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サンリズムはジルテックと併用すると副作用が出やすくなる?
☑️はじめに
循環器内科から心房細動の薬、サンリズム®️を飲んでいる患者さんに、耳鼻咽喉科から花粉症の薬、ジルテック®️が処方されました。
ジルテック®️の添付文書には、サンリズム®️は併用注意とされています。飲み合わせは大丈夫でしょうか?
この記事では、ジルテック®️とサンリズム®️の併用で起こった有害事象の症例報告を紹介します。
疑義照会の必要性について判断する一助となると思われます。
プロローグ
🐗OTCのコンタック鼻炎Zにはセチリジンが入っている。
🐗添付文書を見るとサンリズム®️服用中は禁忌指定だ‼️
👧腎排泄が競合して双方の血中濃度が上昇し、ピルシカイニドのNaチャンネルを介した心抑制作用が増強しますよ🦋
👧CKDでは特にリスクが高くなると思われます🦋
出典: twitter.com
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☑️アレルギーの薬セチリジンと、不整脈の薬ピルシカイニドの飲み合わせは大丈夫?
添付文書には明記されていない引用文献を見つけた
アレルギーの薬であるセチリジン(ジルテック®️)の添付文書には、併用注意として、不整脈の薬ピルシカイニド(サンリズム®️)が記載されています。
添付文書には引用文献が記してなかったので、Pubmed と言う医療データベースで検索したところ、該当すると思われる文献を見つけました。
Severe arrhythmia as a result of the interaction of cetirizine and pilsicainide in a patient with renal insufficiency: first case presentation showing competition for excretion via renal multidrug resistance protein 1 and organic cation transporter 2.
Tsuruoka S, Ioka T, Wakaumi M, Sakamoto K, Ookami H, Fujimura A.
Clin Pharmacol Ther. 2006 Apr;79(4):389-96.
そこに書かれていたことを再構成して話してみようと思います。
ピルシカイニド(サンリズム®️)を服用中にセチリジン(ジルテック®️)を飲んだところ、失神して病院に運ばれた
72歳のAさんは、腎機能が低下している方で、ピルシカイニドを1日150mg服用していました。心房細動の治療薬です。ある時、花粉症の薬、セチリジンを1日量20mgで処方されました。セチリジンを服用開始して3日目、Aさんは失神して病院に運ばれました。
原因はピルシカイニドの血中濃度が高くなっていた事
徐脈、幅広いQRS波と、ピルシカイニドの過量投与を疑わせる症状があり、ピルシカイニド中止により回復しました。血液検査で、ピルシカイニドとセチリジン双方の血中濃度が上昇していたことが分かりました。
ピルシカイニドとセチリジンを一緒に飲むことで、どちらの薬も体に残りやすくなる
その後、健康なボランティアにピルシカイニドとセチリジンを単回投与した試験が行われ、ピルシカイニドとセチリジンのクリアランスが、各々半分程度まで低下することが分かりました。
クリアランスとは、一定の時間に薬がどれくらい体から排泄されるかの指標です。クリアランスが大きい程、薬は早く体内からなくなります。逆に、小さいほど体から出て行くのに時間がかかり、体内に残りやすくなります。
ピルシカイニドとセチリジンの飲み合わせで何が起こった?
ピルシカイニドもセチリジンも腎臓から尿に排泄される薬であり、排泄経路が競合するために起こる相互作用ではないかと考えられます。
基礎研究の知見から、腎尿細管にある薬物トランスポーター、MRP1やOCT2が、この相互作用に関与しているのではないかと考えられています。
☑️まとめ
サンリズム®️とジルテック®️は腎臓での排泄が競合する可能性があり、サンリズムの副作用が出やすくなる事が分かりました。
ジルテック®️の他、ジルテック®️を光学分割した製剤であるザイザル®️も同様の相互作用を惹き起こす可能性があります。
心房細動は加齢とともに発症する病気であり、サンリズム®️を飲んでいる患者は腎機能も低下している場合が多いので、クリアランス低下の影響は若年者より相対的に大きくなると考えられます。
サンリズム®️服用者にジルテック®️が処方になった場合は、他剤に変更が出来ないか疑義照会し、変更にならなかった場合は患者に徐脈等の起きる可能性を予め説明する必要があると思われます。
最終更新日:2021年2月6日
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☑️参考文献
1)Severe arrhythmia as a result of the interaction of cetirizine and pilsicainide in a patient with renal insufficiency: First case presentation showing competition for excretion via renal multidrug resistance protein 1 and organic cation transporter 2.
PMID 16580907
☑️推薦図書
「薬と相互作用のしくみ」
薬と相互作用のしくみが網羅的に解説されている大作です。書いてない相互作用は無いのでは…と思われるくらいです。辞書として何か調べたい時に、まずあたりたい本です。
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「その場の1分その日の5分」
クリニカルクエスチョンについて、どのように自分で情報を調べて吟味し、実践して行くかを記した書籍。
薬局薬剤師にも勉強する姿勢が参考になります。
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「アンサングシンデレラ」
薬剤師のわたしたちの気持ちを代弁してくれるコミック。家族やお友だち、薬学生や、将来薬剤師を志す中高生にもお勧めです。
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