ジゴキシン服用者にクラリスロマイシンを投与した場合、投与しない場合と比較して、ジゴキシン中毒による入院のリスクはオッズ比で14.8倍だった。

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こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。今日は薬の飲み合わせについての話です。

心房細動と言う不整脈がある方や、慢性心不全のある方は、脈拍数を落ち着かせたり、強心作用があるジゴキシンと言う薬を服用されていることがあります。

ジゴキシンは血中濃度の有効域と中毒域が近く、また年齢や体格、合併症、併用薬などの影響を受けるので、安全に使用するために特別な注意が必要な薬です。

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ジゴキシンは薬物トランスポーターであるP-糖タンパク質(P-gp)の基質であり、体内ではほとんど代謝されず、未変化体として60∼80%程度が尿中に排泄されます。P-gpは尿細管上皮細胞の刷子縁膜に発現しており、ジゴキシンの尿細管分泌過程に関与していると考えられています。

今回飲み合わせとして取り上げるのは、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシンです。主に呼吸器系の感染症で用いられます。日本では大変好まれて処方される薬で、皆さんも飲まれる機会が多いと思います。それだけに、飲み合わせに注意が必要となる機会も多いと思われます。

カナダの大規模な観察研究において、抗生物質を飲むことでジゴキシンに関連する有害事象が増えるかどうか、調査が行われました。その結果、ジゴキシン服用者にクラリスロマイシン(CAM)を投与した場合、投与しない場合と比較して、ジゴキシン中毒による入院のリスクはオッズ比で14.8倍に増加した、と報告されています1)。CAMには上述したP糖蛋白阻害作用がありますので、ジゴキシンの腎排泄低下から血中濃度を上げる機序が原因になったのではないかと考えられます。

ここまで見て来ましたが、論文の解釈には注意が必要です。日本でのCAMの用量は通常400mg/日です。相互作用は用量に依存して強くなると考えられます。CAMの海外用量は1,000mg/日ですので、日本の臨床において通常はそれ程問題にならないかも知れません。ただし、ピロリ菌の除菌に用いるランサップ800など、CAMを800mg/日の高用量で使用する場合には、注意が必要になるかも知れません。このような処方のあった際には、嘔気など体調変化が起きないか、あらかじめ伝えておく必要があると考えます。

今回のお話は、いかがでしたでしょうか。ご家族の健康を守るためのご参考になれば幸いです。

最後に、論文アブストラクトの翻訳を掲載します。
「15年間の人口ベースのコホート内ケースコントロール研究で、ジゴキシン毒性による入院と、マクロライドへの暴露との関連を調査した。 クラリスロマイシンは、最も高いリスクと関連していた(調整オッズ比14.8; 95%CI 7.9-27.9)。エリスロマイシンとアジスロマイシンはより低いリスクに関連していた(調整オッズ比3.7; 95%CI 1.1-12.5)。 中立の比較対照であるセフロキシム(調整オッズ比 0.8; 95%CI 0.2-3.4)でリスクは増加しなかった。」

1)Gomes T et al. Macrolide-induced digoxin toxicity: a population-based study. Clin Pharmacol Ther. 2009 Oct;86(4):383-6.  PMID: 19606089
Clin Pharmacol Ther. 2009 Oct;86(4):383-6. doi: 10.1038/clpt.2009.127. Epub 2009 Jul 15.