糖尿病の薬のレパグリニドとピロリ菌除菌のクラリスロマイシンで重症低血糖を生じた例。

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こんにちは。今回は薬の飲みあわせの話です。糖尿病で通院中のAさんはレパグリニドと言う薬を飲んでいます。膵臓からインシュリン分泌を促す薬です。この地域では珍しい処方でしたので、業務の合間に、インターネットを利用して、後学のために医薬品情報を収集しました。その中で、PUBMEDで気になる論文を見つけました。

レパグリニドと抗生物質のクラリスロマイシンを併用する事で、重症低血糖を生じたと言う症例報告です。レパグリニドの添付文書にクラリスロマイシンの相互作用は記載されていませんでしたが、薬物代謝酵素のCYP3A4と、薬物トランスポーターのOATP1B1を介した相互作用として、免疫抑制薬のシクロスポリンは記載があり、おそらくクラリスロマイシンも同様の機序により、レパグリニドの血中濃度を上げた事に起因する副作用と推察されます。

論文によれば、症例はピロリ菌除菌療法の途中で生じた有害事象であり、クラリスロマイシンの用量は1,000mg/dayでした。ちなみに日本の適応ではピロリ菌除菌の際のクラリスロマイシンの用量は400mg/dayまたは800mg/dayです。

クラリスロマイシンのCYP3A4を介する相互作用は用量依存的であり、400mg/dayは比較的安全なのかも知れません。しかし、トランスポーターも関与している可能性もありますので、もしAさんが除菌療法を開始することがあれば、低血糖を生じる恐れがあることを伝えた方が良いでしょう。800mg/dayで処方せんが来た場合は、処方医にこの論文に基づいた情報提供をしなくてはいけないケースと考えます。

このように、添付文書に書かれていない副作用は常に有り得ますので、私たち薬剤師は、日頃から最新の情報収集を怠らない努力が必用です。それも命に関わるような情報を扱っていますから、知らなかったでは済まされません。英文で書かれた最新の医学論文のチェックは、日本語の情報はタイムラグが有るため、今や必須の業務です。

最後に皆さんにお願いなのですが、どんな些細と思われる薬でも、併用する薬はカウンターで教えて下さい。薬物治療のリスクを最小限に、効果を最大にする為に、重要な情報です。

いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守るために、ご参考になさって下さい。

1. Pharmacotherapy. 2008 May;28(5):682-4. doi: 10.1592/phco.28.5.682.
Severe hypoglycemia from clarithromycin-repaglinide drug interaction.

Khamaisi M(1), Leitersdorf E.

Author information: (1)Department of Medicine and the Diabetes Research Unit, Hadassah Hospital, Ein Kerem, and Hebrew University Medical School, Jerusalem, Israel. murir@hadassah.org.il

Many drugs have been reported to interact with repaglinide in patients with type 2 diabetes mellitus, resulting in hypoglycemia. However, to our knowledge, an interaction between clarithromycin and repaglinide in these patients has not been previously reported. We describe an 80-year-old man with end-stage renal disease and well-controlled type 2 diabetes (hemoglobin A1c < 7%) who was hospitalized for treatment of severe hypoglycemia. He had been receiving repaglinide 0.5 mg 3 times/day for the previous 2 years. Clarithromycin 500 mg twice/day had been started for Helicobacter pylori infection several days before admission. Within 48 hours of starting the drug, he developed severe hypoglycemia, which resolved with intravenous glucose administration. However, 48 hours later, the patient again experienced hypoglycemia and was unresponsive. Intravenous glucose administration again resolved the problem. Repaglinide was discontinued, and no further hypoglycemic episodes occurred. Clinicians should be aware of this possible clarithromycin-repaglinide interaction; in particular, in elderly patients with type 2 diabetes who are taking repaglinide and begin clarithromycin therapy, blood glucose levels should be monitored closely for potential dosage adjustment of repaglinide.

PMID: 18447665 [PubMed – indexed for MEDLINE]

2型糖尿病の患者では多くの薬物がレパグリニドと相互作用し、低血糖を引き起こすことが報告されている。しかし、我々の知る限りでは、これらの患者におけるクラリスロマイシンとレパグリニドとの相互作用はこれまで報告されていない。重度の低血糖症の治療のために入院した、末期腎疾患および2型糖尿病の良好なコントロール(ヘモグロビンA1c <7%)を有する80歳の男性を説明する。彼は過去2年間にレパグリニド0.5mgを1日3回投与していた。入院数日前にヘリコバクター・ピロリ感染のためにクラリスロマイシン500mgを2回/日投与しました。薬物投与開始から48時間以内に、彼は静脈内グルコース投与で解決した重度の低血糖を発症した。しかしながら、48時間後、患者は再び低血糖を経験し、反応しなかった。静脈内グルコース投与は再び問題を解決した。レパグリニドは中止され、それ以上の低血糖症は発生しなかった。臨床医は、この可能性のあるクラリスロマイシン – レパグリニド相互作用を知っていなければならない。特に、レパグリニドを服用しているクラリスロマイシン療法を開始している2型糖尿病の高齢者では、レパグリニドの投与量を調整するために血糖値を注意深く監視する必要がある。