカムに関連する異質性が概して高かったことがあります。
ベースラインのBMI値が高い参加者のみを含む感度分析では、有意な異質性は観察されませんでした。
したがって、BMI値の参加者のベースライン特性のばらつきが、本研究の異質性に関係している可能性があります。
最後に、本研究の参加者の多くは東アジア人でした。
以前の報告では、アジア人の肥満のカットオフポイントは他の民族のそれよりも低いことが示唆されているため、多国間での試験が期待されます。
にも関わらず、防風通聖散は肥満の参加者のBMIを減少させる、安全かつ忍容性の高い薬物療法と言えそうです。
☑️会員のススメ
今回の記事はいかがでしたでしょうか？気に入って下さったら、会員登録をお勧めします。会員限定の記事が閲覧出来るようになります。月々の購読料は、喫茶店で勉強する時に飲むコーヒー一杯の値段で提供しています。人生で一番価値のある資源は時間です。効率的に学習しましょう！値段以上の価値を提供する自信があります。
クリック会員について
会員になりませんか？
最終更新日2023年4月15日
☑️コラム
職場の悩みはありませんか？
わたしも最初の職場がどうしても合わず、1年足らずで退職。今の職場は上司や同僚に恵まれ、毎日楽しく働いています。
あなたが現状に悩んでいるのであれば、専門家に相談してみてはいかがでしょうか？
転職を考える場合、現在の環境から離れることを一番に考えてしまいがちですが、転職先には現在の職場にない問題があります。
わたしはラッキーでしたが、転職後の方が辛い思いをしてしまった、と言う話も耳にします。
自分に適した職場を見つけるためには、頼れるスタッフに協力してもらうことが重要です。
回り道のように見えますが、転職を成功させるための最短の近道と思います。
あなたも１歩踏み出してみてはいかがでしょうか？
迷っているならまずは登録してみましょう。
スポンサーリンク
完全無料！１分間の簡単登録
あります！今よりアナタが輝く職場
薬剤師の求人ならエムスリーキャリア
☑️推薦図書
ビジネス書、専門書、漫画等、幅広く紹介します。
フォーカス・リーディング習得ハンドブック
漢方・中医学臨床マニュアル 症状から診断・処方へ
クスリとリスクと薬剤師
スポンサーリンク
スポンサーリンク
☑️応援・拡散のお願い
応援・ファンレターお待ちしています。
OFUSE QRコード
わたしのサイトが参考になったと思って下さったあなた、バナークリックをお願いします。
自分だけ知ってるのはもったいないと思って下さったあなた、SNSボタンでシェアをお願いします。
サイトQRコード
Copyright©️2017 PHARMYUKI™️ All rights reserved